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Lord Byron, "When We Two Parted"

ジョージ・ゴードン、バイロン卿
「ぼくたちは別れた」

1.
ぼくたちは別れた。
沈黙と涙のなか、
心は半ば破れ、
もうこれ以上会わないと。
君の頬は青白く、冷たく、
キスはもっと冷たかった。
あのときの悲しみが、
今もつづいてる。

2.
朝露が
ぼくの額に冷たく刺さった。
いわば思えば前ぶれ、
今の気持ちの。
君は誓いをみな破り、
軽い女といわれてる。
君の名を聞くと、
ぼくまで恥ずかしい。

3.
君の名は、
君の死を告げる鐘のよう。
戦慄がぼくを襲う--
あんなに大事な人だったのに。
誰もぼくと君の関係を知らない。
ぼくたちの深い関係を。
ぼくは君を悲しみ続ける、
言葉にならないくらい深く。

4.
会っていたことは秘密--
悲しんでいることも秘密、
君が忘れるなんて、
君があざむくなんて。
もしどこかで君に会ったら、
何年もたってからまた会ったら、
ぼくはなんていおう?
黙って泣く?

* * *
George Gordon, Lord Byron
"When We Two Parted"

1.
When we two parted
In silence and tears,
Half broken-hearted
To sever for years,
Pale grew thy cheek and cold,
Colder thy kiss;
Truly that hour foretold
Sorrow to this.

2.
The dew of the morning
Sunk chill on my brow―
It felt like the warning
Of what I feel now.
Thy vows are all broken,
And light is thy fame:
I hear thy name spoken,
And share in its shame.

3.
They name thee before me,
A knell to mine ear;
A shudder comes o'er me―
Why wert thou so dear?
They know not I knew thee,
Who knew thee too well:―
Long, long shall I rue thee,
Too deeply to tell.

4.
In secret we met―
In silence I grieve
That thy heart could forget,
Thy spirit deceive.
If I should meet thee
After long years,
How should I greet thee?―
With silence and tears.

* * *
内容はステレオタイプ的。

x/x (弱強弱) のリズムが特徴的。
(一貫してはいないが。)

* * *
英語テクストは次のものから。一部修正。
http://www.gutenberg.org/ebooks/21811

* * *
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Shakespeare, from Macbeth 1.5

ウィリアム・シェイクスピア
『マクベス』 1幕5場より

マクベス夫人:
カラスがしゃがれた声で
鳴いてる、ダンカンが城に来たことを告げて・・・・・・
そう、死ぬためにね。さあ来て、人を人殺しにする
悪霊さんたち。あたしを女でなくして。
頭のてっぺんから足のつま先まで、残忍な血で
いっぱいに満たして! 最高に濃い、どっろどろの血で!
良心の通り道なんてふさいでしまって。
人の心がチクチクよみがえってきて、気持ちが揺らいでしまって、
この残忍な仕事ができなくなったら困るから。最後まで
ちゃんとやりたいから邪魔しないで! この胸に来て、
母乳を空っぽにして、かわりに苦い内臓液を入れて。ね、殺しの使者さんたち?
人には見えないけど、あなたたち、
誰かが道からはずれるときにはいつも来てるんでしょ? それから、夜の闇、
あなたも来て。真っ暗な地獄の煙であたりをつつんで。
あたしのナイフが自分で開いた傷跡を見ないように!
真っ暗な雲の毛布の隙間から天がのぞきこんで、
「待て! やめなさい!」 なんて叫んだりしても困るから!

* * *
マクベス:
ねえ、おまえ、ダンカンが今夜この城にやってくる。

マクベス夫人:
出発はいつ?

マクベス:
明日、とのことだ。

マクベス夫人:
あら残念、もうあの人は明日のお日さまになんて会えないわ!
ねえ、領主さま、顔に書いてあるわよ、
これからおかしなことをします、って。うまくだますには
みんなと同じ顔をしてなくちゃダメ。ちゃんと歓迎してあげて。表情と
しぐさと言葉で。悪いことなんて考えたことない花みたいな顔をするの。
そして心で蛇になるの。ね、あなたはあの人をきちんと
お迎えして。そして今晩の
大事な仕事はあたしにまかせて。
うまくいけばあたしたち、昼も夜も、これからずっと
最高の支配者になれるわ。

* * *
William Shakespeare
From Macbeth 1.5

LADY MACBETH
The raven himself is hoarse
That croaks the fatal entrance of Duncan
Under my battlements. Come, you spirits
That tend on mortal thoughts, unsex me here,
And fill me from the crown to the toe top-full
Of direst cruelty! make thick my blood;
Stop up the access and passage to remorse,
That no compunctious visitings of nature
Shake my fell purpose, nor keep peace between
The effect and it! Come to my woman's breasts,
And take my milk for gall, you murdering ministers,
Wherever in your sightless substances
You wait on nature's mischief! Come, thick night,
And pall thee in the dunnest smoke of hell,
That my keen knife see not the wound it makes,
Nor heaven peep through the blanket of the dark,
To cry 'Hold, hold!

* * *
MACBETH
My dearest love, Duncan comes here to-night.

LADY MACBETH
And when goes hence?

MACBETH
To-morrow, as he purposes.

LADY MACBETH
O, never
Shall sun that morrow see!
Your face, my thane, is as a book where men
May read strange matters. To beguile the time,
Look like the time; bear welcome in your eye,
Your hand, your tongue: look like the innocent flower,
But be the serpent under't. He that's coming
Must be provided for: and you shall put
This night's great business into my dispatch;
Which shall to all our nights and days to come
Give solely sovereign sway and masterdom.

* * *
英語テクストは次のページより。
http://shakespeare.mit.edu/macbeth/full.html

* * *
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From Pope (tr.), The Iliad of Homer (Achilles Chasing Hector)

アレグザンダー・ポウプ (訳)
『ホメロスのイリアス』 22: 167-210

俺たちは友だちじゃない。おしゃべりするために樫の
木陰にやって来たわけではないし、いっしょに旅をしたいわけでもない。
静かに仲よく語りあう、なんて季節でもない、
夕暮れ時に散歩する恋人たちのように。
俺たちは戦うために来たんだ。誰が死に、
誰が勝つか、そんなことは天が決めればいい--
こう考えながら、神とも見まごう姿でアキレウスは近づいてきた。
威圧的な彼の兜の羽飾りが、足どりにあわせ、うなづくように揺れている。
手には父ペーレウスの槍。それは今、この父より強いアキレウスに握られて
きらめき、震える光を大地に投げかける。
胸の鎧も光を放ち、まさにまばゆいばかり。
まるでゼウスの稲妻か、のぼる朝日であるかのように。
そんなアキレウスを見てヘクトールは、並ならぬ恐怖に襲われる。
神に撃たれたかのように、彼は怯み、後ずさりし、飛ぶように逃げる。
門を出て、城壁を後にする。
アキレウスは、風に羽が生えたかのような速さで追いかける。
それはまるで、息絶え絶えな鳩を鷹が追うときのよう。
(鷹とは、海のように青い空をもっとも速く駆ける鳥。)
今、まさに獲物をつかむ、いざつかまん、というとき、
鷹は、さらに速度を上げて、空の道を斜めに横切る。
くちばしを広げて甲高い叫び声をあげ、
鉤爪の狙いを定め、羽ばたく鳩に一気に襲いかかる。
まさにそのように、アキレウスはまっしぐらに追い、ヘクトールは逃げてひた走る。
かたや攻めの狂気に身をまかせ、かたや恐れに駆りたてられ。
今、ふたりは城壁まわりを走る、
高い見張り塔が大地を見わたす下を。
今、ふたりは、いちじくの木々が広く影を投げかけるところを走る、
道にそって円を描きつつ、そして土煙でさらに大きな円を描きつつ。
次にふたりは、スカマンデル川の源を飛びこえる、
あのふたつの泉が大地を引き裂いてほとばしり出ているところを。
熱いほうの泉は、焦げつく裂け目から立ちのぼる、
空に向かって蒸気を吐き出しつつ。
もうひとつの泉は、緑の土手にあふれ出す。夏の暑さのなかでも
水晶のように透明で、そして冬の雪のように冷たく。
泉から吹き出す水は、それぞれつやつやの
大理石の水槽に注がれる。
今ではギリシャ人を恐れて表に出ないトロイアの女たちだが、
かつて平和だった頃には、そこできれいな着物を洗ったものだった。
その脇をふたりは通る。ひとりは追いかけ、ひとりは逃げる。
強い者が逃げている、より強い者に追われて。
その速さの凄まじいこと--つまらぬ褒賞をめぐる競技ではないからだ。
これは、ありふれたいけにえの獣をめぐる争いではない。
ふだんの競争とは違う--
その褒賞とは他でもない、偉大なるヘクトールの命なのだ。

