羽鳥操の日々あれこれ

「からだはいちばん身近な自然」ほんとうにそうなの?自然さと文化のはざ間で何が起こっているのか、語り合ってみたい。

透かされる雲

2005年10月12日 08時10分57秒 | Weblog
 朝、目覚めてカーテンを開ける。
 窓の向うに見渡す限り海と空が見える。
 そんな家に住みたくて、引越しをした人がいる。

「なるほど。気持ちはわかるなぁ」
 10日の朝、いつもの通り、5時30分には起き上がった。
 自宅では、窓を開け、新聞を取りにいって、ざっと目を通す。
 6時すこし前から味噌汁をつくり始める。
 冷蔵庫の中から夕飯の残り物や、朝食用の食べ物を見つけ出し、簡単な調理をして、朝ごはんを食べるのは、6時すこしまわったころ。
 それが私の一日の始まりである。
 
 ところが高槻では、何もすることはない。
 仕方なしに、枕もとにある音楽が聴けるボタンをまわす。
 夕べから聴いているのは、“名曲”や“イージーリスニング”チャンネル。
 チャンネルを交互に替える。
 そして、できるだけ音は絞っておく。BGMとしてご機嫌な状況を作り出すためだ。
 
 それから、枕をクッション代わりにして、ベッドの上で新幹線のなからの続きを読み始めた。
 
 しばらくして本から顔を上げると、太陽光線が遠慮会釈なく目のなかに飛び込んできた。
「おぉ~、この部屋は南東向きだったのか」
 心が膨張する。いや、からだが解かれた感じだ。
 空が見える。雲も浮かんでいる。朝日を斜めから浴びて、透かされる雲の形が僅かな時間で崩れていく。
 たかだか四階でもこの空間が広がってくれるのだから、10階建てのマンションや、高台の家はきっと気持ちがいいのだろう、と想像する。
 
 こんな気持ちよい朝を過すのは、久しぶりだ。
「たまだから、有り難いのよ」と、誰かがささやくのが聞こえた。
「はい。。はい。。。。。。。。」
 再び、本の活字に、目を落とす。
「これだ。今日のテーマはこれにしよう。せっかく鞭を持ってきたのだから」
 付箋を貼って、線を引き、行間にメモを入れた。
 講習会のイントロの言葉は、これにしよう。声にしてみる。
「ばっちりだ!」
 時計を見ると7時をすこし廻っていた。

 もう一度、空を見る。
「海の見える家に引っ越されたのは、フランス文学者の内田樹さん。ちょっと、うらやましいわ~」
 そんな気持ちを抱いてエレベーターで、一階へ降りていく。
 
 カフェレストランには、誰もいない。一番乗りである。
 バイキングの皿に、最初に箸を入れた。
 なんだかちょっと緊張したたったひとりでの朝食だった。
コメント
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