先日、夕方のラッシュに程近い時間帯に、JR中央線に乗った。
ターミナル駅で乗り込んだので、席が空いていて座ることが出来た。
立っている人の数も、ほどほどで前の座席に座っている人がところどころ遮られるが、正面から一座席分右に寄った男性をはっきりと見ることが出来た。
年齢は二十代半ばだろうか。いい形の鼻は顔の真ん中でしっかりと存在を示しいる。目は少々細めだったが、細すぎるというほどではない。口の形もまぁまぁよし。髪型は自然なウェーブがかかっていて、短くも長くもなくカットされていて顔立ちに合っていた。
服装はといえば、真っ白なシャツのボタンを鳩尾から3、4センチ上くらいのところまで開けている。
実は、最初に目に入ったのは、胸元だった。
細い銀のネックレスを首元につけているが、余り目立たない。
靴とカバンがグレー系で、おしゃれなデザインだった。二つが揃っているのではないが、この人の好みなんだろうなぁ~、と思えるステッチが両方に入っている。
紙バサミから書類を出して読んでいる姿は、映画のワンシーンとして使えそうだ、なんて思っていると、誰かに見られている気配を感じたのか、こちらに視線を投げてきた。
慌てた私は、彼の首当りからスーッと視線を上方にずらし、何気なく窓ガラスに目を移した。
乗っていた電車は、最近といっても去年のことだが、新しくなった車両だった。
窓は大きく広い。以前の車両とは違って、窓が開いているのを見たことがないので、開けられない窓かと心配していた。
ところがガラスに赤い下向きの太めの矢印がついていて‘開く’という文字が目に入った。
「この窓は開けることが出来るのだ」
はじめて気づいた。
はじめて気づいたことはそれだけでない。
更に目を左に移動すると、‘UVカットガラス’と書かれたダークグレーの文字を読み取ることが出来た。
「こんなところに、UVカットが必要なのかなぁ~。もしかしてこのガラスは、お高いんじゃないの」
オバサン的発想をしている自分に気づいて、なんだか恥ずかしかった。
恥ずかしいことでもないのに、そんな心の動きを前に座っている若い男性に読み取られたら、なんだか恥ずかしいと思える自分が重ねて恥ずかしかった。
ただそれだけのことだけれど、新車両の電車に乗りつつ、思いもかけない心の模様を楽しんでしまった。
高架上のホームに降り立つと、初夏を運ぶ風がふわりとからだを包んでくれた。
やっぱりシャツのボタンはもうひとつ上までとめて欲しい、のだ。
ターミナル駅で乗り込んだので、席が空いていて座ることが出来た。
立っている人の数も、ほどほどで前の座席に座っている人がところどころ遮られるが、正面から一座席分右に寄った男性をはっきりと見ることが出来た。
年齢は二十代半ばだろうか。いい形の鼻は顔の真ん中でしっかりと存在を示しいる。目は少々細めだったが、細すぎるというほどではない。口の形もまぁまぁよし。髪型は自然なウェーブがかかっていて、短くも長くもなくカットされていて顔立ちに合っていた。
服装はといえば、真っ白なシャツのボタンを鳩尾から3、4センチ上くらいのところまで開けている。
実は、最初に目に入ったのは、胸元だった。
細い銀のネックレスを首元につけているが、余り目立たない。
靴とカバンがグレー系で、おしゃれなデザインだった。二つが揃っているのではないが、この人の好みなんだろうなぁ~、と思えるステッチが両方に入っている。
紙バサミから書類を出して読んでいる姿は、映画のワンシーンとして使えそうだ、なんて思っていると、誰かに見られている気配を感じたのか、こちらに視線を投げてきた。
慌てた私は、彼の首当りからスーッと視線を上方にずらし、何気なく窓ガラスに目を移した。
乗っていた電車は、最近といっても去年のことだが、新しくなった車両だった。
窓は大きく広い。以前の車両とは違って、窓が開いているのを見たことがないので、開けられない窓かと心配していた。
ところがガラスに赤い下向きの太めの矢印がついていて‘開く’という文字が目に入った。
「この窓は開けることが出来るのだ」
はじめて気づいた。
はじめて気づいたことはそれだけでない。
更に目を左に移動すると、‘UVカットガラス’と書かれたダークグレーの文字を読み取ることが出来た。
「こんなところに、UVカットが必要なのかなぁ~。もしかしてこのガラスは、お高いんじゃないの」
オバサン的発想をしている自分に気づいて、なんだか恥ずかしかった。
恥ずかしいことでもないのに、そんな心の動きを前に座っている若い男性に読み取られたら、なんだか恥ずかしいと思える自分が重ねて恥ずかしかった。
ただそれだけのことだけれど、新車両の電車に乗りつつ、思いもかけない心の模様を楽しんでしまった。
高架上のホームに降り立つと、初夏を運ぶ風がふわりとからだを包んでくれた。
やっぱりシャツのボタンはもうひとつ上までとめて欲しい、のだ。