萬蔵庵―“知的アスリート”を目指すも挫折多き日々―

野球、自転車の旅、山、酒、健康法などを徒然に記載

奥州の歴史を知る!「炎立つ」

2009年03月05日 | おすすめモノ
炎立つ〈壱〉北の埋み火 (講談社文庫)
高橋 克彦
講談社

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昨年7月に仕事で仙台赴任以来、東北の歴史に興味を持ち始めた。中学や高校で習ってはいたが、小生の頭の中の東北史は極めて漠然としたもので、ただ断片的に“藤原三代”とか“義経終焉の地”、“伊達政宗”、もっと下って“奥の細道”“百虎隊”。など、TVでドラマ化される史実を繋がり無く知るにとどまっていた。

仙台に赴任して多くの東北の方にお話を聞いたり、地域の話を聞くに及んで、上のような程度の認識ではいささか心もとないと思い、東北の歴史を知ろうと一念発起。ただ、難しい本を読んでる暇はないので、面白い小説はないかと、探し当てたのが高橋克彦氏の著作である。数多くの日本の文学賞を総ナメしている著者の名前は存じ上げていたが、不勉強にもいまだ、読んだことはなかった。

今回紹介する「炎立つ」は講談社文庫から全五巻で出ている。1990年代にNHK大河ドラマでも取りあげられたので、その名を知っている人は多いと思う。この物語は西暦で言うなら、1040年頃から1189年までの約150年間。日本史でいえば、平安末期から鎌倉勃興の時代にあたる。主人公は“奥州藤原氏”。学校で習った“藤原三代”に前後一代づつ付け加えた“藤原五代”の物語である。

特に、藤原三代の初代清衡の父藤原経清(つねきよ)にスポットが当てられている。この主人公の生き様を通して、陸奥の一大勢力であった安倍一族と内裏(朝廷)との対立、“安倍”を征する為に派遣された“源氏”との戦いが、描かれている。

小生としてはうろ覚えの歴史“前九年・後三年の役”や頼朝や義経の曽祖父にあたる“八幡太郎義家”の活躍などが、ドラマチックにしかも分かりやすく、描かれている。

やがて、紆余曲折の末(読んでいない人の為に、詳細は省く)経清の子、清丸が藤原清衡となって、奥州藤原氏の繁栄の礎を気づくが、奥州の平和も束の間。経清から数えて五代目にあたる泰衡の時代に再び平泉は戦火に巻き込まれる。源義経を匿った罪を問われ、頼朝によって滅ぼされてしまうのだ。

一貫して“陸奥”からみた歴史観であるところが新鮮で面白かった。また、“点”としてしてしか知らなかった歴史や人物を“線”で繋げてくれた。亘理(わたり)、名取、多賀城など小生が住む仙台近郊の地名も出てくるし、北上川(当時は日高見川といったらしい)沿いの安倍一族の砦や、平泉の歴史にも改めて興味をもった。義家ではないが、春が来て雪が溶けたら、それらの地に繰り出してみたい。

“陸奥”に興味をお持ちの方は是非。また、平泉や源氏の成り立ち、貴族政治の終焉などに興味をお持ちの方にもおすすめ。

ますます、“陸奥”が好きになってしまう一冊です。
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