因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

スタジオソルト第13回公演『パンラが野毛にやって来た GA~!GA~!GA~!』 

2010-04-24 | 舞台

 椎名泉水作・演出 公式サイトはこちら 下北沢OFF・OFFシアター 29日まで(1,2,3,4,5,6,6`,7,8,9,10,11,12)スタジオソルトが下北沢に進出。いつもの相鉄本多劇場とは大きさも町の雰囲気も違うが楽しみに初日を観劇。

 地域密着型の野毛丘動物園にひょんなことから珍獣「パンラ」がやってくることになった。新作のタイトルそのままの内容で、廃園の危機もささやかれる小さな園は、園長代理はじめ飼育係の精鋭を集めた特別チームを編成し、「パンラ」の公開に向けて大奮闘する。パンラが来ることになったきっかけや、パンラがどんな動物なのかなどのあれこれはいささか現実離れしているが、涙ぐましいまでに努力する5人の男たちの姿をみていると、客席の空気も自然に温かくなった。

 スタジオソルトの作品にはコメディとシリアスの2タイプがあって、今回はまぎれもなくコメディなのだが、劇作家の筆も俳優の演技も肩の力が抜けた感じが新鮮に感じられた。動物園の飼育についてもう少し具体的な内容が盛り込んであれば、物語の足元がもっとしっかりするように思われたし、檻の鍵をかけ忘れたエピソードが続くことも気になったといえばそうなのだが、あまり細かいことを言わず、ゆったりと楽しんだほうがいい。この印象をことばにするのはむずかしいのだが、今回の『パンラが~』は、スタジオソルトが次の作品に向かうための緩やかで、しかし確かな助走ではないだろうか。

 実は食事を取り損ね、空腹のままぎりぎりの時刻に劇場に飛び込むことになった。自分はこういう些細なアクシデントにたやすく気持ちが折れてしまうたちなのだが、パンラに取り組む男たちをみているうちに、平気になってしまっていた。劇場を出ると大粒の雨が降り始めている。傘を持っていない。これもアクシデントだ。今夜は観劇前後にアクシデントがあったが、どちらも「パンラ」が持ってきてくれたちょっと嬉しいプレゼントになった。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 劇団印象『匂衣』(におい) | トップ | 龍馬伝第17回『怪物、容堂』 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

舞台」カテゴリの最新記事