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癒される場所がすくない

未唯へ

 昨日の帰りのスタバは空いていた。台風が来るとあれだけ、脅かされると、名古屋に来れないし、早く帰ろうとします。

 私は普通の水曜日通りです。何も気にしません。バスが走っていれば、乗ってくるし、ダメなら豊田市まで歩いて電車です。帰りはその逆です。先を考えない。

エッセイのすすめ方

 社会編のエッセイするか、それよりも軽い環境編をエッセイにしようか。環境編は環境塾の来週土曜日につながります。もう、10月なんですね。エッセイのために、何しろ頭をクリアーにすることです。何も前提条件なしで行います。

 本に振り回されています。エッセイに集中します。次期ネットはパートナーに任せます。

 環境編の3つ目は「こんな新しい動きがあります」です。4つの目の「だからこうしましょう」につながります。

 最初は「こんなことを聞きました」。2つ目は「今は、こうなっているみたいです」と続きます。

岡崎図書館

 岡崎図書館に木曜日に来るのも、これが最後です。その次は日曜日になります。10月2日の日曜日です。

 岡崎図書館ではマックスの10冊借りてきました。クルマの中で一冊片付けて、老人ホームの母親の部屋での1時間で5冊読み終わりました。

 豊田市駅前のスタバで残りの4冊を片付けました。

 ダブル・トール・ラテを注文しました。受付はダブルでしたが、出てきたのはシングルでした。マグにしたので、オーダーが伝わっていなかった。その場で取り替えてもらった。

 OCR化するのも、本の一冊です。明日はエッセイに集中させます。

 本は土曜日に5時前に豊田市図書館で20冊程度、確保するだけにします。

今日借りた、岡崎図書館の10冊です。

 289.3『チェ・ゲバラ最後の真実』

 302.2『ハマスの息子』

 590.4『フランス流 節電の暮らし』 フランスにはコンビニ・自販機がない 日本人は我慢がない。その半面、何故逃げないのか。そんなDNAがあるのか。

 012『図書館空間のデザイン』デジタル化社会の知の蓄積

 188.9『東日本大震災-創価学会はどう動いたか』

 375.3『解釈型歴史学習のすすめ』対話を重視した社会科歴史

 188.9『民衆こそ王者』池田大作とその時代 「人間革命の奔流」篇

 689『ヘルスツーリズム概論』観光立国推進戦略

 135.5『カンギレム』生を問う哲学者の全貌

 336ア『ITで実現する震災・省電力BCP完全ガイド』システム視点で事業継続計画を見直す 3.11の教訓から生きたBCPをつくる 危機はまだ続いている

癒される場所

 会社はスタバだけで癒されています。朝だけでなく、昼休みの時に、おかわりを貰いに行った時も、会話できるようになりました。「髪の毛を切られたんですね」隣の女性「私もそう思いました」

 昨日の台風の時も「帰りに気を付けてください」に対して、「これから帰られるのでしょう。今から大変だから、少し待った方がいいのでしょう」

 あの無警戒な笑顔はたまりません。

母親のターミナル

 老人ホームのケアマネから、「この最近、このホームで亡くなる人が出て来ています」「お母さんはどうされますか」と唐突に聞かれました。

 病院へ転送して、最後まで治療を続けるのか、老衰のように、ホームで自然にしておくかということを聞かれました。頼りになる妹の判断は聞いていて、名義上の決定者の私に問いかけています。

 妹は父親の時のように、病院での救命はせずに、自然にすることを望んだということです。それに同意しておきました。妹に電話して、意向確認を行いました。
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リサイクルは恐竜時代の哺乳類

『よくわかる「都市鉱山」開発』より

リサイクルには、実はもうーつの大きな壁があります。それは「時代の壁」です。

「循環型社会」という言葉が使われ出してからまだ十数年しか経っていません。そしてまだ「循環型社会」という言葉が主張されるということは、まだ循環型社会ではないということです。そのような状態での経済的に合理的なシステムは「循環型」ではなく「非循環型」なのです。これではコストの壁が出てくるのは当たり前です。その上に、この「循環型社会」のリサイクルは、資源の確保の見方よりも廃棄物処理場がなくなるという逼迫感からの廃棄物減量化の色彩が強く出ています。そのような中でレアメタルなどの資源確保の観点でリサイクルを進めることは、同じリサイクルという言葉を使いながらも新しい挑戦なのです。

