因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

追加しました!2017年2月の観劇

2017-01-30 | お知らせ

 まだ1月観劇記録が書けていない舞台があるのですが、さきに2月の予定をお知らせいたしますね。
Ring-Bong第7回公演 『逢坂~めぐりのめあて~』(1
 文学座の俳優山谷典子が戦争と平和をテーマに書く戯曲を上演するユニットの新作は、同じ坂を上って学校に通っていた男女3人が、戦争や戦後の第五福竜丸事件などに翻弄される年月を描いた物語とのこと。このサブタイトルは、宮沢賢治の「星めぐりの歌」。第19回千田是也賞を受賞した藤井ごうが演出を担う。
下北沢演劇祭・下北ウェーブ2017選出 藏下右京×渕上夏帆 二人芝居vol.2
 『月光町月光一丁目三日月番地』これは唐十郎最初期(たしか1964年!)の作品だ。
*劇団民藝 『野の花ものがたり』 (1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25
 内科医の徳永進さんは、勤務していた鳥取の総合病院を出て小さなホスピスを作った。名づけて「野の花診療所」。そこでの日々を記した『野の花通信』を原作に、ふたくちつよしが書き下ろした。
*同じく劇団民藝稽古場公演 三好十郎作『をさの音』
 本作に続いて、夏には青年座・東演・文学座・民藝による新劇交流プロジェクト『その人を知らず』(文学座鵜山仁演出)の公演があり、文学座9月アトリエの会では『冒した者』が上演され、今年はさながら「三好十郎イヤー」の勢いだ。
*文学座創立80周年記念『食いしん坊万歳! 正岡子規青春狂詩曲』
 「狂詩曲」には「らぷそでい」と旧仮名遣いのふりがなが。今年生誕150を迎える俳人の正岡子規が母と妹、俳句の門弟たちと繰り広げる青春群像活劇とのこと。文学座の俳優・瀬戸口郁の戯曲の舞台を見るのはこれがはじめてか。

 2月の観劇に、以下の公演を追加いたしました。
7度1,2) 伊藤全記構成・演出 山口真由のひとり芝居『M.M.S~わたしのシュルレアリスム宣言』国際舞台ミーティングin横浜 TPAM2017「フリンジ」参加作品。舞台はもちろんだが、今回の会場である駒込のLa Grotte(ラグロット)の雰囲気がとても素敵でいよいよ楽しみ。
*タイ・インドネシア・日本共同プロジェクト2015-2017 『Oceans Blue Heart』
 タイの演出家ニコン・セタンの呼びかけではじまった新しい仮面劇創作プロジェクトによる舞台で、劇団印象の鈴木アツトが演出を担う(1,2,3,4 5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21
*第1回高円寺K'sスタジオプロデュース 『ピンクミスト』英国、ウェールズで注目を集める詩人、劇作家のオーウェン・シアーズによる詩劇が初翻訳、初演の運びとなった。

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二兎社41『ザ・空気』

2017-01-25 | 舞台

*永井愛作・演出 公式サイトはこちら 東京芸術劇場シアターイーストで2月12日まで その後三重県文化会館、穂の国とよはし芸術劇場PLAT、長野市芸術館、川西町フレンドリープラザ、シベールアリーナ、えずこホール、盛岡劇場、兵庫県立芸術文化センター、滋賀県立芸術劇場びわ湖ホールを巡演(1,2,3,4,5,6,7

 永井愛が客席に、ジャーナリストに、政治家に、いまのこの国に暮らすわたしたちに熱く問いかける舞台。快作である。人気報道番組が、報道の自由やジャーナリズムと政治との関係を鋭い切り口で取材した特集を放送しようとしている。番組の編集長(田中哲司)、キャスター(若村麻由美)は打ち合わせに余念がない。しかし新聞の論説委員だった大物アンカー(木場勝己)は「戦略的にいこう」と、細かい箇所から特集の取り崩しをもくろみ、やがてさまざまな方向からの圧力に若手ディレクター(江口のりこ)や編集マン(大窪人衛)は振り回され、やがて思いもよらない展開をみせる。

 次第に「新たなる戦前」の様相が危惧される昨今、まさにタイムリーな内容であり、各所に笑いが仕込まれているものの、気楽に笑っていられない重苦しい空気が劇場を支配する。物語のほとんどが放送局の会議室で進行するが、上手にエレベーターがあり、登場人物はそれを使って別のフロアの会議室に出入りするという巧い作りである(大田創・美術)。
 カーテンコールに5人の俳優が並んだとき、「ほんとうにこれだけだったのだ」と軽い衝撃を受けた。放送局と言えば、局の内外問わず大勢の人々がひっきりなしに出入りするイメージがある。常務や専務、局長やほかの部署の人物は台詞のなかに出てくるのみである。
 学校や予備校の寮などが舞台の作品を見るとき、登場人物以外の先生や保護者、生徒たちが出てこないことがどうしても不自然に感じられることが少なくない。
 しかし本作は無機質な会議室に場を絞ったこと、エレベーターや舞台上部の別空間を、人物が台詞を言う場面だけ明転し、台詞が終わるやすぐに暗転して、放送局という巨大組織の闇を暗示してみせることでいっそう高い舞台効果を上げた。上層部や政局など、顔が見えないだけによけいに不気味で、底知れぬ恐ろしさを醸し出す。
 もしこれをテレビドラマにしたなら、ここまでシンプルな作りにすることはむずかしく、たくさんの人物を登場させざるを得なくなって、全体のイメージが拡散することが想像される。むろん専務にはあの俳優、総理にはこの人が・・・と想像する楽しみはあるけれども。

