風音土香

21世紀初頭、地球の片隅の
ありをりはべり いまそかり

権現舞

2007-03-19 | 風屋日記
権現舞は頭を持たずに舞う祈祷舞の前半部分と
段々頭を被っていき、
権現と化して刀を呑み込む後半部分に分かれる。

前半の祈祷舞は上下の動きが特徴的。
腰を落とし、またすぐ立ち上がって扇を振る。
体の前で、そして四方に印を結び神を呼び邪気を祓う。
拍子のリズムもその時点ではゆっくりだ。

刀と扇を別当に預け、頭を持ってからは、
舞手の体は徐々に権現の幕に絡み、
舞いながら権現と化していく。
高らかな歯打ちに目も耳も奪われていきながら
観客はその世界へと溶け込んでくる。

頭役、後幕役ともに
頭を被った瞬間から拍子が速くなる。
太鼓が打ち鳴らされ、鉦が延々とリズムを刻み、
笛の音色が目まぐるしく上下する。
権現の頭はピーピーと鳴く声を出しながら
猛々しく頭を上下左右に振り、暴れはじめる。

別当役が扇、蛇歯み(白く長い木綿の布)、刀を
次々に権現の口から呑み込ませる。
そのあたりになると、
暴れる権現頭、それに合わせてひるがえる幕、
そして延々と続く速いリズムの拍子に、
見ているお客さまたちは一種トランス状態になっている。
その後、権現の口から次々に出されていく
扇、結ばれた蛇噛み、そして刀。
権現の体内を通って祓われた刀を別当が振り、
権現がそれに合わせて頭を引くコンビネーションが見事。

刀を吐き出し終わると後幕役は幕から出、
途端に拍子のリズムは元のゆっくりしたものに戻る。
その後の権現舞はそのまま終わるもよし、
火防祈祷のために柄杓を銜えるもよし、
祈祷を願う人達の頭を齧るもよし。
権現舞が終わった後のお客さまたちの顔は
一様に夢から醒めたような顔をしている。

    ◇      ◇      ◇

昨日は花巻温泉での結婚式に神楽衆が呼ばれた。
神楽拍子を奏でながら新郎新婦入場の先導役を務め、
その後乾杯前のセレモニーとして権現舞を舞った。
新郎の亡くなったおじいさんは
そのまたお父さんやおじいさんについて、
昭和ヒト桁の頃から神楽を続けてきた元代表。
今一緒に神楽を続けている私の先輩たちの師匠にあたる。
いつもの結婚式の余興代わりとは
ひと味もふた味も違う、荘厳な権現舞だった。
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2 コメント

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Unknown (Toko)
2007-03-19 17:43:01
風屋さん。
さっそく神楽の記事をアップしてくださり、
ありがとございました。

拍子のリズムで世界へ誘う。
ちゃんと入り口があって、出口があるんですね。
うーん。面白いです。べんきょうになりました。
返信する
>Tokoさん (風屋)
2007-03-19 17:49:49
もうひとつ。
記事の中には書きませんでしたが、
拍子の変わり目、舞い方の変わり目などは
太鼓、鉦、笛、舞手の全員のアイコンタクトによる即興。
JAZZのセッションみたいで(笑)程よい緊張感です。
だから神楽の場合、カラオケでは舞うことができないし、
舞いのビデオみながらお囃子はつけられません。
足の運び、タイミングなど、常に毎回違うのです。
返信する

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