現在のリサイクルで何をどのように処理しているのかを調べた結果が図5.6で、Web上に公開されているリサイクル会社の取り扱い品や処理内容を整理し会社の数を付けたものです。建築物や電気製品など様々な分野からリサイクルがされていますが、この中でレアメタルや貴金属を取り出すような分離・抽出を行っている会社はわずかで、鉄やアルミ、銅などを切断して再熔解会社に持ち込んでいるのがほとんどです。むしろ、複雑な部品類は海外に出している会社の方が多いのです。これは、現在のリサイクルの主力が希釈型のリサイクルだということに起因しており、「リサイクル=再熔解」というのが現状なのです。

実は、この「リサイクル=再熔解」という取り組み方は、「循環型社会」が騒がれだす以前からあった加工屑の再利用の中で作られてきました。廃棄物処理重視のリサイクルの前に資源利用のリサイクルは実は存在していたのです。しかしそれは、再利用しやすい加工屑を利用するという形がほとんどでした。

図5、7に全体のライフサイクルの流れの中での加工屑リサイクルの位置を示しましたが、加工屑のリサイクルは製品にならないマテリアルフローを作っています。素材は製品として使われてこそ意味があるのですが、ここで回っているのは「イ吏われないリサイクル」です。それでも、この加工屑のリサイクルは、発生場所が明確、品質が同一のものがまとまって大量に発生するというメリットがあります。このメリットは、コピー製品の大量生産・大量消費という20世紀型の生産様式と大きく関係しています。それに対して、このメリットを循環型社会で強調される使用済み製品からのリサイクルにも求めると、同じような品質の同一性、大量処理を使用済みのポストコンシューマー・リサイクルにも求めることになり、そのためにエネルギーを投入したり、新たな廃棄物が発生したりするわけです。

20世紀型から循環型へと転換するのでしたら、本来は製品の作り方からして循環型を志向し、加工屑再利用型ではない使用済み製品対応のリサイクルプロセスが製造の段階から準備されていなければなりませんが、まだそれがほとんど準備されていない段階で使用済み製品からの資源利用のリサイクルが求められています。ここに乗り越えねばならない最大の壁「時代の壁」があるのです。

このようないくつもの壁を目の前にすると、「リサイクルは間違っている」との主張にも一分の理があるかのように見えます。現状を見る限りでは多くの指摘は当たっています。

図5.7をもう一度見てください。 20世紀型の大量に発生する加工屑のリサイクルに合うような原料として扱えるように廃棄物からの予備処理が必要だとすると、大量に集めて使えないものは除外するという形で新たな廃棄物がリサイクルの過程で発生します。また、切断して再熔解すれば使える加工屑並みの品質を要求されれば、不純物や複合物などを除去するためにエネルギー投入が必要になります。これができず加工屑に及ばない場合には従来のリサイクルで受け入れてもらえず、素材から製品というライフサイクルからはずれて、全く新たなリサイクル素材の使い道を無理やり考えて廃棄物にしないように努力しなければなりません。

そうして生まれるのが「素材に戻れないリサイクル」です。この「素材に戻れないリサイクル」や、加工屑レベルに品質管理するために必要なエネルギーや廃棄物の発生の無駄を指摘しているのが、ほとんどの「リサイクルは間違っている」論の中核部分です。

はっきり言って、この指摘は間違っていません。今のリサイクルの問題の本質を「リサイクルは間違っている」と言っている人たちは突いています。これは当たり前です。まだ現在は大量生産・大量消費・大量廃棄の時代で、経済的適合性はまだそちらの方に向いているのですから。ちょうど中生代の末期にタイムスリップして恐竜の陰で必死に生きようとしている哺乳類を見つけて、「お前、この時代にこんな生き方しても駄目だぞ」と言っているようなものです。

