転妻よしこ の 道楽日記
舞台パフォーマンス全般をこよなく愛する道楽者の記録です。
ブログ開始時は「転妻」でしたが現在は広島に定住しています。
 



午前中は、うちの村の宮司さんが兼務している隣村の神社の
夏祭の案内状の作成をやった。
宮司さんが共通なのと、お互い隣同士の村なのとで、
この村とうちの村は、「きょうだい分」みたいな関係だ。
我が家と、ここの総代会との関わりはそう深い訳でもないが、
神社の事務系の仕事は、父が長年、うちの村と隣の村の両方を
ひとりで引き受けてやっていたので、今は私がそれを受け継いだ。
父の前には祖父が、その前には曾祖父が、先代から引き継いでやって来た。
明治、……いや、おそらくは江戸時代から綿々と行ってきたことに、
今更「なぜ私がそれを」はないのだ。
やることになっている者が、やるべきことを、やる。問答無用だ。

うちの村にも夏祭はあるが、それは6月下旬で、いわゆる夏越の祓だ。
一方、この村の神社の夏祭は少し時期が遅くて7月上旬から中旬、
内容も、麦初穂奉献祭と夏越の祓が合体したようなものだ。
露店が並ぶ等はもともと一切なく、当日の祭典だけしかないから、
人も集まらないし、密になる心配は全くない。
世の中の多くの人が思う「お祭り」は、神輿や神楽や夜店のことだが、
それらは飽くまで「余興」であって、祭の本体ではない。
祭とは、祝詞奏上をメインとする神事のことを言うのだ。
宮司さんと総代会で話し合い、前もって、祭典がいつであるかを村民に告知し、
村内で15ほどに分かれている地区それぞれの世話人さんに
総代会から、案内状と配付用の神札を渡して、
家々をまわって初穂料を集めて戴くように、お願いをする。

案内状の文面は、昭和の頃に作成した手書きのものがあり、
父は面倒なのでそれを長年、日付だけ直しコピーして使い回していたのだが、
3年前に交替してからは、私は愛用の一太郎で美しくレイアウトして打ち直し、
季節の挨拶や、出費多端の折に御尽力下さいまして等々の御礼を付け加えて、
勝手に若干、改良してやった。
その案内状と、初穂料の集計用紙――これも私がエクセルで作成し直した――
と、必要枚数の神札とを、地区の数だけ用意して、
地区ごとの封筒に入れて準備するところまでが、私の仕事だ。
父は更にそれを、車を運転して自分で世話人さん方の家をまわって
届けていたのだが、そのやり方というのが、
「車で、だいたいこのへんじゃのぅと思うあたりまで行ったら、
たいがい、家の人が誰か近くの畑に出とるけぇ、呼んで、手渡す」
という超・原始的なものだった。

私は車を持っていないし、『このへんじゃのぅ』という土地勘も皆無だし、
世話人さんたちの顔も知らず、ましてや『家の人』なんてわかる筈がない。
父は世話人さん方のお宅の、正確な所番地など全然把握しておらず、
お名前さえも、屋号しか覚えていないものもあった(爆)。
お手上げになったので、私はこの神社の総代長さんに正直にそれを告げ、
私が案内状作成したら、配付のほうは総代長さんにお願いすることにした。
快く引き受けて下さった。有り難いことだった。すみません、無能で。

このあとは、祭当日までに、世話人さんへのお礼状を準備して、
それにつける撤饌(てっせん)となるものを人数分、用意する。
祭の日に、世話人さんたちは集めた初穂料を供えて参拝されるので、
お礼状と撤饌をそこで手渡すことになっているのだ。
この場合の撤饌は「おさがりのお菓子」等で、予算内で我が家に任されており、
父は落雁(らくがん)か砂糖の二択で、判で押したように配っていたが、
私は神社用の授与品カタログをネットで見て、
せんべいや、干支にちなんだ飴など、毎回、変えるようにしている。
世話人さん方が全く同じ顔ぶれなのだから、
祭のたびに違う授与品があったほうが、楽しいのではと思ったのだ。
今回は、御神酒飴と夏向きのティーバッグを注文してある。

ときに、こうした地区の世話人さんたちというのも、
我が家の事情と似ていて、家の役目として代々受け継がれている。
この村では彼らは「世話家(せわけ)」と呼ばれている。
そういう家に生まれた者は、一生「神社の○○地区の世話人」なのだ。
息子さんたちもそれを免れることはできない。
万が一、跡継ぎが居なくなったらどうなるのだろう、
と思っていたら、先日まさに、世話人さんの中のおひとりが亡くなられ、
動向に注目していたら、別の家が新しい世話家として就任された。
どういう経緯でその家に変わったのか、私には全くわからなかった。
質問したい気持ちはあったが、こういうのはデリケートな問題なので、
よその村のことを私が根掘り葉掘り聞くのも憚られた。
しかしともあれ、やれる人が途絶えたら、別の家に役割が移る、
ということは、わかった。
私がやらなくなったら、きっと村の誰かが選ばれて、
新しく案内状作成係に就任するのだな。ふむ。

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