英語の詩を日本語で
English Poetry in Japanese
Locke, "Pleasure and Pain" (Human Understanding 2. 20)
ジョン・ロック
「さまざまな快楽と苦痛」
『人の知性について』
§ 1. 何かを感じて、あるいはそれについて考えて、頭に浮かぶ
素朴な観念のうち、特に重要なものは快楽と苦痛である。
体が何かを感じる時、それだけを感じる場合と、苦痛や快楽も
同時に感じる場合がある。同じように、頭で何かを考える時、
何かが頭に浮かぶ時、その何かのみを考える、それのみが頭に
浮かぶ場合と、快楽と苦痛を同時に感じる場合がある。
嬉しい感じ・嫌な感じ、など言いかたは何でもいいだろう。
この快楽と苦痛は、他の素朴な観念と同じで、言葉で説明できない。
定義できない。これらを知るには、体の五感から得られる
素朴な観念と同じで、経験するしかない。望ましい・望ましくない
などといって快楽・苦痛を定義するのは、わたしたちが感じること
について、あえて考えてそれを知る、というようなものである。
それぞれ異なるさまざまなかたちで心が感じる望ましいこと・
望ましくないことについて、それぞれ異なるわたしたちが
それぞれ異なるかたちであえて考えることにより、快楽と苦痛に
ついて精一杯理解を深める、というのと同じである。
§ 2. 何かが望ましいか・望ましくないか、ということはひとえに
快楽・苦痛との関係で決まる。わたしたちは、快楽をもたらす・より
大きくしてくれるもの、あるいは苦痛を減らしてくれるものを
望ましいと思う。あるいはさらに、そんな望ましいものを与えて
くれる・維持してくれるもの、望ましくないものがない状態を
つくってくれる・維持してくれるものを。逆に、望ましくない
ものとは、苦痛をもたらす・大きくするもの、快楽を減らして
しまうものである。あるいはさらに、そんな望ましくない状態を
つくるような、望ましい状態を奪うようなもののことである。
快楽・苦痛という言葉でわたしが意味するのは、いわゆる体や
心が感じるそれらである。もちろん、実際には、どちらも
心の状態である。その原因がふだんと違う体の状態だったり、
あるいは心に浮かぶことだったりするのである。
§ 3. 快楽と苦痛、およびこれらをもたらす望ましいものと
望ましくないものが、わたしたちの感情の軸である。だから、
これらがどのような状況下でどのようにわたしたちのなかで
作用するか、どのような心の状態をもたらし、またそれを
変化させるか、どんな内的感覚(とでも呼ぶべきもの)を
生むかを考えれば、わたしたちは自分の感情のありかたを
具体的に理解できるであろう。
§ 4. 目の前にある、あるいはない、もの・ことがしばしばもたらす
楽しい・嬉しい思いを頭に思い浮かべてみる。それが愛、
好きという感情である。秋に食べながら、あるいは春にそれがない
状態で、ぶどうが好きと誰かが言う場合、彼に楽しい思いをさせて
いるのはぶどうではなく、ぶどうの味である。健康状態や性格が変わって
ぶどうの味が楽しめなくなったら、もはや彼はぶどうが好きでない、
ということになる。
§ 5. 逆に、目の前にある、あるいはない、もの・ことがもたらす
いやな・つらい思いを頭に思い浮かべてみる。それが嫌いという
感情である。わたしたちの感情は快楽と苦痛の様相しだいで変わる
ものであるから、この感情そのものの理解からさらに進んで考えれば、
命がない・感覚がないものに対するわたしたちの好き・嫌いは、
基本的にそれらを利用してわたしたちの感覚が得る快楽・苦痛
しだいと言える。その利用のしかたに際限はなく、これら好き・
嫌いの対象が破壊される場合もありうる。しかし、それ自身幸せや
不幸を感じることができるものが好き・嫌いの対象である場合、
この好き・嫌いとは、その対象が生存するかしないか、幸せか
不幸せかを考えた時に感じる嬉しさや不安のことでもある。だから、
自分のこどもや友だちの生存や幸せに人は日々喜びを感じる、
そんな時、人は彼らを愛している、ということになる。が、
とにかくここで確認したいのは次のことである--わたしたちの
好き・嫌いとは、理由が何であれわたしたちが感じる快楽・苦痛
一般によってもたらされる心の状態にすぎない。
§ 6. 手に入ったら嬉しいものをもっていないことで感じる
不快な感覚が、欲望と呼ばれるものである。欲望の大小は、
この不快感がどれくらい強いか弱いかで決まる。
おそらくここで指摘しておいたほうがいいだろうが、
不快さこそ、人の行為や勤勉さをもたらす、唯一でないにしろ
主たる原動力である。どんな望ましいことであっても、
それがなくてもいやな思いをしない、苦痛がないのであれば、
それがなくても不快だったり困ったりしないのであれば、
それに対する欲望は生まれないし、それを求める努力も
はじまらない。何かがなくても不快な感じがほとんどなければ、
ほしいかも、という最低ラインの、実際あるかないか
わからないような欲望しか生じない。ほしいかな、どうかな、
という願望とも言えるかどうかわからない気持ちを抱くのみであり、
それを手に本当に入れるために何かを本気でしたりしない。また、
望ましいものを手に入れることは不可能、それには手が届かない、
という考えが頭に浮かぶと、その望ましいものがないことで
生じる不快な感覚が縮小し、それにあわせて欲望もさえぎられたり、
小さくなったりする。このことについてはさらに考えるべきだが、
それはまた然るべき場所にまわす。
§ 7. 喜びとは心が楽しく満たされた状態である。望ましい
ものが手に入ったこと、あるいは間違いなく手に入ることを
意識した時にこの状態になる。望ましいものが手に入るとは、
それを好きにできる、好きな時に好きなように使える、
ということである。それゆえ、飢え死に直前の人は、食べものを
もらって喜ぶ。食べる前からである。父親は自分のこどもが
元気でいてくれれば嬉しいものであり、こどもがそのように
元気でいるかぎり、常にその喜ばしい状態、望ましいものが
手に入った状態にある。そのことについて考えるだけで、
嬉しい気分になれるからである。
§ 8. 悲しみとは心が不快な状態である。望ましいものが
失われなくてもよかったのに失われたことを意識した時に
この状態になる。望ましくないもの・ことが目の前に
生じた時にも、である。
§ 9. 希望とは、誰にでも感じられる心の快楽である。
自分にとって嬉しいことがある、嬉しいものが手に入る、
という先のことを考えた時にこれは生じる。
§ 10. 恐れとは心が不快な状態である。嫌なことが自分に
ふりかかりそう、という先のことを考えた時にこれは生じる。
§ 11. 絶望とは、何であれ望ましいもの・ことに手が
届かない、という思いである。その感じかたは人や
時や場合によって異なる。不快・苦痛をもたらすことが
あれば、無気力、動けない状態になることもある。
§ 12. 怒りとは心が不快に乱れた状態で、その原因が
不当な扱いを受けたことである場合、さらに、すぐにでも
仕返ししたいと思っているような場合の感情である。
§ 13. 妬みも心が不快な状態で、何か手に入れたいと思う
望ましいもの・ことを、それにふさわしくないと思う誰かが
自分より先に手にした時の感情である。
§ 14. この最後の二つ、妬みと怒りは、ただ苦痛や快楽が
そのまま引きおこすものではなく、わたしたち自身や
他者についての入り組んだ思いもそこに関係している。だから、
これらはすべての人に見られるわけではない。苦痛・快楽
以外の要素、他者に対する評価や復讐の意図が見られない
人もいる。しかし、快楽と苦痛そのものにつながる他の
感情すべては、すべての人に見られると思う。
わたしたちが好き、ほしい、嬉しいと思い、希望するのは、
みな快楽のために、である。わたしたちが嫌い、恐れ、
悲しむのは、突きつめればみな苦痛ゆえに、である。まとめると、
これらの感情はすべて、何かが快楽または苦痛をもたらす
ように、快楽・苦痛をともなうように、見えるときに生まれる
ものである。だから、たいていわたしたちは、(少なくとも
考える力や意志をもっていて、そして)わたしたちのなかに
主体的に苦痛を生じさせた相手まで嫌う。この相手がもたらした
恐れは、苦痛でありつづけるからである。逆にわたしたちは、
望ましいもの・ことをもたらしてくれたから好き、と
思いつづけない。快楽は苦痛ほど強くなく、また、望ましい
もの・ことが再びあるとはかんたんに期待しないからである。
この点については、また後ほど。
§ 15. 快楽と苦痛、喜びと不安という言葉は、すでに
ふれたように、ここでは、身体的な苦痛・快楽のみならず、
わたしたちが感じる喜び・不安のすべてを意味することを
確認したい。ありがたい感覚あるいは思考、あるいは、
嬉しくない感覚あるいは思考、そのいずれかから生じる
すべてである。
§ 16. さらに、感情については次のことも考慮すべきである。
すなわち、苦痛がなくなること、あるいは小さくなることは
快楽と理解され、また感じられる。快楽がなくなったり
小さくなったりすることは、苦痛と理解され、また感じられる。
§ 17. 感情は、ほとんどの人のほとんどの場合、体に
影響し、さまざまな変化をもたらす。この変化は
知覚できない場合もあるので、これが感情の定義に
必須ということはない。例えば、恥は心に感じる不安で、
何かみっともないこと、自分に対する他者の評価を
下げることをしたと考えた時に感じるものであるが、
常にそれで顔が赤くなるとはかぎらない。
§ 18. 誤解されたくないのだが、以上は感情を主題とする
つもりの議論ではない。それなら、わたしがあげたものより
さらに多くの感情が存在するし、またわたしがふれたものにも
より長く、正確な説明が必要である。ここで扱った感情は、
あくまで快楽・苦痛のあらわれかたの例であり、望ましい
または望ましくないもの・ことをいろいろ頭で考えた時に
心に生じるものである。他のあらわれかたをする快楽・苦痛も
あるだろう。より単純に飢えや乾きから生じる苦痛とか、
食べたり飲んだりしてこれらを癒す快楽も存在する。
敏感な目が感じる痛みもあるし、音楽の楽しみもある。
つまらない言いがかりからはじまる、何の得にもならない
罵りあいに感じる苦痛があれば、友だちと知性的な話をして、
または筋道だった研究のなか真理を探究・発見して、得られる
快楽もある。ただ感情のほうがより身近にわたしたちに
関係するので、それを例に選んだまでである。そして、
その感情の源は体で感じることと頭で考えることと
理解すべき、と示したのである。
*****
John Locke
"Of Modes of Pleasure and Pain"
An Essay concerning Human Understanding 2. 20
§ 1. Amongst the simple ideas, which we receive both from sensation and reflection, pain and pleasure are two very considerable ones. For as in the body there is sensation barely in itself, or accompanied with pain or pleasure: so the thought or perception of the mind is simply so, or else accompanied also with pleasure or pain, delight or trouble, call it how you please. These, like other simple ideas, cannot be described, nor their names defined; the way of knowing them is, as of the simple ideas of the senses, only by experience. For to define them by the presence of good or evil, is no otherwise to make them known to us, than by making us reflect on what we feel in ourselves, upon the several and various operations of good and evil upon our minds, as they are differently applied to or considered by us.
§ 2. Things then are good or evil, only in reference to pleasure or pain. That we call good, which is apt to cause or increase pleasure, or diminish pain in us; or else to procure or preserve us the possession of any other good, or absence of any evil. And on the contrary, we name that evil, which is apt to produce or increase any pain, or diminish any pleasure in us; or else to procure us any evil, or deprive us of any good. By pleasure and pain, I must be understood to mean of body or mind, as they are commonly distinguished; though in truth they be only different constitutions of the mind, sometimes occasioned by disorder in the body, sometimes by thoughts of the mind.
§ 3. Pleasure and pain, and that which causes them, good and evil, are the hinges on which our passions turn: and if we reflect on ourselves, and observe how these, under various considerations, operate in us; what modifications or tempers of mind, what internal sensations (if I may so call them) they produce in us, we may thence form to ourselves the ideas of our passions.
§ 4. Thus any one reflecting upon the thought he has of the delight, which any present or absent thing is apt to produce in him, has the idea we call love. For when a man declares in autumn, when he is eating them, or in spring, when there are none, that he loves grapes, it is no more but that the taste of grapes delights him; let an alteration of health or constitution destroy the delight of their taste, and he then can be said to love grapes no longer.
§ 5. On the contrary, the thought of the pain, which any thing present or absent is apt to produce in us, is what we call hatred. Were it my business here to inquire any farther than into the bare ideas of our passions, as they depend on different modifications of pleasure and pain, I should remark, that our love and hatred of inanimate insensible beings, is commonly founded on that pleasure and pain which we receive from their use and application any way to our senses, though with their destruction: but hatred or love, to beings capable of happiness or misery, is often the uneasiness or delight, which we find in ourselves arising from a consideration of their very being or happiness. Thus the being and welfare of a man’s children or friends, producing constant delight in him, he is said constantly to love them. But it suffices to note, that our ideas of love and hatred are but the dispositions of the mind, in respect of pleasure and pain in general, however caused in us.
§ 6. The uneasiness a man finds in himself upon the absence of any thing, whose present enjoyment carries the idea of delight with it, is that we call desire; which is greater or less, as that uneasiness is more or less vehement. Where, by the by, it may perhaps be of some use to remark, that the chief, if not only spur to human industry and action, is uneasiness. For whatsoever good is proposed, if its absence carries no displeasure or pain with it, if a man be easy and content without it, there is no desire of it, nor endeavour after it; there is no more but a bare velleity, the term used to signify the lowest degree of desire, and that which is next to none at all, when there is so little uneasiness in the absence of any thing, that it carries a man no farther than some faint wishes for it, without any more effectual or vigorous use of the means to attain it. Desire also is stopped or abated by the opinion of the impossibility or unattainableness of the good proposed, as far as the uneasiness is cured or allayed by that consideration. This might carry our thoughts farther, were it seasonable in this place.
§ 7. Joy is a delight of the mind, from the consideration of the present or assured approaching possession of a good: and we are then possessed of any good when we have it so in our power, that we can use it when we please. Thus a man almost starved has joy at the arrival of relief, even before he has the pleasure of using it: and a father, in whom the very well-being of his children causes delight, is always, as long as his children are in such a state, in the possession of that good; for he needs but to reflect on it, to have that pleasure.
§ 8. Sorrow is uneasiness in the mind, upon the thought of a good lost, which might have been enjoyed longer; or the sense of a present evil.
§ 9. Hope is that pleasure in the mind, which every one finds in himself, upon the thought of a profitable future enjoyment of a thing, which is apt to delight him.
§ 10. Fear is an uneasiness of the mind, upon the thought of future evil likely to befal us.
§ 11. Despair is the thought of the unattainableness of any good, which works differently in men’s minds, sometimes producing uneasiness or pain, sometimes rest and indolency.
§ 12. Anger is uneasiness or discomposure of the mind, upon the receipt of any injury, with a present purpose of revenge.
§ 13. Envy is an uneasiness of the mind, caused by the consideration of a good we desire, obtained by one we think should not have had it before us.
§ 14. These two last, envy and anger, not being caused by pain and pleasure, simply in themselves, but having in them some mixed considerations of ourselves and others, are not therefore to be found in all men, because those other parts of valuing their merits, or intending revenge, is wanting in them; but all the rest terminating purely in pain and pleasure, are, I think, to be found in all men. For we love, desire, rejoice, and hope, only in respect of pleasure; we hate, fear, and grieve, only in respect of pain ultimately: in fine, all these passions are moved by things, only as they appear to be the causes of pleasure and pain, or to have pleasure or pain some way or other annexed to them. Thus we extend our hatred usually to the subject (at least if a sensible or voluntary agent) which has produced pain in us, because the fear it leaves is a constant pain: but we do not so constantly love what has done us good; because pleasure operates not so strongly on us as pain, and because we are not so ready to have hope it will do so again. But this by the by.
§ 15. By pleasure and pain, delight and uneasiness, I must all along be understood (as I have above intimated) to mean not only bodily pain and pleasure, but whatsoever delight or uneasiness is felt by us, whether arising from any grateful or unacceptable sensation or reflection.
§ 16. It is farther to be considered, that in reference to the passions, the removal or lessening of a pain is considered, and operates as a pleasure: and the loss or diminishing of a pleasure, as a pain.
§ 17. The passions too have most of them in most persons operations on the body, and cause various changes in it; which not being always sensible, do not make a necessary part of the idea of each passion. For shame, which is an uneasiness of the mind upon the thought of having done something which is indecent, or will lessen the valued esteem which others have for us, has not always blushing accompanying it.
§ 18. I would not be mistaken here, as if I meant this as a discourse of the passions; they are many more than those I have here named: and those I have taken notice of would each of them require a much larger, and more accurate discourse. I have only mentioned these here as so many instances of modes of pleasure and pain resulting in our minds from various considerations of good and evil. I might perhaps have instanced in other modes of pleasure and pain more simple than these, as the pain of hunger and thirst, and the pleasure of eating and drinking to remove them: the pain of tender eyes, and the pleasure of musick; pain from captious uninstructive wrangling, and the pleasure of rational conversation with a friend, or of well-directed study in the search and discovery of truth. But the passions being of much more concernment to us, I rather made choice to instance in them, and show how the ideas we have of them are derived from sensation and reflection.
https://oll.libertyfund.org/title/locke-the-works-vol-1-an-essay-concerning-human-understanding-part-1
*****
散文
*****
感情・理性 passion / reason
快楽・苦痛 pleasure / pain
Cf. Horace, Epistles, 1. 2. 55
Sperne voluptates; nocet empta dolore voluptas.