問題は、未来はどちらが握っており、それを伸ばすために何をするかということなのです。頑張っている小さな哺乳類である自治体や市民に「リサイクルは間違っている」と言うより、使いっ切りの大量生産・大量消費・大量廃棄をいまだ生産の前提としている恐竜に対して「このままでは未来はないぞ」と言う勇気こそが欲しいものです。

現に、家電リサイクルの中で大きな変化が起き出しています。驚くべき話ですが、家電リサイクルが行われるまで家電製品の設計者は自分の設計したものが使われた後の状態を自分の家庭以外で見る機会は全くといってよいほどなかったそうです。家電リサイクルが動き出して初めて設計者が使用後の状態に触れ、寿命管理やメンテ、修理そして再利用とリサイクルというライフサイクル管理の観点で設計するという考え方が根付くようになっています。いくつかの家電メーカーでは、まず新入社員はリサイクルエ場に送って使用後の製品を頭に焼き付けるということも行われるようになっているそうです。

時代の壁を哺乳類が少しずつ食い破りだしているのです。
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都市鉱山開発 分散の壁

『よくわかる「都市鉱山」開発』より 都市鉱山開発の四つの壁

天然鉱山の世界は、「千三つ」と呼ばれ千の可能性があってもモノになるのは三つぐらいという開発リスクが大きなものです。都市鉱山は人間の経済圏の中の行為なので、そこまでの開発リスクはないように思われますが、「天然鉱山との比較」で見たように天然鉱山にはない問題もあり、そう簡単にはいかないのが実情です。

リサイクルは価値のなくなった廃棄物から有用で価値のある素材を生み出すものですから、まさに無から有を生み出す、まさに「ぼろ儲け」ができるのではないかと思っている人もいます。そうでなくとも、自治体がリサイクルをすればそれなりに収入があり採算が取れるのではと思っている人も多いでしょう。しかし、実際に経済的に成り立つリサイクルを回収段階から行っているケースは極めてまれで、自治体の多くが持ち出しになっています。

その理由として、都市鉱山の開発には次の四つの壁があるからです。その壁とは、①分散の壁、②廃棄物の壁、③コストの壁、そして④時代の壁です。ここから、この壁を一つひとつ見ていきましょう。

「分散の壁」とは、都市鉱山の元となる資源が薄く広く分散していることからくる問題です。天然鉱山との違いの大きな影響もここに現れます。天然鉱山は地球中に散らばっていたものが自然の作用で集まった、いうならば神の恵みを利用させてもらっているわけですが、都市鉱山ではそれを自前でやらねばならず、しかも神の恵みの天然鉱山と価格や品質で競争しなければいけないのです。

「そうだ。だからリサイクルは集めることだ」と思う人は多いでしょう。そのために消費者の啓発や教育、啓蒙、さらには景品などのモチベーションを与えることも考えられ、様々な努力が行われています。

しかし、実はそれだけでは簡単に乗り越えられないのが分散の壁です。

ちょっと計算してみましょう。人口1億2、000万人の日本で約1億台の携帯電話が保有されています。その中に金が約7mg使われているとして全体では700kgの金があり、いま大体2年半で買い換えていますので、約140kgの金が毎年リサイクル可能になるはずです。 10万人の町にすると年間で集められる金は120gになり、人口密度から計算すると320km2の広さからそれを集めることになります。ちなみに、集まった金をうまく取り出しても50万円弱ですから、携帯電話だけでは作業の人件費や設備投資ができるにはもっともっと広域の協力が必要になります。また、日本の金属の製錬技術は世界でトップの品質と効率ですが、その技術の鍵は大量をまとめて処理することによる最高級の品質管理です。このように少量ずつ製錬会社に持ち込んでもよほど金属の濃度が高くない限りその能力は発揮できないので、思ったほどは歓迎されないのです。

このような希薄な状態からでもたくさん集めれば量を稼ぐことができ、いわゆる「塵も積もれば山となる」状態に持っていくことができるのではないかと思う人も多いと思います。