* * *
Alexander Pope (tr.)
The Iliad of Homer, 22: 167-210

We greet not here, as Man conversing Man
Met at an Oak, or journeying o'er a Plain;
No Season now for calm familiar Talk,
Like Youths and Maidens in an Evening Walk: 170
War is our Business; but to whom is giv'n
To die or triumph, that, determine Heav'n!
Thus pond'ring, like a God the Greek drew nigh;
His dreadful Plumage nodded from on high;
The Pelian Jav'lin, in his better Hand,
Shot trembling Rays that glitter'd o'er the Land;
And on his Breast the beamy Splendors shone
Like Jove's own Lightning, or the rising Sun.
As Hector sees, unusual Terrors rise,
Struck by some God, he fears, recedes, and flies. 180
He leaves the Gates, he leaves the Walls behind;
Achilles follows like the winged Wind.
Thus at the panting Dove a Falcon flies,
(The swiftest Racer of the liquid Skies)
Just when he holds or thinks he holds his Prey,
Obliquely wheeling thro' th' aerial Way;
With open Beak and shrilling Cries he springs,
And aims his Claws, and shoots upon his Wings:
No less fore-right the rapid Chace they held,
One urg'd by Fury, one by Fear impell'd; 190
Now circling round the Walls their Course maintain,
Where the high Watch-tow'r overlooks the Plain;
Now where the Fig-trees spread their Umbrage broad,
(A wider Compass) smoak along the Road.
Next by Scamander's double Source they bound,
Where two fam'd Fountains burst the parted Ground;
This hot thro' scorching Clefts is seen to rise,
With Exhalations steaming to the Skies;
That the green Banks in Summer's Heat o'erflows,
Like Crystal clear, and cold as Winter-Snows. 200
Each gushing Fount a marble Cistern fills,
Whose polish'd Bed receives the falling Rills;
Where Trojan Dames, (e'er yet alarm'd by Greece,)
Wash'd their fair Garments in the Days of Peace.
By these they past, one chasing, one in Flight,
(The Mighty fled, pursu'd by stronger Might)
Swift was the Course; No vulgar Prize they play,
No vulgar Victim must reward the Day,
(Such as in Races crown the speedy Strife)
The Prize contended was great Hector's Life. 210

* * *
英語テクストはAlexander Pope (tr.), The Iliad of Homer より。
http://quod.lib.umich.edu/e/ecco/004836009.0001.006

* * *
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Dryden (tr.) From Virgil, Aeneid, bk 4 (Dido to Aeneas)

ジョン・ドライデン (1631-1700) (訳)
ウェルギリウス、『アエネイス』 第4巻より
(別れを告げるアエネアスにディドーが語る)

「まるでいんちきね。完全にだまされてたわ。この嘘つき!
りっぱな血筋なんて引いてないし、女神さまから生まれたなんて嘘。
かたい岩のお腹から出てきたんじゃない?
そして荒れはてたヒュルカニアの虎からおっぱいもらって育ったんじゃない?
いいたいこといわせてもらうわ。 もう失うものなんてないんだし。
この人、一度でも気にしてくれた? 話、聞いてくれた?
あたしが泣いてたときに、いっしょに悲しんでくれた? 涙を流してくれた?
全然よ--恩知らずで下衆な心しかもっていない証拠だわ。
ほんと汚らわしい。最悪よ。
でも、悪い男の文句をいったって無駄ね。
神々だって、ユピテルさまだって、何にもしないんですもの、
反逆が成功したときでも。そんな奴、雷を落としてやっつけちゃえばいいのに。
ユーノーさまだって、気にしてるのは自分の旦那の浮気だけ。
ほんと、この世は浮気な男だらけ! 天国も浮気な神々だらけ!
正義なんてどこかに逃げちゃったわ。真心になんてどこにもない!
あたしは、追い出されて逃げてきたこの人を助けてあげた。難破してたから。
お腹を空かせたトロイアの人たちにもごはんをあげたわ。
この人と王位を共にして、ベッドも共にした。そしたら・・・・・・この人は裏切った。
あたしって、ほんとバカ。あとのことなんてもういいわ。
ボロボロになった船を直してあげたりとかもしたけど。
あーあ、もう、気が狂いそうよ! 神さまが命じた、とかいって
天を共犯にして、あたしを棄てるなんて!
リュキアの占いとか、デロスの神とか、
ヘルメスが伝えるユピテルのお告げとか、
そんなのでここから出ていかなくちゃいけないなんて。天で楽しくくらしてる
神さまなんて関係ないじゃない! 人のことなんて気にしてないに決まってる!
いいわ、行きなさいよ! もう止めないから!
海の向こうまで行って、約束されたっていう国を見つければいいわ。
でも、覚えていて。神さまたち、あたしのお願いを聞いてくれるかもしれないから。
そしたら、波が裏切って--あなたの裏切りに比べればかわいいものだわ--
海底が陰謀をめぐらして、水のなかのお墓に沈むのよ、
ごりっぱな船も、それから嘘つきの船長も。
そのとき、棄ててきたわたしの名前を呼んで。ああ、ディドー・・・・・・って。
そしたらあたし、黒い硫黄の炎に包まれて会いに行くわ。
あたし、もう死んでるだろうから。
そして、あたしを裏切ったあなたがこどもみたいに泣くのを見て、にやって笑うの。
怒ってるあたしの亡霊が地の底からのぼってきて、
あなたにとり憑くの。あなたが眠っているときには、悪い夢を見させてあげる。
死んだあとでもいいから、あたし、あなたが苦しむ姿を見たい。
そして冥界に楽しい話を広めたい。ざまあみろっていう話をね。」

