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ノート 3 (イギリス/アメリカの詩)

ノート 3 (イギリス/アメリカの詩の変遷)

(メモと雑感。今後の自分、あるいは誰かの何かのネタに。)

どうして詩は読まれない? 難しいといわれる?
日本で、イギリス・アメリカの詩が。日本語の現代詩も。
思うに、一部のアメリカ詩は本当に難しい。

どうして広く読者を得るべく書かれない?
今の日本で、日本語の詩が。

* * *

1.

T・S・エリオットの影響。詩のつくり方について。

象徴主義--いいたいことを、直接的にではなく、それを
あらわす何か別のものでおきかえて表現する詩のつくり方
--の過度の発展。

読んですぐに理解できないものが(すぐれた、芸術性の高い)
詩である、というイメージの浸透。

キーツ以来?

もっと古く、花=フローラ、西風=ゼピュロスなど、
古代の神話に言及する詩的言語の発展の延長?
(16-17世紀には、神話への言及、聖書への言及が
知的レベルのひとつの基準だった。)

少なくとも16世紀のシドニーの『詩の弁護』の頃には、
詩を難しい高尚なものと位置づける必要があった。
恋愛ばかりを扱うチープで不道徳的な娯楽、という
批判に対抗するため。

16世紀後半から-17世紀初めにかけての演劇・劇場
批判も同種のもの。問題とされたのは、恋愛中心の
内容に加え、ナンパや娼婦の仕事のために劇場が
利用されていたこと。

つまり当時の劇場は、1980年代?以降のディスコ、
クラブ的なイメージで一部から見られていた。

そのようなイメージに対抗して、演劇の高尚さ、
芸術性を主張したのがベン・ジョンソン。

* * *
2.

T・S・エリオットの影響。詩の内容の点で。

『プルーフロック』(詩集全体)や『荒地』のような
グロテスクな描写、厭世的な主題が知的で芸術的、という
イメージの確立。

ボードレールから?

16-17世紀の詩では、グロテスクな描写は、本当に醜く、
道徳的に悪であり、共感してはいけないものに限定されている。
(スペンサーの〈誤謬〉、ミルトンの〈罪〉と〈死〉、
ジョンソンの仮面劇中の裏仮面劇antimasqueなど。)

ロマン派(ブレイク、ワーズワース、バイロン、シェリー)から、
R・ブラウニング、D・G・ロセッティにかけて、醜・悪・邪・罪
的なものが、(なんらかの意味で)共感される側、主人公の側へ
と移行。

Cf.
小説におけるリアリズム、自然主義の発達。
詩においては18世紀以降、ダック、クラッブ、ワーズワース、
クレアなど、貧しい人々の生活を多かれ少なかれリアルに
描く詩人たちがあらわれた。

* * *
3.

詩の内容の個人化と、詩人個人に対する関心の過度の高まり。
詩人のある種のセレブ化。

メディアの発達。ラジオによる詩の朗読の放送。

20世紀における映画、音楽などの広まり。スター、セレブの誕生。

そんな人々に対する関心の高まり。各種メディアがこれに応える。

告白派、およびそれに近い詩人たち。
それをつくった詩人の生涯を知らないと理解できない詩。
詩人の生涯に共感できないと共感できない詩。
(ローウェル、セクストン、プラスなどのもの。)

(日本人から見れば、文化の壁・ことばの壁もあって。)

(セレブ文化はバイロン以来? シャーロット・スミスあたりから?
17世紀のリルバーンもある種のセレブ。ミルトンも。)

* * *
4.

アメリカという国の新しさ。

イギリス、ヨーロッパ大陸からの文化的独立をあえて
目指して、独自の詩のあり方を模索。伝統的なイギリス詩の
形・スタイルの放棄(ホイットマン、サンドバーグ、ウィリアムズ)。

詩のかたちの個人化。

* * *
x.

歌(かつてのバラッド、現代のポップ・ミュージック)との
錯綜した関係。

* * *
x.

ひとつの芸術形態として高い意識をもって、
イギリスで詩が書かれるようになった16世紀後半(?)、
それはあくまで宮廷のもの、上流階級のものであった。

そもそも一般民衆の多くは読み書きができなかった。

まだ出版があまり発展しておらず、宮廷における手稿
回覧が主要な流通経路だった。

お金、生活のためにものを売るのは商人階級以下の
人間がする(当時の基準で)卑しいことで、貴族の
することではなかった。

(19世紀のバイロンの考え方も同様。作品が相当売れて
いたのに借金まみれだったのは、詩を売って生活する
という意識がなかったから。利益を得ていたのは出版者だけ。)

* * *
x.

今、詩が読まれない、難しいといわれるのは、
映画、TV, 小説、ポップソングなどのほうが
身近な内容を身近なかたちで表現しているから。

身近でない、抽象的、現実を何らかのかたちで
昇華している、結晶化している、という点に
詩の独自性が見られているから。

特にイギリスの詩についていえば、そうでないものも
実は多いのだが。

また、そのようではないものとして見たほうが
詩は楽しめると思うのだが。

4コママンガのようなエピグラムや短詩。

論説、エッセイのような詩。

長短の物語詩。

歌詞のような抒情詩。

その他、いろいろ。本当にいろいろ。

* * *
x.

19世紀半ばまでは、短いものよりも長い詩のほうが
高く評価されていた。古代ギリシャ以来、叙事詩と
悲劇が詩のジャンルとして最高のものとされていたり。

これは何を意味する?

おそらく、ストーリー性のない短い詩を書くのは
実はそんなに難しくない、ということ。つじつまの
通った長い物語を(詩のかたちで)書くことよりも。

日本語でいえば、誰でも五七五で言葉をならべる
ことはできるが、たとえば100ページ以上の物語は
なかなか書けるものではない。

小学校で「詩を書こう」という授業はしばしば
あるが、「物語を書こう」というものはまずない。

このような事実があるなかで、歴史に残るだけの
内容や形式をもつ作品、後世の人々が読み、
そこから何かを学べるだけの内容や形式をもつもの
だけが学術的に評価され、紹介されているという
ことが、「詩は難しい」というイメージに一部
つながっているのでは。

* * *
上記のような思考/考えは、自由に発展させて使って
いただいてかまいません。

上記の文言を引用/援用などする際には、このサイトの作者、
タイトル、URL, 閲覧日など必要な事項を必ず記し、剽窃行為の
ないようにしてください。

この記事はあくまでメモ、雑感なので、そのようなものとして
ご理解ください。


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Wordsworth, "Ode" ("Intimations of Immortality") 1807 ver. (日本語訳)

ウィリアム・ワーズワース (1770-1850)
「オード」
(「幼少の思い出が永遠について教えてくれる」)

「もっと気高いことを歌おう。」

かつて、牧場、林、川、
大地、そしてすべてのありふれた景色が、
わたしには見えた、
天上の光につつまれているかのように。
夢の輝きとあざやかさに装われているかのように。
昔はそうだったが、今ではちがう。
どこを見ても、
昼でも夜でも、
かつて見えたものが、もう見えない。
(1-9)

虹は出て、消える。
バラはきれいだ。
月は楽しげに
あたりを見まわす、雲のない夜に。
星降る夜の川や湖は
澄み、美しい。
太陽は新しく生まれて輝く。
だが、わたしは知っている。どこに行っても無駄、
ある種の輝きが、大地から去ってしまったことを。
(10-18)

今、鳥たちは楽しげに歌を歌い、
子羊たちは跳ねまわる。
太鼓にあわせて飛ぶかのように。
わたしだけ悲しい気持ちになったが、
それを歌にしたら気が楽になり、
また強くなれた。
滝は崖からトランペットのように鳴る。
もう悲しみでこの季節を台無しにするのはやめよう。
こだまが聞こえる、あたりの山を通って集まってくるかのように。
眠る野原から風もやってくる。
世界は楽しげで、
大地も海も
陽気に我を忘れている。
五月祭のときのような気分で、
動物もみな、のんびりしている。
「ねえ、君、よろこびの申し子、
ぼくのそばで叫んで、大きな声を聞かせて、楽しげな羊飼いの君!
(19-35)

君たち、幸せな生きもののみんな、聞こえたよ、
君たちが呼びあう声が。見えたよ、
空が笑うのが。楽しげに声をあげる君たちといっしょに。
心のなかでぼくは君たちのお祭りに参加していて、
頭にはその草冠をのせていて、
君たちがどれほど幸せに満ちているか、感じる、みんな感じるよ」。
最悪だ! 暗い気分でいるなんて!
大地が着飾っているというのに、
こんな気持ちいい五月の朝に、
子どもたちが摘んでいるというのに、
あちこちで、
広く、ずっとつづく千もの谷のなか、
咲いたばかりの花を。太陽があたたかく輝き、
赤子も母の腕のなか、飛びはねているというのに。
ああ、聞こえる、聞こえる! 聞こえて、楽しい気分になってくる!
--だが、一本の木がある。たくさんのなかの一本。
それから特別な野原が一か所ある。
これらは語る、なくなってしまった何かについて。
足もとのパンジーも、
同じ話をくり返す。
幻のような光はどこに行ってしまったのか?
今、どこにあるのか、輝くような美しさと夢は?
(36-57)

人が生まれるということは、眠ること、忘れることにすぎない。
わたしたちとともにのぼる魂、わたしたちの命の星は、
かつて別のところにあったもの。
それは遠くからやってくる。
すべてを忘れてはいない状態で、
完全に裸ではない状態で、
光の雲を引きずって、わたしたちはやってくる。
わたしたちが生まれたところ、神のもとから。
天国があるのだ! 子どもの頃のわたしたちのまわりには!
牢獄の影が覆い、かぶさりはじめる、
成長していく少年に。
しかし、彼は光を見る。そして、それがどこから流れてきているか、
それに気づいて彼はよろこぶ。
若者になり、人は日々東から遠ざかるように
旅をしなくてはならない。が、それでも彼は、まだ自然に仕える者であり、
輝く、神秘的な天の光景を
記憶にとどめつつ進む。
最終的に大人になり、彼は気づく。この光景が死に絶え、
ありふれた昼の光に混ざって消えていることに。
(58-76)