しかし、それも実は大きな制約があります。というのは、「ゴミ」と「資源」の境界があいまいなために、「資源」性はありそうでも買い手のつかないものは念のために「ゴミ」として扱うことになっており、「ゴミ」は短い期間しか貯めておくことはできませんし、勝手にあちこちから集めることもできません。つまり、「塵は積もらせてはならない」という制約があって量を稼ぐということが困難なシステムになっています。

これに対する対策として、

 ①集めるのではなく集まってくるものをリサイクルする

 ②地域の範囲で使用済み小型家電などを廃棄物から資源に変える分散型の処理システムをつくる

ということが考えられます。

①は中国などで有効で、リユースのための買い取りの際の不良品など大量にまとまって存在するところからリサイクルしていくという方法です。また、企業買い取り品などからの大量の使用済みの発生などに主体を置き、そこに自治体などでの取集物を合流させるという取り組みになります。

②は資源=「買い取ってもらえる」システムを自治体レベルの分散型の処理の中でもつことです。集めて渡すだけでは「ゴミ」と「資源」の境界を変えることはできません。そこに分解・分別などの処理を入れることで有価な状態に持っていくことが必要です。

さらにより根本的には、③「資源」と「ゴミ」の境界を「有価か否か」からより資源リサイクルを促進できる方向に変える、ということがあります。たとえば、マニュフェストに基づくリスク管理による仕分けとか、有害物処理能力認証に基づく取扱い者による仕分けなどです。これには、技術だけでなく法や倫理なども含めた広範な人たちの検討が要るでしょう。

技術面でいうと、もう一つ分散の壁として見ておくことがあります。それは、地理的所有的な分散だけでなく、製品の中でも使用されているレアメタルの種類は増えこそすれ個々の成分は薄く分散していく傾向にあるということです。たとえば、液晶ディスプレイのインジウムの透明電極は工場で処理されるインジウムの5%程度しか製品として消費者の手元には届きません。LEDの希土類も1個1個に使用されている量はmgオーダーです。これから資源状況が厳しくなり、かつナノテクノロジーなどで微細技術が進んでくると、この極微量使用の傾向はますます強くなります。このようになると、①②③の対策だけでなく、技術としても、④従来の大量処理とは異なる回収・製錬技術の開発も今後必要な技術開発として念頭に置いておく必要のある課題です。
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進化のための道筋

『クラウドが変える世界』 われわれが進むべき道

規制緩和や制度改革については、長年にわたりさまざまな議論がなされてきました。時代の変化や技術の進歩などに応じて個別の課題は新たに出てきますが、その必要性や実行するにあたっての方向性など基本的な考え方については、すでに議論は出尽くしたような状況で、あとは実行するのみです。それにもかかわらず、なかなか思うように進んでいません。

規制緩和や制度改革を行うことで、企業がイノペーションに取り組み、新たなビジネスやサービスが生まれる可能性は広がります。新たなビジネスやサービスの登場は、消費者の選択肢を増やし、利便性向上につながるでしょう。それにより消費者の需要が増えると、企業はさらなる利便性向上のために設備投資や雇用を増やすことで経済が成長し、生活が豊かになり、税収も増えていきます。

制度や規制の改革ですべてがうまくいくとは言いませんが、日本の社会・経済に新たなサイクルをもたらす大きなチャンスとなることは間違いありませんから、課題先進国が課題解決先進国になるためにも、既存の枠組みを超えて、産官学が一体となり、こうした制度的な部分にもスピード感を持って取り組んでいくことが欠かせません。

その意味では、政府が二〇一〇年六月に閣議決定した「新成長戦略」のなかで、「二Iの国家戦略プロジェクト」のひとつとして位置付けた「総合特区制度の創設」が起爆剤として期待されます。政府は、総合特区制度を国家戦略プロジェクトとして位置付けた理由として、次のような点を挙げています。

 ・経済財政運営の最重要課題は、過去の政権が残してきた規制・制度の束縛や、適切な政策及びそのために必要となる財源確保の努力の欠如を是正し、本来の需要を実現すること

 ・ルールの変更や需要面からの政策を呼び水として実行することによって、これらの需要を顕在化させるとともに雇用を創出し、日本が本来持つ成長力を実現することが、優先順位第一の課題

