アメリカのトーク番組で、中国への大借金をどうすれば返せるかの問いに、6歳の子供が「中国人を皆殺しにすれば帰さなくて済む」と言った場面を流したと、在米中国人が大問題にしている。
これは、広島と長崎で二重被爆した人をジョークにしたBBC放送に対する日本中からの批難と同じだ。
下品なジョークではあるが、ジョークと理解した上で、ジョークの批判は、ジョークで返すのが、文明人の態度ではなかろうか。
異文化に対する嫌悪感はやむを得ないとしても、グローバル時代に生きて行くには、少なくとも、相手の文化から出て来る言葉であることは、理解する必要がある。
日中韓の確執も、言葉や文化が同質であるという、相互の甘えが、思慮の無い怒りにつながっている。
例えば、中国人の上下意識や、韓国人の素朴な感情が、日本人とはかなり違うと言うことを前提に、彼らの言葉を聞くべきだろう。
中韓ともに、すぐに「バカにされた」といきり立つ。さらに朝鮮の場合は、相手を罵ることが親しさの表現のような文化でもある。逆に言えば、彼らが聞き心地の良いことを言う時は、ウソと知る。
以前、南米の奥地を訪ねる番組で、森から出てきた原住民の中に一人混じった女が、人類学者の日本人に、いきなり
「お前、変なアタマ(髪)してるな、首切ったろうか?」と言ったら、他の男が全員大笑いしていた。
日本でも、大人が子供にこういう冗談を言うことがある。
初対面の大人に言うのは、彼らの視点で異邦人を見下しているのであり、同時に、ストレートな親愛の情を表している。
また、世界のどこでも、子供同士が初めて出会うと、こういう会話が交わされることがある。珍しい者と親しくなりたいからだ。
こういう悪態は、素朴さから出ている。こちらから見て、理解不能な言動の、本音や潜在意識を知れば、腹を立てることもない。
人類学の視点から考えれば、すべて興味深いのであって、対等になって腹を立てるより、どう付き合うかだけを考えればいい。
その上で、個人の生活や言動を見ながら親しくなり、本音を知れば、信頼のポイントが分かってくる。
これは、異邦人でなくても、親しいはずの家族でも同じだ。互いによく解っていると思うから、喧嘩が始まる。
相手が自分の基準で考えているはずだと思うのは、自分に対する客観性や厳しさに欠ける、甘えだ。
イスラム圏から、マホメッドに関するマンガやジョークに、テロや死刑宣告が起こるのと同様、マンガやジョークに本気で怒るのは、文明レベルの問題だ。
欧米からのこうした抗議は起こらない。それだけ視野が広いと言うことだろう。
残念ながら、日本も同じように抗議する。しかも、止める者がいない。日中韓で揉めているのにも、それなりの理由がある。日本が本当に合理的に国際法を遵守していたなら、今日のようなことは無く、中途半端な人情論で反応したことが、もつれの原因だ。
欧米には理解できない、目くそ鼻くその世界だろう。