* * *
John Dryden (trans.)
From Virgil, Aeneid, book 4

"False as thou art, and, more than false, forsworn!
Not sprung from noble blood, nor goddess-born,
But hewn from harden'd entrails of a rock!
And rough Hyrcanian tigers gave thee suck!
Why should I fawn? what have I worse to fear?
Did he once look, or lent a list'ning ear,
Sigh'd when I sobb'd, or shed one kindly tear?-
All symptoms of a base ungrateful mind,
So foul, that, which is worse, 'tis hard to find.
Of man's injustice why should I complain?
The gods, and Jove himself, behold in vain
Triumphant treason; yet no thunder flies,
Nor Juno views my wrongs with equal eyes;
Faithless is earth, and faithless are the skies!
Justice is fled, and Truth is now no more!
I sav'd the shipwrack'd exile on my shore;
With needful food his hungry Trojans fed;
I took the traitor to my throne and bed:
Fool that I was- 't is little to repeat
The rest- I stor'd and rigg'd his ruin'd fleet.
I rave, I rave! A god's command he pleads,
And makes Heav'n accessary to his deeds.
Now Lycian lots, and now the Delian god,
Now Hermes is employ'd from Jove's abode,
To warn him hence; as if the peaceful state
Of heav'nly pow'rs were touch'd with human fate!
But go! thy flight no longer I detain-
Go seek thy promis'd kingdom thro' the main!
Yet, if the heav'ns will hear my pious vow,
The faithless waves, not half so false as thou,
Or secret sands, shall sepulchers afford
To thy proud vessels, and their perjur'd lord.
Then shalt thou call on injur'd Dido's name:
Dido shall come in a black sulph'ry flame,
When death has once dissolv'd her mortal frame;
Shall smile to see the traitor vainly weep:
Her angry ghost, arising from the deep,
Shall haunt thee waking, and disturb thy sleep.
At least my shade thy punishment shall know,
And Fame shall spread the pleasing news below."

* * *
英語テクストはThe works of Virgil (1803) より
http://books.google.co.jp/books?id=7ykNAAAAYAAJ

* * *
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Cowley (tr.), "Grasshopper"

エイブラハム・カウリー(1618-1667) (翻案)
「キリギリス」

幸せな虫よ、何が
幸せという点で、君に比べられよう?
神々が飲むような
高貴な朝露のワインが与えられている君に!
「自然」はいつも君に仕え、
君の緑のグラスを満たす、
君がどこへ行こうと、
「自然」は、まさに君のガニメデ。
飲み、踊り、歌う--
地上で一番幸せな王より幸せな君!
見わたす野原のすべて、
すべての草木は君のもの。
夏に育つもの、
朝露で豊かに実るものすべてが君のもの。
人は君のために植え、耕す。
まるで人は農夫で、地主は君だ!
君は何も考えずに楽しみ、
君の贅沢のために苦しむ人もいない。
羊飼いは君の歌を楽しく聴く、
彼の歌より上手だから。
農夫も君の歌を聴いて喜ぶ、
豊かな実りを告げるから!
アポローンが君を愛し、君に歌を吹き込む。
彼こそ君の父だ。
地上の生きもので君だけだ、
命と楽しみの長さが同じなのは。
幸せな虫、幸せな君は
年をとらず、冬を知らない。
心ゆくまで飲み、踊り、歌ったあと、
花や緑の葉に包まれて、
(感覚の満足を求め、しかも賢い、
まさに快楽主義者である君よ!)
夏の宴に満たされ、飽きて、
君はひとり、覚めない眠りに入るのだ。

* * *
Abraham Cowley (tr.)
"The Grasshopper"

Happy insect, what can be,
In happiness, compar'd to thee?
Fed with nourishment divine,
The dewy morning's gentle wine!
Nature waits upon thee still,
And thy verdant cup does fill,
'Tis fill'd, wherever thou dost tread,
Nature's self's thy Ganymed.
Thou dost drink, and dance, and sing;
Happier than the happiest king!
All the fields, which thou dost see,
All the plants, belong to thee,
All that summer hours produce,
Fertile made with early juice.
Man for thee does sow and plow;
Farmer he, and landlord thou!
Thou dost innocently joy;
Nor does thy luxury destroy;
The shepherd gladly heareth thee,
More harmonious than he.
Thee, country hinds with gladness hear,
Prophet of the ripen'd year!
Thee, Phoebus loves, and does inspire;
Phoebus is himself thy sire.
To thee, of all things upon earth,
Life is no longer than thy mirth.
Happy insect, happy thou
Dost neither age nor winter know.
But, when thou'st drunk, and danc'd, and sung
Thy fill, the flowery leaves among,
(Voluptuous, and wise, with all,
Epicurean animal!)
Sated with thy summer feast,
Thou retir'st to endless rest.

* * *
古代ギリシャの詩人アナクレオンの(作とされていた)
作品からの翻案。

* * *


By Quartl
http://commons.wikimedia.org/wiki/
File:Grash%C3%BCpfer2.jpg

英語のgrasshopperには、バッタ、イナゴ、キリギリスなど、
いろいろな虫が含まれる。草(grass)のところにいて
跳ねるもの(hopper)は、みなgrasshopper.

* * *
4 gentle
高貴な家の生まれの (OED 1)。神々のための(divine)
ワインだからgentle.

8 Ganymed
ガニメデ(ギリシャ神話)。神々のグラスにワインを
注ぐ美しい少年給仕。


http://www.vroma.org/images/mcmanus_
images/paula_chabot/zeus_ganymede.jpg
右がガニメデ、左はゼウス。

17 innocent
悪いことをしない(OED 1)、子どもや世間知らずな人の
ように純粋無垢で無知な(OED 3a)。

17-18
たとえば、貴族が何も考えずに楽しく贅沢に
暮らす裏で、近隣の農夫たちが彼らに尽くして苦労したり、
死んだりしているのに対して、キリギリスが何も考えずに
豪奢な暮らしをしても、そのために苦しむ人はいない、
ということ。(たぶん。)

19-20
古代ギリシャ以来、羊飼いとは牧歌(pastoral)の歌い手。
その歌よりも、キリギリスの歌のほうがきれい、ということ。

23-24 Phoebus
太陽神アポローンのこと。Phoebusとはギリシャ語/ラテン語で
「輝いている」の意。アポローンは詩と音楽の神でもあるから
歌うキリギリスの「父」。

31 with all
= withal(加えて、同時に--OED 1, 1b)

* * *
「アリとキリギリス」の物語を、視点を変えて描き直した作品。
道徳的にはどうかと思うが、いろいろなことを想起させる。
たとえば--

1
享楽や生のはかなさ--
夏はあっという間に終わり、キリギリスもあっという間に
死んでいく。

2
小さな虫が王より幸せ、という極端な逆説--
ひねりつぶされて死ぬような虫と人間、どっちが幸せ?

3
他人の苦労や不幸の上に成り立つ享楽と、そうでないもの--
貴族的な視点の是非。

* * *
このような「カルペ・ディエム」の(「今を楽しもう」、という)主題を
扱う作品が17世紀前半から半ばにかけて多く書かれたのは、
同時代のラディカルなキリスト教思想--いつか実現するはずの
(この世の王たちではなく)キリストによる支配(千年王国)や、
その先の天国を(必要以上に)強調する、いわゆる「千年王国
思想」--に対する反動。

カルペ・ディエムの主題を扱う詩を書いたのがいわゆる王党派
ばかりであるのは、この千年王国思想が、1640年代の内乱において、
議会軍の原動力(の一部)となっていたから。今の幸せと将来の幸せ、
どちらをとるかという思想的・政治的対立。

つまり、カルペ・ディエム系の作品に見られる退廃性・不道徳性は、
思想的・政治的なポーズ、あるいはそこから派生した悪のりと
とらえなくてはならない。

(加えて、第三の極を提示しているのがヘンリー・ヴォーンの諸作品。
将来でもなく、今でもなく、過去に幸せを見ている、求めている。
ラディカルで、一部暴力的な千年王国思想を支持しないと同時に、
これ見よがしに不道徳をひけらかす王党派詩人に与することも
できない、という。)

このあたりの文学史は、完全に書き直すことが必要。

他にも--

1.
「形而上詩人」と「王党派詩人」という対立は存在しなかった。
「形而上詩人」の独特な作風は、16世紀後半に流行した
スタイル(恋愛ソネットなどの純愛のレトリック)に対する
反動と見るべき。17世紀前半の詩人たちにほぼ共通して
見られるものにすぎない。

2.
同じく、純愛ソネットに対立するかたちであらわれたのが、
16世紀末から17世紀はじめにかけての、「カルペ・ディエム」
の流行、いわばその第一陣(ジョンソンなど)。ここにおける
対立は、詩作のモデルの違いから--ルネサンス・イタリア
(ペトラルカ)か、あるいは、古代ローマ(ホラティウスたち)か。

(ただ、この頃からすでに千年王国思想は広まりつつあったので、
そちらに対する抵抗、より広い意味で最初期ピューリタニズムに対する
抵抗、という意味あいもあったかも。この頃のピューリタニズムと
千年王国思想との関係については、まだよく知らないが。)

* * *
カウリーは、15歳のときに最初の詩集を出版し、
天才少年詩人として一世を風靡した詩人。
(そのなかの一篇は10歳のときの作。)

10年ほど年長だったミルトンは、カウリーの早熟ぶりを
みてかなり焦ったとか。

また、ミルトンは、イギリスの詩人として、スペンサー、
シェイクスピアと並べてカウリーを評価していたとか。
Samuel Johnson, Johnson's Lives of the Poets,
1890, p. 161--http://books.google.com/books?id=
dpELAAAAIAAJ&oe=UTF-8
(ミルトンの死語、三番目の妻が話したことだったはず。)

内乱のあった1640年代には、カウリーは、フランスに
戻っていたヘンリエッタ・マライア(チャールズ一世の妻)に
仕え、王党派の使者として飛びまわったり、暗号で手紙を
書いたりした。また50年代後半には、植物学や医学を
学び、博士号をとったりもした(DNB)。

* * *
英文テクストは、Abraham Cowley, Select Works of
Mr. A. Cowley
, ed. R. Hurd, 2 vols. (1772) より。
<http://books.google.co.jp/books?
id=nrU1AAAAMAAJ&amp;amp;amp;amp;amp;amp;amp;
amp;amp;amp;amp;amp;amp;amp;amp;amp;
amp;amp;dq=cowley+abraham&amp;amp;amp;amp;amp;
amp;amp;amp;amp;amp;amp;amp;amp;amp;
amp;amp;amp;amp;source=gbs_navlinks_s>

* * *
次のページには、"Cowley" は "Cooley" と発音されるとある。
http://www.luminarium.org/sevenlit/cowley/cowleybio.htm

OEDのエントリー "Cowley Father" なども参照のこと。

* * *
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Wyatt, ("My galley chargèd with forgetfulness")

トマス・ワイアット
(「ぼくはガレー船」)

ぼくはガレー船。忘却を載せ、
冬の夜に荒れる海を進む、
岩と岩のあいだを通り。ぼくの敵、いや、ああ、
ぼくの愛しい支配者というべきか、あの冷たい人が舵をとっている。
ひとつひとつのオールを握るのは、それぞれ今にも飛び出しそうな、散り散りの思い。
いざとなれば死んでもいい、という勢いで、バラバラに船をこぐ。
絶え間なく風が吹きつけて、帆を引き裂く。でも、この風とは、
ぼくのため息。いつもそういう目にあわされて、ぼくはあの人を信じつつ恐れている。
涙の雨が降り、冷たいまなざしの暗雲も立ちこめ、
すり切れた船のロープをさらに痛めつける、
勘違いと無知で編まれたロープを。
星たちは、ぼくをこんな苦痛に導いて、そして消えてしまった。
ぼくとともにいてくれるはずの理性も、もう溺れてしまった。
ぼくだけひとり残されて、港になんて、まったくたどり着けそうにない。

* * *
Thomas Wyatt
("My galley chargèd with forgetfulness")

My galley chargèd with forgetfulness
Thorough sharp seas, in winter nights doth pass
'Tween rock and rock; and eke mine enemy, alas,
That is my lord, steereth with cruelness,
And every oar a thought in readiness,
As though that death were light in such a case.
An endless wind doth tear the sail apace
Of forcèd sighs and trusty fearfulness.
A rain of tears, a cloud of dark disdain,
Hath done the wearied cords great hinderance;
Wreathèd with error and eke with ignorance.
The stars be hid that led me to this pain.
Drownèd is reason that should me consort,
And I remain despairing of the port.

* * *
ペトラルカのカンツォニエーレ189番の翻訳。

次の論文にこの詩の別訳およびペトラルカのオリジナルの
日本語訳がある。

村里好俊 「シドニーからシェイクスピアへ」
http://tinyurl.com/kejgz3w

* * *
英語テクストは次のページから。
http://www.luminarium.org/renlit/galley.htm

* * *
学生の方など、自分の研究/発表のために上記を
参照する際には、このサイトの作者、タイトル、URL,
閲覧日など必要な事項を必ず記し、剽窃行為のないように
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Shakespeare, ("To be, or not to be: that is the question")

ウィリアム・シェイクスピア
『ハムレット』 3幕1場より
(「生きるか、死ぬか、問題はそこなんだ」)

(ハムレット)
生きるか、死ぬか、問題はそこなんだ。
気高い心の持ち主は耐えるべきだろうか?
わけのわからない運命が、石やら矢やらで攻めてきても?
それとも、波のように襲いかかる不幸に対して武器をとり、
戦いながら息絶えるべきか? 死とは眠り、
その程度のもの。眠りに落ちて、
心の痛みと、からだに襲いかかる多くの病の攻撃から
解放される--そんな生の終わりかたなら、
心から待ち遠しい。死とは眠り、
その程度。そして、もしかしたら夢を見る。そう、この夢ってのが問題なんだ。
死んで眠っているときに見る夢とは、どんなものだろう?
この人の世のゴタゴタをふりきった後に見る夢って?
ちょっと考えてしまう。だから、
つらい人生でもみんな長く生きるんだ、
世間からどれだけ鞭打たれ、あざけられようとも。
強い者に虐げられ、傲慢な者にバカにされ、
好きな人には相手にされず、法廷ではたらいまわしにされ、
役人に見下され、足蹴にされ、
そんなみじめな人たちでも、みんな辛抱強く、りっぱに生きている。
人生なんて、自分で簡単に清算できるのに。
短い剣か何かがあれば。誰が好き好んで重荷を背負う?
誰が好きで汗をかき、疲れはて、文句をいいながら生きる?
死の後に何かこわいことがあるのでなかったら?
誰も知らない、誰も行って帰ってきたことのない
ふしぎな国が広がっているのでなかったら? だから、ぼくたちは
この世の悪と不幸に我慢するんだ。
得体のしれないあの世の不幸に飛びこむのではなく。
こうして、考えれば考えるほど臆病になる。
こうして、最初は真っ赤に燃えていた熱い決意も、
青白い思考に病んで染まっていく。
偉大なる旅や冒険も、
こんなことを考えてるうちに変な方向に曲がっていって、
結局途中で立ち消えになってしまう。

* * *
William Shakespeare
From Hamlet 3.1
("To be, or not to be: that is the question")

(Hamlet)
To be, or not to be: that is the question:
Whether 'tis nobler in the mind to suffer
The slings and arrows of outrageous fortune,
Or to take arms against a sea of troubles,
And by opposing end them? To die: to sleep;
No more; and by a sleep to say we end
The heart-ache and the thousand natural shocks
That flesh is heir to, 'tis a consummation
Devoutly to be wish'd. To die, to sleep;
To sleep: perchance to dream: ay, there's the rub;
For in that sleep of death what dreams may come
When we have shuffled off this mortal coil,
Must give us pause: there's the respect
That makes calamity of so long life;
For who would bear the whips and scorns of time,
The oppressor's wrong, the proud man's contumely,
The pangs of dispriz'd love, the law's delay,
The insolence of office and the spurns
That patient merit of the unworthy takes,
When he himself might his quietus make
With a bare bodkin? who would fardels bear,
To grunt and sweat under a weary life,
But that the dread of something after death,
The undiscover'd country from whose bourn
No traveller returns, puzzles the will
And makes us rather bear those ills we have
Than fly to others that we know not of?
Thus conscience does make cowards of us all;
And thus the native hue of resolution
Is sicklied o'er with the pale cast of thought,
And enterprises of great pitch and moment
With this regard their currents turn awry,
And lose the name of action.

* * *
英語テクストは次のページのもの。
http://shakespeare.mit.edu/hamlet/hamlet.3.1.html

* * *
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モエレ沼公園 (札幌)

モエレ沼公園 (札幌)
http://www.sapporo-park.or.jp/moere/
201405





























* * *
基本設計; イサム・ノグチ

ごみ処理場跡地を公園に。

* * *
画像は私が撮影したもの。


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From Pope, Eloisa to Abelard

アレグザンダー・ポウプ
『アベラードへ、エロイーザより』 より

梗概:
アベラールとエロイーザは、十二世紀の人物である。
彼は当時もっとも学識ある男性であり、また彼女は
もっとも美しい女性であった。しかし、何よりよく
知られているのは、ふたりの恋愛が不幸なかたちで
終わったことである。一連の不幸と苦悩ののち、
ふたりはそれぞれ異なる修道院に入り、残された
日々を神に捧げた。こうして別れてから何年もたった
ある日、アベラードが友人に宛てた手紙がエロイーズの
手にわたった。そこに記されていたのは、彼のつらい
物語・・・・・・これがエロイーザのうちにかつての愛しい
気持ちを呼びさまし、彼女は、よく知られた多くの
手紙を書かずにはいられなかった。(以下は、
そこからの抜粋である。) これらの手紙は、
わたしたちにまざまざと見せつける。
信仰と人の本質のあいだに、また美徳と恋愛の
あいだに、どのような対立・せめぎあいがあるかを。

* * *
神聖な修道院、その深い孤独のなか、
清らかな〈思索〉が宿る。
〈憂鬱〉が支配者で、いつも物思いに沈んでいる。
わたしは神に仕える身--でも、どうして血が騒ぐの?
ここに逃げてきたのに、どうしてわたしの思いはさまよい出ようとするの?
どうして心が、忘れてた熱い気持ちを思い出すの?
ちがう、ちがうわ、わたし、まだ愛してる--アベラードからのこの手紙、
名前のところにキスせずにはいられない。
(1-8)

呪われた、でも愛しい名前! 秘密にしておかなくちゃ。
聖なる沈黙で封印されたわたしの口から出てはダメ。
心に隠すの、絶対にばれないように。
神の姿を、愛しいあの人の姿に重ねておくの。
この手で書いちゃダメ、あの人の名前--ああ、
もう書いちゃった--涙で消さなくちゃ!
泣いても、祈っても、エロイーザはもうダメ、
心がいうことを手が書いてしまう。
(9-16)

ひどい壁! 暗く囲んで閉じこめてる、
悔い改めた嘆きの人たち、みずから苦しみに耐える人たちを。
かたくて痛い石の床! みんながひざまずいて、もうすりへってる。
あたりのほら穴は、とげとげのいばらでいっぱい。
この神殿! 色のない目をした女の子たちが寝ないでお祈りしてて、
石で彫った聖人たちが、かわいそうに、って涙を流してる!
石の聖人みたいにわたしももう動けないし、もう話すこともない、
でも、わたし、まだ石じゃない。
わたしの全部が神のものじゃない、アベラードがいるんだもの。
恋する自然な気持ちがまだ反逆してる、心を半分占領してる。
お祈りしても、断食してもダメ、熱い血はおさえられない。
涙だって嘘。ずっと泣いてきたけど、悔い改めの涙なんて、みんな嘘泣き。
(17-28)

あなたの燃える想いを受けいれても、わたし、全然やましくなかった。
〈友情〉の姿を借りて〈恋〉はやってきたから。
わたし、あなたを天使のように思ってた。
一点のしみもない美しい精神が、人になってあらわれたんだ、と。
あなたのやさしい目、見てるだけで心が癒された。
晴れた空のように、やさしく輝いていて。
わたしは無邪気に見つめてた。あなたの歌に空も聴き入ってた。
聖なる真理も、あなたが語ればもっと正しくなってた。
あなたの唇から出てきた言葉に従わないなんて無理。
だからわたし、すぐに思った、好きになっても罪じゃない、って。
からだが求めるままに気持ちいいことに耽っていって、
好きな人が天使じゃ困る、って思ってた。
聖人の幸せとか、そんな異次元もよくわからなかった。
聖人なんて幸せに見えなかった。天国よりあなたのほうが大事だったから。
(59-72)

結婚しよう、っていわれて、私、よくこういってた、
恋の掟以外の法律なんて、みんな呪われちゃえ!
恋は空気のように自由なはず。人がつくった絆なんて見たら、
すぐに羽を広げて、どこかパタパタ飛んでいってしまう。
富やら名誉やらは結婚したご婦人にどうぞ。
ほめられるように生きて、清らかな名声でも残せばいい。
でも、本当の恋に対してこんな話は失礼。
名声、富、名誉なんて、恋とはまったく関係ないもの!
これはあの妬む神さまの仕返し。わたしたちが神さまの聖なる炎を軽んじたから、
無駄なことで燃えて面倒なことになってるだけなの。
それでバカな人たちは苦労してる、
恋のなかに恋以外のものを求めてばかりで。
もし世界を支配する偉い人がわたしを好きっていってひざまずいてくれても、
わたし、王の座とか、世界とか、そんなのみんなどうでもいい。
カエサルのお妃になんてなりたくない、
絶対に嫌。わたしは好きな人の恋人になって、愛されて尽くされたいの。
もし、恋人よりもっと自由で、もっと愛される存在が
あったとしたら、わたし、あなたのそれになる!
ああもう、なんて幸せなの! 魂が惹きつけあって、
愛が自由で、人の本質として認められて、そして掟になっていて!
すべて満たされていて、ふたりがそれぞれ相手のものになっていて、
空っぽで痛い心のすき間なんて全然なくって!
口に出さなくても、ふたりの想いは通じあう。
心から、相手への熱い願いが湧き出てくる。
ほんと天国! この世に天国があるなら・・・・・・
そう、アベラードとわたし、昔はその天国にいたのに・・・・・・。
(73-98)

ああ、でも今は違う! 急にあんなひどいことになるなんて!
あの人は裸で倒れていた、血を流しながら。
わたしはどこにいたの? わたしが話せば、抵抗すれば、
剣で戦えば、あんなひどい命令も実行されなかったはず。
やめて! 人でなし! 血を流すようなことしないで!
わたしたちの罪なんてよくあることでしょ? ふつうの罰でいいはずじゃない?
もうダメ、恥ずかしくて、腹立たしくって、これ以上は書けない。
涙と、燃えるように赤い顔から、あとのことは察して。
(99-106)