大地は、その膝を、きれいな草花でいっぱいに満たす。
大地にはみずからの、ごく自然な希望があって、
そして、どこか母のような心で、
意地悪するつもりなどなく、
あたたかい乳母として手を尽くす。
義理の子、今、いっしょにくらしている人間が、
かつて知っていた輝きを忘れるように。
かつて住んでいた天の王の宮殿を忘れるように。
(77-84)

見て、あの子を。生まれて、まだ小さくて、よろこびに満ちている。
四歳のかわいい子、こびとのように小さい!
見て、自分の作品にかこまれて横になっていて、
母のキスに急襲されてむずがっていて、
父の視線に照らされている!
見て、彼の足もとには小さな見取り図や地図。
人のくらしについて彼が見た夢の断片が、
最近覚えたテクニックで書かれている。
結婚式か、祭か、
喪か、葬式か、
とにかく、今、彼はこれに夢中で、
それにあわせて自分の歌をつくって歌う。
やがて彼は言葉を覚え、
仕事や、愛や、憎しみを語れるようになるだろう。
が、遠からず
これも捨てられ、
新しいよろこびと自信とともに、
この小さな役者は次々に異なる役を覚え、
流れる時のなか、人生の舞台でさまざまな気質を演じる。
手足のふるえる老人になるまで、彼はあらゆる登場人物になる。
人生がもたらすあらゆる立場の人に扮する。
まるで、終わりのない演技だけが、
彼に定められた仕事であるかのように。
(85-107)

「ねえ君、君の姿は、偽って隠しているよね、
無限に大きい君の魂を。
最高の知恵をもつ君、君にはまだあるよね、
君が受け継いだものが。盲目の人々のなか、君は目なんだ。
何も聞かずに、何も話さずに、君は永遠不変なもの、深いものを読みとっているんだ。
永遠不変の記憶がいつもそばにあるからだよ。
君は偉大な預言者で、神の啓示を見ているんだ!
君は真理を知っているよね、
ぼくたちが生涯をかけて、一生懸命探しているような真理を。
母鳥の下の卵のように、君は、永遠の命につつまれているんだ。
日の光が人をつつむように、主人が奴隷を支配するように、
不死が君のまわりにある、君をとらえているんだ。
君の墓、
それは何も見えない孤独な場所、
あたたかい光もないところ。
それは思考する者たちの場所。そこでぼくたちは横になり、君を待っているんだよ。
小さな君、でも君にはすばらしい力がある。
抑制されない楽しみから得られる力が、ね、君の小さなからだのなかに。
どうしてそんな大まじめに、痛みや苦労を感じてまで、みずから招くんだい?
避けられない拘束をもたらす年月を?
どうして、考えもなしに、幸せな今の状態に抵抗する?
本当にすぐに、君の魂はこの世の重荷を感じるんだ。
この世のルールが、重くのしかかるんだよ。
霜のように冷たく重く、命そのもののように君の奥深く」。
(108-31)

よろこぶべきことだ! 火の消えかけた炭のようなわたしたちのからだのなかで
まだ何かが生きているなんて!
存在のどこか奥深くでまだ覚えているなんて、
あのようにはかなく、すぐに消えてしまうものを!
過ぎ去った年月について考えるとき、わたしは感じる、
永遠に祝福され、守られているかのように。実際、違う、
神聖な扱いにもっともふさわしいものに対して、
楽しみや自由、これら子どもの頃の
素朴な教義、鳥みたいにパタパタ遊んでいるときに、寝ているときに、信じていたもの、
いつも胸には新しい希望があって--
これらに対して、わたしは
感謝の歌、称賛の歌を捧げるのではない。
そうではなく、あの執拗な問いかけ、
感覚やものごとの外面についての問いかけ、
わたしたちから落ちていくもの、消えていくものに対して、わたしは歌う。
根拠のない不安、存在しない世界にいる
何ものかについての、なんともいえないあやふやな気持ち、
高く深遠なる衝動、それを前にわたしたち、いずれ死ぬ者たちが
不意をつかれた罪人のようにふるえたような、そんな衝動に対して、わたしは歌う。
子どもの頃、最初に感じたこと、
子どもの頃にもっていた、ぼんやりした記憶、
それがどんなものであれ、
わたしたちの日々の光の源であるような、
わたしたちの視界を照らす光の源であるような、そんな記憶に対して、わたしは歌う。
--支えてほしい。やさしく守ってほしい。そして
わたしたちの生きるけたたましい年月を、ほんの一瞬にすぎないものとして、
永遠につづく完璧な静けさでつつんでほしい--目ざめ、
そしてけっして滅ぶことがない真理!
けだるさでも、狂ったような活動でも、
大人でも少年でも、
喜びに敵対するすべてのものでも、
この真理を完全に消し去ることはできない! 破壊することはできない!
だから、天気が穏やかな季節に、
海から遠く離れていても、
わたしたちの魂には、あの永遠の海が見える。
わたしたちをここにつれてきた、海のようなあの永遠が。
そして、一瞬のうちにそこに行けば、
岸で遊ぶ子どもたちが見える。
永遠に波うつ、広く大きな水の音が聞こえる。
(132-70)

