元町の夕暮れ ~万年筆店店主のブログ~

Pen and message.店主吉宗史博の日常のこと。思ったことなど。

オリジナルインク

2016-04-12 | モノについて

当店は創業時よりオリジナルインクを扱ってきました。

他店のように色数は多くないけれど、実用も伴っていながら、味わい深い、良い色が揃っていると自慢に思っている。

オリジナルインクの色、名前、ラベル、扱い方でその店のセンスや考え方がよく表れると以前から思っていましたが、去年、今年の状況はさらにそれぞれの店の方針が分かれたのではないかと思います。

日本中のオリジナルインクが爆買いされて品薄になるという、今まで考えられなかった状況のことです。

インク一瓶買ってもなかなか無くならないねというのが、お客様とのお約束のやり取りでしたが、それが嘘のようにまるで何かの塗料に使っているのかと思うほどインクが売れていく。全色各10個などという売れ方をして、個数制限を設けないと一日もたない。

買っていただけるのは本当に有り難いことだし、買っていただいたモノに対して、その後をその人がそれをどうしようがその人の勝手で、そこにとやかく言うのは私の流儀ではないけれど、そうやって色もちゃんと見ずにインクだけを大量に買って行く行為を私は美しいと思えない。

その行為を私が日本人だから美しくないと思うのかもしれない。

私は商売人である以上、インクも買ってもらいたし、万年筆も買ってもらいたいけれど、それらのモノを買ってもらいながら、どんな行為や心の持ち方が美しいかを示したいと思ってやってきました。

それは日本的な美しさであって、海外の違う文化を持つ人には通じないのかもしれないけれど、いくらたくさんの海外のお客様が来られてもそこを譲るつもりはない。

でも今のオリジナルインクの状況はただのブームであって、近い将来終わりが来ると思っています。お店はオリジナルインクを売上の柱にしたり、メインの商材にするのはとても危険だと思っています。