贅沢は敵だ

　人間というのはたいていのことに慣れてしまう。たとえそれが苦痛のようなものであっても、脳の機能として慣れるということができるらしい。できなければどうなるか、という問題はあるが、ともかく、たいていのことには慣れる様になる、という前提で物事を捉えると、慣れる事でつまらなくなったり、楽しくなったりの応用ができるということらしい。
　慣れることで利点があるのは、ルーティンワークのようなものかもしれない。つまらないような仕事であっても、なんとなく慣れてしまって、何とかこなすことができるようになる、というのはある。それはそれで助かる。受験生であれば、勉強だってそうとも言える。学校なんて行きたくないような人でも、まあ、なんというか慣れるわけだ。勉強が分からなくなった状態に慣れると困るが、好きでもない科目の勉強のようなことでも、やることによって慣れるらしい。いつまでも嫌で手をつけないのなら、慣れようが無いというのは、ある種のヒントになるかもしれない。僕には関係ない話で良かったけど…。
　慣れることで悪いというのは、飽きることかもしれない。最初は楽しくてたまらなかったことであっても、いつまでもやっているといずれ飽きる。これは慣れてしまって面白みを感じなくなってしまったとも言い換えられるようだ。いつまでも好きで好きでしょうがなくて、いつまでも飽きない。というような事のほうが少ないような気がする。スポーツのように複雑な要素があって、ゲーム的に毎回違うようなものなら比較的に飽きがきにくいということはあるかもしれないが、結局は繰り返してやりすぎてしまうと、やはり最初の頃のようなスリリングさは消えてしまうものではあるまいか。
　同じように贅沢なものであっても、やはり飽きは来るようだ。最初はとてもありがたく感動的なものであっても、そればかりではもういいや、という気分になるらしい。毎日キャビアにシャンペンばかりだと、もう違うの食いたいよ、ということのようだ。そうなってみたいという願望がある人でも、実際の苦悩は知らないだけのことかもしれない。
　これを防ぐためには、実際にはそれなりの贅沢が可能な範囲に、ワザと律して触れないようにしておく、という方法がある。たとえばビール好きなら、日頃はあえて発泡酒を飲むというようなことでいいらしい。日常的に少しの我慢をするだけで、時々飲めるビールの味を上げることにもなるし、感激を噛み締めることにもなる。それは紛れもない幸福感と同義であるらしい。つまり、普段から必要以上にあえて質素な生活をしている人のほうが、普段から贅沢三昧な人より幸福度は格段に高いのだという。
　幸福度はある一定の高さまで所得と比例するのだが、そういうある程度まで所得が上がると、大金持ちと比べても、幸福度はそんなに変わらなくなるという。それというのも、たぶん金持ちであっても、その金持ちの状態に飽きてしまうのかもしれない。実際は知らんけど…。まあ、あなたが金持ちであるなら安易に贅沢三昧に浸らずに、あえて質素な生活を送ることに心がけられれば、それこそたやすく幸福感に浸るチャンスを作ることが出切る訳だ。
　ものすごく貧困の人はどうするのか、というのはあるけど、さらに生活を切り詰めて、時々ちょっと自分の水準では贅沢というのを味わえばいいのかもしれない。まあ、参考になればだが、皆さん、がんばってください。