「だから歌って、鳥たち! 歌って! 歌うんだ、よろこびの歌を!
子羊たちは飛びはねまわろう、
太鼓の音にあわせて!
ぼくたちも、心のなかで君たちといっしょに歌い、飛びはねるから。
歌う君たち、飛びまわる君たち、
心のなかで、今日、
五月の楽しさを感じている君たちといっしょに!」。
かつてあれほど輝いていた光が
わたしの視界から奪われていたってかまわない。
過ぎた時間をとり戻してくれるものなんて、何もない。
草のなかに光が、花のなかに輝きがあった頃は、もう戻らない。
でも、わたしたちは悲しむのではなく、むしろ、見つけよう、
強さを。手に残されたもののうちに。
生まれて最初に感じた共感のなかに。
(かつて感じたのだから、今でも、いつまでも、あるはずだ。)
心を落ちつかせてくれる思考、
人の苦しみがもたらす思考のなかに。
死の向こう側を見る信仰のなかに。
知を愛し求める精神をもたらす年月のなかに。
(171-89)

「だから、ああ、君たち、泉、牧場、丘、そして林!
わたしたちの愛を切り捨てようとは思わないで!
まだ心の底で、わたしは君たちの力を感じているよ。
わたしは、よろこびをひとつ捨てただけ、
君たちの力の下で日々生きるというよろこびを捨てただけなんだ」。
波を立てて流れていく小川が、わたしは今でも好きだ。
自分が、小川のように軽やかにはねていた頃よりもずっと。
日々新しく生まれる朝日の無垢な輝きは、
今でもきれいだ。
沈む太陽のまわりに集まる雲は、
落ちついた色をしている。まるで
いずれ死ぬ人間たちを見守ってきた目のように。
いろんな人生があったことだろう。勝利、幸せもいろいろだろう。
ありがとう、人の心に。これによってわたしたちは生きているのだから。
ありがとう、人の心のやさしさ、よろこび、そして恐れに。
これらがあるから、本当にちっぽけな花が咲いているのを見ても、
涙も出ないほど奥深いところで、心が動くのだから。
(190-206)

* * *

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Wordsworth, "Ode" ("Intimations of Immortality") 1807 ver. (訳注、解説)

ウィリアム・ワーズワース (1770-1850)
「オード」
(「幼少の思い出が永遠について教えてくれる」)

(訳注と解釈例)

タイトル immortality
不死。いずれ死ぬ(mortal)人間などこの世のものに対して、
神や天使たちは死なない(immortal)。

ただ、日本語で「不死」というと、不死不老という
現世的な憧れ、的なニュアンスをおびてしまうので、
より抽象的に、時間的に限定された(temporal)人間などの
住む現実の世界と、神や天使の世界として仮想される
永遠の(eternal)世界、という対立で表現したほうが
いいと思われる。

12-16
ここで夜から朝に時間が移行。

23-24
イマイチな二行。一般論のなかに日記がまぎれこんだかのよう。
この二行を正当化するために、ワーズワースは後の版で、
エピグラフを「心が飛びあがる」(いわゆる「虹」)からの
一節に差し替えた?(ここでいうutteranceはこの虹の詩、
という説がある。)

25 the fields of sleep
夜明けで、野原がまだ眠っているということ?

26 shall
話し手(わたし)の意志をあらわす未来。

29 the earth
世界、陸も海も含むものとして(OED 8)。

33 holiday
仕事の中断、休み、遊び(OED 2c)。

34-
ここから羊飼いの少年や動物たちへの呼びかけ。
スタンザの途中からなのは、おそらく意図的なこと。

全体を通じて、目の前の人やものに対する明らかな
呼びかけは「 」で示した。(後半、そんな呼びかけと
自分や読者に対する語りの区別が難しくなるが。)

42
呼びかけが終わり、ここからまた自分と読者に語る。

57 glory
輝くような美しさ(OED 6)。天国ということばでイメージするような。

60 setting
人や物がおかれる場所、環境(OED 6b)。
星などが「沈む」という意味は、生まれる前の魂については
特に考えなくていいと思う。(ここに輪廻的な思想があると
みるなら話は別。)

(前行にlife's Starとあるので、自然と「沈む」の意味が
頭に浮かぶが、ここでsettingが選ばれていることには、
forgettingとの脚韻という形式的な理由もある。)

64 clouds of glory
いわゆる撞着語法。矛盾する言葉を組みあわせて超自然的な
ものや状況を表現。

71-72
東、というのは太陽が出るところ。つまり、69行目にあるような
少年のころに見ていた光、あるいはその出所(65行目のGod,
who is our home; 66行目のHeaven)のこと。

73-74
構文は、and is attended by the vision splendid
on his way. 主語は71行目のThe Youth.
内容的には、64行目のtrailing clouds of gloryとほぼ同じ。

77 pleasures
よろこびをもたらすもの。ここでは草花など。

78
自然には、植物(や生物)を生み育てたい、という本能のようなものがある、
ということ。

78 she
大地。古代ギリシャのGaia (Gaea)以来、大地は母で女性。

78 kind
誰か、何かに特有のやり方(OED 8a, この行が引用されている)。

79 something of a Mother's mind
たとえば、人間をなぐさめよう、楽しませよう、というような親心の
ようなもの。

80-84
自然に悪意はないのだが、その美しさによって人は、
生まれる前に知っていた天の世界を忘れてしまう、
ということ。

85 blisses
よろこび、楽しみ(OED 2a, この行が引用されている。)

