転妻よしこ の 道楽日記
舞台パフォーマンス全般をこよなく愛する道楽者の記録です。
ブログ開始時は「転妻」でしたが現在は広島に定住しています。
 



かつてない早さで、書きました(笑)。
演奏会レビュー:2012年5月4日金沢・7日東京・13日名古屋

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誰に向かって書くのか、というのは文章を書く際の出発点だが、
私の場合、自分の勝手で作った私設ファンサイトであるという前提からして、
演奏会感想文は、まずは自分のために記録を残したいから書いている。
それと同時に、公開している以上、ポゴレリチに関心を持って来て下さった方々と、
何か共有できるものがあれば……、という願望も、いつも持っている。
彼のファンである方々に、共感して頂ける箇所があれば私は幸せに思うし、
いつか演奏会に行ってみたい、とお考えになっている方々に、
何か、きっかけになるものを提供できるなら、これ以上嬉しいことはない。

ひとつだけ言えるのは、ポゴレリチの演奏のどこが良いのか全然理解できないとか、
彼のしていることに同意できないと仰る方々(もっともなご見解だと思っている)
を、説得したくて書いているのではない、ということだ。
『芸術に「わかる・わからない」などは無く、「好きか・嫌いか」だけだ。
嫌いだと思ったら、貴方はそれ以上、我慢してまで聴く必要は無い』
と岩城宏之氏が以前仰ったのだが、ポゴレリチの音楽についてもそれは同様だ。
ある演奏や作品が、いかに見事であるか、或いは、いかに唾棄すべきものであるか、
について、既に意見を持っている相手を、言葉で言い負かそうとするのは不毛だ。
彼の音楽と、感性の触れ合う瞬間を持つ人も持たない人もあるのは当然で、
そのこと自体に優劣は無いし、どちらがより幸福とか不幸とかいう問題でもないと思う。


きょう5月29日は、実は私にとってはある種の「記念日」だ。
1988年5月29日、私は念願叶って、初めてポゴレリチの実演に接したのだ。
83年の来日を逃していた私にとって、5年も待ってようやく迎えた日だった。
場所は神奈川県民ホール。明るい陽射しの、昼の公演だった。
ポゴレリチ三度目の来日公演の初日で、当時彼はまだ29歳だった。
今は亡き、U女史がチケットを取って下さって、
私は彼女と並んでポゴレリチのリサイタルを聴いた。
聴いたものの感想を書き留めておく、ということを私はU女史から学んだ。
同人誌に誘って下さり、書くようにと励まして下さったのも彼女だった。
もはや、24年前のことだ。
皆、若かった。
今となっては、何もかも、夢の中の出来事だったかのように思える。

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