冬の大和路は、深々と寒さが身に凍みる。
夏の大和路は、じりじりと暑さが身に堪える。
大津皇子の屍(みかばね)を葛城の二上山に移し葬(はふ)りし時、大来皇女の哀傷して作りませる歌二種
現身(うつそみ)の人なる吾や明日よりは
二上山を兄弟(いろせ)と吾見む
磯の上に生ふる馬酔木を手折らめど
見すべき君がありといわなくに
山は神々のおわします処。
鎮魂(たましずめ)の歌は、後々に語り継がれていく。
それだけでなく古人が、歌に読み込んだ情景を通して、大和を見る日本人が存在する。
この写真に写っているガラス瓶の中身は、鉱物学の堀秀道さんからいただいた二上山の砂。
「黒い方は‘鉄バン ザクロ石’、白い方には‘サファイア’の欠片が入っているかもしれません」
渡されたときの添え言葉だった。
堀先生は、何回となく二上山をお訪ねなっておられるという。
「砂に貴石や宝石が混じっていても不思議はありません」
驚きの表情でご尊顔を拝する私に、たしなめるようにおっしゃった。
凡人としては、宝石や貴石が交じり合った砂に遭遇するとその驚きは深い。
その思いは科学ではない。人の情なのだ。
そして、その驚きは、さらに人の業にいる。
だからこそ神が求められるのだ。
(覆された宝石)のような朝
何人かが誰かとさゝやく
それは神の誕生の日
西脇順三郎のこの三行詩は、「キーツか誰かの本歌取りだということが(覆された宝石)という表記から読み取れる」のだそうだ。
しかし、誤解と曲解と偏見と独断で、二上山に眠る王侯貴顕への挽歌・鎮魂歌ととって、悦に入っている私。
折口さんも真っ青な石から読み取るファンタジーかも。
くれぐれもお許しをいただきたく……。
夏の大和路は、じりじりと暑さが身に堪える。
大津皇子の屍(みかばね)を葛城の二上山に移し葬(はふ)りし時、大来皇女の哀傷して作りませる歌二種
現身(うつそみ)の人なる吾や明日よりは
二上山を兄弟(いろせ)と吾見む
磯の上に生ふる馬酔木を手折らめど
見すべき君がありといわなくに
山は神々のおわします処。
鎮魂(たましずめ)の歌は、後々に語り継がれていく。
それだけでなく古人が、歌に読み込んだ情景を通して、大和を見る日本人が存在する。
この写真に写っているガラス瓶の中身は、鉱物学の堀秀道さんからいただいた二上山の砂。
「黒い方は‘鉄バン ザクロ石’、白い方には‘サファイア’の欠片が入っているかもしれません」
渡されたときの添え言葉だった。
堀先生は、何回となく二上山をお訪ねなっておられるという。
「砂に貴石や宝石が混じっていても不思議はありません」
驚きの表情でご尊顔を拝する私に、たしなめるようにおっしゃった。
凡人としては、宝石や貴石が交じり合った砂に遭遇するとその驚きは深い。
その思いは科学ではない。人の情なのだ。
そして、その驚きは、さらに人の業にいる。
だからこそ神が求められるのだ。
(覆された宝石)のような朝
何人かが誰かとさゝやく
それは神の誕生の日
西脇順三郎のこの三行詩は、「キーツか誰かの本歌取りだということが(覆された宝石)という表記から読み取れる」のだそうだ。
しかし、誤解と曲解と偏見と独断で、二上山に眠る王侯貴顕への挽歌・鎮魂歌ととって、悦に入っている私。
折口さんも真っ青な石から読み取るファンタジーかも。
くれぐれもお許しをいただきたく……。