まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

「WEST EXPRESS銀河」紀南コースに乗る~かつての新宮夜行を彷彿と・・

2021年09月01日 | 西国三十三所

かつての「新宮夜行」を彷彿とさせる「WEST EXPRESS銀河」は夜の大阪の街を走る。貨物線からちょうど再開発工事エリア越しにグランフロント大阪などのビル群を見る。こういう車両から眺めるのも不思議な心持ちだ。車内放送では大阪環状線エリアの見どころの案内が入るが、「残念ながら今回の旅ではすべて停まりません・・」とある。

22時33分、天王寺到着。まだまだ通勤客も残る時間帯である。2分停車してそのまま発車する。私にとってはJRの玄関口といえる天王寺をそのまま通過するのはもったいないが・・。

新宮行きの夜行列車といえば、学生時代に3回ほど乗ったことがある。うち2回は天王寺始発の新宮行きで、23時ちょうどに頭端式の阪和線ホームから発車したのを今でも覚えている。165系の急行型電車で、4人掛けのボックス席。鈍行夜行というと、当時読んでいたレイルウェイライター・種村直樹の著作にもいろいろ出てくるのがうらやましかったのだが、当時近くで実際に乗ることができたのが新宮夜行である。早朝の紀南の海に向かう「釣り列車」「太公望列車」の愛称もあったが、その当時も季節的なものか、それとも釣り客じたいが少なくなったのか、釣り竿にクーラーボックスという客はあまり見なかった。むしろ通勤帰りの客が多かったようだ。

通勤客は和歌山近辺で下車してその後は夜行の客だったが、深夜時間ながら主な駅で長く停車するところがあり、今とは違って窓口も開いていて硬券入場券を買ったりスタンプを押したりもした。翌朝の5時に新宮に着き、そのまま同じ車両で和歌山方面に折り返す、あるいはその先の気動車に乗り継いで紀伊半島を一周する形で紀勢線を乗りつぶしたりもした。

その後、新大阪から貨物線を経由する旅客ルートが開かれ、特急「くろしお」とともに「新宮夜行」も新大阪始発になった。新大阪発も1~2回乗ったが、やはり天王寺の阪和線ホームから出たほうが夜行列車らしい雰囲気だったという印象がある(あくまで個人の感想)。

さて、現在の「WEST EXPRESS銀河」に戻る。天王寺を出て改めて車内を回るが、実質動けるのは自分がいるリクライニングシートの3号車と、隣の4号車のフリースペース「遊星」くらいのものだ。2号車は女性専用車両でおっさんが立ち入ることはできないし、5号車のクシェットも寝台スペースなのでドカドカと足を踏み入れるのははばかれる。

フリースペースの「遊星」にはテーブル付き4人掛けのボックス席や座布団、円卓のスペースがあり、リラックスするには適している。そこに「フリースペースでの飲酒はご遠慮ください」の注意書きが出ている。これはツアーの事前案内にも記載されていたことである。昨年山陰行きで乗った時にはそうした注意はなかったが、夜行、昼行かかわらずこうしたスペースで酒飲んで騒いだ客がいたのかもしれないし、そうした客を想定しての予防策である。

裏を返せば自席で静かに飲む分はほどほどで・・・というところ。もっとも、この夜の車内の顔ぶれを見ると1人参加が多く、複数でもご夫婦、多くても子ども1人を連れたご家族1組くらいで、車内で酒飲んで騒ぐような人はいなかった。見ようによっては、私が一番リスキーな輩だったかもしれない・・。

自席でも十分なスペースがあるので、そこで夜景を見ながら静かに夜の一献とする。懐かしの「新宮夜行」を思い出しながら・・・。

途中、ここから乗車する客はいないだろうという日根野に停車。乗務員からの見送りを受ける。

紀伊山地、紀ノ川を渡って23時42分、和歌山着。

和歌山では日付が変わって1時まで停車するが、その間に「WEST EXPRESS銀河」の夜のおもてなしがある。この時間に改札の外に出て、和歌山中華そばをいただくということだ。体にはあまりよろしくないのだが、まあ旅先での体験ということで・・・。山陰行きでは姫路駅ホームの「えきそば」をホームや車内でいただくというおもてなしがあったが、これに対抗したのか、いやそれ以上の強力なメニューである。

ツアー参加者は列車全体で50名ほどだが、店の定員もあってこれを2班に分けて案内するという。まず初めに個室、寝台組が乗る1・5・6号車の客から出発。残された2・3号車の座席車客は後発だが、その間には列車の撮影などできる。

しばらくして添乗員からお声がかかり、20人ほどがホームに集まる。こうして見ると女性の参加者も結構いるもので、女性専用車両というのが効いているのだろう。

添乗員の引率で東口改札を出てそのまま3~4分歩き、ビルの1階に構える「まる豊」という店に着く。初めて入る店だ。案内によると、数年前にここに移転するまでは「店が傾いているラーメン店」として知られていたそうだ。普段は23時までの営業だそうだが、このツアーのために特別に開けてくれている。

入った順にカウンターに座るとすぐに中華そばが出てくる。「銀河」の到着時刻も人数もわかっているからだろう。ツアーということでトッピングの追加やゆで卵、早寿司などのサイドメニューは不可。味としてはスタンダードな豚骨醤油の和歌山中華そばという感じだが、このシチュエーションでいただけるところに味がある。和歌山駅の東口という、表裏でいえば裏口にあたるほうに出向くのも混乱をきたさないようにしているのかな。

食べ終えた人から順次駅に戻る仕組み。途中にセブンイレブンがあるので買い物も自由だ。飲み足りない人はここで燃料補給もできる。

日付が変わったこの時間、和歌山から出る列車はないが、阪和線から和歌山に着く列車はまだある。かつての「新宮夜行」は紀勢線の終列車の役目もあり、新宮までの便が廃止された後もしばらくは同じようなダイヤで紀伊田辺、御坊など直通運転の列車が出ていたが、今は最長で和歌山までである。

列車の写真を撮った後で車内に戻り、シートにもたれているとそのままウトウトしたようで、いつの間にか発車したようだ。改めて、紀南に向けて出発・・・。

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