カワセミ側溝から

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

確かに寒そうな街である   薄氷の殺人

2021-03-26 | 映画

薄氷の殺人/ディアオ・イーナン監督

 石炭工場でバラバラの遺体が発見される。いくつかの断片の中から身元証明書が見つかり、被害者らしき人物は分かるが、遺体の入った石炭を運ぶトラックの運転手を参考人として連行しようとする際に、持っていた拳銃で数人の警察官は射殺され、さらにその参考人も警察から射殺されてしまい、事件は暗礁に乗り上げる。数年後、また同じようなバラバラ殺人が起こる。被害者は、当時の被害者の妻の関係者らしいことも分かる。当時事件を追っていた元警察官のジャンは、その妻ウーが勤めるクリーニング店に客として様子をうかがいに寄るのだったが、段々とそのウーの魅力に取りつかれていくようになるのだった。
 主演のリャオ・ファンという俳優さんが、近藤芳正とトヨエツを足して二で割ったような顔をしていて、ヤクザな感じなんだがちょっとユーモラスである。で、最近見た「帰れない二人」でも主演していて、国際的に知られた俳優さんなんだろうな、と思った。一方の未亡人のウー役のグイ・ルンメイは、日本の女優の波瑠に似ていて(ルンメイの方が年上なので、波瑠の方が似ているというべきか。ところで漢字表記は綸鎂なので、リンメイなんじゃないかとも思うのだが……)、確かに怪しく美しい。これでは殺人事件が起こるはずだよな、という変なリアリティを醸し出している。
 しかしながら、相変わらず最近の芸術的な映画の文法的な説明は下手で、何がどう展開されているのかは、極めてわかりにくい。場面場面の美しさのために、ストーリー展開は、とりあえず分からなくてもいいという方針を取っているのかもしれない。よく考えてみると、事件を追っていた元警官が性欲を満たしただけの映画のような感じだろうか(まったく違うけど)。
 しかしまあ、中国の国際的に評価の高いこれらの作品は、確かに映画を観たなあ、という充実感のようなものを備えていて、あちらの国では、犯罪がなんとなく身近そうな背景があるような感じが、また映画の質を支えているような感じかもしれない。米国の大都市の闇のようなものが、一時期は米国ノワール映画にはあったものだが、そういうものが、中国に乗り移ってしまったかのようだ。しかしながら美しいがゆえに、この女は薄幸にならざるを得ない感じがして、本当に切ない。これはやっぱり、彼女に惚れてしまう男が悪いということなんだろうか。
 まあ、また一連の関連作品を観たくなることは確かで、そういう意味では、やっぱり面白い映画なのだ。この難解さに付き合わされるのは悔しいが、でも面白いのだから仕方ないのである。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする