羽鳥操の日々あれこれ

「からだはいちばん身近な自然」ほんとうにそうなの?自然さと文化のはざ間で何が起こっているのか、語り合ってみたい。

都庁

2006年02月28日 17時11分01秒 | Weblog
 火曜日のレッスンは、東京都庁が目の前にそびえている風景のなかで行っている。
 レッスンもおわりに近づき、「おへそのまたたき」をやる段になった。
 そこで、私も床に仰向けになった。
 ふと、何気なく視線を窓の外へ投げた瞬間、威容を誇る都庁の建物が、ニョキッと姿を現した。
 
 このレッスンの部屋は4階にある。目に入る都庁の建物の階数は、何階なのかわからない。しかし、立った位置からではなく、仰向け姿勢で見上げた建物の高さに思わずビックリした。
 ビルとビルの距離は、建物の中で見ると、異常にちかく感じる。実際は、かなりの距離はなれて建っているのだが。

 目前に迫る建物の修理費が1000億かかるという記事の文字が写真で撮られたように思い出された。
 デザイン重視が裏目に出て、まだ15年という歳月しかたっていないのに、不都合があらゆるところで生じているという記事だった。

 一瞬よぎったことをかき消して、そのときは、体操のレッスンを終えた。
 それから、以前、網町の三井倶楽部に行ったときのことを思い出してしまった。
 ここは、敗戦後、GHQが財閥解体を行ったとき、会談に使われた曰くつきの建物である。
 日本の近代化を象徴する見事な洋館建である。
 庭はフランス式庭園で、その庭園から地続きの坂に、地形を生かした日本庭園に導かれる。回遊式庭園だ。
 そして今現在、建物の内部は、建築された当時のままを保ってあり、壁にかけられたタペストリーから始まって椅子や絨緞にいたるまで、昔のままを再現している。
 重厚な建築物は、歴史をしっかりと後世に伝えている。

 明治以降私たち日本人が、それまでの文化や文明の衣を脱ぎ捨てて、裸一貫、欧化・近代化へとまっしぐらに突き進んだ、ある一つの証拠がこの建物である。

 さて、バブルの申し子、都庁の建物は、何を伝えるのだろうか。
 首都・東京の建築を代表する「建築のティラノサウルス」は、肉食獣のように膨大なお金を食べつくすことになりそうだ。

 因みに有楽町にあった都庁の建物も同じ建築家の設計によるという。
 現在の建物に比べれば、のっぺりとしたごく普通のビルだった。しかし、あの建物が建ったときには、やはり威容を誇っていたことを思い出す。
 
 蛇足だが、すでに取り壊されている都庁の建物テープカットは、美しい宮妃がなさった。正確ではないが、昭和31年ころだろうか。
 そのとき七五三に来た振袖に黒地に古典柄の帯をしめて、テープの片方を持っている私の姿が写っている写真が残っている。

 レッスンが終わって住友三角ビル側に立ち、思わず後ろを振り返りながら、脈絡なくさまざまなことを思い出した。
 
 風が冷たい二月最後の日のお昼だった。
コメント
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