カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

他人の買い物をする恐怖

2009-05-02 | 散歩

 他人の買い物に付き合うというか、頼まれて何かを買わなくてはならないというのが、僕にはどうにも臆病になる。自分のことさえよく分からないのに、他人のものを選ぶなんていう芸当が、とてもできそうに思えないからである。しかしながら、あれこれ買ってきて欲しいというような事は日常にあることで、他人のためになるのであれば、断る道理などはありはしない。
 いや普通に醤油や砂糖が切れたから買ってきてくれというのであれば、それはお使いとしてできないことではない。もちろん銘柄がどうであるとか、最近はスーパーなどでプライベート・ブランドというような、内容や品質はほとんど変わらずとも安価で、しかし購入するときになんとなく後ろめたい気分にさせられる商品があるにせよ、まあ、それほど迷わずとも買えないことはない。問題は服である。いや、ある程度のセンスというか、嗜好の伴う恐れのある品物なのである。
 仕事柄代理で服を買ったりするような業務があるのだが、それらのほとんどは僕以外の人間に任せることができるようになっているにせよ、不幸にも僕自身がその役割をせざるを得ないこともときどき起こる。昨日はよりによって或る人のジャージを買わなければならないから選べということになった。この人は普段から確かにジャージを着用していることが多いようで、だからこそたまには他の服を買ったらいいじゃないかという疑問はあるにせよ、また、そのような事が起こるとかえって厄介で問題が大きくなってしまうということであるにせよ、しかしどのようなジャージならこの人の好みなのかというのは、まったく想像を絶する世界だ。
 しかし予算というものはある。まずこれでかなり対象が絞られることはありがたい。そうして一万円もたされたが、聞いてみると目一杯の値段でなければならないということでは当然違うらしいのだった。まあ、安いというのも満足度を上げる要素ではありそうだからお得感のあるものがよかろうと思ったのだが、今の時期に割引率の高いジャージは、冬もので売り切れた厚手のものが多いのだった。結構デザインもよさそうに思われたけれど、いかんせん今から着るのであれば、暑すぎて不都合だろう。
 しかし驚いたことに半袖のジャージというのがあって、それはこれからは都合がよさそうにしろ、僕の考えるジャージ観というものに抵触し、かつ彼の嗜好に合うという保証が得られにくいという勝手な推察がなされて、断念せざるを得なかった。
 服にはさらに厄介なことに、ブランドとかいうような余計な付加価値があったりする。まあこれは予算という縛りがあるというハードルもあるし、ある人はある意味でおっさんになっているのでかまわんだろうという判断で無視することにする。しかしどうしても無視できない問題は、服には色がついていたりすることだ。彼の好みとは何なのだ。実は一緒に買い物に来ているのだが、好みの色を聞くとそんなものは無いという。今着ているのは黒っぽいトレーナーで、じゃあ黒が好きかというとそうかもしれんと言ってくれた。なるほどそれならグレイっぽいのはどうなのか、と、僕は天邪鬼なので判断基準が定まって、グレイで黄色いラインの入った薄手のジャージを取り合えず選択できた。しかし何とサイズがLLではないか。実は手に取った最大の理由は値段が安かったからなのだが、サイズがでか過ぎて売れ残ったというのが真相ではないか。しかしそのハンガーの流れをつぶさに見ていくと、かろうじて同じような色のLのサイズを発見することができた。値段だって800円しか高くない。ここで悩んだら人生がさらに短くなる恐れがあると思ったので、そのまま服を見ることをせずにレジを探して逃げることにした。
 結局この人がこのジャージを気に入ったのかはよく知らない。僕の役割はジャージを買うということだったので、そこまで確認しては仕事のやり過ぎである。あれが似合わないという可能性はあるにせよ、人は服に合わせて生活すべきなのではないか。またそんなことを気にするような人の服を僕が選ばされることなどありえないので、それはそれでいいのである。
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