快楽を求めるな。苦痛を払って快楽を買っても嬉しくない。
*****
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参照する際には、このサイトの作者、タイトル、URL,
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してください。
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かまいません。
商用、盗用、悪用などはないようお願いします。
「さまざまな快楽と苦痛」
『人の知性について』
§ 1. 何かを感じて、あるいはそれについて考えて、頭に浮かぶ
素朴な観念のうち、特に重要なものは快楽と苦痛である。
体が何かを感じる時、それだけを感じる場合と、苦痛や快楽も
同時に感じる場合がある。同じように、頭で何かを考える時、
何かが頭に浮かぶ時、その何かのみを考える、それのみが頭に
浮かぶ場合と、快楽と苦痛を同時に感じる場合がある。
嬉しい感じ・嫌な感じ、など言いかたは何でもいいだろう。
この快楽と苦痛は、他の素朴な観念と同じで、言葉で説明できない。
定義できない。これらを知るには、体の五感から得られる
素朴な観念と同じで、経験するしかない。望ましい・望ましくない
などといって快楽・苦痛を定義するのは、わたしたちが感じること
について、あえて考えてそれを知る、というようなものである。
それぞれ異なるさまざまなかたちで心が感じる望ましいこと・
望ましくないことについて、それぞれ異なるわたしたちが
それぞれ異なるかたちであえて考えることにより、快楽と苦痛に
ついて精一杯理解を深める、というのと同じである。
§ 2. 何かが望ましいか・望ましくないか、ということはひとえに
快楽・苦痛との関係で決まる。わたしたちは、快楽をもたらす・より
大きくしてくれるもの、あるいは苦痛を減らしてくれるものを
望ましいと思う。あるいはさらに、そんな望ましいものを与えて
くれる・維持してくれるもの、望ましくないものがない状態を
つくってくれる・維持してくれるものを。逆に、望ましくない
ものとは、苦痛をもたらす・大きくするもの、快楽を減らして
しまうものである。あるいはさらに、そんな望ましくない状態を
つくるような、望ましい状態を奪うようなもののことである。
快楽・苦痛という言葉でわたしが意味するのは、いわゆる体や
心が感じるそれらである。もちろん、実際には、どちらも
心の状態である。その原因がふだんと違う体の状態だったり、
あるいは心に浮かぶことだったりするのである。
§ 3. 快楽と苦痛、およびこれらをもたらす望ましいものと
望ましくないものが、わたしたちの感情の軸である。だから、
これらがどのような状況下でどのようにわたしたちのなかで
作用するか、どのような心の状態をもたらし、またそれを
変化させるか、どんな内的感覚(とでも呼ぶべきもの)を
生むかを考えれば、わたしたちは自分の感情のありかたを
具体的に理解できるであろう。
§ 4. 目の前にある、あるいはない、もの・ことがしばしばもたらす
楽しい・嬉しい思いを頭に思い浮かべてみる。それが愛、
好きという感情である。秋に食べながら、あるいは春にそれがない
状態で、ぶどうが好きと誰かが言う場合、彼に楽しい思いをさせて
いるのはぶどうではなく、ぶどうの味である。健康状態や性格が変わって
ぶどうの味が楽しめなくなったら、もはや彼はぶどうが好きでない、
ということになる。
§ 5. 逆に、目の前にある、あるいはない、もの・ことがもたらす
いやな・つらい思いを頭に思い浮かべてみる。それが嫌いという
感情である。わたしたちの感情は快楽と苦痛の様相しだいで変わる
ものであるから、この感情そのものの理解からさらに進んで考えれば、
命がない・感覚がないものに対するわたしたちの好き・嫌いは、
基本的にそれらを利用してわたしたちの感覚が得る快楽・苦痛
しだいと言える。その利用のしかたに際限はなく、これら好き・
嫌いの対象が破壊される場合もありうる。しかし、それ自身幸せや
不幸を感じることができるものが好き・嫌いの対象である場合、
この好き・嫌いとは、その対象が生存するかしないか、幸せか
不幸せかを考えた時に感じる嬉しさや不安のことでもある。だから、
自分のこどもや友だちの生存や幸せに人は日々喜びを感じる、
そんな時、人は彼らを愛している、ということになる。が、
とにかくここで確認したいのは次のことである--わたしたちの
好き・嫌いとは、理由が何であれわたしたちが感じる快楽・苦痛
一般によってもたらされる心の状態にすぎない。
§ 6. 手に入ったら嬉しいものをもっていないことで感じる
不快な感覚が、欲望と呼ばれるものである。欲望の大小は、
この不快感がどれくらい強いか弱いかで決まる。
おそらくここで指摘しておいたほうがいいだろうが、
不快さこそ、人の行為や勤勉さをもたらす、唯一でないにしろ
主たる原動力である。どんな望ましいことであっても、
それがなくてもいやな思いをしない、苦痛がないのであれば、
それがなくても不快だったり困ったりしないのであれば、
それに対する欲望は生まれないし、それを求める努力も
はじまらない。何かがなくても不快な感じがほとんどなければ、
ほしいかも、という最低ラインの、実際あるかないか
わからないような欲望しか生じない。ほしいかな、どうかな、
という願望とも言えるかどうかわからない気持ちを抱くのみであり、
それを手に本当に入れるために何かを本気でしたりしない。また、
望ましいものを手に入れることは不可能、それには手が届かない、
という考えが頭に浮かぶと、その望ましいものがないことで
生じる不快な感覚が縮小し、それにあわせて欲望もさえぎられたり、
小さくなったりする。このことについてはさらに考えるべきだが、
それはまた然るべき場所にまわす。
§ 7. 喜びとは心が楽しく満たされた状態である。望ましい
ものが手に入ったこと、あるいは間違いなく手に入ることを
意識した時にこの状態になる。望ましいものが手に入るとは、
それを好きにできる、好きな時に好きなように使える、
ということである。それゆえ、飢え死に直前の人は、食べものを
もらって喜ぶ。食べる前からである。父親は自分のこどもが
元気でいてくれれば嬉しいものであり、こどもがそのように
元気でいるかぎり、常にその喜ばしい状態、望ましいものが
手に入った状態にある。そのことについて考えるだけで、
嬉しい気分になれるからである。
§ 8. 悲しみとは心が不快な状態である。望ましいものが
失われなくてもよかったのに失われたことを意識した時に
この状態になる。望ましくないもの・ことが目の前に
生じた時にも、である。
§ 9. 希望とは、誰にでも感じられる心の快楽である。
自分にとって嬉しいことがある、嬉しいものが手に入る、
という先のことを考えた時にこれは生じる。
§ 10. 恐れとは心が不快な状態である。嫌なことが自分に
ふりかかりそう、という先のことを考えた時にこれは生じる。
§ 11. 絶望とは、何であれ望ましいもの・ことに手が
届かない、という思いである。その感じかたは人や
時や場合によって異なる。不快・苦痛をもたらすことが
あれば、無気力、動けない状態になることもある。
§ 12. 怒りとは心が不快に乱れた状態で、その原因が
不当な扱いを受けたことである場合、さらに、すぐにでも
仕返ししたいと思っているような場合の感情である。
§ 13. 妬みも心が不快な状態で、何か手に入れたいと思う
望ましいもの・ことを、それにふさわしくないと思う誰かが
自分より先に手にした時の感情である。
§ 14. この最後の二つ、妬みと怒りは、ただ苦痛や快楽が
そのまま引きおこすものではなく、わたしたち自身や
他者についての入り組んだ思いもそこに関係している。だから、
これらはすべての人に見られるわけではない。苦痛・快楽
以外の要素、他者に対する評価や復讐の意図が見られない
人もいる。しかし、快楽と苦痛そのものにつながる他の
感情すべては、すべての人に見られると思う。
わたしたちが好き、ほしい、嬉しいと思い、希望するのは、
みな快楽のために、である。わたしたちが嫌い、恐れ、
悲しむのは、突きつめればみな苦痛ゆえに、である。まとめると、
これらの感情はすべて、何かが快楽または苦痛をもたらす
ように、快楽・苦痛をともなうように、見えるときに生まれる
ものである。だから、たいていわたしたちは、(少なくとも
考える力や意志をもっていて、そして)わたしたちのなかに
主体的に苦痛を生じさせた相手まで嫌う。この相手がもたらした
恐れは、苦痛でありつづけるからである。逆にわたしたちは、
望ましいもの・ことをもたらしてくれたから好き、と
思いつづけない。快楽は苦痛ほど強くなく、また、望ましい
もの・ことが再びあるとはかんたんに期待しないからである。
この点については、また後ほど。
§ 15. 快楽と苦痛、喜びと不安という言葉は、すでに
ふれたように、ここでは、身体的な苦痛・快楽のみならず、
わたしたちが感じる喜び・不安のすべてを意味することを
確認したい。ありがたい感覚あるいは思考、あるいは、
嬉しくない感覚あるいは思考、そのいずれかから生じる
すべてである。
§ 16. さらに、感情については次のことも考慮すべきである。
すなわち、苦痛がなくなること、あるいは小さくなることは
快楽と理解され、また感じられる。快楽がなくなったり
小さくなったりすることは、苦痛と理解され、また感じられる。
§ 17. 感情は、ほとんどの人のほとんどの場合、体に
影響し、さまざまな変化をもたらす。この変化は
知覚できない場合もあるので、これが感情の定義に
必須ということはない。例えば、恥は心に感じる不安で、
何かみっともないこと、自分に対する他者の評価を
下げることをしたと考えた時に感じるものであるが、
常にそれで顔が赤くなるとはかぎらない。
§ 18. 誤解されたくないのだが、以上は感情を主題とする
つもりの議論ではない。それなら、わたしがあげたものより
さらに多くの感情が存在するし、またわたしがふれたものにも
より長く、正確な説明が必要である。ここで扱った感情は、
あくまで快楽・苦痛のあらわれかたの例であり、望ましい
または望ましくないもの・ことをいろいろ頭で考えた時に
心に生じるものである。他のあらわれかたをする快楽・苦痛も
あるだろう。より単純に飢えや乾きから生じる苦痛とか、
食べたり飲んだりしてこれらを癒す快楽も存在する。
敏感な目が感じる痛みもあるし、音楽の楽しみもある。
つまらない言いがかりからはじまる、何の得にもならない
罵りあいに感じる苦痛があれば、友だちと知性的な話をして、
または筋道だった研究のなか真理を探究・発見して、得られる
快楽もある。ただ感情のほうがより身近にわたしたちに
関係するので、それを例に選んだまでである。そして、
その感情の源は体で感じることと頭で考えることと
理解すべき、と示したのである。
*****
John Locke
"Of Modes of Pleasure and Pain"
An Essay concerning Human Understanding 2. 20
§ 1. Amongst the simple ideas, which we receive both from sensation and reflection, pain and pleasure are two very considerable ones. For as in the body there is sensation barely in itself, or accompanied with pain or pleasure: so the thought or perception of the mind is simply so, or else accompanied also with pleasure or pain, delight or trouble, call it how you please. These, like other simple ideas, cannot be described, nor their names defined; the way of knowing them is, as of the simple ideas of the senses, only by experience. For to define them by the presence of good or evil, is no otherwise to make them known to us, than by making us reflect on what we feel in ourselves, upon the several and various operations of good and evil upon our minds, as they are differently applied to or considered by us.
§ 2. Things then are good or evil, only in reference to pleasure or pain. That we call good, which is apt to cause or increase pleasure, or diminish pain in us; or else to procure or preserve us the possession of any other good, or absence of any evil. And on the contrary, we name that evil, which is apt to produce or increase any pain, or diminish any pleasure in us; or else to procure us any evil, or deprive us of any good. By pleasure and pain, I must be understood to mean of body or mind, as they are commonly distinguished; though in truth they be only different constitutions of the mind, sometimes occasioned by disorder in the body, sometimes by thoughts of the mind.
§ 3. Pleasure and pain, and that which causes them, good and evil, are the hinges on which our passions turn: and if we reflect on ourselves, and observe how these, under various considerations, operate in us; what modifications or tempers of mind, what internal sensations (if I may so call them) they produce in us, we may thence form to ourselves the ideas of our passions.
§ 4. Thus any one reflecting upon the thought he has of the delight, which any present or absent thing is apt to produce in him, has the idea we call love. For when a man declares in autumn, when he is eating them, or in spring, when there are none, that he loves grapes, it is no more but that the taste of grapes delights him; let an alteration of health or constitution destroy the delight of their taste, and he then can be said to love grapes no longer.
§ 5. On the contrary, the thought of the pain, which any thing present or absent is apt to produce in us, is what we call hatred. Were it my business here to inquire any farther than into the bare ideas of our passions, as they depend on different modifications of pleasure and pain, I should remark, that our love and hatred of inanimate insensible beings, is commonly founded on that pleasure and pain which we receive from their use and application any way to our senses, though with their destruction: but hatred or love, to beings capable of happiness or misery, is often the uneasiness or delight, which we find in ourselves arising from a consideration of their very being or happiness. Thus the being and welfare of a man’s children or friends, producing constant delight in him, he is said constantly to love them. But it suffices to note, that our ideas of love and hatred are but the dispositions of the mind, in respect of pleasure and pain in general, however caused in us.
§ 6. The uneasiness a man finds in himself upon the absence of any thing, whose present enjoyment carries the idea of delight with it, is that we call desire; which is greater or less, as that uneasiness is more or less vehement. Where, by the by, it may perhaps be of some use to remark, that the chief, if not only spur to human industry and action, is uneasiness. For whatsoever good is proposed, if its absence carries no displeasure or pain with it, if a man be easy and content without it, there is no desire of it, nor endeavour after it; there is no more but a bare velleity, the term used to signify the lowest degree of desire, and that which is next to none at all, when there is so little uneasiness in the absence of any thing, that it carries a man no farther than some faint wishes for it, without any more effectual or vigorous use of the means to attain it. Desire also is stopped or abated by the opinion of the impossibility or unattainableness of the good proposed, as far as the uneasiness is cured or allayed by that consideration. This might carry our thoughts farther, were it seasonable in this place.
§ 7. Joy is a delight of the mind, from the consideration of the present or assured approaching possession of a good: and we are then possessed of any good when we have it so in our power, that we can use it when we please. Thus a man almost starved has joy at the arrival of relief, even before he has the pleasure of using it: and a father, in whom the very well-being of his children causes delight, is always, as long as his children are in such a state, in the possession of that good; for he needs but to reflect on it, to have that pleasure.
§ 8. Sorrow is uneasiness in the mind, upon the thought of a good lost, which might have been enjoyed longer; or the sense of a present evil.
§ 9. Hope is that pleasure in the mind, which every one finds in himself, upon the thought of a profitable future enjoyment of a thing, which is apt to delight him.
§ 10. Fear is an uneasiness of the mind, upon the thought of future evil likely to befal us.
§ 11. Despair is the thought of the unattainableness of any good, which works differently in men’s minds, sometimes producing uneasiness or pain, sometimes rest and indolency.
§ 12. Anger is uneasiness or discomposure of the mind, upon the receipt of any injury, with a present purpose of revenge.
§ 13. Envy is an uneasiness of the mind, caused by the consideration of a good we desire, obtained by one we think should not have had it before us.
§ 14. These two last, envy and anger, not being caused by pain and pleasure, simply in themselves, but having in them some mixed considerations of ourselves and others, are not therefore to be found in all men, because those other parts of valuing their merits, or intending revenge, is wanting in them; but all the rest terminating purely in pain and pleasure, are, I think, to be found in all men. For we love, desire, rejoice, and hope, only in respect of pleasure; we hate, fear, and grieve, only in respect of pain ultimately: in fine, all these passions are moved by things, only as they appear to be the causes of pleasure and pain, or to have pleasure or pain some way or other annexed to them. Thus we extend our hatred usually to the subject (at least if a sensible or voluntary agent) which has produced pain in us, because the fear it leaves is a constant pain: but we do not so constantly love what has done us good; because pleasure operates not so strongly on us as pain, and because we are not so ready to have hope it will do so again. But this by the by.
§ 15. By pleasure and pain, delight and uneasiness, I must all along be understood (as I have above intimated) to mean not only bodily pain and pleasure, but whatsoever delight or uneasiness is felt by us, whether arising from any grateful or unacceptable sensation or reflection.
§ 16. It is farther to be considered, that in reference to the passions, the removal or lessening of a pain is considered, and operates as a pleasure: and the loss or diminishing of a pleasure, as a pain.
§ 17. The passions too have most of them in most persons operations on the body, and cause various changes in it; which not being always sensible, do not make a necessary part of the idea of each passion. For shame, which is an uneasiness of the mind upon the thought of having done something which is indecent, or will lessen the valued esteem which others have for us, has not always blushing accompanying it.
§ 18. I would not be mistaken here, as if I meant this as a discourse of the passions; they are many more than those I have here named: and those I have taken notice of would each of them require a much larger, and more accurate discourse. I have only mentioned these here as so many instances of modes of pleasure and pain resulting in our minds from various considerations of good and evil. I might perhaps have instanced in other modes of pleasure and pain more simple than these, as the pain of hunger and thirst, and the pleasure of eating and drinking to remove them: the pain of tender eyes, and the pleasure of musick; pain from captious uninstructive wrangling, and the pleasure of rational conversation with a friend, or of well-directed study in the search and discovery of truth. But the passions being of much more concernment to us, I rather made choice to instance in them, and show how the ideas we have of them are derived from sensation and reflection.
https://oll.libertyfund.org/title/locke-the-works-vol-1-an-essay-concerning-human-understanding-part-1
*****
散文
*****
感情・理性 passion / reason
快楽・苦痛 pleasure / pain
Cf. Horace, Epistles, 1. 2. 55
Sperne voluptates; nocet empta dolore voluptas.
快楽を求めるな。苦痛を払って快楽を買っても嬉しくない。
*****
学生の方など、自分の研究/発表のために上記を
参照する際には、このサイトの作者、タイトル、URL,
閲覧日など必要な事項を必ず記し、剽窃行為のないように
してください。
ウェブ上での引用などでしたら、リンクなどのみで
かまいません。
商用、盗用、悪用などはないようお願いします。
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Gray, "Affectus"
トマス・グレイ
「感情」
ノート 1. 3
ロック氏が示したように、感情とは、人の心における
快楽と苦痛の諸相にほかならず、それゆえ完全に排除する
ことは不可能である。心は、それが心であるかぎり、
望ましいもの・ことを求め、また望ましくないことを
避けたいと思うからである。さらに言えば、感情は心に
宿るのみならず、その健康と幸せに欠かせない。
感情がなかったならば、わたしたちはただの植物と変わらない。
考えてみよう。わたしたちの行動にはすべて何か目的がある。
その目的とは、望ましいもの・ことから快楽を得ること、
望ましくないもの・ことから生じる苦痛を避けること、
まさにこれである。意思が行為に向かう時には、その背後に
必ず以下のいずれかが存在する。
「欲望」はわたしたちを動かす源泉であり、これがなければ
心の装置は動かない。「恐れ」は、破壊・危険からわたしたちを
守るものである。「怒り」は、ほかの方法では逃れられない
被害から逃れるための防衛手段となる。「恥」も、愚かな行為、
過ちからわたしたちを守ってくれる。というか、愚かな
考えや行為が頭に浮かんだ瞬間に、まずこの不快な感覚が
わたしたちを引き止めてくれる。「愛」という英語の
言葉には、さまざまなギリシャ語の概念が含まれるのだが、
それが女性を求める欲望、つまり「エロス」を指す場合、これは
種の存続に絶対に必要なものである。「ストルゲ」、つまり
子が親に、親が子に抱くような生来の愛情も、「フィリア」、
つまり友に対する善意や仲間への慈愛も、人と人の
連結に欠かせないものであり、また大事な美徳の基盤となる。
「悲しみ」はわたしたちの心を優しくし、同じように不幸な
状況にある他者と苦しみをわかちあい、そして可能なかぎり
その解消をめざす。実際、わたしたちは他者の苦しみを
感じることができないであろう*、不幸な人の心境を身を
もって知らなければ。また、不幸とはどんな状況か、
自分の体験でしかわからないだろう*。ここから「同情」が
生まれ、そしてこの母から多くの高貴なふるまいが
生まれることになる。「競争心」も、それがなければ
知識向上がまずありえない点で健全なものである。競争の相手と
同等になることを望むのはいいことだが、行きすぎて、
自分の向上でなく相手の凋落を望むようになってしまったら、
それは「妬み」という別の感情、そして悪徳となる。
このように考えると、感情がすなわち悪ということはない。
むしろ悪とは行きすぎた感情、理性のはたらきに
従わない感情のことである。そもそも理性とは、感情を
抑制するために人に与えられている。感情が超えては
ならない境界を理性が定めるのである。
*わたしだって不幸を知らないわけではない
悲しい人がいれば助けたいと思う
[ウェルギリウス『アエネイス』より、ディドのセリフ]
*最高に優しい心を
自然が人に与えたことは明らかだ、涙が流れるのだから。
わたしたちの感情のいちばんいいところである。
[ユウェナリス『諷刺』15]
以上から、A・ゲッリウスの友人の言うことは正しいと
考えられる。もし感情を根絶したいと思うなら、
わたしたちは快楽を、そして美徳を根絶しなくては
ならない。
ポウプ氏も感情を上手に擁護している。自己愛と
理性が人の本質、いわばその二つの原点であることを
示して言う[……]。
[『人間論』書簡2]
*****
Thomas Gray
"Affectus"
Commonplace book 1. 3
The Passions, as Mr Lock has shew'd, are in the human Mind but Modes of Pleasure & Pain, & consequently can never be eradicated, while it shall continue to covet Good, & to avoid Evil, that is in other Terms, as long as it exists. [B]ut they not only are in the Mind, it is necessary to our Well-being, that they should be there. We should be in the state almost of mere Vegetables without them, for why should we act, but to some End, & what end can we have, but to gain the pleasure resulting from some Good, or avoid the Pain accompanying, what we call Evil? [T]he Will is not determined to Action, but by the Appearance of some of these.