あの日のこと、あなたは忘れられる? あの神聖な日、
わたしたちがいけにえとして祭壇の前に捧げられたあの日のこと。
覚えてるでしょ? どれだけ涙が流れたか。
まだ若くて、心もからだも熱いのに、わたしは世界にさよならした。
尼僧のヴェールをかぶって、それがわたしの冷たい唇にふれたとき、
聖櫃がみんな震えて見えた、ランプの火もかすんで見えた。
神さまだって、わたしの心をとらえた、なんて信じてなかったはず。
聖人さまの像だって、みんな、わたしの誓いの言葉を聞いてびっくりしてた。
そうよ、こわくっておそれ多い祭壇に向かって歩きながら、
わたし、十字架のイエス様なんて見てなかった。わたしにはあなたしか見えなかった。
神さまのお恵みなんていらなかったし、信じる気持ちもなかった。わたしは
愛のためだけに生きてた。あなたと愛しあえなかったら、わたしの人生は終わりなの。
ねえ、来て! わたしをやさしく見て。何か話して。この苦しみを癒して。
それだけなら、まだできるはず。
わたしをやさしく胸に抱いて。
おいしい毒みたいな視線でわたしをじっと見て。
息が切れそうなくらいキスさせて。抱きしめてギュッてして。
できることはみんなして。あとのことは夢で見るから・・・・・・
もう、ダメダメ! あなたはわたしに他の喜びを求めることを教えてくれなくちゃ。
わたしの歪んだ目に、あなた以外の美しいものを見せて。
光り輝く天国をわたしの目の前一面に見せて。
わたしの魂に、アベラールじゃなくって神さまを愛するように教えて。
(107-128)

* * *
Alexander Pope
From Eloisa to Abelard

The Argument:
Abelard and Eloisa flourished in the
twelfth century; they were two of the
most distinguished persons of their
age in learning and beauty, but for
nothing more famous than for their
unfortunate passion. After a long course
of calamities they retired each to a
several convent, and consecrated the
remainder of their days to religion.
It was many years after this separation,
that a letter of Abelard's to a friend,
which contained the history of his
misfortune, fell into the hands of Eloisa.
This awakening all her tenderness,
occasioned those celebrated letters
(out of which the following is partly
extracted) which give so lively a picture
of the struggles of grace and nature,
virtue and passion.

* * *
In these deep solitudes and awful cells,
Where heav'nly-pensive contemplation dwells,
And ever-musing melancholy reigns;
What means this tumult in a vestal's veins?
Why rove my thoughts beyond this last retreat?
Why feels my heart its long-forgotten heat?
Yet, yet I love!--From Abelard it came,
And Eloisa yet must kiss the name.
(1-8)

Dear fatal name! rest ever unreveal'd,
Nor pass these lips in holy silence seal'd.
Hide it, my heart, within that close disguise,
Where mix'd with God's, his lov'd idea lies:
O write it not, my hand--the name appears
Already written--wash it out, my tears!
In vain lost Eloisa weeps and prays,
Her heart still dictates, and her hand obeys.
(9-16)

Relentless walls! whose darksome round contains
Repentant sighs, and voluntary pains:
Ye rugged rocks! which holy knees have worn;
Ye grots and caverns shagg'd with horrid thorn!
Shrines! where their vigils pale-ey'd virgins keep,
And pitying saints, whose statues learn to weep!
Though cold like you, unmov'd, and silent grown,
I have not yet forgot myself to stone.
All is not Heav'n's while Abelard has part,
Still rebel nature holds out half my heart;
Nor pray'rs nor fasts its stubborn pulse restrain,
Nor tears, for ages, taught to flow in vain.
(17-28)

Thou know'st how guiltless first I met thy flame,
When Love approach'd me under Friendship's name;
My fancy form'd thee of angelic kind,
Some emanation of th' all-beauteous Mind.
Those smiling eyes, attemp'ring ev'ry day,
Shone sweetly lambent with celestial day.
Guiltless I gaz'd; heav'n listen'd while you sung;
And truths divine came mended from that tongue.
From lips like those what precept fail'd to move?
Too soon they taught me 'twas no sin to love.
Back through the paths of pleasing sense I ran,
Nor wish'd an Angel whom I lov'd a Man.
Dim and remote the joys of saints I see;
Nor envy them, that heav'n I lose for thee.
(59-72)

How oft, when press'd to marriage, have I said,
Curse on all laws but those which love has made!
Love, free as air, at sight of human ties,
Spreads his light wings, and in a moment flies,
Let wealth, let honour, wait the wedded dame,
August her deed, and sacred be her fame;
Before true passion all those views remove,
Fame, wealth, and honour! what are you to Love?
The jealous God, when we profane his fires,
Those restless passions in revenge inspires;
And bids them make mistaken mortals groan,
Who seek in love for aught but love alone.
Should at my feet the world's great master fall,
Himself, his throne, his world, I'd scorn 'em all:
Not Caesar's empress would I deign to prove;
No, make me mistress to the man I love;
If there be yet another name more free,
More fond than mistress, make me that to thee!
Oh happy state! when souls each other draw,
When love is liberty, and nature, law:
All then is full, possessing, and possess'd,
No craving void left aching in the breast:
Ev'n thought meets thought, ere from the lips it part,
And each warm wish springs mutual from the heart.
This sure is bliss (if bliss on earth there be)
And once the lot of Abelard and me.
(73-98)

Alas, how chang'd! what sudden horrors rise!
A naked lover bound and bleeding lies!
Where, where was Eloise? her voice, her hand,
Her poniard, had oppos'd the dire command.
Barbarian, stay! that bloody stroke restrain;
The crime was common, common be the pain.
I can no more; by shame, by rage suppress'd,
Let tears, and burning blushes speak the rest.
(99-106)

Canst thou forget that sad, that solemn day,
When victims at yon altar's foot we lay?
Canst thou forget what tears that moment fell,
When, warm in youth, I bade the world farewell?
As with cold lips I kiss'd the sacred veil,
The shrines all trembl'd, and the lamps grew pale:
Heav'n scarce believ'd the conquest it survey'd,
And saints with wonder heard the vows I made.
Yet then, to those dread altars as I drew,
Not on the Cross my eyes were fix'd, but you:
Not grace, or zeal, love only was my call,
And if I lose thy love, I lose my all.
Come! with thy looks, thy words, relieve my woe;
Those still at least are left thee to bestow.
Still on that breast enamour'd let me lie,
Still drink delicious poison from thy eye,
Pant on thy lip, and to thy heart be press'd;
Give all thou canst--and let me dream the rest.
Ah no! instruct me other joys to prize,
With other beauties charm my partial eyes,
Full in my view set all the bright abode,
And make my soul quit Abelard for God.
(107-128)

* * *
梗概は散文。適当なところで改行。

「ふたりの恋愛が不幸なかたちで終わった」(梗概)
「血を流す」(99-106) などというのは、エロイーザの
親族がアベラードを去勢したことをさす。

通常の表記(フランス語読み)は、「アベラール」と
「エロイーズ」。

* * *
英語テクストは、次のURLのもの。

(梗概)
http://books.google.co.jp/books?id=nCohAAAAMAAJ

(詩)
https://tspace.library.utoronto.ca/html/1807/4350/poem1630.html

* * *
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Tennyson, "Mariana"

