一昨日、そして昨日と、二日にわたって降り続いた春雨のしっとりとした空気が、今朝もまだ残っていた。
夜明け前、しかし、白みかけた空間に、花梨の新芽が緑というよりほの白くいくつも浮かんでいる。まだ闇にまぎれている黒い枝先だったり中ほどだったり……。
それらは薔薇の花の形状に、ほっこりと開きかけているのだ。
しばらく前に気がついていたのだが、今朝ほど整った形を見たのは初めてだった。
指先で触れてみる。
柔らかな今年生まれの葉は、手に吸い付くように慕ってくれる、と思うのは人間の勝手な思いように過ぎない。とわかっていても自分の側に引き寄せて、安心している。
玄関の脇を裏手に回ると、塀の脇に植えてある木瓜が蕾を蓄えていた。一つ二つ三つと、数えるほどだが、こちらも新芽に寄り添って仄かに赤い蕾からは春の空気を読み取ろうとしているかのような気配すら伝わってくる。
向きを換えてポストに投げ入れられた朝刊を手に取る。そこから立ち上る新鮮な匂いが、しっかりと目覚めをからだに引き寄せてくれた。
3月もあと十日。
新学期までにやらなければならないことを、端から片付けるしかないのかも。
野口先生の祥月命日まではちょうど一週間だ。
夜明け前、しかし、白みかけた空間に、花梨の新芽が緑というよりほの白くいくつも浮かんでいる。まだ闇にまぎれている黒い枝先だったり中ほどだったり……。
それらは薔薇の花の形状に、ほっこりと開きかけているのだ。
しばらく前に気がついていたのだが、今朝ほど整った形を見たのは初めてだった。
指先で触れてみる。
柔らかな今年生まれの葉は、手に吸い付くように慕ってくれる、と思うのは人間の勝手な思いように過ぎない。とわかっていても自分の側に引き寄せて、安心している。
玄関の脇を裏手に回ると、塀の脇に植えてある木瓜が蕾を蓄えていた。一つ二つ三つと、数えるほどだが、こちらも新芽に寄り添って仄かに赤い蕾からは春の空気を読み取ろうとしているかのような気配すら伝わってくる。
向きを換えてポストに投げ入れられた朝刊を手に取る。そこから立ち上る新鮮な匂いが、しっかりと目覚めをからだに引き寄せてくれた。
3月もあと十日。
新学期までにやらなければならないことを、端から片付けるしかないのかも。
野口先生の祥月命日まではちょうど一週間だ。