Desire is the spring, that moves us then, & sets our Machine going: Fear is our preservative against destruction, & danger; & Anger our Defence against Injuries not otherwise to be avoided: Shame keeps us from again committing Follies, or Faults, that have already excited in us, that uneasy Sensation; Love (which Word in our Language is used instead of several distinct Terms used by the Greeks) if by it be meant our Desire of Women, or Ἔρως, is necessary to the continuance of the Species; if Στοργἡ, or Natural Affection, whether filial of parental; and if the Φιλἰα, or Benevolence to our friendse, & Charity to our Fellow-Creatures, these are the very Links of Society, & foundations of the principal Virtues. Grief inclines, & softens us to commiserate, & redress, if we be able, the Misfortunes of others in the like unhappy Circumstances; indeed we should be insensible to their Woes*, had we not felt, what it was to be wretches; nor could we form any Idea of them, but by comparison with our own:* Compassion then, the Mother of so many generous actions, arises from this. Emulation too is the cause of almost all our improvements in Knowledge, & is very laudable, as long as we only desire to arrive at in Equality with the Object of it; but when it runs such a length, as rather to wish the Abasement of this superiour Object to a Level with itself; it takes another Name, & is a Vice call'd Envy. [A]nd thus all the Vices are not in the Passions, but in the Excess of them, & their want of Conformity, to that Faculty, call'd Reason, given us for their limitation, & who ought to say to them; Thus far shalt thou go, & no farther.
*Non ignara mali, miseris succurrere disco,
[Dido in Aeneid]
*mollissima corda
Humano generi dare se Natura fatetur,
Quae lacrymas dedit. Haec nostri pars optima sensus:
[Juvenal, Satire 15]
It appear from hence, that what A: Gellius' Friend maintains is very true, & if we would root out the Passions, we must root out the Pleasures, & the Virtues with them.
Mr Pope stans up in their Defence very finely. [A]fter shewing, that Self-Love & Reason are the two great Principles of Human Nature, he says. [. . .]
[Essay on Man 2. 93ff.]
https://cudl.lib.cam.ac.uk/view/MS-PEMBROKE-GRA-00001-00001/23
*****
散文。手書きのノート(コモンプレイス・ブック)より。
*****
感情と理性 passion and reason
快楽と苦痛 pleasure and pain
感受性 sensibility
ストア派 Stoics
アパテイア apatheia
*****
学生の方など、自分の研究/発表のために上記を
参照する際には、このサイトの作者、タイトル、URL,
閲覧日など必要な事項を必ず記し、剽窃行為のないように
してください。
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「感情」
ノート 1. 3
ロック氏が示したように、感情とは、人の心における
快楽と苦痛の諸相にほかならず、それゆえ完全に排除する
ことは不可能である。心は、それが心であるかぎり、
望ましいもの・ことを求め、また望ましくないことを
避けたいと思うからである。さらに言えば、感情は心に
宿るのみならず、その健康と幸せに欠かせない。
感情がなかったならば、わたしたちはただの植物と変わらない。
考えてみよう。わたしたちの行動にはすべて何か目的がある。
その目的とは、望ましいもの・ことから快楽を得ること、
望ましくないもの・ことから生じる苦痛を避けること、
まさにこれである。意思が行為に向かう時には、その背後に
必ず以下のいずれかが存在する。
「欲望」はわたしたちを動かす源泉であり、これがなければ
心の装置は動かない。「恐れ」は、破壊・危険からわたしたちを
守るものである。「怒り」は、ほかの方法では逃れられない
被害から逃れるための防衛手段となる。「恥」も、愚かな行為、
過ちからわたしたちを守ってくれる。というか、愚かな
考えや行為が頭に浮かんだ瞬間に、まずこの不快な感覚が
わたしたちを引き止めてくれる。「愛」という英語の
言葉には、さまざまなギリシャ語の概念が含まれるのだが、
それが女性を求める欲望、つまり「エロス」を指す場合、これは
種の存続に絶対に必要なものである。「ストルゲ」、つまり
子が親に、親が子に抱くような生来の愛情も、「フィリア」、
つまり友に対する善意や仲間への慈愛も、人と人の
連結に欠かせないものであり、また大事な美徳の基盤となる。
「悲しみ」はわたしたちの心を優しくし、同じように不幸な
状況にある他者と苦しみをわかちあい、そして可能なかぎり
その解消をめざす。実際、わたしたちは他者の苦しみを
感じることができないであろう*、不幸な人の心境を身を
もって知らなければ。また、不幸とはどんな状況か、
自分の体験でしかわからないだろう*。ここから「同情」が
生まれ、そしてこの母から多くの高貴なふるまいが
生まれることになる。「競争心」も、それがなければ
知識向上がまずありえない点で健全なものである。競争の相手と
同等になることを望むのはいいことだが、行きすぎて、
自分の向上でなく相手の凋落を望むようになってしまったら、
それは「妬み」という別の感情、そして悪徳となる。
このように考えると、感情がすなわち悪ということはない。
むしろ悪とは行きすぎた感情、理性のはたらきに
従わない感情のことである。そもそも理性とは、感情を
抑制するために人に与えられている。感情が超えては
ならない境界を理性が定めるのである。
*わたしだって不幸を知らないわけではない
悲しい人がいれば助けたいと思う
[ウェルギリウス『アエネイス』より、ディドのセリフ]
*最高に優しい心を
自然が人に与えたことは明らかだ、涙が流れるのだから。
わたしたちの感情のいちばんいいところである。
[ユウェナリス『諷刺』15]
以上から、A・ゲッリウスの友人の言うことは正しいと
考えられる。もし感情を根絶したいと思うなら、
わたしたちは快楽を、そして美徳を根絶しなくては
ならない。
ポウプ氏も感情を上手に擁護している。自己愛と
理性が人の本質、いわばその二つの原点であることを
示して言う[……]。
[『人間論』書簡2]
*****
Thomas Gray
"Affectus"
Commonplace book 1. 3
The Passions, as Mr Lock has shew'd, are in the human Mind but Modes of Pleasure & Pain, & consequently can never be eradicated, while it shall continue to covet Good, & to avoid Evil, that is in other Terms, as long as it exists. [B]ut they not only are in the Mind, it is necessary to our Well-being, that they should be there. We should be in the state almost of mere Vegetables without them, for why should we act, but to some End, & what end can we have, but to gain the pleasure resulting from some Good, or avoid the Pain accompanying, what we call Evil? [T]he Will is not determined to Action, but by the Appearance of some of these.
Desire is the spring, that moves us then, & sets our Machine going: Fear is our preservative against destruction, & danger; & Anger our Defence against Injuries not otherwise to be avoided: Shame keeps us from again committing Follies, or Faults, that have already excited in us, that uneasy Sensation; Love (which Word in our Language is used instead of several distinct Terms used by the Greeks) if by it be meant our Desire of Women, or Ἔρως, is necessary to the continuance of the Species; if Στοργἡ, or Natural Affection, whether filial of parental; and if the Φιλἰα, or Benevolence to our friendse, & Charity to our Fellow-Creatures, these are the very Links of Society, & foundations of the principal Virtues. Grief inclines, & softens us to commiserate, & redress, if we be able, the Misfortunes of others in the like unhappy Circumstances; indeed we should be insensible to their Woes*, had we not felt, what it was to be wretches; nor could we form any Idea of them, but by comparison with our own:* Compassion then, the Mother of so many generous actions, arises from this. Emulation too is the cause of almost all our improvements in Knowledge, & is very laudable, as long as we only desire to arrive at in Equality with the Object of it; but when it runs such a length, as rather to wish the Abasement of this superiour Object to a Level with itself; it takes another Name, & is a Vice call'd Envy. [A]nd thus all the Vices are not in the Passions, but in the Excess of them, & their want of Conformity, to that Faculty, call'd Reason, given us for their limitation, & who ought to say to them; Thus far shalt thou go, & no farther.
*Non ignara mali, miseris succurrere disco,
[Dido in Aeneid]
*mollissima corda
Humano generi dare se Natura fatetur,
Quae lacrymas dedit. Haec nostri pars optima sensus:
[Juvenal, Satire 15]
It appear from hence, that what A: Gellius' Friend maintains is very true, & if we would root out the Passions, we must root out the Pleasures, & the Virtues with them.
Mr Pope stans up in their Defence very finely. [A]fter shewing, that Self-Love & Reason are the two great Principles of Human Nature, he says. [. . .]
[Essay on Man 2. 93ff.]
https://cudl.lib.cam.ac.uk/view/MS-PEMBROKE-GRA-00001-00001/23
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散文。手書きのノート(コモンプレイス・ブック)より。
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感情と理性 passion and reason
快楽と苦痛 pleasure and pain
感受性 sensibility
ストア派 Stoics
アパテイア apatheia
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学生の方など、自分の研究/発表のために上記を
参照する際には、このサイトの作者、タイトル、URL,
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Gellius, The Attic Nights 19. 12
アウルス・ゲッリウス(c. A.D. 125 - after 180)
『アッティカの夜』19. 12
前の執政官ヘロデス・アッティクスは、アテネでギリシャ語で
演説した際に以下のように言っていた。彼はギリシャ語において
今の時代の誰よりも優れていて、明瞭・流暢かつ美しく
話すことができた。その時の話題は「アパテイア」、つまり
ストア派のいう「無感情」だった。その場にいたストア派の男が、
恋人の少年が死んだ悲しみに耐えられない、知恵と不屈の精神が
あってもどうにもならない、と言っていたからだ。
アッティクスの話の内容は、覚えているかぎりだが、
次のようなものだった。ごくふつうにものごとを感じる力・
考える力がある人であれば、悲しみ・欲望・恐れ・怒り・
楽しみなどの影響--アッティクス曰く、「パテ」--を
受けないわけがない。そのように心が動かないはずがない。
それに、たとえこれらの感情に抵抗できたとしても、
その影響を受けずにすんだとしても、それでよかった、
ということにはならない。そのような時、心は弱く・鈍く
なってしまっている。感情の支えが、なくてはならない
刺激が、奪われているからだ。アッティクス曰く、
悲しみ・欲望・恐れのような感情、心の衝動は、強すぎては
もちろん問題だが、それでも知性のはたらき・能力に
つながっている。その動力となる。だから、愚かにも
感情を根絶した場合には、同時に心のよいはたらき、
有用な性質をも失う危険がある。感情は注意深く、
上手に調整すべきなのであって、不自然で不適ななものだけ
排除すればいい。そうでないと、買った畑で失敗した
バカでどうしようもないトラキア人のようなことになる。
アッティクスは続けた。遠く未開の、農業が発達していない
国から、より洗練された生活を求めてトラキアに移住した
男がいた。彼はオリーヴとぶどうの畑を買ったが、
どのように育てればいいかわからなかった。ある時、隣人が、
高く広く生い茂る茨を刈り倒し、とねりこの枝を上のほうまで
切り落とし、ぶどうの根から伸びて地面に広がっていた吸枝を
引き抜き、そしてぶどうとオリーヴの木からまっすぐ伸びる
若枝を切りとっているのを見て、彼は尋ねた、どうして
そのように枝や葉を刈るのか、と。隣人は答えた、
「そりゃ、畑をきれいにするためさ。そうしたほうが
オリーヴもぶどうも実がたくさんなるんだ」。
新しくトラキアにきた男は、礼を言って帰っていった、
農作業の知識を得たと思って喜んで。バカとは哀れな
ものである。彼はすぐに鎌と斧を用意して、自分の
オリーヴとぶどうの木をすべて切り刻んだ。オリーヴの
いちばん立派な枝、いちばんぶどうのなりそうな枝は
落としてしまった。畑をきれいにするため、実のなる茂みや
穀物の芽も引き抜いた。木苺も茨苺もすべてである。
間違った知識に間違った自信をもった結果が破滅、
勘違いと人真似と行動力が生んだ不幸な果実であった。
アッティクス曰く、無感情の信徒はこれと同じである。
うろたえない、勇気がある、筋が通っている、そんなふりをして
欲望も悲しみも怒りも喜びも押し殺していると、生において
より重要な感情も根こそぎダメにしてしまう。何に対しても
やる気がなくなって、だらだらしたまま、ぼーっとしたまま、
どうしようもない年寄りになってしまう。
*****
Aulus Gellius
The Attic Nights 19. 12
I ONCE heard Herodes Atticus, the ex-consul, holding forth at Athens in the Greek language, in which he far surpassed almost all the men of our time in distinction, fluency, and elegance of diction. He was speaking at the time against the ἀπάθεια, or “lack of feeling” of the Stoics, in consequence of having been assailed by one of that sect, who alleged that he did not endure the grief which he felt at the death of a beloved boy with sufficient wisdom and fortitude. The sense of the discourse, so far as I remember, was as follows: that no man, who felt and thought normally, could be wholly exempt and free from those emotions of the mind, which he called πάθη, caused by sorrow, desire, fear, anger and pleasure; and even if he could so resist them as to be free from them altogether, he would not be better off, since his mind would grow weak and sluggish, being deprived of the support of certain emotions, as of a highly necessary stimulus. For he declared that those feelings and impulses of the mind, though they become faults when excessive, are connected and involved in certain powers and activities of the intellect; and therefore, if we should in our ignorance eradicate them altogether, there would be danger lest we lose also the good and useful qualities of the mind which are connected with them. Therefore he thought that they ought to be regulated, and pruned skilfully and carefully, so that those only should be removed which are unsuitable and unnatural, lest in fact that should happen which once (according to the story) befell an ignorant and rude Thracian in cultivating a field which he had bought.
“When a man of Thrace,” said he, “from a remote and barbarous land, and unskilled in agriculture, had moved into a more civilized country, in order to lead a less wild life, he bought a farm planted with olives and vines. Knowing nothing at all about the care of vines or trees, he chanced to see a neighbour cutting down the thorns which had sprung up high and wide, pruning his ash-trees almost to their tops, pulling up the suckers of his vines which had spread over the earth from the main roots, and cutting off the tall straight shoots on his fruit and olive trees. He drew near and asked why the other was making such havoc of his wood and leaves. The neighbour answered; 'In order to make the field clean and neat and the trees and vines more productive.' The Thracian left his neighbour with thanks, rejoicing that he had gained some knowledge of farming. Then he took his sickle and axe; and thereupon in his pitiful ignorance the fellow cuts down all his vines and olives, lopping off the richest branches of the trees and the most fruitful shoots of the vines, and, with the idea of clearing up his place, he pulls up all the shrubs and shoots fit for bearing fruits and crops, along with the brambles and thorns, having learnt assurance at a ruinous price and acquired boldness in error through faulty imitation. Thus it is,” said Herodes, “that those disciples of insensibility, wishing to be thought calm, courageous and steadfast because of showing neither desire nor grief, neither wrath nor joy, root out all the more vigorous emotions of the mind, and grow old in the torpor of a sluggish and, as it were, nerveless life.”