アルフレッド・テニソン
「マリアナ」

「マリアナは堀でかこまれた納屋に」--『尺には尺を』

真っ黒な苔が花壇を
厚く包む。あちこちの花壇を、みなすべて。
さびた釘が落ちる。家の外壁、
紐で梨がぶら下がるところから。
壊れかけた小屋は悲しげで、迷子のよう。
ドアの鍵は閉じられたまま、
わらぶき屋根も手入れのないまま古くなり。
堀でかこまれた、孤独な納屋。
マリアナの言葉はいつも同じ--「いつも暗くて憂鬱・・・・・・
あの人は来ない」--彼女はいう、
いつも同じことを--「疲れた、ほんとに疲れた、
もう死にたい」。

涙が落ちる、夕暮れ時、夜露の頃。
涙が落ちる、朝、露が乾く頃。
晴れた空は目に入らない、
朝にも、夕方にも。
こうもりが飛び交い、
真っ暗な闇が空を昏睡に陥れる頃、
マリアナは窓のカーテンを開け、
陰鬱な地平線を横目で見る。
彼女の言葉はいつも同じ--「夜は暗くて憂鬱・・・・・・
あの人は来ない」--彼女はいう、
いつも同じことを--「疲れた、ほんとに疲れた、
もう死にたい」。

真夜中、マリアナは
夜の鳥の声に目を覚ます。
夜明け前なのににわとりも鳴く。
暗い沼地から牛の声が
聞こえる。何がが変わる希望もなく、
眠りのなか、彼女はひとりさまよう、
冷たい風が灰色の目をした朝を起こすまで。
堀でかこまれた、孤独な納屋。
マリアナの言葉はいつも同じ--「朝は暗くて憂鬱・・・・・・
あの人は来ない」--彼女はいう、
いつも同じことを--「疲れた、ほんとに疲れた、
もう死にたい」。

納屋から石を投げれば届くところ、
水路に黒い水が眠る。
その上を、たくさんの、丸くて小さい
沼の苔が這いまわる。
近くのポプラはいつも震えている、
よじれた皮を緑と銀に光らせながら。
その向こうにもう木はなく、
灰色の荒れ地がただ広がる。
マリアナの言葉はいつも同じ--「いつも暗くて憂鬱・・・・・・
あの人は来てくれない」--彼女はいう、
いつも同じことを--「疲れた、ほんとに疲れた、
もう死にたい」。

月が低く、近い夜、
甲高い風が時に鳴り、時に止む。
白いカーテンを行ったりきたり、
影が風に揺れる。
月がさらに低く、近い夜、
荒れる風が牢に閉じこめられたなら、
ポプラの影が落ちてくる、
マリアナのベッドに、その額に。
彼女の言葉はいつも同じ--「夜は暗くて憂鬱・・・・・・
あの人は来てくれない」--彼女はいう、
いつも同じことを--「疲れた、ほんとに疲れた、
もう死にたい」。

一日中、暗くて憂鬱な家のなか、
あちこちでドアがきしむ。
青い蠅が窓で歌う。ねずみは、
腐った壁の後ろで金切り声をあげたり、
裂け目から顔を出したり。
知ってる顔が、ドアのところにかすかに見える、
昔の足音が天井に聞こえる、
昔の声が外から呼んでいる、気がする。
マリアナの言葉はいつも同じ--「いつも暗くて憂鬱・・・・・・
あの人は来ない」--彼女はいう、
いつも同じことを--「疲れた、ほんとに疲れた、
もう死にたい」。

屋根の上、すずめは楽しげに鳴く。
ゆっくり時計が刻む音、そして
愛を求める風に
つれないポプラが揺れる音--聞いてると、
マリアナはおかしくなりそう。でも、いちばん嫌なのは、
ほこりの粒がきらきら光る光の筋が
部屋を横切り、太陽が
西に傾いて自分の家に向かうとき。
そして彼女はいう--「わたし、ほんとに暗くて憂鬱・・・・・・
あの人はもう来ない」--彼女はいう、
泣きながら--「疲れた、ほんとに疲れた、
神さま、もう死にたい」。

* * *
Alfred Tennyson
"Mariana"

"Mariana in the moated grange."
--- Measure for Measure.

With blackest moss the flower-plots
Were thickly crusted, one and all:
The rusted nails fell from the knots
That held the pear to the gable-wall.
The broken sheds look'd sad and strange:
Unlifted was the clinking latch;
Weeded and worn the ancient thatch
Upon the lonely moated grange.
She only said, "My life is dreary,
He cometh not," she said;
She said, "I am aweary, aweary,
I would that I were dead!"

Her tears fell with the dews at even;
Her tears fell ere the dews were dried;
She could not look on the sweet heaven,
Either at morn or eventide.
After the flitting of the bats,
When thickest dark did trance the sky,
She drew her casement-curtain by,
And glanced athwart the glooming flats.
She only said, "The night is dreary,
He cometh not," she said;
She said, "I am aweary, aweary,
I would that I were dead!"

Upon the middle of the night,
Waking she heard the night-fowl crow:
The cock sung out an hour ere light:
From the dark fen the oxen's low
Came to her: without hope of change,
In sleep she seem'd to walk forlorn,
Till cold winds woke the gray-eyed morn
About the lonely moated grange.
She only said, "The day is dreary,
He cometh not," she said;
She said, "I am aweary, aweary,
I would that I were dead!"

About a stone-cast from the wall
A sluice with blacken'd waters slept,
And o'er it many, round and small,
The cluster'd marish-mosses crept.
Hard by a poplar shook alway,
All silver-green with gnarled bark:
For leagues no other tree did mark
The level waste, the rounding gray.
She only said, "My life is dreary,
He cometh not," she said;
She said, "I am aweary, aweary,
I would that I were dead!"

And ever when the moon was low,
And the shrill winds were up and away,
In the white curtain, to and fro,
She saw the gusty shadow sway.
But when the moon was very low,
And wild winds bound within their cell,
The shadow of the poplar fell
Upon her bed, across her brow.
She only said, "The night is dreary,
He cometh not," she said;
She said, "I am aweary, aweary,
I would that I were dead!"

All day within the dreamy house,
The doors upon their hinges creak'd;
The blue fly sung in the pane; the mouse
Behind the mouldering wainscot shriek'd,
Or from the crevice peer'd about.
Old faces glimmer'd thro' the doors,
Old footsteps trod the upper floors,
Old voices called her from without.
She only said, "My life is dreary,
He cometh not," she said;
She said, "I am aweary, aweary,
I would that I were dead!"

The sparrow's chirrup on the roof,
The slow clock ticking, and the sound,
Which to the wooing wind aloof
The poplar made, did all confound
Her sense; but most she loathed the hour
When the thick-moted sunbeam lay
Athwart the chambers, and the day
Was sloping 9 toward his western bower.
Then, said she, "I am very dreary,
He will not come," she said;
She wept, "I am aweary, aweary,
O God, that I were dead!".