 ・制度改革と一体的に実施することで相乗的な効果が期待される政策・事業を重視する。

特に、潜在的な需要を抑えているルールを変更することは極めて重要

つまり、総合特区とは、規制・制度改革の実験場であり、税制・財政・金融上の支援措置などがもたらす効果を検証する場というわけです。

総合特区制度を活用することによって、これまで法律や税制などの制約によって実現することのできなかったさまざまなビジネスを育成すること自体、きわめて重要です。参入障壁〃あるいは。成長障壁〃が取り払われることによって、これまで海外に後塵を拝していた分野でも新たな成長産業が生まれる可能性もあります。

重要なことは、運用も含めて特区を利用することで得られた知見を、法制改定により他の地域に広げていくことであり、これが特区の真の目的です。特区は、検証され、有効と判断されたものについて、スピード感を持って法制改定まで進めていくことができる仕組みなのです。

そこでは、社会システムーサービスを高度化するだけでなく、膨大な情報を蓄積でき、これらのデータからある特定の意味を抽出する技術を使って、より価値のある知識・知恵へと変換し、これらの知識・知恵をコミュニティの場で共有することができるクラウドが、社会基盤として大きな役割を果たすようになるはずです。

また、東日本大震災の復旧二俣興作業に向けて、政府は規制に関する柔軟な運用を実施しています。たとえば、医療の分野では、初診・急性期の患者に対する遠隔診療やファクシミリなどにより送付された処方能による調剤を認める事務連絡が出されています。経済団体をはじめとする民間からも規制緩和に関する提言がなされています。これらについて効果を検証し、災害時に自動的に適用されるべきものや恒常的な規制緩和策として実行に移すべきものを整理する必要があります。

クラウドのような技術進歩がもたらすパラダイムシフトをうまく活用できるか、そして、いかに仕組みに盛り込んでいけるかは、これからの日本を先導していくリーダー層にとって重要なことです。

一方、グローバル化か進み、距離的にも時間的にも制約がなくなっているなかで、企業が生き残っていくためには、すでに述べたように迅速かつ安全な情報伝達のグローバル最適化を視野に入れた組織運営(オベレーション、マネジメント・スタイルの進化)が必要とされています。

企業の経営トップや政策のリーダーは、変革・進化のツールとしてクラウドを本質的に理解する必要があります。

また、これは先はどの規制緩和や構造改革についても言えることですが、その目的が十分に理解されていなかったり、実現に向けた強力な推進力が不足しているといったことが、なかなか改革を実行し、定着させることのできない根本的な問題なのではないでしょうか。

このため、クラウド技術が備える変革や競争力強化への潜在的な威力への理解の有無が、企業経営や社会政策における将来の成否を分けていくでしょう。変革を恐れずに、進化の過程において新たな環境に適応していくこと、勇気を持って新しいものを受け入れる姿勢こそ、これからの社会に求められることなのです。
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災害へのクラウドでの対応

『クラウドが変える世界』 クラウドの力を公共サービスに活かす

東日本大震災をきっかけに、私たちはさまざまなことを思い知らされました。地震大国であることは誰しもが理解していて、関東大震災や阪神・淡路大震災など多くの経験と知識があったにもかかわらず、今回の巨大地震とそれにともなう津波の威力は、想像をはるかに超えていました。

ところで、今回の震災は、ICTが現代社会のインフラとなっており、ライフラインの一翼を担っていることを改めて明らかにしたとも言えるのではないでしょうか。水道・電力・ガスと同じように、あるいはそれ以上に通信の復旧が望まれましたし、震災後に宮城県沿岸地域で行われたアンケート調査によると、被災地では現金や預貯金通帳、財布などの貴重品とほとんど同じくらいの割合で、避難時に携帯電話が持ち出されていました。そして、安否確認や自治体からの情報発信にインターネット上のツイッターやフェイスブック、その他のSNSなどが利用され、被災直後の貴重なコミュニケーションのツールとなりました。混乱した状況のなかでは、的確に情報をやりとりすることがいかに難しく、しかし安心・安全のために必要であるのかを、まざまざと見せつけられた思いです。