http://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Perseus:abo:phi,1254,001:19:12
*****
散文。トマス・グレイのノート(commonplace book)に
ラテン語で引用。日本語訳はLOEBの英語訳から。
Ian Jack, "Gray's Elegy Reconsidered"
*****
感受性 sensibility
ストア派 Stoics
アパテイア apatheia
*****
学生の方など、自分の研究/発表のために上記を
参照する際には、このサイトの作者、タイトル、URL,
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してください。
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かまいません。
商用、盗用、悪用などはないようお願いします。
『アッティカの夜』19. 12
前の執政官ヘロデス・アッティクスは、アテネでギリシャ語で
演説した際に以下のように言っていた。彼はギリシャ語において
今の時代の誰よりも優れていて、明瞭・流暢かつ美しく
話すことができた。その時の話題は「アパテイア」、つまり
ストア派のいう「無感情」だった。その場にいたストア派の男が、
恋人の少年が死んだ悲しみに耐えられない、知恵と不屈の精神が
あってもどうにもならない、と言っていたからだ。
アッティクスの話の内容は、覚えているかぎりだが、
次のようなものだった。ごくふつうにものごとを感じる力・
考える力がある人であれば、悲しみ・欲望・恐れ・怒り・
楽しみなどの影響--アッティクス曰く、「パテ」--を
受けないわけがない。そのように心が動かないはずがない。
それに、たとえこれらの感情に抵抗できたとしても、
その影響を受けずにすんだとしても、それでよかった、
ということにはならない。そのような時、心は弱く・鈍く
なってしまっている。感情の支えが、なくてはならない
刺激が、奪われているからだ。アッティクス曰く、
悲しみ・欲望・恐れのような感情、心の衝動は、強すぎては
もちろん問題だが、それでも知性のはたらき・能力に
つながっている。その動力となる。だから、愚かにも
感情を根絶した場合には、同時に心のよいはたらき、
有用な性質をも失う危険がある。感情は注意深く、
上手に調整すべきなのであって、不自然で不適ななものだけ
排除すればいい。そうでないと、買った畑で失敗した
バカでどうしようもないトラキア人のようなことになる。
アッティクスは続けた。遠く未開の、農業が発達していない
国から、より洗練された生活を求めてトラキアに移住した
男がいた。彼はオリーヴとぶどうの畑を買ったが、
どのように育てればいいかわからなかった。ある時、隣人が、
高く広く生い茂る茨を刈り倒し、とねりこの枝を上のほうまで
切り落とし、ぶどうの根から伸びて地面に広がっていた吸枝を
引き抜き、そしてぶどうとオリーヴの木からまっすぐ伸びる
若枝を切りとっているのを見て、彼は尋ねた、どうして
そのように枝や葉を刈るのか、と。隣人は答えた、
「そりゃ、畑をきれいにするためさ。そうしたほうが
オリーヴもぶどうも実がたくさんなるんだ」。
新しくトラキアにきた男は、礼を言って帰っていった、
農作業の知識を得たと思って喜んで。バカとは哀れな
ものである。彼はすぐに鎌と斧を用意して、自分の
オリーヴとぶどうの木をすべて切り刻んだ。オリーヴの
いちばん立派な枝、いちばんぶどうのなりそうな枝は
落としてしまった。畑をきれいにするため、実のなる茂みや
穀物の芽も引き抜いた。木苺も茨苺もすべてである。
間違った知識に間違った自信をもった結果が破滅、
勘違いと人真似と行動力が生んだ不幸な果実であった。
アッティクス曰く、無感情の信徒はこれと同じである。
うろたえない、勇気がある、筋が通っている、そんなふりをして
欲望も悲しみも怒りも喜びも押し殺していると、生において
より重要な感情も根こそぎダメにしてしまう。何に対しても
やる気がなくなって、だらだらしたまま、ぼーっとしたまま、
どうしようもない年寄りになってしまう。
*****
Aulus Gellius
The Attic Nights 19. 12
I ONCE heard Herodes Atticus, the ex-consul, holding forth at Athens in the Greek language, in which he far surpassed almost all the men of our time in distinction, fluency, and elegance of diction. He was speaking at the time against the ἀπάθεια, or “lack of feeling” of the Stoics, in consequence of having been assailed by one of that sect, who alleged that he did not endure the grief which he felt at the death of a beloved boy with sufficient wisdom and fortitude. The sense of the discourse, so far as I remember, was as follows: that no man, who felt and thought normally, could be wholly exempt and free from those emotions of the mind, which he called πάθη, caused by sorrow, desire, fear, anger and pleasure; and even if he could so resist them as to be free from them altogether, he would not be better off, since his mind would grow weak and sluggish, being deprived of the support of certain emotions, as of a highly necessary stimulus. For he declared that those feelings and impulses of the mind, though they become faults when excessive, are connected and involved in certain powers and activities of the intellect; and therefore, if we should in our ignorance eradicate them altogether, there would be danger lest we lose also the good and useful qualities of the mind which are connected with them. Therefore he thought that they ought to be regulated, and pruned skilfully and carefully, so that those only should be removed which are unsuitable and unnatural, lest in fact that should happen which once (according to the story) befell an ignorant and rude Thracian in cultivating a field which he had bought.
“When a man of Thrace,” said he, “from a remote and barbarous land, and unskilled in agriculture, had moved into a more civilized country, in order to lead a less wild life, he bought a farm planted with olives and vines. Knowing nothing at all about the care of vines or trees, he chanced to see a neighbour cutting down the thorns which had sprung up high and wide, pruning his ash-trees almost to their tops, pulling up the suckers of his vines which had spread over the earth from the main roots, and cutting off the tall straight shoots on his fruit and olive trees. He drew near and asked why the other was making such havoc of his wood and leaves. The neighbour answered; 'In order to make the field clean and neat and the trees and vines more productive.' The Thracian left his neighbour with thanks, rejoicing that he had gained some knowledge of farming. Then he took his sickle and axe; and thereupon in his pitiful ignorance the fellow cuts down all his vines and olives, lopping off the richest branches of the trees and the most fruitful shoots of the vines, and, with the idea of clearing up his place, he pulls up all the shrubs and shoots fit for bearing fruits and crops, along with the brambles and thorns, having learnt assurance at a ruinous price and acquired boldness in error through faulty imitation. Thus it is,” said Herodes, “that those disciples of insensibility, wishing to be thought calm, courageous and steadfast because of showing neither desire nor grief, neither wrath nor joy, root out all the more vigorous emotions of the mind, and grow old in the torpor of a sluggish and, as it were, nerveless life.”
http://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Perseus:abo:phi,1254,001:19:12
*****
散文。トマス・グレイのノート(commonplace book)に
ラテン語で引用。日本語訳はLOEBの英語訳から。
Ian Jack, "Gray's Elegy Reconsidered"
*****
感受性 sensibility
ストア派 Stoics
アパテイア apatheia
*****
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Young, E, The Complaint (Night-Thoughts) 1(日本語)
エドワード・ヤング
『悲しみの歌:死と生、そして永遠について夜に考える』
第一夜
死と生、そして永遠について
疲れた体を癒してくれる優しい眠り! いい香りの眠り!
眠りは人と同じで、喜んでやってくる、
幸運の女神が微笑む人のところに。不幸な人には訪れない。
柔らかい翼であっという間に悲しい人から飛び去って、
涙で汚れていないまぶたに降り立つ。
(いつものことだが)短く、うなされた眠りから
目を覚ます。幸せでうらやましい! 二度と目を覚まさない者たちは!
いや、そうとも限らない、墓のなかでも夢を見るならば。
目を覚ます、立ちあがる、荒れ狂う
夢の海から。わたしの想いは難破して沈んでしまった。
みじめな空想の波から波に次々にもまれ、
あちこちに流されて、理性の舵もどこかに行ってしまった。
夢の海から救出されても心の痛みは続く。変わったことと言えば、
つらい苦痛が、もっとつらい苦痛になっただけ!
昼間は短すぎて、悲しんでいるだけで終わってしまう!
夜は、最高に闇が暗い時でも、
わたしの運命の色に比べれば太陽のようだ。
黒い夜の女神! 黒檀の玉座から、
光のない栄光のなか、今、差しのべる、
まどろむ世界に鉛の王笏(しゃく)を。
沈黙……まさに死んでいる! 闇……どこまでも深い!
見えるもの、聞こえるものが、ない。
創造されたものすべてが眠っている。命あるものすべての脈が
消え、自然も停止している。
おお、恐ろしい! この世が終わる時にもこうなるのだろう。
と言うか、この世など早く終わればいい。
さあ運命! 幕を下ろせ! 失うものなど、もうわたしにはない。
沈黙と闇! 厳かな双子の姉妹!
その母はいにしえの夜--夜の胸に抱かれてつたない思考が
理性に育ち、その理性のうえに決意が立つ。
(人の真の威厳を示す柱のように。)
沈黙と闇! 今、わたしを支えてほしい。礼は墓で、
おまえたちの王国で、しよう。この体を
暗い神殿の生贄に捧げよう。
あ、いや……違う。あなただ。
あなたが原初の沈黙を
追い払った。朝の星たちが
喜び、舞いあがり、昇る太陽を大声で称えたあの時に。
あなたの言葉が固体の闇を打ち、あの火花、太陽が飛び出した……
ああ、知恵が飛び出るようにわたしの魂も打ってください。
魂が信じる宝はあなただけ。だからあなたに向かう、
みな寝静まる頃に、金の奴隷が金庫に飛んで行くように。
世界の闇と魂の闇、
この二重の夜のなか、憐みの光をひと筋ください。
照らし、励ましてください。わたしの心を導いてください。
(悲しみから抜け出したいのです。)
生死のさまざまな場面を見せてください。
そのすべてから、わたしに高貴な真理を吹きこんでください。
歌わせてください。よいおこないを教えてください。
わたしの理性に正しい考えを、わたしの意思に正しい生きかたを
教えてください。固い決意をさらに固めさせてください。
知恵を妻とし、長年の借りを返せるように。
あなたの復讐の杯の酒、罪深いこの頭に
注がれた酒を、無駄にしないでください。
鐘だ。1時だ。時間を意識するのは、
いつも時間がなくなった後。時間に声を与えた
人は賢い。天使のお告げのようだ、
厳かな鐘の音は。いや、あれは
わたしのなかで死んだ時間を弔う鐘。わたしが死なせた
時間は、今、ノアの洪水以前の年月ととけあう。
鐘の音、それは、急げ、という合図。
何を? どれだけ? どうすればいい? 希望と恐れが
飛び起きて、生の先端の崖から
下を見る。何が見える? 底なしの深淵、
恐ろしい永遠の世界! 間違いなくわたしが行くところ!
だが、永遠の時間がわたしのものになる?
わずかな時間のお恵みで生きるわたしのものに?
なんと貧困で裕福で、下劣で崇高で、
複雑で、そして不思議なのか、人は!
まさにありえない驚異では? 人をつくったあのお方は?
わたしたちの中心に両極の矛盾があるなんて?
正反対の性格が生まれつき混在するとは!
遠くの国がなぜか隣にあるかのように!
はてしなく連なる存在の鎖、人はそのなかでも特別な輪!
無と神のちょうど真ん中!
神の光があっても、汚れ、陰に呑みこまれている!
不名誉に汚れつつ、でも神々しい!
絶対的に偉大な神の超縮小版!
天国の後継者! 脆い土の子!
不死なのに自分で何もできない! 無限の魂の虫けら!
蛇! なのに神! 自分に恐れおののき、
自分のなかで迷子になる! 家にいるのによそ者のように、
思考は上に下に行ったりきたり。不意を突かれ、驚愕し、
思考に思考がわからない。おお、理性がよろめく!
人にとって人はまさに不思議、
苦しみながら勝ち誇る! 何という喜び! そして恐れ!
心は天に昇り、次の瞬間に戦慄する!
どうしたら永遠の命が? どうしたら破滅?
天使はわたしを墓から助けてくれない。でも、
わたしを墓に閉じこめておくこともできない。
これらは憶測ではない。すべてが証明している。
体の上に眠りの領土が広がる時、
魂は幻のなか踊る、
小さな妖精の野原の空を舞いながら。あるいは闇で涙を流す、
道なき森で。あるいは岩の崖から
身を投げる、または泡の汚い苦痛の川を泳ぐ。
あるいは崖をよじ登ったり、実体のない風に乗って踊る、
変な姿をした脳の住人たちといっしょに。
迷いながらも飛翔をつづける魂は、やはり本質的に
踏みつけられる土くれ以上の存在。
自分の意志で空高く舞い上がる。自由に、
重くて邪魔な、堕落した体の鎖に引きずられることなく。
夜が何も言わずに魂の不死を宣言する。
夜が何も言わずに永遠の光の世界を証明する。
人の幸せのために神がすべてを耕してくれる。
鈍い眠りのなかに教えがある。無駄に楽しい夢も無駄ではない。
だから、なぜ失われない命の喪失を悲しむ?
なぜ不幸な思考が墓をさまよう、
不敬にも悲しみつつ? 天使が来ているとでも?
天の炎が土に埋もれてうたた寝するとでも?
いや、生きている! みな地上で生きている、
体がなくても! 心優しい人が
神のようにわたしを憐れんでくれますように、
わたしのほうが死んでいるようなものだから。
生は砂漠……生は孤独……
なんてにぎやかなんだ! 墓は生に満ちている!
この世のほうこそ悲しみに沈む人のためのアーチ、
埋葬の谷、暗い糸杉の森、
命のない亡霊の国!
この世のものはすべて影、あの世に
あるのが実体。馬鹿にそれがわからない。
すべてが本物に決まっている、変化がない世界だから。
墓、それは、存在の萌芽、薄暗い夜明け、
日の出前の薄明り、玄関。
命の劇場はまだ開演前で、死、
怪力の死だけが、閂(かんぬき)の重い横木をはずせる。
この邪魔な粘土の体をとりはらい、
自由な存在への胎児にしてくれる。
ここのいるのは、真の命にほんの少しだけ届かない、
光の世界にまだ入れない者、
言わば、父のなかでまだ眠る精子。
わたしたちは胎児になって、いずれ殻を破り、
青空の殻を破り、真の生の世界に飛び出して、
天使のように生きる--夢のよう!--人であっても永遠に。
しかし、人は愚かなもので、墓に想いをすべて埋める。
天国への希望を葬り去る、ため息ひとつなく。
大地の囚人で、月明かりの牢屋から外に出られない。
希望の翼は自分でへし折る。天からの贈りものの翼で
無限の世界に飛んでいけるはずなのに、
天使たちが不死の木の実を食べているところに、
命の木の実を、神の玉座のすぐ隣で。
おお! 黄金の喜びの木の実! いい香りに輝く房!
神の光を浴びて、正しい者たちのために熟している!
一瞬で終わる長い命など、もはや存在しない世界!
時間も、痛みも、偶然も、死も、ない!
あっという間の60年、飛び去って消える生涯のなか、
永遠の世界は頭から消去されてしまう?
不死の魂は土のなかで窒息死する?
不死の魂はこの世で燃え尽きて、
一生懸命無駄に生きて退化して、
騒動に巻き込まれ、快楽に己を忘れ、あるいは戦慄する、
この世の恐ろしいものすべて、気持ちいいことすべてを前に。
この世はまるで嵐の海で、
魂とは、まるで波に呑まれる羽、溺れる虫。
このような批判は誰に? ……めまいがする。
わたしの心は快楽の傷でかさぶただらけ!
魂は自分の鎖で立ちあがれない!
わたしは蚕、ぐるぐるに巻かれて動けない、
這いまわる妄想が吐き出す絹の思考の糸で。
暗い雲のなか理性が横たわり、
次から次に気持ちのいいことばかり考えて、
空飛ぶ翼が生えてこない!
こんな厳しい夜の幻のほうがわたしのためになる?
目覚めている時の夢のほうが死をもたらす? おお、これまで
見てきたありえない夢の数々。夜の夢よりたちが悪い。
永遠に変化する世界に永遠の喜びがあるとでも?
揺れる波のなかに揺るがない楽しみがあるとでも?
くり返す嵐の人生に永遠の晴天があるとでも?
真昼の空に、わたしは煌びやかな幻を見てきた、
色とりどりの楽しみが描かれた豪華な織物のようだった!
快楽の向こうにまた快楽、まるで無限の遠近法!
今、死の鐘が鳴っている。鉄の舌が絶え間なく
百万の餌食を要求している。
わたしは飛び起き、自分の破滅を悟った。
え? 無駄に派手だった部屋の飾りはどこに消えた?
蜘蛛の巣の小屋、泥の壁、
かびが生えてぼろぼろ……まさに王の部屋!
蜘蛛の糸のいちばん細いところが
人を弱々しく、かすかに、
この世の幸せにつなぐ。そして微風で切れる。
おお! 天の劇場に広がる永遠の喜び!
完全で、限りなく、はてしなく、永久に続く!
幸せが終わらない、それが天国の幸せ。
思考が止まる幸せな場面が無限に続き、
死の想いに喜びが呑みこまれたりしない。
光の楽園が楽園でなくなることなどありえない、
はるか上の不変の世界なのだから。下界では、
星たちが転がり踊って、よろよろして、不幸と
悲しみを次から次へとまき散らす。
それで地上では一時間ごとに革命があり、
それで世の中悪くなる。いちばんすばらしい人が、
ふつうの人より早く死ぬ。
すべての瞬間がまるで死神、
時の神のように根こそぎ大きな鎌で刈る、
国がひとつできるくらいの死者を。すべての瞬間が
小さな鎌を小さく振って刈る、
小さな家庭の安らぎを、
この世の小さな幸せのきれいな花を。
幸せ? 月の下のこの世の幸せ? 傲慢で無意味なことを。
まさに神の定めに対する反逆!
まったくあつかましい、神の権限の侵害だ!
つかんだとしても幻、手を開いたら何もない。
幸せだ……なんてうつつを抜かしている場合ではなかった!
だから苦悩の矢で蜂の巣になってしまった!
死! すべてがおまえのもの! おまえが踏みつけて
帝国の火が消える。星の光もおまえが殺す。
太陽は輝く、しかし、それもおまえの許可の下、
いずれおまえが天球から引っこ抜いて捨てる。
そんな大虐殺ができるのに、なぜわざわざ
ちっぽけな人に矢を浪費する?
なぜわざわざわたしの身内を狙う?
欲張りめ! せめてひとりでいいだろう?
三人も撃ちやがって。わたしの心は三回殺された。
三人もだ。三日月が満月になる前に。
ああ、月の女神シンシア! なぜそんなに青白い? 地上で
人が死ぬから? 絶え間ないおまえの変化より
人の生の変転のほうが早いから?
借りものだった幸せの潮が引いていく! 幸運の女神の微笑み、
そんなご厚意などあてにならない! 揺るがない美徳が
太陽のようにみずから強く喜びに輝くのとは大違いだ。
いつの、どこの、どんなものでも、
楽しい記憶はみな孤独。まるで未亡人!
想いが、めまぐるしく浮かぶ想いが、安らぎを奪うからだ!
暗い裏口から時間が去った後、想いは
静まった夜にやってくる。
まるで人殺し(まさに!)、うろうろ歩いて
楽しい過去を踏みつぶす。(みじめな浮浪者め!)
わざわざ不幸をあちこち探し、
心を砂漠にする。過去の喜びを
亡霊にする。おお、数えきれない亡霊たち!
嘆くしかない、昔の豊かな幸運を。
安らぎの甘いぶどうが房ごと枯れてしまって悲しい。
大切にしていた、でも失われた、幸せを前に震えが止まらない。
楽しかったことすべてが、今、痛みになって心の底に突き刺さる。
だが、なぜ悲しむ? 自分ひとりのことで?
太陽の光はわたしだけのために空に吊られている?
わたしだけが不幸な人で、あとはみな幸せな天使とか?
いや、悲しみは何百万の人のもの。すべての人の定め。
あんなかたち、こんなかたちで運命は
母の激痛をすべての子に分配している。
子の数だけ痛みの相続人がいる。
戦争・飢餓・疫病・噴火・嵐・火事・
内乱・圧政……見るに堪えない災禍の包囲網、
心に三重の真鍮の鎧が必要だ。
人は神の姿につくられたはずなのに、光の相続権を奪われ、
不幸の鉱山の穴に落とされ、太陽があったことも思い出せない。
そこで死ぬまで、と言うか不死だから永遠に、
同じく不死の意地悪な親方に殴られながら奴隷船を漕ぐ。
冬の冷たい波を耕せば、絶望が収穫できる。
あるいは、厳しい軍曹の下で戦場で負傷して、
手足を失い、または半分失い、
勇敢に守った国の浮浪者になってパンを乞う。
暴君やその愛人の気まぐれのせいだ。
貧乏と不治の病(残酷なセット!)が
容赦なく多くの者に襲いかかり、一気に
希望を奪う。そうなったら逃げ場は墓だけ。
見るがいい、救貧院がうめきながら死者を吐き出している!
