因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

ペンギンプルペイルパイルズ#10『不満足な旅』

2005-11-30 | 舞台

*倉持裕 作・演出 下北沢ザ・スズナリ


なかなかいっぺんで言えない「ペンギンプルペイルパイルズ」初体験。
カーニバルの喧噪に包まれた異国の街。安ホテルの一室が舞台である。
部屋にいるのは入国早々彼女とけんか別れした男(小林高鹿)と、この旅行で紹介された彼女の病弱な弟(吉川純広)と、知り合ったばかりの世界旅行中の男(宮崎吐夢・大人計画)である。そのうち象のパレードで踏みつぶされそうになって助けられた日本人会社員男性(玉置孝匡)もやってくるし、隣の部屋では「生き女神」の同窓会が行われており、そこには「元生き女神」の日本人女性(ぼくもとさきこ)がいたりする。

互いにほとんど初対面のもの同士が、初対面にしてはいささか乱暴でずけずけしたやりとりをかわす。
彼女と喧嘩したり病気だったり、後ろめたい過去を抱えていたり、人物たちの背景や心のうちはなかなかに複雑。
おもしろいのはそれらすべてが明らかにされるわけではないところだ。
劇中、喧嘩別れした彼女が部屋に戻ってくるらしい場面がある。
彼氏が激怒して彼女を中に入れないため、実際の姿は見えない。
さらに終幕、もう一度部屋に戻ってきた彼女の影だけが、部屋の壁に大きく不気味に映る。
彼女が中に入ってきたら、この物語はどうなっていくのか。
それがまったく読めないところが、逆に爽快であった。
物語ぜんたいに影を落としている存在ではあるが、彼女こそがこの不満足な旅の鍵を握っているわけでもないのだろう。



はじめての劇団は距離の取り方が難しく、周囲のお客さんほどは笑えなかった。
安心して笑えたのはカーテンコールのあと、退場する俳優たちが出口に殺到して、押すな押すなの雰囲気になるところであった。これも演出なのだろうが。



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風琴工房若手企画公演『子供の領分』

2005-11-30 | 舞台

*詩森ろば 脚本・演出 門仲天井ホール


門前仲町の賑やかな商店街から少し歩いたところにあるビルの8階が門仲天井ホールである。
中に入ると少し広めのワンルームマンションくらいのスペースに60席ほどの椅子が置かれている。
窓からは向かいの高速道路がみえ、舞台というよりどこかの部屋にお邪魔しているような雰囲気である。

ゲイのカップルが暮らす部屋にネットで買われた女の子が乱入してくる。
似たような話は映画でも舞台でもみたことがある。不意の闖入者に戸惑い、怒りながらも次第に心を通わせ合い、「奇妙な共同生活が始まる」「三人のあいだに不思議な友情が芽生える」というパターンである。

今回はそのいずれでもなかった。三人の若者たちが最初から最後まで愛とセックスについて、激しくぶつかりあう。一時間十五分の短いものなのに、やや長く感じられたのは台詞の抽象性を具現化するには俳優の肉体の若さが(演技も含めて)ついていってなかったせいだろうか。かといってこれは若い俳優が演じるのでなければ違った話になってしまう。

みたのは昼の回だったので、お芝居のあいだじゅう、外の明るい光が部屋に差し込んでいた。
最後に女の子は勢いよく部屋を出て行くが、これが夜の街だったらどんな印象になるのだろうか。


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チェルフィッチュ『目的地』

2005-11-28 | 舞台

*岡田利規作・演出  こまばアゴラ劇場
 チェルフィッチュ初体験。
これが「超リアル日本語」と呼ばれる言葉づかいか。
冒頭、登場した女優が「これから『目的地』という芝居をやります。」と言った後、だらだらと話し始める。内容は微妙にずれていくし、からだを妙に動かしたりするしで、なかなか集中できない。

港北ニュータウンに住む若い夫婦が猫を飼おうとして、捨てられたペットの里親探しのイベントにでかけ、可愛い猫をみつける。しかし結局彼らはその猫を引き取らなかった。妻が妊娠していることがわかったからである。
若い夫婦の周辺の人物も、それぞれに漠然とした不安を抱えて生きていることなどはそれこそ漠然と伝わってきたが、この手法について心を動かされるには至らなかった。



「超リアル日本語」とはいえ、決して自然な日常の言葉(彼らのあいだに会話は成立していない)とは思えなかったし、この終わりそうにない台詞を稽古して話しているのかと思うと、どうにも素直に受け取れなくなる。
かといって見終わったあと、ぐったり疲れたわけでもなく、どうにも説明できない何かすっきりした感覚があったことも確かだ。しかし次回公演にも行ってみよう、と決心するにはもう一押し。
もっと言葉を、演劇を信じたいと思った。



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2005-11-25 | お知らせ
因幡屋ぶろぐにお立ち寄りの皆さまへ
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ウーマンリブ『七人の恋人』

2005-11-21 | 舞台

*宮藤官九郎作・演出 本多劇場


 友人からチケット救済依頼があり、急遽棚ぼたの観劇となった。
学園ものの体裁をとったオムニバス形式の物語。田辺誠一や尾美としのり、阿部サダヲなどテレビでもおなじみの俳優がのびのびと元気に遊んでいる印象である。
舞台左上に小さなスクリーンがあり、時折映像も映し出される。
最近舞台の中で映像を使う上演を何度かみる機会があったが、効果的な使い方が難しいことがわかる。
そのあたり本公演はスクリーンの使い方に関してはしっかりと遊ぶ姿勢を貫いており(いや、そんなに真剣ではないか)、
舞台の生の部分とのバランス感覚が絶妙であった。「ほとんど三宅マン」の映像、大好きである。

ただこれがチケットを自力で必死で取ったのだとして、その労苦に見合うだけの手応えがあったかというと少々怪しい。ひたすらまったりとくつろいで過ごしてしまったからである。そのくせ中盤からなぜか疲れて身を乗り出すような気力をなくしている自分に愕然。音楽室の放課後の風景から始まって、歌舞伎町のホストクラブ、マタニティエアロビクスの教室など、話はどんどん迷走していく。個々のシーンのおもしろさは覚えているものの、そこから全体的な何かを掴むことはできなかった。


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