こうしたなかで、直接的な情報伝達やコミュニケーション以外の部分でもICTは重要な役割を担いました。たとえば、ライフラインが寸断され、病院などの施設が機能しない状況での健康・衛生管理のために、避難所ごとの正確な患者数、症状を把握することができる医療情報システムが提供されました。タブレット型端末を配布し、現地の医師に感染症(せき、発疹など)の症状に分けて患者数を入力してもらうことで、症状や人数、位置情報などを正確に医療機関や行政が把握可能となり、このデータを元に現地の事情にあった医薬品の供給と医師派遣を行えたのです。また、携帯電話回線を使ってデータを集約し、地図や表に加工して患者の分布がひと目でわかるようまとめることによって、約二五〇〇ヵ所の避難所ごとのデータを見ることで感染症の広がりを把握できるようにもなっています。

また、阪神・淡路大震災など過去の大震災の事例でも指摘されているように、被災のショックに対しては長期的な心のケアが必要となります。このため、首都圏の医師・保健師と避難所などをテレビ電話で接続したヘルスケア、メンタルケアの遠隔健康相談が提供されました。これは、先に紹介した遠隔健康相談サービスと同様のものです。

このほか、被災地域において学校から家庭への連絡手段が確保しづらい状況を踏まえ、学校から家庭への連絡をサポートするサービスが被災地の学校に提供されています。これは、メール、固定・携帯電話などによる音声通話、FAXにより、学校から各家庭に一斉連絡を行うことのできるサービスで、震災以前から全国の学校で従来の連絡網に代わり、迅速かつ公平に連絡事項を伝えるために利用されていたものです。

検索技術を活用した事例としては、携帯電話各社の「災害用伝言板」に登録されている情報を検索できる機能が提供されました。これは、安否を確認したい人の名前を入れると被災地域の方からの伝言を検索できる機能です。

さらに、地震発生直後から業態の異なる事業者が連携してICTを活用した新しいサービスを立ち上げ、災害情報の提供や支援物資を届けるためなどに利用されています。

多くの動画配信サイトは、震災当日からNHKや在京キー局、東北地方のテレビ局などと連携し、テレビを受信できない被災地や海外の在住者向けの災害情報提供を目的に、災害関連情報の番組をインターネット経由で同時配信しました。あるサイトでは、最終的には一三のテレビ・ラジオ局が再配信を実施し、視聴回数は延べ六八〇万回を超え、て一一カ国からアクセスがあったと言われています。三月下旬以降になると、報道や情報番組だけでなく、チャリティーを目的とした番組も増え、災害情報の提供という枠にとどまらない広がりを見せました。

震災発生後、三日目には、被災地近辺の道路の状況を公開する試みも始まりました。前日の道路の通行実績をマップ上に表示して、救援や物資運搬に役立ててもらうことが目的です。

ECサイトの多くは、被災地の支援物資のニーズと利用者の支援申し出をマッチングするサービスを提供しています。サイトによって多少の違いはありますが、まず自治体などと連携して必要となる支援物資とサイトで販売されている商品のマッチングをしてリストとして公開します。利用者はそのリストから商品を購入することによって、被災地が実際に必要としている物資を届けることができるという仕組みになっています。

これらのサービスは、いずれもベースとなるサービスがクラウドで提供されており、新たに立ち上げるにあたってのスピードや拡張が容易にできるといった特徴が最大限に発揮されたものだと言えるでしょう。

このようにクラウドやICTは、企業の競争戦略を支えるためだけのツールではありません。むしろ、公共サービスや社会システムにおいては共通化できる部分が多いなどの観点からも、クラウドを活用する利点が企業以上にあると言えます。経済の回復、震災からの復興、少子高齢化など、日本に突きつけられた課題は山のようにあります。クラウドはそれらを解決するツールのひとつとして大きな役割を果たす可能性を秘めています。もちろん企業にとっても、事業展開のスピードを速め、コスト削減を実現することで、競争力を高めることができる有用なツールであることに変わりはありません。

本章で見てきたように、すでに多くの分野にクラウドは広がり始めています。今後ますます、この動きが加速して、多くの社会的課題を解決し、新しい社会へ向けての大きな原動力になることが期待されます。
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