そこに入りたい悲しい人たちもうめいている!
かつては幸運の女神にひざまくらをされていたのに、
今では冷たい人たちの施しがないと生きていけない!
そして、な、なんと! 拒まれている!
おお、快楽の絹に溺れたおまえたち! 痛い目見るぞ?
はやりのお店で遊びすぎると。ここにきて
放蕩贅沢をひと休みしろ。寄付しろ。
金が足りなくて遊べないくらいがちょうどいい。お、たいした
図々しさだな。正しいことをするのが恥ずかしいか?
こういう奴らだけが悲しい目にあえばいい!
思慮も道徳も不幸から守ってくれない。
病は慎みと節制を攻略し、
罪なき人が罰せられる。どんな深い森のなかでも、
平穏な日々に油断すれば、非常事態に狙撃される。
警戒すればそれだけ危険に襲われる。
警戒の分だけ油断して、それで死ぬ。
幸せは幸せにしてくれない。
祈りは祈りを叶えてくれない。
幸せの鍵だと思って大事にしているものが
幸せからほど遠い!
いちばん滑らかな道でも痛みから逃れられない。
何かの間違いで、本当の友に傷つけられたり。
不運でなくても不幸になる? どういうこと?
敵がいないのに攻撃される? どういうこと?
そもそも、どんないい人にだって敵はいる。
不幸のリストはまさに無限、
ため息の理由を数えつつ人は死に、ため息すらつけなくなる。
土の星の上、人は住んでいるのは
ほんのわずかなところだけ。残りは荒地、
岩山と砂漠と氷の海と燃える砂、
猛毒と角の殺人モンスターがうろうろしている。
それが世界の暗い地図! だが、
人生の地図はさらに暗い!
偉そうで楽しそうな支配者たちが
悲しみの大帝国で暮らしている。困難の深海の波に揺られ、
悲しみの獣に吠えられ、激情の毒蛇に噛まれ、
肉食の不幸に内臓を喰いちぎられ、
恐怖の運命の口に丸呑みされる。
わたしは何をしている? 自分のことで悲しんで?
年寄りでもこどもでも、他の人からの助け以外に
希望はない。だから、たがいに優しくしよう。
この点だけは、人の本質に従えばいい。
自己中心的な人は苦しんで当然。
人のための悲しみは、悲しいけど幸せ。
いいことをしていると思えたら、痛みも和らぐ。
優しさと知恵に従って、
あふれる想いの水路を増やそう、分けることで
悲しみの奔流が弱くなるから。
だから受けとってくれ! 世界のみんな! 涙の借りを返すから!
人の幸せはなんて悲しいんだろう、
一時間先のことを考えてしまう人にとって!
誰でもいい、今、幸せに心高ぶらせている人!
いっしょに喜ぼうか?
嬉しいだろう? 傲慢の証拠だ。
傲慢でも、少し我慢して聴いてほしい、
友からの健全な戒めを。
ああ、幸せで不幸な人! あなたは愚かだから幸せ。
頭が弱いから、こどもみたいにいつもニコニコしている。
思い知るといい、楽しんでいると危ない。
快楽の後には必ず痛みがやってくる。
不幸の女神はまるで性格の悪い借金とり、
遅れてきて、その分厳しくむしりとる。
過去の幸せを思い出させて
つらさを倍にする。
ロレンゾ、幸運が君の前にひざまずく。
セイレーンの歌に、浅はかな君の心は躍る。
そんな幸せは高くつくぞ。いや、意地悪なつもりはない。
君の楽しみを台無しにしたいわけじゃない。本物にしたいんだ。
恐れ、とは嵐だけへの捧げものじゃない。
運命が微笑んでくれている時にも用心しよう。
神の怒りは恐ろしい? もちろん。
でも、神の恵みも恐ろしい。
それは試練だ、ご褒美じゃない。
正しくふるまえ、という命令だ。気を抜くな。
警戒だ、つらい時と同じだ。
どうしてそうなったか、後でどうなるか、よく考えて、
恐れおののけ、自分に値しない幸運に対して。
動揺は抑えよう。喜びも抑えよう。
喜びを握りしめて、絞め殺すことがないように。喜びが
不幸に、あるいはそれ以下のものになってしまわないように。
楽しみの反逆は内乱と同じ、
憎しみに変わった友情と同じ、
怒りと毒で平和を乱す、国と心の。
いわゆる「幸せ」には要注意、あらゆる喜びには
要警戒だ。永遠に続く喜び以外はあてにならない。
不滅でない幸せを大事にしても、
それは殺すために育てることと変わらない。
フィランダー! わたしの幸せは君とともに死んだ。君の最後の息、
最後のため息で目が覚めた。魔法がとけて、世界が輝いて
見えなくなった。どこに消えた? まばゆい塔は?
黄金に光る山は? すべてが暗い
むき出しの荒地に、悲しい涙の谷に、なってしまった。
天才手品師はもういない! フィランダー! ちっぽけな、血の気のない、
土になって暗い墓に捨てられた君! 大違いだ、
昨日の姿とは!大きな希望がもう少しで叶うところだった。
長年の苦労が実りそうだった! 野心で紅潮していた
君の頬! 真に偉大な、
正しく称賛に値する野心で! 見えない死の種が、
(裏切りの鉱山採掘人のように)闇のなか、
入念に練られた君の人生設計図を見つけてニヤリと笑い、蛆虫に
合図した、この真っ赤な薔薇をメチャクチャにしていいぞ、と。
まだ咲いているうちに、一気にやれ、と!
人の予見や知恵は完璧でない。
ロレンゾ! 知見は愚見に落ちる、
よくあることだ、かわいい考えが
母なる思考から生まれた瞬間に。人の目の曇りはひどい!
視界は、今この瞬間から先に進めない。
最後の審判の日の空のように、黒い曇で先が見えない。
向こうに行けない。予言は絶対に当たらない。
時はひと粒ひと粒人に与えられ、
その瞬間に人生の砂の川にとけて消える。
絶対に変わらない運命の命令で、
「永遠の入口」はどこにあるか、沈黙したまま。
いつか起こりうることは、今起こりうる--それが自然の掟。
生に対する特権は誰にもない。
最大級の厚かましさだろう?
明日の朝も生きて目覚められるという思いこみは。
明日とは何か? 別世界だ。
大勢の人にとって明日は不確か。誰も
明日を確信できない。それでも、「たぶん」・
「きっと」という土台の上に、
頑丈なダイアモンドの嘘の上に、
人は高層の希望を建てる。永遠の計画を立て、
運命の女神より長い糸を紡ぎ、
そして死ぬ、すばらしい未来の妄想とともに。
フィランダーも自分が死ぬとは思っていなかった。
そうだろう、何の警告もなかった。
多くの者が突然倒れる。もっと苦しむ者も多い。
何年もの警告の後、突然死ぬ。
気をつけろ、ただの不幸じゃない、究極の不幸がやってくる。
気をつけろ、ロレンゾ! 死は、今、突然やってくる!
ゆっくり、突然、やってくる……何と恐ろしい!
今日、賢く考えよう。明日から? 頭がおかしい。
明日になったら、今日の前例が適用される。致命的だ。
賢く考えない日が死ぬまで続いてしまう。
先送りというのは時の泥棒、
毎年毎年、年を盗み、結局時間がすべてなくなる。
そして最後の一瞬の審判で
永遠の行き先が決められる、重大な問題なのに。
ありがちなことで、特に驚かないか?
いや、むしろ、ありがちすぎることに驚け。
驚嘆すべき人の勘違いのうち、優勝の栄誉に
輝くのはこれだ--「誰でも、いつか本気で生きる時がくる」、
その気になれば、すぐに本当の自分に生まれ変わる……。
自分をごまかしながら、誰もが考える、いつか成長して、
よだれと妄想を垂れ流す赤ん坊ではなくなるはずだ、と。
このうぬぼれ・将来像は立派に見える、
少なくとも自分には。そして未来の自分に拍手する。
すばらしき我が妄想の人生!
自由にできる時間は愚かに使い、
自由にできない時間は賢く貯蓄?
計画しかできないから、計画だけして延期する。
バカでない人はバカをバカにしない、
賢い人でも、それ以上のことは無理だから。
約束というのはひどい遅刻魔、
いつもそう。若い時、わたしたちは
調子にのって、貴族のようにのんびりしている。
何の心配もなく、親孝行にこう考える、
親父がもう少し頭よかったらなあ……。
30になると、自分はバカだったと思いはじめ、
40でバカだったと思い知る。そして人生の計画を練り直す。
50でそれまでの情けない先延ばしを反省し、
よく考えて現実的に今後の方針を決めようと思い、
壮大な計画を立てて決意を固める。
何度も何度も決意する。そしてそのまま死ぬ。
なぜそうなる? 自分は死なないと思っているからだ。
自分以外の人は死ぬけど自分は死なない、と思っているからだ。
死を予感して、ハッ! と衝撃を受け、
突如、恐怖が心を貫く。
が、貫かれた心の傷は、貫かれた空気の傷のように
すぐに閉じる。突き抜けた矢の跡は残らない。
羽に削られても、空に傷は残らない。
船が通っても、波に溝はできない。
こうして死の可能性は人の心のなかで死ぬ。
自然に流れる優しい涙も同じで、
大事な人といっしょにお墓に入る。
だが、フィランダーのことは? 忘れられるわけがない。
おお! 心が張り裂けそうだ! 話しはじめたら
一年でいちばん長い夜でも足りない。
朝のひばりに真夜中の歌を聴かせることになる。
楽しげなひばりの歌で朝が目覚める。
悲しみの尖った棘が胸に刺さったまま、
徹夜明けのわたしも歌おうとする。少しでも明るくしたい、
不機嫌な薄明りを。ピロメラ、君といっしょに!
星たちに歌いかけても
わたしの声は届かない。もっときれいな君の歌に夢中らしい。
だが、うぬぼれてはダメだ。上には上がいる。
時を超えて響く歌がある。夜の陰に包まれて、
闇の牢屋のなかで、音のない真夜中に、わたしは
神がのりうつった彼らの歌で
悲しみを癒す、苦悩からわたしの心を盗み返すために!
陶酔の歌、でもその炎はわたしを包んでくれない。だから
わたしは闇のなか……ホメロス! あなたのように盲目でないのに!
それから、ミルトン! ああ! 崇高なあなたに手が届いたら!
それから、ホメロスを英語にしたポウプにも!
彼は人について歌った。わたしはむしろ不死なる人を歌う、
生の境界の向こうにあふれる歌を。
不死の命以外、何を歌えばいい?
ポウプが主題を広げ、たどり着いていたらよかった!
この世の闇夜が明けるところまで!
炎の翼で舞いあがり、(沈むわたしのかわりに)
不死の魂を歌っていたらよかった! それで
人々は幸せだったはずだ! わたしも救われていたはずだ!
(第一夜が終わる)
*****
学生の方など、自分の研究/発表のために上記を
参照する際には、このサイトの作者、タイトル、URL,
閲覧日など必要な事項を必ず記し、剽窃行為のないように
してください。
ウェブ上での引用などでしたら、リンクなどのみで
かまいません。
商用、盗用、悪用などはないようお願いします。
『悲しみの歌:死と生、そして永遠について夜に考える』
第一夜
死と生、そして永遠について
疲れた体を癒してくれる優しい眠り! いい香りの眠り!
眠りは人と同じで、喜んでやってくる、
幸運の女神が微笑む人のところに。不幸な人には訪れない。
柔らかい翼であっという間に悲しい人から飛び去って、
涙で汚れていないまぶたに降り立つ。
(いつものことだが)短く、うなされた眠りから
目を覚ます。幸せでうらやましい! 二度と目を覚まさない者たちは!
いや、そうとも限らない、墓のなかでも夢を見るならば。
目を覚ます、立ちあがる、荒れ狂う
夢の海から。わたしの想いは難破して沈んでしまった。
みじめな空想の波から波に次々にもまれ、
あちこちに流されて、理性の舵もどこかに行ってしまった。
夢の海から救出されても心の痛みは続く。変わったことと言えば、
つらい苦痛が、もっとつらい苦痛になっただけ!
昼間は短すぎて、悲しんでいるだけで終わってしまう!
夜は、最高に闇が暗い時でも、
わたしの運命の色に比べれば太陽のようだ。
黒い夜の女神! 黒檀の玉座から、
光のない栄光のなか、今、差しのべる、
まどろむ世界に鉛の王笏(しゃく)を。
沈黙……まさに死んでいる! 闇……どこまでも深い!
見えるもの、聞こえるものが、ない。
創造されたものすべてが眠っている。命あるものすべての脈が
消え、自然も停止している。
おお、恐ろしい! この世が終わる時にもこうなるのだろう。
と言うか、この世など早く終わればいい。
さあ運命! 幕を下ろせ! 失うものなど、もうわたしにはない。
沈黙と闇! 厳かな双子の姉妹!
その母はいにしえの夜--夜の胸に抱かれてつたない思考が
理性に育ち、その理性のうえに決意が立つ。
(人の真の威厳を示す柱のように。)
沈黙と闇! 今、わたしを支えてほしい。礼は墓で、
おまえたちの王国で、しよう。この体を
暗い神殿の生贄に捧げよう。
あ、いや……違う。あなただ。
あなたが原初の沈黙を
追い払った。朝の星たちが
喜び、舞いあがり、昇る太陽を大声で称えたあの時に。
あなたの言葉が固体の闇を打ち、あの火花、太陽が飛び出した……
ああ、知恵が飛び出るようにわたしの魂も打ってください。
魂が信じる宝はあなただけ。だからあなたに向かう、
みな寝静まる頃に、金の奴隷が金庫に飛んで行くように。
世界の闇と魂の闇、
この二重の夜のなか、憐みの光をひと筋ください。
照らし、励ましてください。わたしの心を導いてください。
(悲しみから抜け出したいのです。)
生死のさまざまな場面を見せてください。
そのすべてから、わたしに高貴な真理を吹きこんでください。
歌わせてください。よいおこないを教えてください。
わたしの理性に正しい考えを、わたしの意思に正しい生きかたを
教えてください。固い決意をさらに固めさせてください。
知恵を妻とし、長年の借りを返せるように。
あなたの復讐の杯の酒、罪深いこの頭に
注がれた酒を、無駄にしないでください。
鐘だ。1時だ。時間を意識するのは、
いつも時間がなくなった後。時間に声を与えた
人は賢い。天使のお告げのようだ、
厳かな鐘の音は。いや、あれは
わたしのなかで死んだ時間を弔う鐘。わたしが死なせた
時間は、今、ノアの洪水以前の年月ととけあう。
鐘の音、それは、急げ、という合図。
何を? どれだけ? どうすればいい? 希望と恐れが
飛び起きて、生の先端の崖から
下を見る。何が見える? 底なしの深淵、
恐ろしい永遠の世界! 間違いなくわたしが行くところ!
だが、永遠の時間がわたしのものになる?
わずかな時間のお恵みで生きるわたしのものに?
なんと貧困で裕福で、下劣で崇高で、
複雑で、そして不思議なのか、人は!
まさにありえない驚異では? 人をつくったあのお方は?
わたしたちの中心に両極の矛盾があるなんて?
正反対の性格が生まれつき混在するとは!
遠くの国がなぜか隣にあるかのように!
はてしなく連なる存在の鎖、人はそのなかでも特別な輪!
無と神のちょうど真ん中!
神の光があっても、汚れ、陰に呑みこまれている!
不名誉に汚れつつ、でも神々しい!
絶対的に偉大な神の超縮小版!
天国の後継者! 脆い土の子!
不死なのに自分で何もできない! 無限の魂の虫けら!
蛇! なのに神! 自分に恐れおののき、
自分のなかで迷子になる! 家にいるのによそ者のように、
思考は上に下に行ったりきたり。不意を突かれ、驚愕し、
思考に思考がわからない。おお、理性がよろめく!
人にとって人はまさに不思議、
苦しみながら勝ち誇る! 何という喜び! そして恐れ!
心は天に昇り、次の瞬間に戦慄する!
どうしたら永遠の命が? どうしたら破滅?
天使はわたしを墓から助けてくれない。でも、
わたしを墓に閉じこめておくこともできない。
これらは憶測ではない。すべてが証明している。
体の上に眠りの領土が広がる時、
魂は幻のなか踊る、
小さな妖精の野原の空を舞いながら。あるいは闇で涙を流す、
道なき森で。あるいは岩の崖から
身を投げる、または泡の汚い苦痛の川を泳ぐ。
あるいは崖をよじ登ったり、実体のない風に乗って踊る、
変な姿をした脳の住人たちといっしょに。
迷いながらも飛翔をつづける魂は、やはり本質的に
踏みつけられる土くれ以上の存在。
自分の意志で空高く舞い上がる。自由に、
重くて邪魔な、堕落した体の鎖に引きずられることなく。
夜が何も言わずに魂の不死を宣言する。
夜が何も言わずに永遠の光の世界を証明する。
人の幸せのために神がすべてを耕してくれる。
鈍い眠りのなかに教えがある。無駄に楽しい夢も無駄ではない。
だから、なぜ失われない命の喪失を悲しむ?
なぜ不幸な思考が墓をさまよう、
不敬にも悲しみつつ? 天使が来ているとでも?
天の炎が土に埋もれてうたた寝するとでも?
いや、生きている! みな地上で生きている、
体がなくても! 心優しい人が
神のようにわたしを憐れんでくれますように、
わたしのほうが死んでいるようなものだから。
生は砂漠……生は孤独……
なんてにぎやかなんだ! 墓は生に満ちている!
この世のほうこそ悲しみに沈む人のためのアーチ、
埋葬の谷、暗い糸杉の森、
命のない亡霊の国!
この世のものはすべて影、あの世に
あるのが実体。馬鹿にそれがわからない。
すべてが本物に決まっている、変化がない世界だから。
墓、それは、存在の萌芽、薄暗い夜明け、
日の出前の薄明り、玄関。
命の劇場はまだ開演前で、死、
怪力の死だけが、閂(かんぬき)の重い横木をはずせる。
この邪魔な粘土の体をとりはらい、
自由な存在への胎児にしてくれる。
ここのいるのは、真の命にほんの少しだけ届かない、
光の世界にまだ入れない者、
言わば、父のなかでまだ眠る精子。
わたしたちは胎児になって、いずれ殻を破り、
青空の殻を破り、真の生の世界に飛び出して、
天使のように生きる--夢のよう!--人であっても永遠に。
しかし、人は愚かなもので、墓に想いをすべて埋める。
天国への希望を葬り去る、ため息ひとつなく。
大地の囚人で、月明かりの牢屋から外に出られない。
希望の翼は自分でへし折る。天からの贈りものの翼で
無限の世界に飛んでいけるはずなのに、
天使たちが不死の木の実を食べているところに、
命の木の実を、神の玉座のすぐ隣で。
おお! 黄金の喜びの木の実! いい香りに輝く房!
