羽鳥操の日々あれこれ

「からだはいちばん身近な自然」ほんとうにそうなの?自然さと文化のはざ間で何が起こっているのか、語り合ってみたい。

想い

2008年01月22日 19時33分37秒 | Weblog
 夕方、買い物に行くために、温まった部屋から出た。
 冷たい外気が首筋を直撃する。思わずコートの襟を立てて、手袋をした手で襟元をおさえた。
 しかし、ふと、忍び寄った冷気は、私の心の中にまですべり込んできた。

 一つは残っているものの、シラバスもほぼ完成形で書き上げた。
 新刊本の写真も選び出した。書名については気にかかるが、すでに私がする仕事は、大きな山を越えている。

「だからかしら?」
 呟く。
「夏休み以降から今日までの時間が、急に遠くへ去っていく」
 きっと幻覚。

   ******

「羽鳥先生、ほら、見てください。スタジオに入ったときに撮った写真です」
 13日、撮影を終了した時に、誰だったのか記憶は定かではないけれど、モデルを引き受けてくださった一人が、つかつかと歩み寄って、一枚の写真をデジカメのまま差し出してくれた。
「こんなに時間が経過すると、もの凄く懐かしいような、昔の思い出のような一枚に見えません」
 総勢9名が、スタジオ内に籠もって、濃密な7時間を過ごした。
 確かに、写真を見せられて、朝スタジオ入りしたその現実が薄らいでいた。

   ******
 
 今日は、この約半年間が、幻のように思われて仕方なかった。
 猛暑だった夏からそれを引きずった秋、でも晩秋は結構寒くて、年末は比較的過ごしよかった。そして寒の入りから大寒にかけて寒さが急に本格化した。
 この季節の移ろいのなかで過ごした実感が、自分のなかで溶け出してしまった。
「私は、何をしてきたのだろう」
 そう、感じた瞬間。
 映画宣伝用にテレビから流れていたマリア・カラスのオペラアリアが、耳の奥に聞こえてきた。
 東京のステージに、シフォンのイブニングドレスの裾と日本の振袖を思わせる長い袖を翻して現れたカラスの姿。
 ドレスの真紅が、歌われた恋の哀しみを一層深くさせる風情だったなぁ~、と。
 いや、いや、あれはカルメンだったかもしれない。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする