因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

因幡屋10月の覚え書き

2011-10-31 | お知らせ

 今月心に強く残った舞台は以下の通りです。
*劇団文化座創立70周年記念『獅子』
*風琴工房code.30『Archives of Leviathan』
*shelf volume12『構成・イプセン-Composition/Ibsen』

 舞台以外では、シアターアーツ主催の劇評講座『劇評って何だろうか・・・・・・』と「古典戯曲を読む会」に参加いたしました。前者は演劇批評誌「シアターアーツ」主催のシンポジウムです。 
 演劇評論家で第三次シアターアーツ編集長の西堂行人氏の司会により、20~30代の若手から40代のベテラン編集員に、演劇ジャーナリストの徳永京子氏、現代演劇ウォッチャーの高野しのぶ氏をゲストに迎えて、タイトルのとおり劇評について考えるもの。参加者は15名弱だったでしょうか。

 自分は朝日新聞に掲載される徳永さんの劇評をいつも楽しみに拝読しておりますが、それは批評の切り口が新鮮で率直であり、読みやすいからです。シンポジウムでのお話も、その文章と同じように具体的でわかりやすく、納得のいくものでした。大収穫です。

 日曜の夜に150分ノンストップの議論にはさすがに疲労困憊。

 いや消耗したのは時間の長さや昼間の疲れのためではありません。

 劇評に対するとらえ方、批評の姿勢のちがいを、「みんなちがってみんないい」と明るく前向きに考えられず、徳永京子さんが朝日新聞紙面において、ご自分の肩書を演劇ライターから演劇ジャーナリストとしたいきさつや、みずからを劇評家と名乗らない理由について、「アカデミズムの壁」という表現をされておりましたが、その感覚に近いのかもしれません。
 違和感、居心地のわるさ、自分の勉強不足や劇評を書く上での適性や能力の欠如を自覚するのは楽しいものではありません。自分にできることと目指すこととの距離、それに近づく方法を試行錯誤しながら続けていくだけで、自虐的に落ち込むのは生産的ではありませんが、やはりあの場において顔をあげて立ちあがるには、いまの自分はまだまだ脆弱です。

 そのなかで前述のように、徳永さんのお話には勇気が与えられました。

『秋葉原事件 加藤智大の軌跡』の著者・中島岳志氏のインタヴュー(朝日新聞10月27日付)を興味深く読みました。本書執筆にあたって意識したのは「普通の人が読めるもの」であり、「ある一定の読者にとってしかなじみのない言語体系ではなく(略)」そして、「わかりやすさというのは単純化とは違う」とのこと。
 自分の作っている通信やブログには、編集者という客観的でシビアな存在はありません。自由に書けるメリットを楽しみつつ、読んでくださる方の存在をこれまで以上に意識しなければと思います。通信を手にとって、ブログにアクセスしてくださった方には舞台の作り手、お客さん、そのなかにも既にその舞台をみたことのある方、これからみるかもわからない方などさまざまでしょう。読んでくださった方に、何らかの生産的なもの、建設的なものを生みだせることを願って、頭を働かせ、からだを動かし、心を尽くして、これからも書いていきます。

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因幡屋11月のなにか

2011-10-26 | お知らせ

 今朝はずいぶん空気がひんやりしていると思ったら、夕刻に木枯らし1号が観測された由。 
 早くも冬の足音が聞こえてきた。体調管理に気をつけて、充実の観劇になりますよう。
劇団印象第16回公演『妻月 さいげつ』 
 日韓交流公演 龍田知美とべク・ソヌが楽しみな共演。(1,2,3,4 5,6,7,8,9,10,11)
文学座『岸田國士傑作短編集』 
 先日の古典戯曲を読む会で取り上げた作品が上演される。
elePHANTMoon#11『業に向かって唾を吐く』 (1,2,3,4,5,6)
モナカ興業#10『43 Forty three』 (1,2,3,4,5) 
 劇評サイトwonderlandのクロスレヴュー挑戦編の演目。
ぼっくすおふぃす・プロデュースvol.21『公園にて』
*第8回明治大学シェイクスピアプロジェクト『冬物語』
パラドックス定数 第27項『戦場晩餐』 (1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12)
 夏に新作をみたと思っていたら、もうつぎの作品の上演だ。野木萌葱の劇作の旺盛なこと、高い完成度に感嘆。この人はどこを目指して進んでいるのだろうか。
劇団劇作家「劇読み!vol.4」 (1,2,3,4)。2009年のvol.3に行けなかったため、久しぶりの「劇読み!」になる。8演目もあり、劇作家、演出家、出演者それぞれに魅力的で、観劇の日にちがなかなか決められない。公演期間中、スペース雑遊に住みたいくらいだ。
『日本の問題』 昨年の『Project BUNGAKU太宰治』に続いて、小劇場界の猛者たち8つの劇団が競い合う演劇祭だ。最終日をのぞいてすべての回でトークセッションが予定されており、その顔ぶれのすごいこと。

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新派公演『女の一生』

2011-10-25 | 舞台

*森本薫 作 戌井市郎 補綴 大場正昭 演出 公式サイトはこちら27日まで
 一昨年に新派初演が好評を博して再演の運びとなった。
 平成23年度文化庁芸術祭参加作品でもあり、9月から10月はじめまで全国を巡演し、三越劇場を経て京都・南座で千秋楽を迎える大プロジェクトだ。劇団新派の歴史については公式サイトに詳しく、再来年で創立125周年を迎える由。旧派(歌舞伎)に対して明治時代に生まれた「新演劇」がその成り立ちであり、自分のなかでは「歌舞伎と新劇のあいだに生まれて、どちらの要素も兼ね備えたもの」という認識であった。