86 four year's
後の版ではsix years' と変えられている。

90-94
4歳の子どもが描いた絵のこと。彼はまわりの大人が
していることを彼なりに描く。それが「人のくらしについて
彼が見た夢の断片」。「わたし」には、それが結婚式の絵か、
祭の絵か、喪の絵か、葬式の絵か、わからない。

103
Humour[s]とは、17世紀ぐらいまで(?)人の気質を決定すると
考えられていた体液のこと。血液、粘液、黄胆汁、黒胆汁の四つ。
16世紀末から17世紀初めにかけてのベン・ジョンソンの気質喜劇は、
このような体液説をもとに書かれている。

108 Thou
85行目のthe Childのこと。

109 immensity
はかることができないこと、無限であること(OED 1)。

113 the eternal mind
OEDは神のこととしているが(17e--神は人間と違って永遠に不変だから)、
小文字のmindなので、それ以外のニュアンスを加えて広く理解しても
いいと思う。

113 mind
記憶(OED 4)。
精神としての存在、精神の働き(OED III)。

114 Prophet
預言者、神の意志や言葉を伝える人。

114 blest
Bless(聖なるもの、神に守られたものとする)の過去分詞。

117 Immortality
不死であること。上のeternalとほぼ同じ意味。
ふつうの人間はいずれ死ぬ存在だが、神はimmortalで
eternal.

子どもには、大人としての人間がもつ以上の、つまり神との
近さをうかがわせるような知恵があるということを、
このスタンザは、またこの詩は、いっている。

不死とは、文字通り、肉体的に、死なないということではない。
肉体は死ぬ。正統的なキリスト教的において、死なないのは魂だけ。

(魂も肉体とともに死ぬ、という考え方も、異端的なものとしてある。)

124 glorious
うっとりするほどすばらしい(OED 5a)。

131 Heavy as frost
撞着語法。本当は霜は重くない。が、それは、
冷たくて、比喩的に重い。

132-70
オードは高ぶった内容を高ぶった言葉で歌うということで、
構文的にゆるく、不明確に書かれている。
(おそらく、これまで以上に気持ちがもりあがってきている、
ということ。)

134 nature
人やものの本質(OED 1-2)。

137-155
構文は以下の通り。
---
I raise The song of thanks and praise not For:

(1)
that which is most worthy to be blest;

(2)
[that is,] Delight and liberty, [which are] the simple creed
Of Childhood, whether [one is] fluttering or at rest,
With new-born hope for ever in his breast:-

But for:

(1)
those obstinate questionings Of sense and outward things,

(2)
Fallings from us, vanishings;

(3)
Blank misgivings of a Creature Moving about in worlds
not realiz'd,

(4)
[in other words,] High instincts, before which our
mortal Nature Did tremble like a guilty Thing surpriz'd:

(5)
those first affections, [and/or] Those shadowy recollections,
Which, be they what they may,
Are yet the fountain light of all our day,
Are yet a master light of all our seeing.
---

144-50
「わたし」がこの詩でたたえているもの、後にワーズワースが
つけたタイトルでいっているような「幼少の思い出が教えてくれる
永遠」、つまり、人の感覚や意識や生そのものを超えたところにある
超越論的なものが、131行目まで(特に58-84行で)描いてきた
ような楽園的な、心あたたまるようなものであると同時に、
恐怖や不安をの念を抱かせるような、いわゆる「崇高」なものでも
あることを示している。

145-46
ワーズワースは、「自分の心の外にものが本当に存在するのか、
自信がなくなるときが以前にあって、そんなときに外部のものは
落ちていき、消えていくんだ」というようなことをいっていたらしい。
The Poetical Works of William Wordsworth, ed. William Knight,
vol. 4 (1883), p. 58.

156-58 Uphold us, cherish us . . . Silence
143行目のThe song of thanks and praiseの内容。
または、"those first affections", "Those shadowy
recollections", "[T]he fountain light of all our day",
"a master light of all our seeing" に対する呼びかけ。

158-163 truths that wake . . . or destroy!
構文の中で浮いている名詞句。(最後に!があるので、
呼びかけのようなものとして理解。) 内容的には、theが
ついていないので、以下のようなことを含む漠然とした「真理」。

"those first affections",
"Those shadowy recollections",
"[T]he fountain light of all our day",
"a master light of all our seeing"
"moments in the being Of the eternal Silence"

178-89
幼少の頃に特に意識することなく感じていた永遠や、
知っていた真理(108-19行)、幼少期に見ていた自然の輝き
(1-84行)を後ろ向きにたたえ、成長してしまった自分について
嘆くのではなく、これらの存在をまだかすかに(逆説的に、失われたもの
として)感じられる現在の自分やその将来を前向きにとらえよう、
という姿勢をあらわす。この詩の論理構造上の結論部。

190-
君たち=泉、牧場、丘、林に対して話しかけている。

193-4 delight / To live. . . .
= delight of living. . . . (OED "to", prep. B5)
不定詞が、先行する抽象名詞の具体的な内容をあらわしている。