神の光を浴びて、正しい者たちのために熟している!
一瞬で終わる長い命など、もはや存在しない世界!
時間も、痛みも、偶然も、死も、ない!
あっという間の60年、飛び去って消える生涯のなか、
永遠の世界は頭から消去されてしまう?
不死の魂は土のなかで窒息死する?
不死の魂はこの世で燃え尽きて、
一生懸命無駄に生きて退化して、
騒動に巻き込まれ、快楽に己を忘れ、あるいは戦慄する、
この世の恐ろしいものすべて、気持ちいいことすべてを前に。
この世はまるで嵐の海で、
魂とは、まるで波に呑まれる羽、溺れる虫。
このような批判は誰に? ……めまいがする。
わたしの心は快楽の傷でかさぶただらけ!
魂は自分の鎖で立ちあがれない!
わたしは蚕、ぐるぐるに巻かれて動けない、
這いまわる妄想が吐き出す絹の思考の糸で。
暗い雲のなか理性が横たわり、
次から次に気持ちのいいことばかり考えて、
空飛ぶ翼が生えてこない!
こんな厳しい夜の幻のほうがわたしのためになる?
目覚めている時の夢のほうが死をもたらす? おお、これまで
見てきたありえない夢の数々。夜の夢よりたちが悪い。
永遠に変化する世界に永遠の喜びがあるとでも?
揺れる波のなかに揺るがない楽しみがあるとでも?
くり返す嵐の人生に永遠の晴天があるとでも?
真昼の空に、わたしは煌びやかな幻を見てきた、
色とりどりの楽しみが描かれた豪華な織物のようだった!
快楽の向こうにまた快楽、まるで無限の遠近法!
今、死の鐘が鳴っている。鉄の舌が絶え間なく
百万の餌食を要求している。
わたしは飛び起き、自分の破滅を悟った。
え? 無駄に派手だった部屋の飾りはどこに消えた?
蜘蛛の巣の小屋、泥の壁、
かびが生えてぼろぼろ……まさに王の部屋!
蜘蛛の糸のいちばん細いところが
人を弱々しく、かすかに、
この世の幸せにつなぐ。そして微風で切れる。
おお! 天の劇場に広がる永遠の喜び!
完全で、限りなく、はてしなく、永久に続く!
幸せが終わらない、それが天国の幸せ。
思考が止まる幸せな場面が無限に続き、
死の想いに喜びが呑みこまれたりしない。
光の楽園が楽園でなくなることなどありえない、
はるか上の不変の世界なのだから。下界では、
星たちが転がり踊って、よろよろして、不幸と
悲しみを次から次へとまき散らす。
それで地上では一時間ごとに革命があり、
それで世の中悪くなる。いちばんすばらしい人が、
ふつうの人より早く死ぬ。
すべての瞬間がまるで死神、
時の神のように根こそぎ大きな鎌で刈る、
国がひとつできるくらいの死者を。すべての瞬間が
小さな鎌を小さく振って刈る、
小さな家庭の安らぎを、
この世の小さな幸せのきれいな花を。
幸せ? 月の下のこの世の幸せ? 傲慢で無意味なことを。
まさに神の定めに対する反逆!
まったくあつかましい、神の権限の侵害だ!
つかんだとしても幻、手を開いたら何もない。
幸せだ……なんてうつつを抜かしている場合ではなかった!
だから苦悩の矢で蜂の巣になってしまった!
死! すべてがおまえのもの! おまえが踏みつけて
帝国の火が消える。星の光もおまえが殺す。
太陽は輝く、しかし、それもおまえの許可の下、
いずれおまえが天球から引っこ抜いて捨てる。
そんな大虐殺ができるのに、なぜわざわざ
ちっぽけな人に矢を浪費する?
なぜわざわざわたしの身内を狙う?
欲張りめ! せめてひとりでいいだろう?
三人も撃ちやがって。わたしの心は三回殺された。
三人もだ。三日月が満月になる前に。
ああ、月の女神シンシア! なぜそんなに青白い? 地上で
人が死ぬから? 絶え間ないおまえの変化より
人の生の変転のほうが早いから?
借りものだった幸せの潮が引いていく! 幸運の女神の微笑み、
そんなご厚意などあてにならない! 揺るがない美徳が
太陽のようにみずから強く喜びに輝くのとは大違いだ。
いつの、どこの、どんなものでも、
楽しい記憶はみな孤独。まるで未亡人!
想いが、めまぐるしく浮かぶ想いが、安らぎを奪うからだ!
暗い裏口から時間が去った後、想いは
静まった夜にやってくる。
まるで人殺し(まさに!)、うろうろ歩いて
楽しい過去を踏みつぶす。(みじめな浮浪者め!)
わざわざ不幸をあちこち探し、
心を砂漠にする。過去の喜びを
亡霊にする。おお、数えきれない亡霊たち!
嘆くしかない、昔の豊かな幸運を。
安らぎの甘いぶどうが房ごと枯れてしまって悲しい。
大切にしていた、でも失われた、幸せを前に震えが止まらない。
楽しかったことすべてが、今、痛みになって心の底に突き刺さる。
だが、なぜ悲しむ? 自分ひとりのことで?
太陽の光はわたしだけのために空に吊られている?
わたしだけが不幸な人で、あとはみな幸せな天使とか?
いや、悲しみは何百万の人のもの。すべての人の定め。
あんなかたち、こんなかたちで運命は
母の激痛をすべての子に分配している。
子の数だけ痛みの相続人がいる。
戦争・飢餓・疫病・噴火・嵐・火事・
内乱・圧政……見るに堪えない災禍の包囲網、
心に三重の真鍮の鎧が必要だ。
人は神の姿につくられたはずなのに、光の相続権を奪われ、
不幸の鉱山の穴に落とされ、太陽があったことも思い出せない。
そこで死ぬまで、と言うか不死だから永遠に、
同じく不死の意地悪な親方に殴られながら奴隷船を漕ぐ。
冬の冷たい波を耕せば、絶望が収穫できる。
あるいは、厳しい軍曹の下で戦場で負傷して、
手足を失い、または半分失い、
勇敢に守った国の浮浪者になってパンを乞う。
暴君やその愛人の気まぐれのせいだ。
貧乏と不治の病(残酷なセット!)が
容赦なく多くの者に襲いかかり、一気に
希望を奪う。そうなったら逃げ場は墓だけ。
見るがいい、救貧院がうめきながら死者を吐き出している!
そこに入りたい悲しい人たちもうめいている!
かつては幸運の女神にひざまくらをされていたのに、
今では冷たい人たちの施しがないと生きていけない!
そして、な、なんと! 拒まれている!
おお、快楽の絹に溺れたおまえたち! 痛い目見るぞ?
はやりのお店で遊びすぎると。ここにきて
放蕩贅沢をひと休みしろ。寄付しろ。
金が足りなくて遊べないくらいがちょうどいい。お、たいした
図々しさだな。正しいことをするのが恥ずかしいか?
こういう奴らだけが悲しい目にあえばいい!
思慮も道徳も不幸から守ってくれない。
病は慎みと節制を攻略し、
罪なき人が罰せられる。どんな深い森のなかでも、
平穏な日々に油断すれば、非常事態に狙撃される。
警戒すればそれだけ危険に襲われる。
警戒の分だけ油断して、それで死ぬ。
幸せは幸せにしてくれない。
祈りは祈りを叶えてくれない。
幸せの鍵だと思って大事にしているものが
幸せからほど遠い!
いちばん滑らかな道でも痛みから逃れられない。
何かの間違いで、本当の友に傷つけられたり。
不運でなくても不幸になる? どういうこと?
敵がいないのに攻撃される? どういうこと?
そもそも、どんないい人にだって敵はいる。
不幸のリストはまさに無限、
ため息の理由を数えつつ人は死に、ため息すらつけなくなる。
土の星の上、人は住んでいるのは
ほんのわずかなところだけ。残りは荒地、
岩山と砂漠と氷の海と燃える砂、
猛毒と角の殺人モンスターがうろうろしている。
それが世界の暗い地図! だが、
人生の地図はさらに暗い!
偉そうで楽しそうな支配者たちが
悲しみの大帝国で暮らしている。困難の深海の波に揺られ、
悲しみの獣に吠えられ、激情の毒蛇に噛まれ、
肉食の不幸に内臓を喰いちぎられ、
恐怖の運命の口に丸呑みされる。
わたしは何をしている? 自分のことで悲しんで?
年寄りでもこどもでも、他の人からの助け以外に
希望はない。だから、たがいに優しくしよう。
この点だけは、人の本質に従えばいい。
自己中心的な人は苦しんで当然。
人のための悲しみは、悲しいけど幸せ。
いいことをしていると思えたら、痛みも和らぐ。
優しさと知恵に従って、
あふれる想いの水路を増やそう、分けることで
悲しみの奔流が弱くなるから。
だから受けとってくれ! 世界のみんな! 涙の借りを返すから!
人の幸せはなんて悲しいんだろう、
一時間先のことを考えてしまう人にとって!
誰でもいい、今、幸せに心高ぶらせている人!
いっしょに喜ぼうか?
嬉しいだろう? 傲慢の証拠だ。
傲慢でも、少し我慢して聴いてほしい、
友からの健全な戒めを。
ああ、幸せで不幸な人! あなたは愚かだから幸せ。
頭が弱いから、こどもみたいにいつもニコニコしている。
思い知るといい、楽しんでいると危ない。
快楽の後には必ず痛みがやってくる。
不幸の女神はまるで性格の悪い借金とり、
遅れてきて、その分厳しくむしりとる。
過去の幸せを思い出させて
つらさを倍にする。
ロレンゾ、幸運が君の前にひざまずく。
セイレーンの歌に、浅はかな君の心は躍る。
そんな幸せは高くつくぞ。いや、意地悪なつもりはない。
君の楽しみを台無しにしたいわけじゃない。本物にしたいんだ。
恐れ、とは嵐だけへの捧げものじゃない。
運命が微笑んでくれている時にも用心しよう。
神の怒りは恐ろしい? もちろん。
でも、神の恵みも恐ろしい。
それは試練だ、ご褒美じゃない。
正しくふるまえ、という命令だ。気を抜くな。
警戒だ、つらい時と同じだ。
どうしてそうなったか、後でどうなるか、よく考えて、
恐れおののけ、自分に値しない幸運に対して。
動揺は抑えよう。喜びも抑えよう。
喜びを握りしめて、絞め殺すことがないように。喜びが
不幸に、あるいはそれ以下のものになってしまわないように。
楽しみの反逆は内乱と同じ、
憎しみに変わった友情と同じ、
怒りと毒で平和を乱す、国と心の。
いわゆる「幸せ」には要注意、あらゆる喜びには
要警戒だ。永遠に続く喜び以外はあてにならない。
不滅でない幸せを大事にしても、
それは殺すために育てることと変わらない。
フィランダー! わたしの幸せは君とともに死んだ。君の最後の息、
最後のため息で目が覚めた。魔法がとけて、世界が輝いて
見えなくなった。どこに消えた? まばゆい塔は?
黄金に光る山は? すべてが暗い
むき出しの荒地に、悲しい涙の谷に、なってしまった。
天才手品師はもういない! フィランダー! ちっぽけな、血の気のない、
土になって暗い墓に捨てられた君! 大違いだ、
昨日の姿とは!大きな希望がもう少しで叶うところだった。
長年の苦労が実りそうだった! 野心で紅潮していた
君の頬! 真に偉大な、
正しく称賛に値する野心で! 見えない死の種が、
(裏切りの鉱山採掘人のように)闇のなか、
入念に練られた君の人生設計図を見つけてニヤリと笑い、蛆虫に
合図した、この真っ赤な薔薇をメチャクチャにしていいぞ、と。
まだ咲いているうちに、一気にやれ、と!
人の予見や知恵は完璧でない。
ロレンゾ! 知見は愚見に落ちる、
よくあることだ、かわいい考えが
母なる思考から生まれた瞬間に。人の目の曇りはひどい!
視界は、今この瞬間から先に進めない。
最後の審判の日の空のように、黒い曇で先が見えない。
向こうに行けない。予言は絶対に当たらない。
時はひと粒ひと粒人に与えられ、
その瞬間に人生の砂の川にとけて消える。
絶対に変わらない運命の命令で、
「永遠の入口」はどこにあるか、沈黙したまま。
いつか起こりうることは、今起こりうる--それが自然の掟。
生に対する特権は誰にもない。
最大級の厚かましさだろう?
明日の朝も生きて目覚められるという思いこみは。
明日とは何か? 別世界だ。
大勢の人にとって明日は不確か。誰も
明日を確信できない。それでも、「たぶん」・
「きっと」という土台の上に、
頑丈なダイアモンドの嘘の上に、
人は高層の希望を建てる。永遠の計画を立て、
運命の女神より長い糸を紡ぎ、
そして死ぬ、すばらしい未来の妄想とともに。
フィランダーも自分が死ぬとは思っていなかった。
そうだろう、何の警告もなかった。
多くの者が突然倒れる。もっと苦しむ者も多い。
何年もの警告の後、突然死ぬ。
気をつけろ、ただの不幸じゃない、究極の不幸がやってくる。
気をつけろ、ロレンゾ! 死は、今、突然やってくる!
ゆっくり、突然、やってくる……何と恐ろしい!
今日、賢く考えよう。明日から? 頭がおかしい。
明日になったら、今日の前例が適用される。致命的だ。
賢く考えない日が死ぬまで続いてしまう。
先送りというのは時の泥棒、
毎年毎年、年を盗み、結局時間がすべてなくなる。
そして最後の一瞬の審判で
永遠の行き先が決められる、重大な問題なのに。
ありがちなことで、特に驚かないか?
いや、むしろ、ありがちすぎることに驚け。
驚嘆すべき人の勘違いのうち、優勝の栄誉に
輝くのはこれだ--「誰でも、いつか本気で生きる時がくる」、
その気になれば、すぐに本当の自分に生まれ変わる……。
自分をごまかしながら、誰もが考える、いつか成長して、
よだれと妄想を垂れ流す赤ん坊ではなくなるはずだ、と。
このうぬぼれ・将来像は立派に見える、
少なくとも自分には。そして未来の自分に拍手する。
すばらしき我が妄想の人生!
自由にできる時間は愚かに使い、
自由にできない時間は賢く貯蓄?
計画しかできないから、計画だけして延期する。
バカでない人はバカをバカにしない、
賢い人でも、それ以上のことは無理だから。
約束というのはひどい遅刻魔、
いつもそう。若い時、わたしたちは
調子にのって、貴族のようにのんびりしている。
何の心配もなく、親孝行にこう考える、
親父がもう少し頭よかったらなあ……。
30になると、自分はバカだったと思いはじめ、
40でバカだったと思い知る。そして人生の計画を練り直す。
50でそれまでの情けない先延ばしを反省し、
よく考えて現実的に今後の方針を決めようと思い、
壮大な計画を立てて決意を固める。
何度も何度も決意する。そしてそのまま死ぬ。
なぜそうなる? 自分は死なないと思っているからだ。
自分以外の人は死ぬけど自分は死なない、と思っているからだ。
死を予感して、ハッ! と衝撃を受け、
突如、恐怖が心を貫く。
が、貫かれた心の傷は、貫かれた空気の傷のように
すぐに閉じる。突き抜けた矢の跡は残らない。
羽に削られても、空に傷は残らない。
船が通っても、波に溝はできない。
こうして死の可能性は人の心のなかで死ぬ。
自然に流れる優しい涙も同じで、
大事な人といっしょにお墓に入る。
だが、フィランダーのことは? 忘れられるわけがない。
おお! 心が張り裂けそうだ! 話しはじめたら
一年でいちばん長い夜でも足りない。
朝のひばりに真夜中の歌を聴かせることになる。
楽しげなひばりの歌で朝が目覚める。
悲しみの尖った棘が胸に刺さったまま、
徹夜明けのわたしも歌おうとする。少しでも明るくしたい、
不機嫌な薄明りを。ピロメラ、君といっしょに!
星たちに歌いかけても
わたしの声は届かない。もっときれいな君の歌に夢中らしい。
だが、うぬぼれてはダメだ。上には上がいる。
時を超えて響く歌がある。夜の陰に包まれて、
闇の牢屋のなかで、音のない真夜中に、わたしは
神がのりうつった彼らの歌で
悲しみを癒す、苦悩からわたしの心を盗み返すために!
陶酔の歌、でもその炎はわたしを包んでくれない。だから
わたしは闇のなか……ホメロス! あなたのように盲目でないのに!
それから、ミルトン! ああ! 崇高なあなたに手が届いたら!
それから、ホメロスを英語にしたポウプにも!
彼は人について歌った。わたしはむしろ不死なる人を歌う、
生の境界の向こうにあふれる歌を。
不死の命以外、何を歌えばいい?
ポウプが主題を広げ、たどり着いていたらよかった!
この世の闇夜が明けるところまで!
炎の翼で舞いあがり、(沈むわたしのかわりに)
不死の魂を歌っていたらよかった! それで
人々は幸せだったはずだ! わたしも救われていたはずだ!
(第一夜が終わる)
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Young, E, The Complaint (Night-Thoughts) 1(英語)
Edward Young
The Complaint: Or, Night-Thoughts on
Death, Life, and Immortality
Night the First
On Death, Life, and Immortality
TIR'D nature's sweet restorer, balmy sleep!
He, like the world, his ready visit pays
Where fortune smiles; the wretched he forsakes;
Swift on his downy Pinion flies from woe,
And lights on lids unsully'd with a tear.
From short (as usual) and disturb'd repose,
I wake: How happy they, who wake no more!
Yet that were vain, if dreams infest the grave.
I wake, emerging from a sea of dreams
Tumultuous; where my wreck'd desponding thought,
From wave to wave of fancy'd misery,
At random drove, her helm of reason lost.
Tho' now restor'd, 'tis only change of pain,
(A bitter change!) severer for severe.
The day too short for my distress! and night,
Ev'n in the Zenith of her dark domain,
Is sunshine, to the colour of my fate.
Night, sable Goddess! from her Ebon throne,
In rayless majesty, now stretches forth
Her leaden sceptre o'er a slumb'ring world.
Silence, how dead! and darkness, how profound!
Nor eye, nor list'ning ear, an object finds;
Creation sleeps. 'Tis as the gen'ral pulse
Of life stood still, and nature made a pause;
An aweful pause! prophetic of her end,
And let her prophecy be soon fulfill'd;
Fate! drop the curtain; I can lose no more.
Silence and darkness! solemn sisters! twins
From antient night, who nurse the tender thought
To reason, and on reason build resolve,
(That column of true majesty in man)
Assist me: I will thank you in the grave;
The grave, your kingdom: There this frame shall fall
A victim sacred to your dreary shrine.
