風音土香

21世紀初頭、地球の片隅の
ありをりはべり いまそかり

「燃える波」

2022-01-18 | 読書

書き手である女性の目線を通して社会を垣間見る
いわば擬似体験として女性作家ものを読むことが多い。
自分にはない視点が新鮮だから。
ということをこれまでも何度か書いてきた。


中でも井上荒野さんや桜木紫乃さんとともに
作家買いするのが村山由佳さんの作品だ。
女性みんながみんな同じ価値観や考え方をするわけではないが
特に村山さんはその女性性を存分に表現していると思う。


「物書きは先生と言われるようですが、
 これほど社会の底辺にあるような仕事はないわけです。
 自分の中の汚い部分、心ある人なら隠しておくような事も、
 腹かっさばいて書いて、
 それを人に読めと強要するという仕事ですから。」
そんなことを言う村山さんだからこそ
その作品にホンネが書かれていると思うし、信用もできる。

本書は痛い。
読んでいて心がちりちり痛む。
それはおそらく私が男性だからなのだろう。
しかし、一方で主人公に肩入れしている自分にも気づく。
舞台が自分の仕事に近いこともあって
よりこの世界に深く入れ込んで読み進めていた。

こんな仕事をしたいなぁ。
でも女性誌は大変だから遠慮しておく(笑)

「燃える波」村山由佳:著 中公文庫
コメント
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