195 fret
(川が)荒れて揺れながら、小さな波を立てつつ、流れる(OED v1, 11)。

* * *

17世紀のカウリー以来のピンダリックの終着点というべき作品。
ワーズワースの短い詩のなかでも(これでも短い--長いといえる
のは『序曲』など)、もっともいいもののひとつとされる。

ピンダリックとは、古代ギリシャのピンダロスのオードの
高揚した雰囲気(だけ)を再現した不規則な詩形。
ドライデンの「アレクサンドロスの宴」もこのかたちで
描かれている。(20120721の記事参照)

自然のとらえ方など、いろいろ矛盾やあいまいなところが
あるように思われるが、(厳密な論理ではなく)自然な思考の
範囲内でシリアスな内容を(熱く)語る、いい作品だと思う。

シリアスな内容とは、たとえば、自然と人の関係、
生きることにともなう困難や不安とよろこび、
最終的な生の肯定、など。特に144行以降や最終行など、
これらを、ありふれたことばや概念をを超えたレベルで
語っている、あるいは語ろうとしているところに、
この詩の説得力があるように思う。

(あと、永遠=不死を語りつつも、「神」の概念、
キリスト教的な思考の枠組みに最低限しか言及しないのもいい。)

* * *

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Wordsworth, "Ode" ("Intimations of Immortality") 1807 ver. (英語テクスト)

William Wordsworth
"Ode"

Paulo majora canamus.

There was a time when meadow, grove, and stream,
The earth, and every common sight,
To me did seem
Apparell'd in celestial light,
The glory and the freshness of a dream.
It is not now as it has been of yore;―
Turn wheresoe'er I may,
By night or day,
The things which I have seen I now can see no more.
(1-9)

The Rainbow comes and goes, (10)
And lovely is the Rose,
The Moon doth with delight
Look round her when the heavens are bare;
Waters on a starry night
Are beautiful and fair;
The sunshine is a glorious birth;
But yet I know, where'er I go,
That there hath pass'd away a glory from the earth.
(10-18)

Now, while the Birds thus sing a joyous song,
And while the young Lambs bound (20)
As to the tabor's sound,
To me alone there came a thought of grief:
A timely utterance gave that thought relief,
And I again am strong.
The Cataracts blow their trumpets from the steep,
No more shall grief of mine the season wrong;
I hear the Echoes through the mountains throng,
The Winds come to me from the fields of sleep,
And all the earth is gay,
Land and sea (30)
Give themselves up to jollity,
And with the heart of May
Doth every Beast keep holiday,
Thou Child of Joy
Shout round me, let me hear thy shouts, thou happy Shepherd Boy!
(19-35)

Ye blessed Creatures, I have heard the call
Ye to each other make; I see
The heavens laugh with you in your jubilee;
My heart is at your festival,
My head hath it's coronal, (40)
The fullness of your bliss, I feel―I feel it all.
Oh evil day! if I were sullen
While the Earth herself is adorning,
This sweet May-morning,
And the Children are pulling,
On every side,
In a thousand vallies far and wide,
Fresh flowers; while the sun shines warm,
And the Babe leaps up on his mother's arm:―
I hear, I hear, with joy I hear! (50)
―But there's a Tree, of many one,
A single Field which I have look'd upon,
Both of them speak of something that is gone:
The Pansy at my feet
Doth the same tale repeat:
Whither is fled the visionary gleam?
Where is it now, the glory and the dream?
(36-57)

Our birth is but a sleep and a forgetting:
The Soul that rises with us, our life's Star,
Hath had elsewhere it's setting, (60)
And cometh from afar:
Not in entire forgetfulness,
And not in utter nakedness,
But trailing clouds of glory do we come
From God, who is our home;
Heaven lies about us in our infancy!
Shades of the prison-house begin to close
Upon the growing Boy,
But He beholds the light, and whence it flows,
He sees it in his joy; (70)
The Youth, who daily farther from the East
Must travel, still is Nature's Priest,
And by the vision splendid
Is on his way attended;
At length the Man perceives it die away,
And fade into the light of common day.
(58-76)

Earth fills her lap with pleasures of her own;
Yearnings she hath in her own natural kind,
And, even with something of a Mother's mind,
And no unworthy aim, (80)
The homely Nurse doth all she can
To make her Foster-child, her Inmate Man,
Forget the glories he hath known,
And that imperial palace whence he came.
(77-84)

Behold the Child among his new-born blisses,
A four year's Darling of a pigmy size!
See, where mid work of his own hand he lies,
Fretted by sallies of his Mother's kisses,
With light upon him from his Father's eyes!
See, at his feet, some little plan or chart, (90)
Some fragment from his dream of human life,
Shap'd by himself with newly-learned art;
A wedding or a festival,
A mourning or a funeral;
And this hath now his heart,
And unto this he frames his song:
Then will he fit his tongue
To dialogues of business, love, or strife;
But it will not be long
Ere this be thrown aside, (100)
And with new joy and pride
The little Actor cons another part,
Filling from time to time his "humourous stage"
With all the Persons, down to palsied Age,
That Life brings with her in her Equipage;
As if his whole vocation
Were endless imitation.
(85-107)

