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オタク国(3)

2011年08月29日 | 日記・エッセイ・コラム
日本の標語に「新生興国」はどうかと挙げたが、どうもインパクトが弱い。それと、NHKに「日本新生」という番組があった。
もっと良い標語がないものか、もう少し考えてみよう。

「新生」<SHINSEI>と言えば、戦後の復興の気運の中から生まれたタバコの名称だ。やはり、こういう荒廃状況では、誰でも「新生」という言葉を思いつくものらしい。当時は「新世界」という名称も好まれた。

したがって、これしかないピッタリの名称なのだが、タバコの<SHINSEI>は後に、安タバコの代名詞になった。
物不足の戦後に生まれたから、質も価格も相対的に安くなるのは当然だが、同じ大衆タバコでも明治生まれの「ゴールデンバット」には何故か安物感がない。

紙芝居のヒーロー「黄金バット」の名前の由来は知らないが、おそらく「ゴールデンバット」が影響しているのではなかろうか。作者がたばこを吸いながら思いついたとか・・・。
経緯はどうあれ、「ゴールデンバット」には、それなりのインパクトがある。

誕生が明治39年だから、日露戦争終結の翌年で、日本中が高揚感に沸いていた時代であり、いかにもそれらしい名前と言える。
しかも、意味だけではない。何よりも「響き」が豪華だ。

「しんせい」には濁音が無く、破裂音もなく、美しくピュアーだが重厚感とインパクトがない。
子供の名前に「しんいち」や「しんじ」のように「しん」を付ける親の気持ちには、無条件の愛情と喜びが溢れている。こういう名前の人は、特に母親に可愛がられたことが想像できる。(本人がどう受け止めていようと、親に縁がなかろうと)

「ゴールデンバット」は逆に、濁音と破裂音と「R」まで入っているから、極めてインパクトがあり、あくが強く、勢いがあり、強そうな響きだ。

「B」や「V」、日本語で「バ行」には高級で豪華な響きがある。
バン、ビューティフル、ビデオ、ブルーレイ、ベンツ、ブティック、ボーグ・・・
ところで、「お床入り」と言うと、かび臭くてイヤらしいイメージだが、「ベッドイン」と言うと、何か、豪華で素敵なことのような響きがある。もとより、外国語のごまかし効果もある。

戦後のアメリカ一色の時に、「新生」という日本語が使われ、日露戦争勝利に沸き立つときに「ゴールデンバット」という英語が使われた。
これは、日本人のバランス感覚の表れとみることもできるが、日露戦争に米英の助けがあったことへの、米英びいきなのかも知れない。

ずいぶん話が飛んでしまったが、
「ゴールデンバット」のように音も内容も響きが良いもので、幕末以降、最も印象に残る標語は
「尊皇攘夷」「文明開化」「富国強兵」「所得倍増」「列島改造」だが、中でも「B」の字が入るのは「文明開化」と「所得倍増」だ。
これを参考にして、「新生興国」を言い換えて、
文化立国」「文明創世」など、どうだろう。