まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

クジラの町・太地町へ

2021年09月07日 | 西国三十三所

熊野三山から少し足を延ばして太地町に到着。立ち寄った「道の駅たいじ」でランチタイムギリギリに間に合い、お目当てのクジラ料理をいただくとする。

定食で選んだのは、クジラ料理定番の竜田揚げ。「最後なんでちょっとおまけしときます」と、ボリュームもたっぷりである。クジラ料理・・・私の近所のスーパーにもたまにクジラ肉が並び、夕食のおかずで刺身やステーキにして食べることがあるのだが、竜田揚げは家庭の味という感じがしておいしくいただける。

そしてもう一品、初めて口にするのがイルカである。それも造りで。

クジラについては食べる機会は少ないかもしれないが、上記の料理や、大和煮の缶詰などが出回っており、まだ食べ物として広く認知されるところだが(ここでは捕鯨の賛成・反対についてはおいておく)、イルカと聞くと「えっ?」という方も多いのではないかと思う。イルカは水族館でショーを披露してくれるものだし、「イルカに乗った少年」という歌にあるように愛すべき動物として描かれるもので、要は食べるものではないということ。

ただ、太地町をはじめとした紀南地方は山が多く耕作地が乏しいため、古くから沿岸部に来遊するクジラやイルカを獲って食料として来たのも事実で、今も郷土料理として残っている。獲る量や、上記の感情論もあって他の地域には出回ることがほとんどないのだろう。

出されたのは薄くスライスされたもの。普段は冷凍保存で、それを解凍したようだ。味は・・・クジラとほとんど変わらないかな。まあ、元々同じ種類の動物だし。ただちょっと臭みはあるかな。

今回は造りでいただいたが、イルカは他には味噌煮、焼き肉、天日干しにしたタレなどの食べ方が行われているそうで、和歌山の他には静岡、東北の一部で食べられるそうだ。

売店コーナーものぞく。冷凍庫にクジラ肉のあれこれが並ぶのが地元らしいが、この先も旅が続くので買って帰ることができないのが残念だ。常温で持ち帰れる加工食品をいくつか購入して土産物とする。

クジラ、イルカといただいて満足し、これからくじらの博物館に向かう。穏やかな森浦湾の景色を見ながら進む。

手前にある「くじら浜公園」。クジラのしっぽのモニュメントがあり、その奥には捕鯨船が保存されている。第1京丸といい、1971年に建造され、北洋、南氷洋の捕鯨に従事した後、太地町に寄贈された。

くじらの博物館は1969年開館というからもう50年以上経つ。そのためか建物の外部・内部も古さを感じさせるのだが、ここまで長く続いているのも博物館の展示品の価値や、ショーや体験などでクジラやイルカと触れ合うことができる魅力のおかげだろう。捕鯨が衰退しようとしていた時、当時の町長が太地町全体を「海洋レジャー都市」に変貌させるとして、その中心として建てた博物館だが、50年経過した今、その構想のいくらかは実現していると言っていいだろう。

館内は3階建てで、吹き抜け部分にはクジラの実物大骨格標本がお出迎え。実際にこの博物館で飼育していたシャチの骨もある。また、太地の古式捕鯨のジオラマで捕鯨の歴史を紹介している。

また、クジラ、イルカの模型がある。こちらは生きている時の姿と、反転させて骨格の姿とを対比して見ることができる。

吹き抜けの上部にはセミクジラの実物大模型と、それを獲ろうとする漁師たち。

クジラの体のつくりや生態についてはまだまだ謎が多いとされているそうだが、この博物館ではさまざまな標本により紹介されている。クジラには大きく二つの系統があり、ヒゲクジラ、ハクジラに分かれる。餌の種類も違うようだ。

そして、人とクジラがどのように関わって来たか、主に捕鯨の道具を中心に紹介する。

こうして現物を見るのが一番だが、くじらの博物館ではデジタルミュージアムも設けている。特に古式捕鯨の様子を描いた絵巻物は、パソコン等で拡大しながら鑑賞することができるので面白い。クジラを追い込む時の威勢のよさ、また浜に揚がった時の人々の活気が伝わってくる。

展示を見ていると、イルカショーの案内がある。入館料で見物できるというので行ってみる。先ほどイルカの造りを食べたということは置いといて・・。

3つの水槽には7頭のイルカがいるようで、所狭しと泳いでいる。時折呼吸のために顔を出したり。

ショーの時間となり、インストラクター2人が登場する。中央の水槽にいる3頭はカマイルカ。背びれが鎌の形に似ていることからその名がついたそうだ。そうした体の特徴などを、イルカ自らが演技して紹介する。

そしてチームプレーやダイナミックなジャンプの数々を披露する。これには思わずうなる。こうした動物のショーをテレビなどで見ることもあるが、どうやって芸を仕込むのか不思議に思う。それだけイルカが賢い動物ということだろうが。

最後は、インストラクターが誤って餌の入ったバケツを倒して、そこにサーッとトンビがやって来てかっさらうという一幕もあったが、ショーは無事終了。イルカもお疲れさんである。

ちょっと外を歩く。現在の地球上でもっとも大きな生物であるシロナガスクジラの骨格標本の先には、海の入り江を利用したクジラショーのプールがある。こちらはゴンドウクジラのショーが行われるそうで、3頭のクジラが泳いでいる。この日の出番は終わった後ということで、のんびりくつろいでいるように見える。

これで博物館を後にするが、もう少し太地を回ることにする。以前訪ねた落合博満野球記念館は改装工事のため休館中ということで、その先の梶取崎(かんどりざき)に向かうことにする。

太地の港を過ぎ、高台の住宅地を抜ける。その先に梶取崎である。駐車場にクルマを停めて、芝生広場を行くと灯台に出る。

梶取崎は古くから海上交通の要所で、熊野灘を行く船がこの岬を目標として梶を取ったことからその名がついた。江戸時代には見張り台があり、クジラが来ると狼煙を上げて港に知らせていたという。今は狼煙に代わって灯台が海上交通の安全を守る役割をしている。

寺社参りだけでなく、こうした雄大な黒潮の景色を眺めることができてよかった。

そろそろ、新宮に戻ることにする。せっかく紀南まで来たのだから勝浦などの温泉に入ろうかと思ったが、レンタカーの返却時間が18時までとなっていて、もうこのまま向かうことにする。帰りは国道42号線の下道を通り、17時過ぎに新宮駅前に到着する。「暑かったでしょう」と出迎えられる。確かに暑く、汗もたくさんかいたが、川や滝、海などの涼しいスポットにも出会えて、夏の思い出の一つになった。

さてこの日の宿泊は、新宮駅から徒歩5分ほど、市役所に近い新宮ユーアイホテルである。新宮はそれほど宿泊施設が多くない町ということもあり、「WEST EXPRESS銀河」のツアーで新宮宿泊を選択する場合は自動的にこのホテルとなる。

だいぶ昔に新宮の町中のホテルに泊まったことがあるが、どこのホテルだったかなと思う。駅からの距離感でいえばちょうどこのユーアイホテルだったかな・・。

時刻は18時前。さて今夜はどうしようか・・・。

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