Thou, whose exterior semblance doth belie
Thy Soul's immensity;
Thou best Philosopher, who yet dost keep (110)
Thy heritage, thou Eye among the blind,
That, deaf and silent, read'st the eternal deep,
Haunted for ever by the eternal mind,―
Mighty Prophet! Seer blest!
On whom those truths do rest,
Which we are toiling all our lives to find;
Thou, over whom thy Immortality
Broods like the Day, a Master o'er a Slave,
A Presence which is not to be put by;
To whom the grave (120)
Is but a lonely bed without the sense or sight
Of day or the warm light,
A place of thought where we in waiting lie;
Thou little Child, yet glorious in the might
Of untam'd pleasures, on thy Being's height,
Why with such earnest pains dost thou provoke
The Years to bring the inevitable yoke,
Thus blindly with thy blessedness at strife?
Full soon thy Soul shall have her earthly freight,
And custom lie upon thee with a weight, (130)
Heavy as frost, and deep almost as life!
(108-31)

O joy! that in our embers
Is something that doth live,
That nature yet remembers
What was so fugitive!
The thought of our past years in me doth breed
Perpetual benedictions: not indeed
For that which is most worthy to be blest;
Delight and liberty, the simple creed
Of Childhood, whether fluttering or at rest, (140)
With new-born hope for ever in his breast:―
Not for these I raise
The song of thanks and praise;
But for those obstinate questionings
Of sense and outward things,
Fallings from us, vanishings;
Blank misgivings of a Creature
Moving about in worlds not realiz'd,
High instincts, before which our mortal Nature
Did tremble like a guilty Thing surpriz'd: (150)
But for those first affections,
Those shadowy recollections,
Which, be they what they may,
Are yet the fountain light of all our day,
Are yet a master light of all our seeing;
Uphold us, cherish us, and make
Our noisy years seem moments in the being
Of the eternal Silence: truths that wake,
To perish never;
Which neither listlessness, nor mad endeavour, (160)
Nor Man nor Boy,
Nor all that is at enmity with joy,
Can utterly abolish or destroy!
Hence, in a season of calm weather,
Though inland far we be,
Our Souls have sight of that immortal sea
Which brought us hither,
Can in a moment travel thither,
And see the Children sport upon the shore,
And hear the mighty waters rolling evermore. (170)
(132-70)

Then, sing ye Birds, sing, sing a joyous song!
And let the young Lambs bound
As to the tabor's sound!
We in thought will join your throng,
Ye that pipe and ye that play,
Ye that through your hearts to day
Feel the gladness of the May!
What though the radiance which was once so bright
Be now for ever taken from my sight,
Though nothing can bring back the hour (180)
Of splendour in the grass, of glory in the flower;
We will grieve not, rather find
Strength in what remains behind,
In the primal sympathy
Which having been must ever be,
In the soothing thoughts that spring
Out of human suffering,
In the faith that looks through death,
In years that bring the philosophic mind.
(171-89)

And oh ye Fountains, Meadows, Hills, and Groves, (190)
Think not of any severing of our loves!
Yet in my heart of hearts I feel your might;
I only have relinquish'd one delight
To live beneath your more habitual sway.
I love the Brooks which down their channels fret,
Even more than when I tripp'd lightly as they;
The innocent brightness of a new-born Day
Is lovely yet;
The Clouds that gather round the setting sun
Do take a sober colouring from an eye (200)
That hath kept watch o'er man's mortality;
Another race hath been, and other palms are won.
Thanks to the human heart by which we live,
Thanks to its tenderness, its joys, and fears,
To me the meanest flower that blows can give
Thoughts that do often lie too deep for tears.
(190-206)

* * *

Poems in Two Volumes, vol. 2 (1807)より。
http://www.gutenberg.org/ebooks/8824

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Carew, "A Song" ("Aske me no more")

トマス・ケアリ (1595-1640)
「歌」 (「訊かないで」)

訊かないで、6月が過ぎたあと、神様は、
どこに色あせたバラをかたづけるのか、と。
あなたの深く、あざやかに輝く美しさのなかに
帰ってきて、バラたちは眠っているのだから。

訊かないで、日の光のなかの金色の原子たちは、
どこにさまよっていってしまうのか、と。
あの金の粉は、空の神様が、君のことが好きで、
君の髪をきれいにするためにつくったものだから。

訊かないで、5月が過ぎたあと、
ナイチンゲールはどこに飛んでいってしまうのか、と。
やさしく歌うあなたののどのなか、
ナイチンゲールは冬のあいだ歌をあたためているのだから。

訊かないで、静まりかえった夜におちてきたあと、
星たちはどこに行くのか、と。
星たちは君の瞳にくっついているのだから、
まるでそれが自分の天球であるかのように。

訊かないで、不死鳥が香りのよい
巣をつくるのは、東か西か、と。
その鳥は君のところに飛んでいき、
いい香りのする君の胸のなかで死ぬのだから。

* * *

Thomas Carew
"A Song"
("Aske me no more where Iove bestowes")

Aske me no more where Iove bestowes,
When Iune is past the fading rose:
For in your beauties orient deepe,
These flowers as in their causes, sleepe.

Aske me no more whether doth stray,
The golden Atomes of the day:
For in pure love heaven did prepare,
Those powders to inrich your haire.

