因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
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龍馬伝第17回『怪物、容堂』

2010-04-25 | テレビドラマ

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 勝麟太郎(武田鉄矢)の弟子になった龍馬は、勝とともに海軍の人材要請に各藩邸を訪れ、遂に前土佐藩主山内容堂(近藤正臣)にまみえることになる。自分たちは容堂によって下士として散々に虐げられてきた。これまで喜怒哀楽を素直に顔に出していた龍馬だが、この場面では複雑な表情をみせる。岩崎弥太郎(香川照之)の語りがいつになく割り込むように説明的。

 近藤正臣といえばきざな二枚目の代表格だったが、今回はサブタイトルになっているだけあって、出番は短いものの動かし難い山のごとく、みるものを圧倒する。この近藤正臣といい吉田東洋を演じた田中泯といい、ベテラン俳優が不気味で得体のしれない役柄を怪演しているのが、おもしろさのひとつ。

 勝や近藤長次郎(大泉洋)と大坂に行くことになった龍馬は、千葉道場に別れを告げる。
 佐那(貫地谷しほり)と一緒になって千葉道場を継いでほしいと重太郎(渡辺いっけい)は懇願するが、龍馬は最後に佐那との立合いを願い出る。                                    

 3月末に放送された番外編「龍馬を愛した女たち」で、この立合いの場面の撮影が紹介されており、貫地谷しほりがカット割りせずにワンシーンで撮ってほしいと願い出て、その結果佐那の思いのたけを充分に演じることができたと語っていた。面をとった龍馬は、ここでもこれまでみせたことがない、泣くのを堪えている子どもような表情をみせる。ふたりの激しい剣の打ち合いは、勝ち負けや腕を競い合うものではなく、魂のぶつかり合い、龍馬と佐那でしか成立しない、一種のラブシーンではないか。

 9年も片思いを続けてきたあげくの失恋である。どれだけ年月をかけて尽くしても、龍馬の心が佐那に向くことはなかっただろう。どうしようもない。龍馬は剣士として佐那を尊敬している。「どう思うか」と問われて「尊敬している」と答えるのは、相手を恋愛の対象としてみてはいない、愛していないことの婉曲表現であることが多い。しかし剣の道を通して龍馬と佐那は、男女のあれこれを超越した交わりを得たのである。乙女も加尾も、そして妻になるおりょうにもできないことではないか。潔く筋を通した佐那は見事である。自分は佐那の恋を祝福したい。

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