風音土香

21世紀初頭、地球の片隅の
ありをりはべり いまそかり

言語

2022-01-26 | 文化
ちょっと前の記事なので
本当はいけないんだろうけど
新聞の宣伝も兼ねて、写真UPさせていただきます。
すみません(^^;



上記は同じ日の岩手日報に掲載された記事。
かたや世界で絶滅を危惧されている言語について
こなた岩手の方言についての記事だ。
どちらも大変興味深く読んだ。

世界のマイナーな言語に興味がある。
ほんとうならちゃんとその言語を学ぶ必要があるが
そこまではちょっと難しい(^^; ものの
言語の成り立ちや社会での使われ方など
その言語を使う人たちの文化が垣間見えて面白い。
信仰に深く基づく言語、伝統的生活慣習に基づく言語、
馬とともに生きてきた民族には馬に関する表現が豊富だったり
(山羊、羊、牛や主食となる米、小麦なども)
人間関係に関する表現が細やかな言語などもある。
接続詞や活用がない言語もあれば
文字を持たずに、目での伝達は絵や刺繍だったりという言語も。
言葉はそれを使う人々の文化そのもの。

もちろんそれは、もっと世界社会においても同じで
それは方言という形になって残っている。
ひとくちに方言と言っても、その切り口は様々で
表現方法の地域性、古語から残る方言単語、
そして発音に至るまで、興味は尽きない。
発音に関して、例えば典型的な東北弁とされる
「キ(「き」と「ち」の間の擦過音)や「シとスの混同」、
「ハ行のパ行化、ファ行化」などは
実は沖縄石垣島などで歌われる八重山民謡にもある。
もしかしたら「原日本語発音」なのではなかろうかとも
最近考えたりしている。
江戸弁の「ヒとシの混同」もそのひとつだ。

古語から残る方言単語は、上げ始めるとキリがない。
例えば岩手で話されている「うるがす(うるかす)」は
「潤う」という言葉の使役同士。
古語どころか戦前まで全国的に使われていた言葉らしい。
「おどげ(標準語では顎)」も、
森鴎外の小説に「おとがい」という表現が使われている。
漢字変換でも「おとがい」で「顎」とすぐ出てくる。
「髪をけずる(標準語ではとかす)」はスマホなどで
「髪を梳る」と漢字変換されるが、これも古語だ。
「んだっけ(標準語でそうですよの意)」の「け」は
古文で出てくる助動詞「けり」の音便形であると本で知った。
つまり現代に生きる私たちが
「そうでありけり」と言っているわけだ。

柳田國男の「蝸牛考」を大学で学び、方言周圏論を知った。
当時の日本の中心である京都で新しい言葉が生まれ、
それが徐々に地方に浸透していく。
その間にまた新しい言葉が京都で生まれてくる。
単語表現が大きな輪になって方言として残るという説だ。
前述の発音にも当てはまる考え方だ。

ところで「蝸牛考」をテキストとして使ったのは
言語地理学という大学時代のゼミ。
「蝸牛考」の「かたつむり」のように
特定のモノを示す単語の表現方法を記号化し
それを地図上に落とし込んでいくフィールドワークが中心だった。
まさにこの新聞記事のフェリスの先生の手法。
私も「1980年ごろの花巻地方の方言地図」を作るため
夏休みにフィールドワークした思い出がある。
とある古老に蛙の絵を見せて「これをなんと言いますか」と尋ねたら
「けづぁ『フルダビッキ』だえ?見だ人ぁ石になるズもなす」
と言われて唖然としたり、
つららの絵を見せて「なんと言いますか?まぁ普通はつららですが」
という問いに「ほ?けづぁ『タロス』だえ?つららって初めで聞いだ」
との返答に驚いたりしたのもいい思い出だ。

ちなみに蛙は「ビッキ」、その化け物が「フルダビッキ」だし
「タロス」は「垂る氷(たるひ=古語)」の音便形。
コメント (4)
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