風音土香

21世紀初頭、地球の片隅の
ありをりはべり いまそかり

見えざる手

2008-01-17 | 風屋日記
いま世界中を怪物が歩き回っている。
「投資」という怪物が。
(このフレーズ、わかる人にはわかる 笑)

「神の見えざる手」と言ったのはアダム・スミス。
自由主義経済の自然な進展について述べたものだったような気がする。
とはいえ、さすがの彼も現代の世界経済状況は読めなかったとみえる。
需要と供給が価格を決めたのは昔の話。
今は投資家によるファンドや投機が全てを決める。
原油価格高騰も、バイオエネルギーを見越した農産物先物取引価格の高騰も、
すべては投資家達のマネーゲームの結果だ。
果てはサブプライムローンというファンドの信用低下により
世界中の株式市場が影響を受け始めている。
現代における世界経済は「投資家の見えざる手」により左右される。

世界の経済は1980年頃から「神の手」から抜け出し、暴走を始めた。
日本で言えば、円の変動相場制→プラザ合意→グローバル化の流れが
国内経済を変え続け、いつしか「経営哲学」がなくなった。
決算書上、本業でいかに利益を出したかという「営業利益」は軽視され、
資産運用次第でいかようにもなる「経常利益」や「純利益」、
そして資産状況を現すバランスシートが重視されてきている。
そうなれば自然の流れにより
「いいものを作る」「いいものを売る」という経営哲学が忘れ去られ
「利潤を挙げれば勝ち組」という、極めて単純なモノサシだけが
世間を一人歩きし始める。
苦労して品質を維持するよりお金を回して利益が稼げるなら
人間楽な方に流れちゃうからね。

「グローバル」という名の
歯止めなき自由を歌うアメリカ化も問題だ。
M&Aなんてのはもうタブーがなくなってしまった。
買収しあい、設備投資より配当を要求し、企業規模が巨大化する。
昔の「オレはこの事業で社会に貢献するのだ」という高尚な理念が失われ、
会社を作って資金運用により利益を挙げ、
今度は価値の上がった会社を高く売ってしまう。
そんなのは単なる金儲けで、事業活動とは思いたくない。
考え方が古臭いとか、遺物だとか、負け組だとか言われようと。

原油価格は近々大暴落するだろう。
供給が足りなくて高騰しているわけじゃないからね。
投資家たちが「もう儲からない」と感じれば一斉に手を引き、
暴落は一瞬のうちに起きると思う。
そして逃げ遅れた投資家たちはとんでもない額の損失を出す。
機関投資家が被る損失はサブプライムローンの比ではなく
一気に株価が下がり、さらに損失の連鎖を加速させるだろう。
損をするのは機関や個人の投資家だけのように思うかも知れないが、
インフレ基調が残ったままでの不況の奈落は我々の周りで起きる。
金融機関も保険も信用がなくなり、我々自身の足元が揺らぐ。
しかし、こういう経済の仕組みが
「グローバル」の名の元に出来上がってしまっている以上、
私たちは悲しい目でそれらの展開を見ていることしかできない。
「金儲け」に走ってしまった人間の哀しさを感じながら。
コメント (10)
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