 終幕だけ、屋外の場面になる。あれから2年後、憲法は改正され、自衛隊が国防軍となり、ともに番組を作っていた5人はそれぞれの道を選んだ。放送局という組織からはじき出された編集長は、身一つで調査報道を始めるという。役員に昇進したキャスターは、彼に決別を告げるが、ややあってその場に戻る。ベンチから夕陽を見つめるかつての戦友。苦く、切ない幕切れである。

「ザ・空気」というタイトルからは、やや軽い印象も感じられる。もっと些末なことで挙げ足を取られて右往左往する人々の様相かと想像したが、舞台で描かれているのは、権力や圧力がじわじわと迫りくる恐怖や、それに屈した絶望や屈辱、誇りを失う悲しみであった。

 欲を言えば、キャスターと編集長、内外の圧力に疲弊して自殺した元編集長が実は…という設定はいささか凡庸ではないか。ともに戦う職場の仲間同士。男女の色恋を超えた情愛ある交わりが、田中哲司と若村麻由美なら可能だと思うのである。

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東京バビロン 若手演出家支援プログラムより 7度『あこがれ』

2017-01-19 | 舞台

*テネシー・ウィリアムズの一幕劇集から『しらみとり夫人』、『バイロン卿の恋文』ほか 伊藤全記構成・演出 劇団サイトはこちら1シアターバビロンの流れのほとりにて 22日まで 
 この長い名を持つ劇場に、ようやく足を運ぶことができた。賑やかな王子からたった一駅お隣の王子神谷の庚申通り商店街を十数分、ただひたすら歩いたところに、瀟洒な外観の劇場が現れた。入口は、受付のテーブルを置くとほぼいっぱいになってしまうが、右壁のチラシラックは特製なのか、チラシが木枠にきちんと収められて見やすく、しかも取りやすい作りだ。劇場のなかは意外に広々としており、天井の高さもじゅうぶん、客席の設置もゆったりして圧迫感がない。

 さてテネシー・ウィリアムズの一幕劇は、2011年12月、文学座アトリエの会公演『MEMORIES』を観劇して以来である。このときの印象がいまひとつだったこと(汗)、また伊藤全記による7度の舞台にもまだなじんでいないこともあり、少々身構えながらの観劇となった。

 今回の上演はつぎのような流れで行われた。まず『「しらみとり夫人」より』、幕間に「『ロング・グッドバイ』『カミノ・レアル』より」、そして「『バイロン卿の恋文』より」で終わる。いずれもタイトルが「○○より」となっており、主に「しらみとり夫人」と「バイロン卿の恋文」を軸に、そのほかの作品も反映した構成だ。「ロング・グッドバイ」に登場する作家の男性とその母のやりとりが複数の作品を緩やかにつなぎながら、あたかもこの作家が執筆中の物語が彼の幻想の中に立ち現れているかのような印象を持った。
 複数役を兼ねる俳優もあるせいだろうか。これまで『欲望という名の電車』や『灼けたトタン屋根の上の猫』などの長編を見るときのように、ひとつの物語、ひとりの人物に対して集中する見方はできなかった。
 舞台からは作り手が模索している手つきが感じられ、それが案外と心地よい。テネシー・ウィリアムズの作品に対してこのような手法(といってよいのかはわからない)で舞台を作ることは予想もつかず、それだけに観客として7度の舞台にどう向き合い、受け止めるか、観客として、どうあればよいかを模索する体験となった。

 前述のように、「シアターバビロンの流れのほとりにて」は居心地がよく、今回の『あこがれ』はその雰囲気を活かし、劇場ぜんたいをとてもよい空間に構成している。なので、舞台については作り手の意図をまだじゅうぶんに受け止められないところは多々あるものの、その空気の中で心身リラックスして、いまの自分の状態で楽しむことができたのだ。それを喜び、つぎの7度に備えたい。

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追加しました:2017年1月の観劇

2017-01-14 | お知らせ

 早や松過ぎとなり、すっかり更新を怠っておりましたが、みなさま、明けましておめでとうございます。本年も因幡屋通信/因幡屋ぶろぐをよろしくお願い申し上げます。すでに観劇した公演もありますが、今月の観劇予定(観劇したい!も含めて)公演をお知らせいたします。