Aske me no more whether doth hast,
The Nightingale when May is past:
For in your sweet dividing throat,
She winters and keepes warme her note.

Aske me no more where those starres light,
That downewards fall in dead of night:
For in your eyes they sit and there,
Fixed become as in their sphere.

Aske me no more if East or West,
The Phenix builds her spicy nest:
For vnto you at last shee flies,
And in your fragrant bosome dyes.

* * *

1 Iove
Jove
(古いスペリング。以下、特にわかりにくいもののみ注記。)

1 bestowes
置く(OED 1)。かたづける(OED 2)。寝床を与える(OED 3)。

2 Iune
June

3 beauties orient deepe
構文は、次のどちらか。
orient (形) deepe (形) Beauties (名)
beauty's orient (形) deepe (名)

Orientとdeepは、ある種のオクシモロン(撞着語法=
矛盾する語を重ねて、通常の言葉づかいでは表現できない
内容を表現すること。)

3 orient
東の(OED 1)。東方でとれる真珠のように美しく輝く(OED 2)。
夜明けの太陽のような、そのように輝く(OED 3)。

4 deep
(通常の意味のほかに)
(色が)濃い、深くあざやかな(OED 13)。

4 cause
アリストテレスのいう質料因(material cause, 原料、材料)や
動力因(efficient cause, ものを生み出す力)など。

バラは、もともと「あなた」のからだの美しい部分、パーツから
できたもので、だから、咲いて枯れたら、「あなた」のところに
(「あなた」の目、頬、色からいえば特にくちびる、などに)帰ってくる、
ということ。つまり、あなたの目、頬、くちびるなどは、バラのように
きれい、ということ。

5 whether
whither

6
光は太陽が発する原子、という説があった。
(光に反射するほこりの粒がその原子、とも。)

7-8
つまり、昼間の明るさ、光は、夜のあいだは、
「あなた」の髪の輝きに入っている、その輝きとなっている、
ということ。

8 inrich
enrich

11-12
「あなた」の声はナイチンゲールのようにきれい、ということ。

13 light
落ちる、降りてくる(OED v1, II, 9, 10b)。
光る(OED v2)。

14
流れ星のこと? 星の光のこと?

15-16
「あなた」の瞳のキラッという輝きは、星の光のようにきれい、
ということ。

16
地球をとりまく星がそこに固定されていると仮定された、
無色透明で何層にもなっている空の球体。

18 Phenix
Phoenix. 不死鳥はアラブの砂漠で500-600年ほど
生きた後、香りのよい枝の薪を集め、そのなかでみずから
焼け死に、そしてその灰の中から復活する(OED 1)。

ちなみに、17-18の問いの答えは、アラブだから東
(ヨーロッパから見て)。

19-20
不死鳥が復活した姿が「あなた」である、ということ。

加えて、次のような連想が。
1. 「あなた」の胸はいい香り。
2. 「あなた」の胸は熱い(燃える思いを秘めている)。

それ以上に、ポイントは、この最後の二行で、この詩における
思考の枠のようなものが一気に広がること。

1・・・・・・くちびるなど
2・・・・・・髪
3・・・・・・声
4・・・・・・目

と、順番に「あなた」の身体的な美しさをたたえてきて、そして、

5・・・・・・胸(そしてその香り)
(近づかなければ香りなんてわからない・・・・・・)

とエロティックなオチに向かうように見せかけつつ、
ここで同時に「あなた」=不死鳥というかたちで、
からだの美しさ以上のテーマ、つまり「時間」のテーマを導入。

これにより、(現実的に必ずやってくる)死や、(ありえない
理想としての)不死が連想され、「あなた」の美しさに関する
思考が、一気にシリアスなもの、ある意味で悲しいものとなる。
神話上の不死鳥は復活することになっているけど、生身の
人間である美しいあなたは、本当は・・・・・・。

19 vnto
unto

* * *

英語テクストは、Poems By Thomas Carevv Esquire
(1640, STC 4620) より。

* * *

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Shelley, ("Is it that in some brighter sphere")

パーシー・B・シェリー (1792-1822)
断片(どこか別の、もっと輝いている世界にいったら)

どこか別の、もっと輝いている世界にいったら、
ここで出会った友だちとは別れてしまう?
未来はうつる?
現在の暗い鏡に?
どうして? 生きながら、夢のかけらを
つなぎあわせているような気がするのは?
現実になるかけらと、それから、
心のなか脈打ちながら、ふるえるだけのかけらと?

* * *

Percy Bysshe Shelley
Fragment ("Is it that in some brighter sphere")

Is it that in some brighter sphere
We part from friends we meet with here?
Or do we see the Future pass
Over the Present's dusky glass?
Or what is that that makes us seem _5
To patch up fragments of a dream,
Part of which comes true, and part
Beats and trembles in the heart?

* * *

英語テクストは、The Complete Poetical Works of
Percy Bysshe Shelley (1914), Vol. 2 より。
http://www.gutenberg.org/ebooks/4798

* * *

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こどもの国 (神奈川・東京) 2

こどもの国 2
Children's Land
http://www.kodomonokuni.org/
20121014/1103



アヒル



白鳥(攻撃的にエサを要求)



つり橋



ロバ



出産間近の牛たち





* * *

写真は私が撮影したもの。

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