カワセミ側溝から

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

煮え切らない男でも彼女はできる   街の上で

2022-03-13 | 映画

街の上で/今泉力哉監督

 主人公の男は、彼女の誕生日に浮気を告白された上にフラれてしまう。納得がいかないまま失意の毎日を送っていたが、働いている古着屋の客から自主製作映画に出て欲しいと言われ、しぶしぶ出てみたが、緊張でまともな演技もできず、せっかくの映像はすべてカットされてしまう。とにかく面白くないが、打ち上げ飲み会で映画スタッフの女の子に誘われ、一晩恋バナをしてそのまま泊まることになる。それでその子の家から朝帰りして歩いていると、行きつけのマスターと元カノとばったり出会ってしまい、さらに恋バナ女の彼氏まで混ざって、妙な空気に包まれてしまう。
 ざっくり言ってそういう展開ではあるが、実はそれまでにだらだらといろいろなことが起こる。そういうダレた感じの静かな笑いのギャグが、この映画の見どころのような感じかもしれない。これはおそらく新種のコメディで、ツボにはまると面白い、ということなんだろう。若者風俗というか、今時ともいえる若い人間の考え方も透けて見える。僕のような後期中年男性から見ると、こういうのが草食系なのかな、とも思ったが、全然セックスをして無い訳ではない。ちゃんとそういうことにもなるような、そこそこもてる男なのだが、しかしうだつが上がらないようなところもあるし、性格も悪い。だいたい他の人たちも凶悪な感じではないだけのことで、なんとなくいい人間はそんなに出てこない。ちょっとずつずれていって、そうなってしまっている若者がいる。今はそういう感じで「フツー」の若い連中が暮らしているのかもしれない。まあ、そういう世界観、ということだけれど。
 でもまあ、ツボにはまらないところがあったにしても、やはり後半の三角関係(というのかな)の展開に至るところは、面白いのである。それぞれにめんどくさく勘違いをしてしまっているのが、手に取るようにわかる仕掛けになっている。また、一部、それでいいのだ、という開き直りもある。それは観てのお楽しみである。
 という訳で、キレのいい笑いとは対極にあるコメディ作品だが、なんだか気になる後引きがあった。もう戻ってこない青春だけど、そういうものかもしれないな、という感じなんだろうか。
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