But what are Ye?—
THOU, who didst put to flight
Primaeval silence, when the morning stars,
Exulting, shouted o'er the rising ball;
O THOU, whose word from solid darkness struck
That spark, the sun, strike wisdom from my soul;
My soul, which flies to thee, her trust, her treasure,
As misers to their gold, while others rest.
Thro' this opaque of nature, and of soul,
This double night, transmit one pitying ray,
To lighten, and to chear. O lead my mind,
(A mind that fain would wander from its woe)
Lead it thro' various scenes of life and death;
And from each scene, the noblest truths inspire.
Nor less inspire my conduct, than my song;
Teach my best reason, reason; my best will
Teach rectitude; and fix my firm resolve
Wisdom to wed, and pay her long arrear:
Nor let the phial of thy vengeance, pour'd
On this devoted head, be pour'd in vain.
The bell strikes one. We take no note of time,
But from its loss. To give it then a tongue,
Is wise in man. As if an angel spoke,
I feel the solemn sound. If heard aright,
It is the knell of my departed hours:
Where are they? With the years beyond the flood.
It is the signal that demands dispatch:
How much is to be done? My hopes and fears
Start up alarm'd, and o'er life's narrow verge
Look down—On what? A fathomless abyss;
A dread eternity! how surely mine!
And can eternity belong to me,
Poor pensioner on the bounties of an hour?
How poor, how rich, how abject, how august,
How complicate, how wonderful, is man?
How passing wonder HE, who made him such?
Who centred in our make such strange extremes?
From diff'rent natures marvelously mixt,
Connection exquisite of distant worlds!
Distinguisht link in Being's endless chain!
Midway from nothing to the Deity!
A beam ethereal, sully'd, and absorpt!
Tho' sully'd, and dishonour'd, still divine!
Dim miniature of greatness absolute!
An heir of glory! A frail child of dust!
Helpless immortal! Insect infinite!
A worm! a God!—I tremble at myself,
And in myself am lost! At home a stranger,
Thought wanders up and down, surpriz'd, aghast,
And wond'ring at her own: How reason reels!
O what a miracle to man is man,
Triumphantly distress'd! what joy, what dread!
Alternately transported, and alarm'd!
What can preserve my life? or what destroy?
An angel's arm can't snatch me from the grave;
Legions of angels can't confine me there.
'Tis past conjecture; all things rise in proof:
While o'er my limbs sleep's soft dominion spread,
What tho' my soul phantastic measures trod
O'er fairy fields; or mourn'd along the gloom
Of pathless woods; or down the craggy steep
Hurl'd headlong, swam with pain the mantled pool;
Or scal'd the cliff; or danc'd on hollow winds,
With antic shapes, wild natives of the brain?
Her ceaseless flight, tho' devious, speaks her nature
Of subtler essence than the trodden clod;
Active, aereal, tow'ring; unconfin'd,
Unfetter'd with her gross companion's fall.
Ev'n silent night proclaims my soul immortal:
Ev'n silent night proclaims eternal day.
For human weal, heav'n husbands all events;
Dull sleep instructs, nor sport vain dreams in vain.
Why then their loss deplore, that are not lost?
Why wanders wretched thought their tombs around,
In infidel distress? Are angels there?
Slumbers, rak'd up in dust, ethereal fire?
They live! they greatly live a life on earth
Unkindled, unconceiv'd; and from an eye
Of tenderness, let heav'nly pity fall
On me, more justly number'd with the dead.
This is the desart, this the solitude:
How populous! how vital is the grave!
This is creation's melancholy vault,
The vale funereal, the sad Cypress gloom;
The land of apparitions, empty shades!
All, all on earth is shadow, all beyond
Is substance; the reverse is Folly's creed:
How solid all, where change shall be no more?
This is the bud of being, the dim dawn,
The twilight of our day, the vestibule;
Life's theatre as yet is shut, and death,
Strong death, alone can heave the massy bar,
This gross impediment of clay remove,
And make us embryos of existence free.
From real life, but little more remote
Is he, not yet a candidate for light,
The future embryo, slumb'ring in his sire.
Embryos we must be, till we burst the shell,
Yon ambient azure shell, and spring to life,
The life of Gods, O transport! and of man.
Yet man, fool man! here buries all his thoughts:
Interrs celestial hopes without one sigh.
Pris'ner of earth, and pent beneath the moon,
Here pinions all his wishes; wing'd by heav'n
To fly at infinite; and reach it there,
Where Seraphs gather immortality,
On life's fair tree, fast by the throne of God.
What golden joys ambrosial clust'ring glow,
In HIS full beam, and ripen for the just,
Where momentary ages are no more!
Where time, and pain, and chance, and death, expire!
And is it in the flight of threescore years,
To push eternity from human thought,
And smother souls immortal in the dust?
A soul immortal, spending all her fires,
Wasting her strength in strenuous idleness,
Thrown into tumult, raptur'd, or alarm'd,
At aught this scene can threaten, or indulge,
Resembles ocean into tempest wrought,
To waft a feather, or to drown a fly.
Where falls this censure? It o'erwhelms myself;
How was my heart incrusted by the world!
O how self-fetter'd was my grov'ling soul!
How, like a worm, was I wrapt round and round
In silken thought, which reptile fancy spun,
Till darken'd reason lay quite clouded o'er
With soft conceit of endless comfort here,
Nor yet put forth her wings to reach the skies!
Night-visions may befriend (as sung above):
Our waking dreams are fatal. How I dreamt
Of things impossible? (Could sleep do more?)
Of joys perpetual in perpetual change?
Of stable pleasures on the tossing wave?
Eternal sunshine in the storms of life?
How richly were my noon-tide trances hung
With gorgeous tapestries of pictur'd joys?
Joy behind joy, in endless perspective!
Till at Death's toll, whose restless iron tongue
Calls daily for his millions at a meal,
Starting I woke, and found myself undone.
Where now my phrensy's pompous furniture?
The cobweb'd cottage, with its ragged wall
Of mould'ring mud, is royalty to me!
The spider's most attenuated thread
Is cord, is cable, to man's tender tie
On earthly bliss; it breaks at every breeze.
O ye blest scenes of permanent delight!
Full, above measure! lasting, beyond bound!
A perpetuity of bliss is bliss.
Could you, so rich in rapture, fear an end,
That ghastly thought would drink up all your joy,
And quite unparadise the realms of light.
Safe are you lodg'd above these rolling spheres;
The baleful influence of whose giddy dance
Sheds sad vicissitude on all beneath.
Here teems with revolutions every hour;
And rarely for the better; or the best,
More mortal than the common births of fate.
Each moment has its sickle, emulous
Of Time's enormous scythe, whose ample sweep
Strikes empires from the root; each moment plays
His little weapon in the narrower sphere
Of sweet domestic comfort, and cuts down
The fairest bloom of sublunary bliss.
Bliss! sublunary bliss!—Proud words, and vain!
Implicit treason to divine decree!
A bold invasion of the rights of heav'n!
I clasp'd the phantoms, and I found them air.
O had I weigh'd it e'er my fond embrace!
What darts of agony had miss'd my heart!
Death! great proprietor of all! 'tis thine
To tread out empire, and to quench the stars.
The sun himself by thy permission shines:
And, one day, thou shalt pluck him from his sphere.
Amid such mighty plunder, why exhaust
Thy partial quiver on a mark so mean?
Why thy peculiar rancour wreak'd on me?
Insatiate archer! could not one suffice?
Thy shaft flew thrice; and thrice my peace was slain;
And thrice, ere thrice yon moon had fill'd her horn.
O Cynthia! why so pale? Dost thou lament
Thy wretched neighbour? Grieve to see thy wheel
Of ceaseless change outwhirl'd in human life?
How wanes my borrow'd bliss! from Fortune's smile,
Precarious courtesy! Not Virtue's sure,
Self-given, solar, ray of sound delight.
In ev'ry vary'd posture, place, and hour,
How widow'd ev'ry thought of ev'ry joy!
Thought, busy thought! too busy for my peace!
Thro' the dark postern of time long elaps'd,
Led softly, by the stilness of the night,
Led, like a murderer, (and such it proves!)
Strays (wretched rover!) o'er the pleasing past;
In quest of wretchedness perversely strays;
And finds all desart now, and meets the ghosts
Of my departed joys; a num'rous train!
I rue the riches of my former fate;
Sweet comfort's blasted clusters I lament;
I tremble at the blessings once so dear;
And ev'ry pleasure pains me to the heart.
Yet why complain! or why complain for one?
Hangs out the sun his lustre but for me,
The single man? Are Angels all beside?
I mourn for millions: 'Tis the common lot;
In this shape, or in that, has fate entail'd
The mother's throes on all of woman born,
Not more the children, than sure heirs of pain.
War, famine, pest, volcano, storm, and fire,
Intestine broils, oppression, with her heart
Wrapt up in triple brass, besiege mankind.
God's image disinherited of day,
Here, plung'd in mines, forgets a sun was made.
There, beings deathless as their haughty Lord,
Are hammer'd to the galling oar for life;
And plow the winter's wave, and reap despair.
Some, for hard masters, broken under arms,
In battle lopt away, with half their limbs,
Beg bitter bread thro' realms their valour saved,
If so the tyrant, or his minion, doom.
Want, and incurable disease, (fell pair!)
On hopeless multitudes remorseless seize
At once; and make a refuge of the grave.
How groaning hospitals eject their dead!
What numbers groan for sad admission there!
What numbers, once in fortune's lap high-fed,
Solicit the cold hand of charity!
To shock us more, solicit it in vain!
Ye silken sons of pleasure! since in pains
You rue more modish visits, visit here,
And breathe from your debauch: Give, and reduce
Surfeit's dominion o'er you: But so great
Your impudence, you blush at what is right.
Happy! did sorrow seize on such alone.
Not prudence can defend, or virtue save;
Disease invades the chastest temperance;
And punishment the guiltless; and alarm,
Thro' thickest shades, pursues the fond of peace.
Man's caution often into danger turns,
And his guard falling, crushes him to death.
Not happiness itself makes good her name;
Our very wishes give us not our wish.
How distant oft the thing we doat on most,
From that for which we doat, felicity?
The smoothest course of nature has its pains;
And truest friends, thro' error, wound our rest.
Without misfortune, what calamities?
And what hostilities, without a foe?
Nor are foes wanting to the best on earth.
But endless is the list of human ills,
And sighs might sooner fail, than cause to sigh.
A part how small of the terraqueous globe
Is tenanted by man! the rest a waste,
Rocks, desarts, frozen seas, and burning sands!
Wild haunts of monsters poisons, stings, and death.
Such is earth's melancholy map! But far
More sad! this earth is a true map of man.
So bounded are its haughty Lord's delights
To woe's wide empire; where deep troubles toss,
Loud sorrows howl, invenom'd passions bite,
Rav'nous calamities our vitals seize,
And threat'ning fate wide opens to devour.
What then am I, who sorrow for myself?
In age, in infancy, from others aid
Is all our hope; to teach us to be kind.
That, nature's first, last lesson to mankind;
The selfish heart deserves the pain it feels.
More gen'rous sorrow, while it sinks, exalts;
And conscious virtue mitigates the pang.
Nor virtue, more than prudence, bids me give
Swoln thought a second channel; who divide,
They weaken too, the torrent of their grief.
Take then, O world! thy much indebted tear:
How sad a sight is human happiness,
To those whose thought can pierce beyond an hour?
O thou, whate'er thou art, whose heart exults!
Wouldst thou I should congratulate thy fate?
I know thou wouldst; thy pride demands it from me.
Let thy pride pardon, what thy nature needs,
The salutary censure of a friend.
Thou happy wretch! by blindness thou art blest;
By dotage dandled to perpetual smiles.
Know, smiler! at thy peril art thou pleas'd;
Thy pleasure is the promise of thy pain.
Misfortune, like a creditor severe,
But rises, in demand for her delay;
She makes a scourge of past prosperity,
To sting thee more, and double thy distress.
Lorenzo, fortune makes her court to thee.
Thy fond heart dances, while the Syren sings.
Dear is thy welfare; think me not unkind;
I would not damp, but to secure thy joys.
Think not that fear is sacred to the storm,
Stand on thy guard against the smiles of fate.
Is heav'n tremendous in its frowns? most sure;
And in its favours formidable too:
Its favours here are trials, not rewards;
A call to duty, not discharge from care;
And should alarm us, full as much as woes;
Awake us to their cause, and consequence;
And make us tremble, weigh'd with our desert;
Awe Nature's tumult, and chastise her joys,
Lest while we clasp, we kill them; nay, invert
To worse than simple misery, their charms.
Revolted joys, like foes in civil war,
Like bosom friendships to resentment sour'd,
With rage invenom'd rise against our peace.
Beware what earth calls happiness; beware
All joys, but joys that never can expire.
Who builds on less than an immortal base,
Fond as he seems, condemns his joys to Death.
Mine dy'd with thee, Philander! thy last sigh
Dissolv'd the charm; the disinchanted earth
Lost all her lustre. Where, her glitt'ring towers?
Her golden mountains, where? all darken'd down
To naked waste; a dreary vale of tears:
The great Magician's dead! Thou poor, pale piece
Of out-cast earth, in darkness! what a change
From yesterday! Thy darling hope so near,
(Long-labour'd prize!) O how ambition flush'd
Thy glowing cheek! Ambition truly great,
Of virtuous praise. Death's subtle seed within,
(Sly, treach'rous miner!) working in the dark,
Smil'd at thy well-concerted scheme, and beckon'd
The worm to riot on that rose so red,
Unfaded ere it fell; one moment's prey!
Man's foresight is conditionally wise;
Lorenzo! Wisdom into folly turns
Oft, the first instant, its idea fair
To labouring thought is born. How dim our eye!
The present moment terminates our sight;
Clouds, thick as those on doomsday, drown the next;
We penetrate, we prophesy in vain.
Time is dealt out by particles; and each,
Ere mingled with the streaming sands of life,
By fate's inviolable oath is sworn
Deep silence, "Where eternity begins."
By Nature's law, what may be, may be now;
There's no prerogative in human hours.
In human hearts what bolder thought can rise,
Than man's presumption on to-morrow's dawn?
Where is to-morrow? In another world.
For numbers this is certain; the reverse
Is sure to none; and yet on this perhaps,
This peradventure, infamous for lyes,
As on a rock of adamant we build
Our mountain hopes; spin out eternal schemes,
As we the fatal sisters could out-spin,
And, big with life's futurities, expire.
Not ev'n Philander had bespoke his shroud.
Nor had he cause; a warning was deny'd:
How many fail as sudden, not as safe;
As sudden, tho' for years admonisht home?
Of human ills the last extreme beware,
Beware, Lorenzo! a now sudden death.
How dreadful that deliberate surprize!
Be wise to-day; 'tis madness to defer;
Next day the fatal precedent will plead;
Thus on, till wisdom is push'd out of life.
Procrastination is the thief of time;
Year after year it steals, till all are fled,
And to the mercies of a moment leaves
The vast concerns of an eternal scene.
If not so frequent, would not this be strange?
That 'tis so frequent, this is stranger still.
Of man's miraculous mistakes, this bears
The palm, "That all men are about to live,"
For ever on the brink of being born.
All pay themselves the compliment to think
They one day shall not drivel; and their pride
On this reversion takes up ready praise;
At least their own; their future selves applauds;
How excellent that life they ne'er will lead!
Time lodg'd in their own hands is folly's vails;
That lodg'd in fate's, to wisdom they consign;
The thing they can't but purpose, they postpone;
'Tis not in folly, not to scorn a fool;
And scarce in human wisdom to do more.
All promise is poor dilatory man,
And that thro' ev'ry stage: When young, indeed,
In full content we, sometimes, nobly rest,
Un-anxious for ourselves; and only wish,
As duteous sons, our fathers were more wise.
At thirty man suspects himself a fool;
Knows it at forty, and reforms his plan;
At fifty chides his infamous delay,
Pushes his prudent purpose to resolve;
In all the magnanimity of thought
Resolves; and re-resolves; then dies the same.
And why? Because he thinks himself immortal.
All men think all men mortal, but themselves;
Themselves, when some alarming shock of fate
Strikes thro' their wounded hearts the sudden dread;
But their hearts wounded, like the wounded air,
Soon close; where past the shaft, no trace is found.
As from the wing no scar the sky retains;
The parted wave no furrow from the keel;
So dies in human hearts the thought of death.
Ev'n with the tender tear which nature sheds
O'er those we love, we drop it in their grave.
Can I forget Philander? That were strange;
O my full heart!—But should I give it vent,
The longest night, tho' longer far, would fail,
And the Lark listen to my midnight song.
The spritely Lark's shrill Matin wakes the morn;
Grief's sharpest thorn hard pressing on my breast,
I strive, with wakeful melody, to chear
The sullen gloom, sweet Philomel! like thee,
And call the stars to listen: ev'ry star
Is deaf to mine, enamour'd of thy lay.
Yet be not vain; there are, who thine excel,
And charm thro' distant ages: wrapt in shade,
Pris'ner of darkness! to the silent hours,
How often I repeat their rage divine,
To lull my griefs, and steal my heart from woe!
I roll their raptures, but not catch their fire.
Dark, tho' not blind, like thee, Maeonides!
Or, Milton! thee; ah! could I reach your strain!
Or his, who made Maeonides our own.
Man too he sung: Immortal man I sing;
Oft bursts my song beyond the bounds of life;
What, now, but immortality can please?
O had he press'd his theme, pursu'd the track,
Which opens out of darkness into day!
O had he mounted on his wing of fire,
Soar'd, where I sink, and sung immortal man!
How had it blest mankind, and rescu'd me?
THE END OF THE FIRST NIGHT.
https://quod.lib.umich.edu/cgi/t/text/text-idx?c=evans;idno=N12442.0001.001
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The Complaint: Or, Night-Thoughts on
Death, Life, and Immortality
Night the First
On Death, Life, and Immortality
TIR'D nature's sweet restorer, balmy sleep!
He, like the world, his ready visit pays
Where fortune smiles; the wretched he forsakes;
Swift on his downy Pinion flies from woe,
And lights on lids unsully'd with a tear.
From short (as usual) and disturb'd repose,
I wake: How happy they, who wake no more!
Yet that were vain, if dreams infest the grave.
I wake, emerging from a sea of dreams
Tumultuous; where my wreck'd desponding thought,
From wave to wave of fancy'd misery,
At random drove, her helm of reason lost.
Tho' now restor'd, 'tis only change of pain,
(A bitter change!) severer for severe.
The day too short for my distress! and night,
Ev'n in the Zenith of her dark domain,
Is sunshine, to the colour of my fate.
Night, sable Goddess! from her Ebon throne,
In rayless majesty, now stretches forth
Her leaden sceptre o'er a slumb'ring world.
Silence, how dead! and darkness, how profound!
Nor eye, nor list'ning ear, an object finds;
Creation sleeps. 'Tis as the gen'ral pulse
Of life stood still, and nature made a pause;
An aweful pause! prophetic of her end,
And let her prophecy be soon fulfill'd;
Fate! drop the curtain; I can lose no more.
