転妻よしこ の 道楽日記
舞台パフォーマンス全般をこよなく愛する道楽者の記録です。
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HN「転勤族の妻よしこ」、筆名「山田亜葵」。家族は、転夫まーくん(またの名を「ツアコンころもん」)、転娘みーちゃん(1995年生まれ。首都圏在住。会社員)。
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松本和将&上里はな子 デュオ・リサイタル
クラシック音楽
/
2013年11月24日 10時34分44秒
22日に、広島流川教会で松本和将(ピアノ)と
上里はな子(ヴァイオリン)のデュオ・リサイタルを聴いた。
プログラムは、
グリーグ:ヴァイオリン・ソナタ第3番 ハ短調
バッハ:無伴奏パルティータ第2番 ニ短調『シャコンヌ』
ブラームス:間奏曲作品117
フランク:ヴァイオリン・ソナタ イ長調
アンコール
マスネ:タイスの瞑想曲
クライスラー:美しきロスマリン
全体として、私にとって絵画的なイメージが浮かぶ音楽会だった。
グリーグは、牧歌的で穏やかな光景から始まり、
日が射しても外気が冷たく、透き通っていて、
終始一貫して、屋外の自然が目の前に描かれている気がした。
『シャコンヌ』では一転して、静かな礼拝堂にひとりでいる情景が見えた。
私は常々、「祈る」というのは無言であっても実に能動的なことだ、
と感じているのだが、上里はな子さんのシャコンヌを聴いていて、
全身全霊を挙げて神との対話を試みることの厳しさ・過酷さを、強く感じた。
傍目には微動だにせずに静かに祈り続けているように見えても、
その霊的世界には激しい葛藤があり、命がけの献身があるのだ、
というような……。
後半の一曲目はピアノのソロで、ブラームスの間奏曲作品117。
これの、特に一曲目の『子守歌』を聴いていて、
私は5年くらい前に聞いたイェルク・デムスの解釈を
不意に、まざまざと思い出した。
デムスは、この子守歌はマリアがイエスを抱いて歌っているものだ、
と語っていた。
だからテンポは、母親が赤ん坊を抱いてゆったりと歩くペースだ、と。
真夜中、暗いけれども穏やかな空に、月が出ている。
若い母親は赤ん坊を抱いて子守歌を口ずさむ。ささやかな、静かな幸福。
そこにだんだん、黒い雲がかかってくる、
それは赤ん坊の運命を暗示している
(我々も、この赤ん坊がこのあとどうなるかを知っている)。
若い母は窓からそっと空を見上げ、我が子の行く末を漠然と感じて、
平凡なひとりの親としての苦悩に胸をしめつけられる。
しかし何が起ころうと、すべては神の御旨のままにと彼女は真摯に祈る。
曲の終盤、空の雲が切れて、神の恵みのまなざしのような月が出る。
神様、どうか、この子をお守り下さい……。
今回の演奏会は、全体でひとつの物語になっており、
最後のフランクのヴァイオリン・ソナタに辿り着いて、
魂の救済のかたちが示されることになった。
素朴な人間として祈り続け、惑いの中で手探りを続けた者が、
このソナタの最終章で、ついに歓喜の中、天国への道を見つける、
……というのが、物語の結末だった。
通常、松本氏の出演される演奏会では、
合間に解説を交えたトークが入ることが多いのだが、
今回はアンコールの前までは、そのような雰囲気には全くならなかった。
私も、この音楽会には言葉は要らなかったと思うし、
教会という場所柄とも相まって、ただ音だけを捧げることが
もっとも相応しかったと思っている。
アンコールでは、『タイスの瞑想曲』で癒やしを与えられ、
最後に『美しきロスマリン』で温かく包んで貰って、
私にとって、実に満たされた気持ちになることのできた演奏会だった。
場所と、演奏者と、演奏曲目が、どれもピッタリと調和した、
素晴らしい2時間だった。
松本氏、上里氏、そして企画運営ほかの皆様、
本当にありがとうございました<(_ _)>。
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