* * *
英語テクストは次のURLのもの。後年のテニソン自身の修正を反映。
http://www.gutenberg.org/ebooks/8601

* * *
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Pound (tr.), Li Po, "The River-Merchant’s Wife"

エズラ・パウンド (訳)
李白、「行商人の妻の手紙」 (「長干行」)

まだおかっぱ頭だった頃、
わたしは家の門の前で遊んでいました、花を摘んだりして。
あなたは竹馬にまたがってやってきました。
わたしのまわりを歩きながら、青い梅の実で遊んでいました。
長干(ちょうかん)の村でくらしていましたよね。
ふたりともこどもで、嫌ったり、疑ったりすることなんてありませんでした。

十四歳のときにあなたと結婚しました。
はずかしかったので、わたしはずっとむっとしていました、
うつむいたり、壁のほうばかりを見たり。
名前を千回呼ばれても、ふり返りませんでした。

十五歳のとき、そういうことをやめました。
生きていても、死んでも、わたしはあなたといっしょになっていたいと思いました、
ずっと、ずっと、ずーっと、です。
なぜでしょう、わたし、今、高台にのぼっています。

十六歳のとき、あなたは仕事で出かけていきました。
遠くの瞿塘峡(くとうきょう)まで、舟で渦巻く川を通って。
もう五か月たちました。
木の上で猿たちが悲しげに鳴いています。

出かけていくとき、あなたの足も重たげでした。
門のところには苔が生えてきました。新しい苔が、です。
もう根深く生えてしまっていて、刈ることができないほどです。
この秋、もう葉っぱが散ってしまいました、風のなか。
八月になり、蝶々の夫婦ももう黄色く染まって、
西の庭の草の上を飛んでいます。
ちょっと嫌になります、なぜか、年をとった気がして。
もし、長江のせまいところを通って帰ってきているのでしたら、
早めにお手紙をください。
会いに行きますから、
なんでしたら、長風沙(ちょうふうさ)のところまでも。

* * *
Ezra Pound (tr.)
Li Po, "The River-Merchant’s Wife: A Letter"

While my hair was still cut straight across my forehead
I played about the front gate, pulling flowers.
You came by on bamboo stilts, playing horse,
You walked about my seat, playing with blue plums.
And we went on living in the village of Chokan:
Two small people, without dislike or suspicion.

At fourteen I married My Lord you.
I never laughed, being bashful.
Lowering my head, I looked at the wall.
Called to, a thousand times, I never looked back.

At fifteen I stopped scowling,
I desired my dust to be mingled with yours
Forever and forever and forever.
Why should I climb the look out?

At sixteen you departed,
You went into far Ku-to-yen, by the river of swirling eddies,
And you have been gone five months.
The monkeys make sorrowful noise overhead.

You dragged your feet when you went out.
By the gate now, the moss is grown, the different mosses,
Too deep to clear them away!
The leaves fall early this autumn, in wind.
The paired butterflies are already yellow with August
Over the grass in the West garden;
They hurt me. I grow older.
If you are coming down through the narrows of the river Kiang,
Please let me know beforehand,
And I will come out to meet you
As far as Cho-fu-Sa.

* * *
李白についての本を見ると、いろいろパウンドの側に
誤解もあるよう。

* * *
英語テクストは次のページのもの。
http://www.poets.org/poetsorg/poem/
river-merchants-wife-letter

* * *
学生の方など、自分の研究/発表のために上記を
参照する際には、このサイトの作者、タイトル、URL,
閲覧日など必要な事項を必ず記し、剽窃行為のないように
してください。

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Pound (tr.), "Fan-Piece for Her Imperial Lord"

エズラ・パウンド (翻案)
「恋人の皇帝にささげる扇の歌」

ああ、白い絹の扇、
とがった草の葉に降りた霜のように透き通ってる。
おまえも捨てられたのね。

* * *
Ezra Pound (tr.)
Ban Jieyu, "Song of Regret"
("Fan-Piece for Her Imperial Lord")

O fan of white silk,
clear as frost on the grass-blade,
You also are laid aside.

* * *
英語テクストは次のURLのもの。
http://en.wikisource.org/wiki/Fan-Piece_for_Her_Imperial_Lord

* * *
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Cooke (tr.), Hesiod, Work and Days (1: 226-59)

トマス・クック (訳)
ヘシオドス、『仕事と日々』 (1: 226-59)

ああ、もっと早く生まれていればよかったのに、
この罪深い第五の世代がはじまる前に。
あるいは、生まれなければよかったのに、
この不幸な鉄の時代が過ぎ去ってしまうまで。
神々の定めにより、この今の時代においては、
すべての瞬間が飛ぶように去っていき、そして苦痛に満ちている。
罪深きわたしたちは、悲しみのなか労働すべく定められて生きている。
労働から解放してくれるのは死のみ。
もちろん、わたしたちの生を苛む心配ごとのなか、
神々は時おり喜びを与えてくれる。
しかし! なんと人間は堕落していることか!
身分が高い者でも悪徳にまみれている。
知らない人々のなかでは、みな常に警戒していなくてはならない。
いや、血がつながっていても、友人であっても、気を許すことなどできない。
いや、親であっても、こどもを
やさしい目で見たりはしない。
息子も父には従わず、
老年の知恵にも敬意を払わない。
むしろ、ああ! 神々をも恐れず、
老いゆく父をあざけって、その心労を増すのみ。
復讐と略奪がいいこととされ、
神の意に沿う、正しくよいことが足蹴にされている。
悪人がよい者を悲しませ、
正しい者が被害にあう。何の償いもなく。
心正しく、無防備にも人を信じる者はバカを見て、
嘘をつく悪党がその嘘ゆえに成功する。
姿の見えぬ妬みが
恵まれぬ者にとり憑き、そして人の不幸を喜ぶ。
正義もつつしみも、いずれ逃げ去っていく。
白い手足をもがれて天に昇っていく。
この広い大地を去って、天上の世界に行ってしまい、
そして、神々のあいだで生きるのだ。
下界では、哀れな人間が、苦しみのなか、もうなすすべもない。
悲しみに沈み、解放される望みなど、もうないのである。

* * *
Thomas Cooke (tr.)
Hesiod, Works and Days (1: 226-59)

Oh! would I had my Hours of Life began
Before this fifth, this sinful, Race of Man;
Or had I not been call'd to breathe the Day,
Till the rough Iron Age had pass'd away!
For now, the Times are such, the Gods ordain
That ev'ry Moment shall be wing'd with Pain;
Condemn'd to Sorrows, and to Toil, we live;
Rest to our Labour Death alone can give;
And yet amid the Cares our Lives anoy,
The Gods will grant some Intervals of Joy
But how degenerate is the human State!
Virtue no more distinguishes the Great;
No safe Reception shall the Stranger find;
Nor shall the Tys of Blood, or Friendship, bind;
Nor shall the Parent, when his Sons are nigh,
Look with the Fondness of a Parent's Eye;
Nor to the Sire the Son Obedience pay;
Nor look with Rev'rence on the Locks of Grey,
But, oh! regardless of the Pow'rs divine,
With bitter Taunts shall load his Life's Decline.
Revenge and Rapine shall Respect command,
The pious, just, and good, neglected stand
The wicked shall the better Man distress,
The righteous suffer, and without Redress;
Strict Honesty, and naked Truth, shall fail,
The perjur'd Villain, in his Arts prevail.
Hoarse Envy shall, unseen, exert her Voice,
Attend the wretched, and in Ill rejoyce.
Justice and Modesty at length do fly,
Rob'd their fair Limbs in white, and gain the Sky;
From the wide Earth they reach the bless'd Abodes,
And join the grand Assembly of the Gods;
While wretched Men, abandon'd to thier Grief,
Sink in their Sorrows, hopeless of Relief.

* * *
英語テクスト次のものを使用。一部修正。
Hesiod, Works and Days: Book 1 in The Works of
Hesiod, Translated from the Greek by Mr. Cooke
(London, 1728; Facsimile Reprint Edition,
New York, 1976; Online at Animal Rights
History, 2006).
http://www.animalrightshistory.org/
animal-rights-antiquity-bce/hesiod/
works-and-days-1.htm

* * *
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