羽鳥操の日々あれこれ

「からだはいちばん身近な自然」ほんとうにそうなの?自然さと文化のはざ間で何が起こっているのか、語り合ってみたい。

春……修士論文

2008年03月08日 08時02分10秒 | Weblog
 一週間は、あっという間に過ぎていく。
 一カ月も、一年も、‘日めくりカレンダー’をめくるように、過ぎていく昨今だ。
 先日もこのブログに書いたが、野口三千三先生が亡くなって満十年を迎える。
 そして朝日カルチャーセンターに野口体操常設講座が開講されて、没後を入れると三十年になる。

 その三十年目に貴重な論文が生まれた。
 筑波大学修士課程でスポーツ科学専攻の小林桂さんの論文が通って、先週の土曜日に挨拶かたがた製本された論文をお持ちくださった。

『野口体操の形成過程に関する一考察』平成十九年度 修士論文。副題は「野口三千三の体操探求の足跡を中心に」というテーマである。

 今までに私立・国立をあわせて何人かの院生の方から相談を受けたことがあったが、真正面からしっかりと取り上げられた論文は、初めてである。
 アカデミックな場で、まるごと全部野口体操に関する論文は、皆無に近かったわけだから、風穴を開けたことの意味と意義は非常に大きいと申し上げたい。
 若いエネルギーが、光の束が一点に集まるように正に‘収束’した論文である。
 ご指導に当たられた遠藤卓郎教授には、心からお礼を申し上げたい。

 野口体操というひとつの文化を、新しい価値観を、根付かせることの難しさと格闘した二十年だったと、私自身も来し方を振り返っている。
 野口三千三先生が亡くなる十年前に手探り始めた「野口三千三授業記録の会」の活動から、没後の十年間、区切りの今年にこうした形でも実が結んだことは、これまで支えてくださった多くの方々がいてくださったから。

 この論文を持ち帰って、胸に抱きしめ、「小林さん、よくやった!」と込み上げるものがあった。新しく4月4日に発売になる拙著といっしょに、命日は過ぎてしまうのだけれど、お参りに出かけたいと思っている。

 謝辞の最初に書いてくださった。
『野口体操を始めてまだ一年ちょっとの私が野口体操のことについて論文を書くという身分不相応の暴挙に出たの対し、こころよく資料提供していただいた羽鳥先生。ありがとうございます。実感を大切にする野口体操。朝日カルチャーセンターの野口体操なしに、この論文はありえませんでした』
 よくぞ言ってくださった。
 しかし、彼女の人柄だからこそ、資料提供に逡巡う気持ちが起こらなかったのだと思っている。

 何が大事か、それはそのことに携わる人の「人柄」なのだと、ちょっと偉そうに言わせていただいている。こればかりは教えられるものではないのだから。

 今日の朝日カルチャーのレッスンで、改めてこの論文を紹介したいとおもっていたので、今日までブログに書くことを我慢していた。
 没後十年の春は、上野の桜がまぶしいにちがいない。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする