羽鳥操の日々あれこれ

「からだはいちばん身近な自然」ほんとうにそうなの?自然さと文化のはざ間で何が起こっているのか、語り合ってみたい。

立春の卵

2006年02月04日 11時47分11秒 | Weblog
「立春に卵が立つ」という言い伝えは、「中国の説話」という説があるが、ほんとうだろうか。

 さて、野口三千三先生は、卵を立てることで逆立ちにイメージを膨らませておられた。連日、練習を繰り返しているときには、鏡の上にさっと立てられるところまでいったという。
 そのことを朝日新聞の「天声人語」に書かれたのは、辰濃和男さんだった。文章の神様といわれる方で、13年間「天声人語」を書き続けられた。

 昼食をご相伴させていただいたことがあった。
「毎日書かれて、13年、大変ですわね。ところで資料集めはどうなさるんですか」
 初歩的な質問を投げかけた。
「助手の人がついてくれます。それでずいぶんと助かるんですよ」

 なるほど。そうだろうなぁ~。そうでなくちゃ、書けるはずはないと、腑に落ちた。
 で、これには事後話がある。
 一昨年、「アエラ」の取材を受けた。そのときの記者の方が、当時、辰濃さんの助手だったとか。
 取材が終わって、雑談をしているときに、彼が、新聞社の辰濃さんのデスク上に卵を立てて見せたことを知った。
「僕だったんです。あのニュースソースは。確か、池袋だったかな。野口先生の講演を、聞いたんです」

 それがきっかけで「卵が立つ」実験を自分でもしてみて、辰濃さんに話をされたとか。それから20数年たって、私の取材に来てくださった当時の助手さんは、立派なジャーナリストにおなりだった

 最近では、コマーシャルに「卵が立つ」姿が、使われるようになった。
 立春の卵は、立春でなくてもそのもの自体の重さのバランスで立つ、ということを多くの人が実感するようになってくれた。

 「立春に卵が立つ」話を最初に書かれた中谷宇吉郎氏も、逆立ちはからだの重さのバランスで立つことを実験・証明された野口先生も、今日は、ほくそえんでおられることだろう。
 
コメント (1)
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