ジョジョの奇妙な冒険第一部ファントムブラッド[総集編]/荒木飛呂彦著(集英社)
有名な漫画だし、息子も読んでいたらしい気配は感じていたのでまったく知らなかったわけではないが、実際に漫画として読んだことは無かった。雑誌をみても当然のように飛ばしてみていた。理由は自分でもよく分からないが、なんとなく絵柄が僕を寄せ付けなかったからかもしれない。ジョジョという漫画は、僕の子供の頃には(ティーンエイジャーの頃だけど)すでに連載されていたような気もする長寿漫画で、なんとなく残酷そうなので敬遠していたのかもしれない。それでもまあ、中毒的に面白いという話は数度聞いたことがあって、現在に亘って人気を持続するほどに素晴らしい作品なのだろうとは思いはしていた。が、まあ繰り返しになるが、敬遠していたわけだ。僕だって人間なので、すべての漫画を理解する人生の時間をもってはいない。
ところがひょんなきっかけで、総集編という古本が手に入った。総集編というのなら結末がありそうで、僕が大長編漫画に手を出さない最大の理由が、長すぎて単調になりすぎて、物語としてのまとまりが感じられなくなる作品に魅力を感じなくなるからであったわけで、結末があるのであれば話は別である。さすがに古い頃の作品だから古い感じはあるものの、そういうことを含めてもなかなかに迫力のある展開で、ああなるほど、少年時代に出会っていたら、どんなにか良かっただろう、と思った。それにしても時代がかった大冒険活劇で、ものすごく大げさだけどしっかりしたストーリーで、素晴らしいのだった。科白回しも気が利いていて、凝りに凝った伏線が張り巡らされて、それらがみんなひっくり返るように物語が進む。絵も特徴的だが、書き込みも複雑で、動きがぐにゃぐにゃしているけれど、それほどに躍動感に満ちている。二人の少年時代からの因縁の戦いがしつこくしつこく繰り返し展開されていく。もうほとんどなんでもありで、しかし結末はあしたのジョーだった。
これはもう知られているだろうし、知らなければ個人的にもお教えしてもよいが、基本的には、ジョジョのお父さんがすべての火種のような気がしないではない。それが紳士というものかもしれないが、怨念の基本を、土台と言えるものを、残して死んでしまった。または、そのようなお人よしであった。これを教訓にしていいのかはよく分からないが、邪悪な人には施しなどしてはならない、ということになってしまうのではあるまいか。
まあ、だからこそ物語が面白くなるわけで、人間の複雑な感情こそ、あらゆる戦いの原動力になるということなのだろう。