まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

新宮速玉大社から熊野本宮大社へ

2021年09月04日 | 西国三十三所

「WEST EXPRESS銀河」で新宮に到着後、ツアーとはいいながらもホテルと帰りの特急の座席が決まっているだけで、行動は自由である。この先、紀勢線で松阪方面まで行って帰ってくることもできるし、来た道を紀伊勝浦や串本まで引き返すことも可能だが、皆さんどういう行動を取るのだろうか。

駅前には奈良交通のバスが停車中である。9時59分発の大和八木駅行きである。熊野本宮、十津川村、五條市経由で7時間近くかけて走る便だ。1日3便のうち早くも最終便だが、十津川まで行っても大和八木からのバスに乗ることはできる。さすがに「銀河」の後に十津川まで行く人はいないだろうが、瀞峡、熊野本宮辺りまでならこうしたバスも有効に使える。

私はといえば、道路を渡って駅レンタカーを兼ねたオリックスレンタカーに向かう。夕方までの時間で熊野三山プラスアルファを回るなら、こちらのほうが効果的だ(どうもこのところ、効率を求めて札所めぐりでもレンタカーを使うことが増えているが・・)。この日乗車するのはホンダのフィット。レンタカーの定番である。「かなり暑くなるのでお気を付けください」と送り出される。ディスプレイに表示される外気温はすでに33度と出ている。

まずは1キロほど走って熊野速玉大社に到着。いったん駐車場に停めた後、表に出て正面の鳥居から入りなおす。

先ほど熊野曼荼羅絵解きを聞いたためか、ご神木の梛(ナギ)の大樹に目が行く。古来より道中安全を祈り、この葉を身に着けてお参りすることがならわしとなっている。授与品売り場でも梛をあしらったお守りが売られている。また、速玉大社では梛の木を「世界平和の木」にする運動を行っているそうだ。その一つとして、沖縄の本土復帰の記念として梛の木500本を育て、沖縄県下の学校に植樹したという。

暑い中だが、「銀河」に揺られての熊野詣で・お礼参りである。とはいっても昇殿して玉串奉奠、祈祷を行って・・という仰々しいものではなく、各拝殿を順番に回って手を合わせるくらいだが。

名だたる法皇、上皇には及ばないが、これで「WEST EXPRESS銀河で行く熊野三山詣で」の一つはクリアである。

ここ速玉大社はかつて「はやたま」という列車名にも出ていた。それこそ「銀河」の昔の姿だが、その昔は天王寺から阪和・紀勢線で新宮、さらには亀山を経て名古屋まで運転される客車列車で、寝台車がつけられた時期もあった。私が鉄道の乗りつぶしで出かけるようになった頃には、先の記事のように165系の新宮行きとなっており、「はやたま」については宮脇俊三の乗車記でしのぶくらいだが、文字通り紀伊半島をぐるり一周する観光列車があってもいいかなと思う。まあ、JRの会社が違うし、電化・非電化の違いがあるので実現は難しいだろうが・・。

参詣を終えて国道42号線に出る。8月初めに来た時は先に那智大社、青岸渡寺を訪ね、最後に熊野本宮に参詣してそのまま十津川村経由で大阪に抜けたが、今回は先に熊野本宮に向かう。

新宮高校の先で国道168号線に入る。

前回は新宮の中心部では晴天だったのだが、熊野本宮に向かう途中でにわか雨に遭った。ただこの日はその心配もないようで、熊野川に沿って順調に走る。

道の駅「瀞峡街道熊野川」にて休憩。ちょうど熊野川に面したところで、速玉大社近くまでの川下り舟も出ている。多くのクルマ、ライダーが立ち寄っている。

今からちょうど10年前の2011年9月、台風12号の影響で紀伊半島を豪雨が襲った。熊野川も氾濫し、この道の駅を含む一帯も飲み込まれて建物も損壊した。その時の水位の表示と慰霊碑が建てられている。またこの豪雨では那智山に至る集落でも多くの被害があり、この記事を書いている9月5日の朝のニュースでは、ちょうど10年ということで地元の人たちによる慰霊祭が行われたとあった。

今年の夏は台風よりも線状降水帯の影響で各地で豪雨が相次ぎ、広島県もちょうどお盆時期を直撃してどこかに出かけるどころの話ではなかった(朝から夜まで大雨のニュースばっかり見ていた)。2021年の夏はそうして記憶されることになるが、これから9月、また台風が来るのだろうか。

新宮を出て1時間近くで熊野本宮大社に到着。こちらも熊野大権現の幟がはためく中、石段を上がる。水害ということでいえば熊野本宮大社も明治時代に多くの社殿が流された歴史がある。熊野川の中州にあった社が現在地に移されて現在に至る。熊野川を見ると水量も少なく、砂利のある河原がやたら広く見えるのだが、他の河川と比べて水が溜まる場所が少なく、流れの押しが強いそうだ。

こちらでも順に手を合わせてのお礼参りである。やはり「本宮」という名前のためか、あるいは三山の中でもっとも奥まった地にあるためか、厳かな感じがする。社殿の色もそう感じさせる。

また、熊野三山では八咫烏の絵やオブジェが至るところに見られる。導きの神として古くから信仰され、神話においては神武天皇を大和の橿原まで案内したとされる。熊野から橿原へ・・・実は今回、この「銀河で行く熊野三山詣で」の続きにも関係してくることなので、ここで記しておく(かといって、そこまで注意して読む方はいないだろうが・・)。

ここまで午前中で熊野三山のうち2ヶ所を回ったが、それにしても厳しい暑さである。レンタカーのため重い荷物を持って石段を上り下りすることはなかったが、少し時間を空けただけで車内の温度は急激に上がる。エアコンをかけて、体を少しずつ冷やしながら何とか先に進む。

今回は熊野本宮大社で折り返して、熊野那智大社に向かうことにする。今度は国道168号線で熊野川に沿って下り、新宮市内から那智山方面に向かう。途中からは自動車専用の那智勝浦新宮道路を通る。前回来た時はなぜかカーナビが案内しなかった道である。これでこの先少しは時間短縮できそうだ・・・。

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