風音土香

21世紀初頭、地球の片隅の
ありをりはべり いまそかり

ビリー・ホリデイ

2024-05-25 | 映画・芝居・TV

先日のNHK「映像の世紀 バタフライエフェクト」は
「奇妙な果実 怒りと悲しみのバトン」と題し
伝説のジャズシンガーとして知られるビリー・ホリディを中心に
アメリカにおける人種差別との戦いを描いた番組だった。

高校時代ジャズに目覚めた。
とはいえ難解なモダンジャズやフリージャズではなく
ピアノソロやトリオのようなシンプルなものやフュージョンのほか
なぜか女性ボーカルものがお気に入りだった。
アレサ・フランクリン、サラ・ヴォーン、エラ・フィッツジェラルド、
そしてロバータ・フラック・・・
そんな中、私が生まれる前に亡くなったという
ビリー・ホリデイの存在を知った。

知ってすぐに走ったレコード店にビリーのレコードは
「Lady in Satin」のアルバムしかなかった。
1曲目の「I'm A Fool To Want You」に針を落とした時
麻薬とアルコールで潰れたその声に驚愕したことを覚えている。
のちにレコーディングディレクターが
「歌いながら涙を流していた」と言った曲だ。
そしてその他にレコードを見つけることができなかった私は
ビリーが亡くなった後に伴奏者だったマル・ウォルドロンが出した
「Left Alone」を買い、また戦慄することになる。
この2枚のLPレコードは大学時代を通して
私が最も聴いたアルバムとなった。

実は、この番組でも取り上げられ、彼女の代表作とされる
「Strange Fruit」の存在を知ったのはその数年後だった。
音楽として聴く前に、その歌詞に愕然とした。
そしてそれを歌った彼女の覚悟も。
その物語を丹念に追いかけたのがこの番組。
日本人の想像を遥かに超えるアメリカの人種差別の過激さ。
この番組を見て、刮目せざるを得なかった。

血気盛んな20代前半の学生時代ならば
これらの曲を受け止めるエネルギーが私にもあった。
しかし昨年来メンタルも落ち気味となっている年寄りには
彼女の歌は少々ハードすぎる。
その世界にズルズル引き込まれてしまいそうだ。
晩年の彼女のように。
ただ、録画したこの番組を消去することはできない。
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