劇団コヨーテ 亀井健一人芝居『身毒丸』
 身毒丸と言えば、蜷川幸雄演出、藤原竜也主演の舞台の印象があまりに強いのだが、開幕ペナントレースの村井雄の演出で、しかも一人芝居とは?!北海道から下北沢に殴り込みの気合。
鵺的トライアルvol.1『フォトジェニック』(1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13
 公演チラシには、美しい女優が瑞々しい肢体をけだるげに横たわらせている写真が。公演は全日程完売の人気だ。
二兎社41『ザ・空気』(1,2,3,4,5,6,7
 永井愛作、演出の新作は、人気報道番組の現場が舞台とのこと。
MSPインディーズ・シェイクスピアキャラバン製作
 朗読公演・増補版『唐十郎×シェイクスピア-シェイクスピア幻想-』
 昨年10月、明治大学文学部の唐十郎企画展の連動企画として開催された朗読会がバージョンアップして再演の運びとなった。初演の動画はこちらでご覧になれます。
小西耕一ひとり芝居 第七回公演『好きにならない自信がある』(1,,2,3,4
 しばらく足が遠のいていた小西耕一のひとり芝居。今回はほんとうに「ひとり芝居」なのかな?

 【観劇追加公演】
*東京バビロン 若手演出家支援プログラムより
 7度1)『あこがれ』
 テネシー・ウィリアムズの一幕劇集から、『しらみとり夫人』、『バイロン卿の恋文』を中心に構成するとのこと。会場である「シアターバビロンの流れのほとりにて」は、長らくその名称が気になっていた劇場であり、このたびはじめて足を運ぶ。

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鵺的トライアルvol.1『フォトジェニック』

2017-01-13 | 舞台

*高木登作・演出 公式サイトはこちら スペース梟門 15日で終了(1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13
 「フォトジェニック」とは、写真向きであること、写真うつりがよいことを指す。「鵺的トライアルvol.1」と銘打った舞台は、当日リーフレットに掲載された高木の挨拶文によれば、「今回のような公演をこの先も打てるかどうか。なのでやりたいことをやっておこうと思い、このようなかたちになりました」とのこと。

 冒頭、カメラマンが登場し、客席に向かって語りはじめる。このあとも彼は物語の進行役として、ほかの人物とは少し距離をおいた立ち位置を取り、観客に語りかけつつ、物語に飲み込まれてゆく。彼は撮影したモデルをこれまでに4人殺した。巷では猟奇的殺人として話題になっているが、殺された女性の人数が5人と噂されている。覚えのない殺人の謎を解くため、カメラマンは一般客のふりをして、5人目の女性がモデルをしていたという写真スタジオを訪れる。

 写真スタジオと言えば、記念写真や証明写真を「撮ってもらう」ところと思っていたが、舞台となるのは女性モデルを置き、彼女たちを撮影したい人に自由に撮らせるシステムのスタジオだ。舞台には椅子が4脚置かれ、出演の女優4人がそこに掛ける。スタジオの店長、所属のモデル3人、カメラマン兼店長のアシスタントの4名である。5人めの死者について証言するさまざまな人の役も兼ねており、本役とはかけ離れたキャラクターの人物も次々に演じる。今回の舞台の特徴のひとつである。

 つぎの特徴は、映像を大胆に用いたところである。5人めの死者を知る女性たちがカメラに向かって、つまりカメラマン氏に向かって証言する映像を映し出す。ことばはスクリーンに字幕で映され、声は聞こえない。声が聞こえないのは少し残念でもったいなく、肉声で聞きたいもどかしさも確かにあったが、スクリーンに大写しになる女性の顔はこちらに迫るほどで、そこに「口パク」の不気味な雰囲気が加わり、舞台が立体的に変容する効果を生んでいる。

 物語はありえないところへ着地して終わる。美しいレズビアンと思われた店長が実は…妹は姉のことを実は…等々最後の最後まで観客を安心させない展開も手が込んでおり、出演俳優も今回の趣向に応えるべく、健闘した。大上段に振りかぶった風の演技が気になる人物もあったが、これくらい構えて演じなければ、作品の趣向に負けてしまうのかもしれない。

 劇作家は書きたいと思う作品を書き、作りたいものを作ることが大切だ。「ホラー」と言ってもよいほど恐ろしく、救いのない物語であるが、作りたいものを作った高揚感や、その過程で思い切り楽しんだであろうことが想像される。作り手の思いというのは、やはり客席に伝わる。作り手の喜びを、自分は客席において感じることができた。ぜひvol.2を!と思うが、ごくたまにあるほうが楽しみも増すとも考えられる。秘かに待つことにしよう。

 この公演との連動企画として、カメラマン役の橋本恵一郎の写真展『フォトジェニック』が開催されるとのこと(2月3日金曜~8日水曜 12時~20時@新宿眼科画廊)。橋本の個人サイトはこちら

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