風音土香

21世紀初頭、地球の片隅の
ありをりはべり いまそかり

スケール

2016-08-02 | 世界・平和
最近田中角栄氏が話題となっているが、
彼の施策は100%良かったわけではない。
「日本列島改造論」により、
日本国中ブルドーザーが走り回り
地方の伝統的な生活慣習や風景を軒並みぶち壊した。
「都会に人を集めるのではなく、地方に光を」
と言いながら、
結局はストロー現象で若者が都会へ出て行きやすくした。
典型的な土建政治を作り上げ
利権の奪い合いや札束が飛び交う金権政治でもあった。
ロッキード事件を見るまでもなく
リアルに彼の時代を見てきた世代にとっては
「金」が政治を動かす典型だった。

一方で、地方と都市部のインフラ格差は確実に埋めた。
小泉時代以降に拡大していった格差社会とは違い、
一定のレールに乗った勝ち組と外れた負け組などという
社会的ヒエラルキーは無かった。
学歴がなくても成功できるし、みんな衣食に困ることはなかった。
金太郎飴のようではあったが
全国津々浦々まで道路や鉄道が伸び、
一般の地方人は徐々に生活が楽になっていることを実感できた。

田中氏については、何よりもその人間的魅力が大きかった。
敵味方分け隔てなく人間的魅力で接し、
どんな人に対しても相手の気持ちを慮った人だった。
人の言葉にはきちんと耳を傾け、
ちゃんと落としどころを探るバランス感覚もあった。
権力でマスコミや対抗勢力を押さえつけることなく
自分のやりたいことを選挙で隠してだまし討ちしたりもしなかった。
主張すべきことはちゃんと主張し
敵対相手をこき下ろして貶めることもしなかった。
「この道しかない」などと自分ばかり正当化することもなかった。

要は人間的なスケールが大きかったんだな。
政治家たるもの、それぞれのイデオロギーがどうあれ
そういう大きなスケールを持っていて欲しいと思うのだが、
そんなスケールの政治家は、今いるのだろうか。
コメント
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