風音土香

21世紀初頭、地球の片隅の
ありをりはべり いまそかり

「フーテン」

2022-01-13 | 読書

もう何度読み返したことだろう。
高校時代に出会って、かれこれ45年になる。
その間何十回、何百回かも知れない。
買ったのは3冊だが、今そのうち2冊が手元にある。
1冊は1988年初刷、もう1冊は2010年2刷りのものだ。
最初は文庫でも上・下の2分冊だったものが、
今は1冊にまとめられている。

私は本書で社会をしり、哲学を知った。
初めて人生について考えるきっかけになった。
自分という人間の根幹の部分が本書だと言っても過言ではない。
昔は何人かの友人に貸したのだが、
どうやら私のように心を揺さぶられる人と、
まったく興味ない人に分かれるらしい。
それに気付いてからはあまり人に貸したりしなくなった。
今では大事に、大事に書棚に収まっていて
時折背表紙を目にすると、つい手が出て頁をめくってしまう。

永島慎二という人の心は深い。
生前はインタビューなどで「売れない漫画家」と自嘲していたが、
彼に影響を受けた漫画家や作家はかなりいるだろう。
この作品は永島さんのフーテン時代の思い出を描いているが
そのフーテン時代に描かれた「漫画家残酷物語」も心に響く作品だ。
そして晩年に描かれた「風の吹く街」が集大成か。
(それも発売は1978年、文庫本が200〜300円の時代に1800円)
といっても2005年に67歳で亡くなっているので
1978年といえばまだ40歳だったんだなぁ。
(フーテンしていた頃は24歳頃か、
 「フーテン」はその10年後に描かれている)

私にとっては単なる漫画家ではない。
人生を導いてくれた哲学者。
コメント
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