因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
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龍馬伝第44回『雨の逃亡者』

2010-10-31 | テレビドラマ

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 長崎でイギリス人水夫が日本人武士に斬り殺された。その武士が白袴を着ていたことから、海援隊に嫌疑がかかる。銃の買い付けがうまくいっていた矢先の事件だ。沢村惣之丞は奉行所に引き立てられ、弥太郎は商売の邪魔をされる。長崎奉行の隠密をしていたお元も巻き込まれ、遂にキリシタンであることが知られてしまう。

 お元を演じる蒼井優が若手女優のなかでも屈指の演技派であることもよくわかったし、龍馬がお元がなぜ身の危険を冒してまで異国の神にすがるのかを理解し、秘かにそれを守ろうとしていたこともすごいと思う。しかし史実はいったいどうであったのか。密航の手助けを、しかもそれは隠れキリシタンである。大浦屋のお慶も巻き込んで、大丈夫なのだろうか。いくら長崎一の売れっ子とはいえ、お元が外国で生きていく手立てはあるのだろうか。今夜の龍馬伝は疑問符だらけだ。龍馬暗殺まであと三月だというのに。

 そんななか、岩崎弥太郎が土佐藩から離れ、龍馬とも決別していよいよ独自のビジネスを始めようとする物語の副筋は、地味だがもっと注意して見守っていいだろう。雨のなかお元を探す龍馬に向かって、お前は疫病神だ、目の前から消えろと弥太郎は龍馬と目をあわさず言う。あの場面の弥太郎は、自分の商売の邪魔をされたことに腹を立てているだけではないと思えた。せっかくうまく一緒にやっていけそうだったのに、その関係を台無しにしてしまった龍馬への怒りがあるのではないか。武市半平太を窮地から救おうと、後藤象二郎の前で大芝居をやって再び土佐を去ろうとする龍馬に「嫌じゃいやじゃ」とすがりついた弥太郎の必死の姿を思い出すのである。また弥太郎は龍馬とは違う面でお元に対して理解を示しており、お元もそれに応えていたことが窺える。好意とも同情とも言えない複雑な感情で、同じ匂いのする者どうしであるという気持ちが裏切られた悲しみもあったのではないか。

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