 新派公演では『ふりだした雪』の前に、井上ひさし作、木村光一演出の『頭痛肩こり樋口一葉』をみたことがあるのを思い出した。波乃久里子の演じる一葉に、こまつ座公演で見慣れた舞台とは違う、新鮮な印象をもったのを覚えている。NHK大河ドラマ『葵~徳川三代』で、波乃が演じていた浅井三姉妹のお初を演じており、淀君の小川真由美や江の岩下志麻にはさまれた難しい位置にあって、決して大仰にならず、自然で日常的な演技が好ましかったのが舞台へ足を運ぶきっかけ、ということを因幡屋通信7号(2000年9月発行)で書いておりましたね・・・。順々に思い出しました。
 先週の若手によるアトリエ公演がいまひとつしっくりこなかったため、エイヤ!と決心して本公演に足を運んだ。

 結論から言うと、アトリエ公演で抱いたもやもやをすっきりさせるには、本公演もまた自分にとっては明確な印象を残すものではなかった。自分が文学座の舞台のリズムや雰囲気へのなじみが非常に強く、俳優の台詞の言い方ひとつ、そこから生まれる客席の反応のすべてを、どうしても比較してしまうことが主な要因であろう。主要キャストのひとりが台詞を言い淀む場面が何度かあり、感興が削がれてしまったこともある。まったく冷や汗ものでありました。
 演者が変われば演技も変わり、それを受ける客席の反応も変わる。頭ではわかっているのだが、そのひとつひとつを、「そうか、あの台詞をこんな感じで言うこともできるのだな」と新鮮に受けとめることができなかったのだ。

 新派には長い歴史があり、かつ常に新しいものを取り入れようとする気概がある。それをもっと確かな手ごたえとして感じ取り、楽しめるようになりたい。この実感を新派版『女の一生』の収穫としよう。

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古典戯曲を読む会@東京

2011-10-24 | 舞台番外編

 公式サイトはこちら 会がはじまるきっかけや、これまでの活動の様子も詳しい。
 古今東西の戯曲を声に出して読んでみようという試みが生まれ、継続していることがすばらしい。さまざまなところに演劇の可能性があることは、昨年秋のクリニックシアター公演『ザ・ピンター・ツアー』が記憶に新しいが、「古典戯曲を読む会」も、出席者の顔ぶれは、俳優や制作など実際に演劇にたずさわる方々だけでなく、研究者やほとんど舞台をみない方と実にさまざま。
 ツイッターやミクシィが効を奏し、今回は初参加4名、総勢11名のにぎやかなものとなった。
 因幡屋も新参で、内心戦々恐々で教室に入ったが、世話役の方々はじめ常連の皆さんも自然に受け入れてくださった。今月の課題は岸田國士の『驟雨』、『明日は天気』、『秘密の代償』。

 岸田國士とその作品についてのレジュメをいただき、続いてごくシンプルに座った順に役をわりふって『驟雨』を読みはじめた。実際の舞台では、ナイロン100℃の『犬は鎖に繋ぐべからず』と、東京乾電池の月末劇場をみたことがある。それから大学時代の恩師から伺った、劇団民藝公演での終幕の印象。
 短いお芝居と思っていたら、読んでみるとこれが長いこと長いこと(笑)。ひとが読んでいるのを聞くときはいろいろなことを考えるが、さて自分が読む番になると余裕はまったくなくなる。恥ずかしながら因幡屋は夫の譲役をいたしました(汗)。妻とその妹のりょうほうをうまくかわしながら、ともかくも何とかその場をおさめる。ちょっとずるいなと思いながらも、実社会に出て働いている男性の腕前というか、妻や妹よりも長けていることをあまり嫌みにならぬよう示す。難役だ。

 『驟雨』を読み終わったところで時間になる。
 実際に舞台づくりに関わる仕事をもつ方の感想や疑問は具体的で率直であり、芝居をみない方の感想は新鮮であった。自分が本作に対してずっと抱いている疑問は、夫の譲が帰宅する場面だ。妻の問いかけに返事もしないで奥に去り、声だけで「おい」と呼び、妻は黙って奥にはいって長い間。この場が示す夫婦の関係とは?

 来月早々、文学座が岸田國士短編集の上演を行う。
 舞台をみる楽しみ、戯曲を声に出して読み、また読み返す楽しみが増えた。
 温かく受け入れてくださった会の皆さまに感謝いたします。

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新規設置先、もうひとつ!*LIBERTY

2011-10-22 | お知らせ

 えびす組劇場見聞録と因幡屋通信の新規設置先がもう一か所増えました!
 ほんとうにありがとうございます。
 LIBERTY(リバティ)さん 群馬県前橋市にある紅茶専門店で、店内でライブや朗読会なども催される由。紅茶とお芝居と言えば、別役実ですね。コーヒーではなく紅茶。テーブルにかけて紅茶を飲みながら、中村伸郎さんと三谷昇さんが砂糖を入れる入れないの会話をする『メリーさんの羊』が思い出されます。
 訪れた方がおいしいお茶を飲みながら、舞台を楽しんでいただける一助となりますように。

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