開けっぱなしの密室/岡嶋二人著(講談社文庫)
短編集。それぞれ謎解きミステリ作品である。何か超人的な殺人犯というような人たちがでてくるわけではないが、ちょっとした行き違いで様々な事件が起こってしまう、という感じの作風が多かった。まあ、一つくらいは、特殊技能っぽいものが無いではないが。
作風はそれぞれに違うので一概に言えないが、仮に表題作を例にとると、殺された女性の友人は、ある意味で名探偵すぎるのであるが、あくまで友人だったし、殺された友人女性のことを考えると、確かに順を追って事件を解決することができた。それ自体がスリリングなミステリ仕立てになっていて、なかなか読ませるのである。ほぼ全作品に様々な伏線がしっかりと張ってあり、回収が見事だ。おそらくだが、作品を書く前に、しっかりしたプロットを練りに練っているのであろう。
こういうのを読むと、やっぱりこういうアイディアを考え付くミステリ作家というのは、大変な職業だな、と感じる。僕は文章を書くのは好きだから、読んだものに感化されて、そういうものを書いてみたいという衝動に駆られることはよくある。それで小説の真似事のようなことをしたのは中学生くらいまでだったが、要するにその頃からミステリのような作品を読むようになり、書きたくてもこういうアイディアを思いつかないと気づいたからである。まあ、小説以外のものを読むようになってしまったというのも同時にあるにせよ、いずれにしても、こういうのはとても書けそうにない。人を殺すことを考えるのもおっくうだし、それを分からないように工夫するなんて、どうしていいの変わらない。
しかしまあ、どうやって殺したかを解いていかないと、犯人は捕まらないし、そうしてそれを読んだ読者だってつまらないだろう。人が死にました。しかし犯人は分からず、どうやって殺したたかもわかりません。純文学ならそういう作品の一つくらいはあるかもしれないが、やっぱり普通読まないだろうな。
結論として、面白い作品を書く人がいるのに、わざわざそれを苦労しながら書くよりも、読んだ方が得なのではないか。ということで、別作品も楽しみです。