風音土香

21世紀初頭、地球の片隅の
ありをりはべり いまそかり

食べ物にまつわる、とっておきの話

2006-03-28 | 風屋日記
昨夜ふと目についたNHKの番組を最後まで見てしまった。
21:15からの「泣いてもいい夜~とっておきの話とどけます」
視聴者からなのかな、食べ物にまつわる思い出を
涙と暖かい心とともにドラマ仕立で語る番組だった。

懐かしくて心にしみる話、家族の暖かさが伝わる話。
私にもいくつかあるよ、そういう話。

    ◇      ◇      ◇

あれはうちの子ども達がまだ幼稚園か小学校低学年の頃。
母ちゃんが出張だったか、大学時代の友人に会いに八戸へ行った時だったか。
いずれ金曜から土曜まで私と子ども達だけで過ごした2日間があった。
それまで母ちゃんが出張時には、まだ小さかったこともあり、
子ども達はどちらかの実家に預かってもらっていた。
でもその時は自分のこと位はできる程少し大きくなり、
私も翌日は休みだったこともあって、初めて3人で過ごした2日間だった。

金曜の夕食は私の実家でごちそうになり、
私が勤め帰りに迎えに行って、夜遅く我が家へ。
3人でワイワイ風呂に入り、
もうすでに、普段は自分達の部屋でひとりで寝ていた子ども達に
「よし、今日は父さんと寝るか」と声をかけると大歓声!!
またワイワイ布団運んだり、並べて敷いたりして、仲良く眠りについた。

翌朝、私にはひとつの計画があった。
なにせ他の家事は一通りこなす私だが、料理だけは全くダメ。
大学時代に別れ話が持ち上がっていた彼女との気まずい雰囲気を和ませようと
麻婆豆腐を作ったはいいけど、大失敗をして逆効果になったことが
まだ私はトラウマとして引きずっていた。
でも今の私は父親、子ども達の食べるもの位作れなくてどうする。
・・・ということで、むかし喫茶店でアルバイトした経験に基づき
子ども達にとっては初体験のピザトーストを作ることにしていた。

冷蔵庫に何があるか分からなかったので、
必要な食材はすべて前夜帰りがけに買ってきていた。
ベーコン、ピーマン、厚切りトースト、そして溶けるチップチーズ。
朝食予定の1時間前には目覚ましで起き、
そそくさとベーコン、ピーマンを切りはじめた。
具を乗せてトーストをオーブントースターに突っ込んだ後はサラダ作り。
火にかけていたカップスープ用のお湯が湧き、子ども達に声をかけた。

「おー!! すげー!!」と飛び起きてきた子ども達。
何となく、何かが足りないような気もしていたが、完璧のつもりだった。
「コレ何ぃ?」「ピザトーストだぜ。初めてだろ?」
「いただきまーす」の声で一斉にかぶりつく・・・
その瞬間何が足りないかわかった。
ピザソースだ。

「おいしー!!」「父さんの作るピザトーストはサイコーだね!!」
という子ども達の言葉を涙が出る程嬉しく感じつつ、
(ホントのピザトーストはこんなものじゃないんだよ)
と心の中で呟いては自分の失敗に哀しい気持ちでいっぱいだった。
その時、ピザソースを忘れたことを子ども達には言えなかった。

その後、子ども達は何度もピザトーストを食べている。
その時の味ももう忘れただろう。
でも私にとっては苦い後悔の味が今でも舌に残っている。
コメント (7)
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