Silence and darkness! solemn sisters! twins
From antient night, who nurse the tender thought
To reason, and on reason build resolve,
(That column of true majesty in man)
Assist me: I will thank you in the grave;
The grave, your kingdom: There this frame shall fall
A victim sacred to your dreary shrine.
But what are Ye?—
THOU, who didst put to flight
Primaeval silence, when the morning stars,
Exulting, shouted o'er the rising ball;
O THOU, whose word from solid darkness struck
That spark, the sun, strike wisdom from my soul;
My soul, which flies to thee, her trust, her treasure,
As misers to their gold, while others rest.
Thro' this opaque of nature, and of soul,
This double night, transmit one pitying ray,
To lighten, and to chear. O lead my mind,
(A mind that fain would wander from its woe)
Lead it thro' various scenes of life and death;
And from each scene, the noblest truths inspire.
Nor less inspire my conduct, than my song;
Teach my best reason, reason; my best will
Teach rectitude; and fix my firm resolve
Wisdom to wed, and pay her long arrear:
Nor let the phial of thy vengeance, pour'd
On this devoted head, be pour'd in vain.
The bell strikes one. We take no note of time,
But from its loss. To give it then a tongue,
Is wise in man. As if an angel spoke,
I feel the solemn sound. If heard aright,
It is the knell of my departed hours:
Where are they? With the years beyond the flood.
It is the signal that demands dispatch:
How much is to be done? My hopes and fears
Start up alarm'd, and o'er life's narrow verge
Look down—On what? A fathomless abyss;
A dread eternity! how surely mine!
And can eternity belong to me,
Poor pensioner on the bounties of an hour?
How poor, how rich, how abject, how august,
How complicate, how wonderful, is man?
How passing wonder HE, who made him such?
Who centred in our make such strange extremes?
From diff'rent natures marvelously mixt,
Connection exquisite of distant worlds!
Distinguisht link in Being's endless chain!
Midway from nothing to the Deity!
A beam ethereal, sully'd, and absorpt!
Tho' sully'd, and dishonour'd, still divine!
Dim miniature of greatness absolute!
An heir of glory! A frail child of dust!
Helpless immortal! Insect infinite!
A worm! a God!—I tremble at myself,
And in myself am lost! At home a stranger,
Thought wanders up and down, surpriz'd, aghast,
And wond'ring at her own: How reason reels!
O what a miracle to man is man,
Triumphantly distress'd! what joy, what dread!
Alternately transported, and alarm'd!
What can preserve my life? or what destroy?
An angel's arm can't snatch me from the grave;
Legions of angels can't confine me there.
'Tis past conjecture; all things rise in proof:
While o'er my limbs sleep's soft dominion spread,
What tho' my soul phantastic measures trod
O'er fairy fields; or mourn'd along the gloom
Of pathless woods; or down the craggy steep
Hurl'd headlong, swam with pain the mantled pool;
Or scal'd the cliff; or danc'd on hollow winds,
With antic shapes, wild natives of the brain?
Her ceaseless flight, tho' devious, speaks her nature
Of subtler essence than the trodden clod;
Active, aereal, tow'ring; unconfin'd,
Unfetter'd with her gross companion's fall.
Ev'n silent night proclaims my soul immortal:
Ev'n silent night proclaims eternal day.
For human weal, heav'n husbands all events;
Dull sleep instructs, nor sport vain dreams in vain.
Why then their loss deplore, that are not lost?
Why wanders wretched thought their tombs around,
In infidel distress? Are angels there?
Slumbers, rak'd up in dust, ethereal fire?
They live! they greatly live a life on earth
Unkindled, unconceiv'd; and from an eye
Of tenderness, let heav'nly pity fall
On me, more justly number'd with the dead.
This is the desart, this the solitude:
How populous! how vital is the grave!
This is creation's melancholy vault,
The vale funereal, the sad Cypress gloom;
The land of apparitions, empty shades!
All, all on earth is shadow, all beyond
Is substance; the reverse is Folly's creed:
How solid all, where change shall be no more?
This is the bud of being, the dim dawn,
The twilight of our day, the vestibule;
Life's theatre as yet is shut, and death,
Strong death, alone can heave the massy bar,
This gross impediment of clay remove,
And make us embryos of existence free.
From real life, but little more remote
Is he, not yet a candidate for light,
The future embryo, slumb'ring in his sire.
Embryos we must be, till we burst the shell,
Yon ambient azure shell, and spring to life,
The life of Gods, O transport! and of man.
Yet man, fool man! here buries all his thoughts:
Interrs celestial hopes without one sigh.
Pris'ner of earth, and pent beneath the moon,
Here pinions all his wishes; wing'd by heav'n
To fly at infinite; and reach it there,
Where Seraphs gather immortality,
On life's fair tree, fast by the throne of God.
What golden joys ambrosial clust'ring glow,
In HIS full beam, and ripen for the just,
Where momentary ages are no more!
Where time, and pain, and chance, and death, expire!
And is it in the flight of threescore years,
To push eternity from human thought,
And smother souls immortal in the dust?
A soul immortal, spending all her fires,
Wasting her strength in strenuous idleness,
Thrown into tumult, raptur'd, or alarm'd,
At aught this scene can threaten, or indulge,
Resembles ocean into tempest wrought,
To waft a feather, or to drown a fly.
Where falls this censure? It o'erwhelms myself;
How was my heart incrusted by the world!
O how self-fetter'd was my grov'ling soul!
How, like a worm, was I wrapt round and round
In silken thought, which reptile fancy spun,
Till darken'd reason lay quite clouded o'er
With soft conceit of endless comfort here,
Nor yet put forth her wings to reach the skies!
Night-visions may befriend (as sung above):
Our waking dreams are fatal. How I dreamt
Of things impossible? (Could sleep do more?)
Of joys perpetual in perpetual change?
Of stable pleasures on the tossing wave?
Eternal sunshine in the storms of life?
How richly were my noon-tide trances hung
With gorgeous tapestries of pictur'd joys?
Joy behind joy, in endless perspective!
Till at Death's toll, whose restless iron tongue
Calls daily for his millions at a meal,
Starting I woke, and found myself undone.
Where now my phrensy's pompous furniture?
The cobweb'd cottage, with its ragged wall
Of mould'ring mud, is royalty to me!
The spider's most attenuated thread
Is cord, is cable, to man's tender tie
On earthly bliss; it breaks at every breeze.
O ye blest scenes of permanent delight!
Full, above measure! lasting, beyond bound!
A perpetuity of bliss is bliss.
Could you, so rich in rapture, fear an end,
That ghastly thought would drink up all your joy,
And quite unparadise the realms of light.
Safe are you lodg'd above these rolling spheres;
The baleful influence of whose giddy dance
Sheds sad vicissitude on all beneath.
Here teems with revolutions every hour;
And rarely for the better; or the best,
More mortal than the common births of fate.
Each moment has its sickle, emulous
Of Time's enormous scythe, whose ample sweep
Strikes empires from the root; each moment plays
His little weapon in the narrower sphere
Of sweet domestic comfort, and cuts down
The fairest bloom of sublunary bliss.
Bliss! sublunary bliss!—Proud words, and vain!
Implicit treason to divine decree!
A bold invasion of the rights of heav'n!
I clasp'd the phantoms, and I found them air.
O had I weigh'd it e'er my fond embrace!
What darts of agony had miss'd my heart!
Death! great proprietor of all! 'tis thine
To tread out empire, and to quench the stars.
The sun himself by thy permission shines:
And, one day, thou shalt pluck him from his sphere.
Amid such mighty plunder, why exhaust
Thy partial quiver on a mark so mean?
Why thy peculiar rancour wreak'd on me?
Insatiate archer! could not one suffice?
Thy shaft flew thrice; and thrice my peace was slain;
And thrice, ere thrice yon moon had fill'd her horn.
O Cynthia! why so pale? Dost thou lament
Thy wretched neighbour? Grieve to see thy wheel
Of ceaseless change outwhirl'd in human life?
How wanes my borrow'd bliss! from Fortune's smile,
Precarious courtesy! Not Virtue's sure,
Self-given, solar, ray of sound delight.
In ev'ry vary'd posture, place, and hour,
How widow'd ev'ry thought of ev'ry joy!
Thought, busy thought! too busy for my peace!
Thro' the dark postern of time long elaps'd,
Led softly, by the stilness of the night,
Led, like a murderer, (and such it proves!)
Strays (wretched rover!) o'er the pleasing past;
In quest of wretchedness perversely strays;
And finds all desart now, and meets the ghosts
Of my departed joys; a num'rous train!
I rue the riches of my former fate;
Sweet comfort's blasted clusters I lament;
I tremble at the blessings once so dear;
And ev'ry pleasure pains me to the heart.
Yet why complain! or why complain for one?
Hangs out the sun his lustre but for me,
The single man? Are Angels all beside?
I mourn for millions: 'Tis the common lot;
In this shape, or in that, has fate entail'd
The mother's throes on all of woman born,
Not more the children, than sure heirs of pain.
War, famine, pest, volcano, storm, and fire,
Intestine broils, oppression, with her heart
Wrapt up in triple brass, besiege mankind.
God's image disinherited of day,
Here, plung'd in mines, forgets a sun was made.
There, beings deathless as their haughty Lord,
Are hammer'd to the galling oar for life;
And plow the winter's wave, and reap despair.
Some, for hard masters, broken under arms,
In battle lopt away, with half their limbs,
Beg bitter bread thro' realms their valour saved,
If so the tyrant, or his minion, doom.
Want, and incurable disease, (fell pair!)
On hopeless multitudes remorseless seize
At once; and make a refuge of the grave.
How groaning hospitals eject their dead!
What numbers groan for sad admission there!
What numbers, once in fortune's lap high-fed,
Solicit the cold hand of charity!
To shock us more, solicit it in vain!
Ye silken sons of pleasure! since in pains
You rue more modish visits, visit here,
And breathe from your debauch: Give, and reduce
Surfeit's dominion o'er you: But so great
Your impudence, you blush at what is right.
Happy! did sorrow seize on such alone.
Not prudence can defend, or virtue save;
Disease invades the chastest temperance;
And punishment the guiltless; and alarm,
Thro' thickest shades, pursues the fond of peace.
Man's caution often into danger turns,
And his guard falling, crushes him to death.
Not happiness itself makes good her name;
Our very wishes give us not our wish.
How distant oft the thing we doat on most,
From that for which we doat, felicity?
The smoothest course of nature has its pains;
And truest friends, thro' error, wound our rest.
Without misfortune, what calamities?
And what hostilities, without a foe?
Nor are foes wanting to the best on earth.
But endless is the list of human ills,
And sighs might sooner fail, than cause to sigh.
A part how small of the terraqueous globe
Is tenanted by man! the rest a waste,
Rocks, desarts, frozen seas, and burning sands!
Wild haunts of monsters poisons, stings, and death.
Such is earth's melancholy map! But far
More sad! this earth is a true map of man.
So bounded are its haughty Lord's delights
To woe's wide empire; where deep troubles toss,
Loud sorrows howl, invenom'd passions bite,
Rav'nous calamities our vitals seize,
And threat'ning fate wide opens to devour.
What then am I, who sorrow for myself?
In age, in infancy, from others aid
Is all our hope; to teach us to be kind.
That, nature's first, last lesson to mankind;
The selfish heart deserves the pain it feels.
More gen'rous sorrow, while it sinks, exalts;
And conscious virtue mitigates the pang.
Nor virtue, more than prudence, bids me give
Swoln thought a second channel; who divide,
They weaken too, the torrent of their grief.
Take then, O world! thy much indebted tear:
How sad a sight is human happiness,
To those whose thought can pierce beyond an hour?
O thou, whate'er thou art, whose heart exults!
Wouldst thou I should congratulate thy fate?
I know thou wouldst; thy pride demands it from me.
Let thy pride pardon, what thy nature needs,
The salutary censure of a friend.
Thou happy wretch! by blindness thou art blest;
By dotage dandled to perpetual smiles.
Know, smiler! at thy peril art thou pleas'd;
Thy pleasure is the promise of thy pain.
Misfortune, like a creditor severe,
But rises, in demand for her delay;
She makes a scourge of past prosperity,
To sting thee more, and double thy distress.
Lorenzo, fortune makes her court to thee.
Thy fond heart dances, while the Syren sings.
Dear is thy welfare; think me not unkind;
I would not damp, but to secure thy joys.
Think not that fear is sacred to the storm,
Stand on thy guard against the smiles of fate.
Is heav'n tremendous in its frowns? most sure;
And in its favours formidable too:
Its favours here are trials, not rewards;
A call to duty, not discharge from care;
And should alarm us, full as much as woes;
Awake us to their cause, and consequence;
And make us tremble, weigh'd with our desert;
Awe Nature's tumult, and chastise her joys,
Lest while we clasp, we kill them; nay, invert
To worse than simple misery, their charms.
Revolted joys, like foes in civil war,
Like bosom friendships to resentment sour'd,
With rage invenom'd rise against our peace.
Beware what earth calls happiness; beware
All joys, but joys that never can expire.
Who builds on less than an immortal base,
Fond as he seems, condemns his joys to Death.
Mine dy'd with thee, Philander! thy last sigh
Dissolv'd the charm; the disinchanted earth
Lost all her lustre. Where, her glitt'ring towers?
Her golden mountains, where? all darken'd down
To naked waste; a dreary vale of tears:
The great Magician's dead! Thou poor, pale piece
Of out-cast earth, in darkness! what a change
From yesterday! Thy darling hope so near,
(Long-labour'd prize!) O how ambition flush'd
Thy glowing cheek! Ambition truly great,
Of virtuous praise. Death's subtle seed within,
(Sly, treach'rous miner!) working in the dark,
Smil'd at thy well-concerted scheme, and beckon'd
The worm to riot on that rose so red,
Unfaded ere it fell; one moment's prey!
Man's foresight is conditionally wise;
Lorenzo! Wisdom into folly turns
Oft, the first instant, its idea fair
To labouring thought is born. How dim our eye!
The present moment terminates our sight;
Clouds, thick as those on doomsday, drown the next;
We penetrate, we prophesy in vain.
Time is dealt out by particles; and each,
Ere mingled with the streaming sands of life,
By fate's inviolable oath is sworn
Deep silence, "Where eternity begins."
By Nature's law, what may be, may be now;
There's no prerogative in human hours.
In human hearts what bolder thought can rise,
Than man's presumption on to-morrow's dawn?
Where is to-morrow? In another world.
For numbers this is certain; the reverse
Is sure to none; and yet on this perhaps,
This peradventure, infamous for lyes,
As on a rock of adamant we build
Our mountain hopes; spin out eternal schemes,
As we the fatal sisters could out-spin,
And, big with life's futurities, expire.
Not ev'n Philander had bespoke his shroud.
Nor had he cause; a warning was deny'd:
How many fail as sudden, not as safe;
As sudden, tho' for years admonisht home?
Of human ills the last extreme beware,
Beware, Lorenzo! a now sudden death.
How dreadful that deliberate surprize!
Be wise to-day; 'tis madness to defer;
Next day the fatal precedent will plead;
Thus on, till wisdom is push'd out of life.
Procrastination is the thief of time;
Year after year it steals, till all are fled,
And to the mercies of a moment leaves
The vast concerns of an eternal scene.
If not so frequent, would not this be strange?
That 'tis so frequent, this is stranger still.
Of man's miraculous mistakes, this bears
The palm, "That all men are about to live,"
For ever on the brink of being born.
All pay themselves the compliment to think
They one day shall not drivel; and their pride
On this reversion takes up ready praise;
At least their own; their future selves applauds;
How excellent that life they ne'er will lead!
Time lodg'd in their own hands is folly's vails;
That lodg'd in fate's, to wisdom they consign;
The thing they can't but purpose, they postpone;
'Tis not in folly, not to scorn a fool;
And scarce in human wisdom to do more.
All promise is poor dilatory man,
And that thro' ev'ry stage: When young, indeed,
In full content we, sometimes, nobly rest,
Un-anxious for ourselves; and only wish,
As duteous sons, our fathers were more wise.
At thirty man suspects himself a fool;
Knows it at forty, and reforms his plan;
At fifty chides his infamous delay,
Pushes his prudent purpose to resolve;
In all the magnanimity of thought
Resolves; and re-resolves; then dies the same.
And why? Because he thinks himself immortal.
All men think all men mortal, but themselves;
Themselves, when some alarming shock of fate
Strikes thro' their wounded hearts the sudden dread;
But their hearts wounded, like the wounded air,
Soon close; where past the shaft, no trace is found.
As from the wing no scar the sky retains;
The parted wave no furrow from the keel;
So dies in human hearts the thought of death.
Ev'n with the tender tear which nature sheds
O'er those we love, we drop it in their grave.
Can I forget Philander? That were strange;
O my full heart!—But should I give it vent,
The longest night, tho' longer far, would fail,
And the Lark listen to my midnight song.
The spritely Lark's shrill Matin wakes the morn;
Grief's sharpest thorn hard pressing on my breast,
I strive, with wakeful melody, to chear
The sullen gloom, sweet Philomel! like thee,
And call the stars to listen: ev'ry star
Is deaf to mine, enamour'd of thy lay.
Yet be not vain; there are, who thine excel,
And charm thro' distant ages: wrapt in shade,
Pris'ner of darkness! to the silent hours,
How often I repeat their rage divine,
To lull my griefs, and steal my heart from woe!
I roll their raptures, but not catch their fire.
Dark, tho' not blind, like thee, Maeonides!
Or, Milton! thee; ah! could I reach your strain!
Or his, who made Maeonides our own.
Man too he sung: Immortal man I sing;
Oft bursts my song beyond the bounds of life;
What, now, but immortality can please?
O had he press'd his theme, pursu'd the track,
Which opens out of darkness into day!
O had he mounted on his wing of fire,
Soar'd, where I sink, and sung immortal man!
How had it blest mankind, and rescu'd me?
THE END OF THE FIRST NIGHT.
https://quod.lib.umich.edu/cgi/t/text/text-idx?c=evans;idno=N12442.0001.001
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Donne, "To Mr T. W." ("Pregnant again. . . .")
ジョン・ダン
「T・W君に」
いつもの双子、〈希望〉と〈恐れ〉を妊娠して、
君にたびたび手紙を書いて訊く。どこにいますか?
お元気ですか? お手紙いただけません?
まるで、抜け目ない乞食が通りでじーっと
お恵みをくれそうな人の手や目の動きを観察して、
それで少し希望が頭に宿る時のよう。
それで今、君から施しをもらって、君の手紙を読んで、
死んだ体が生き返る。
みじめに飢えていたけど、たくさん食べさせてもらえた。
このごちそうの後、ぼくの魂はお礼のお祈りをして、
そして君を称える。そして熱く抱きしめる、
君への愛を。でもそれは、
食べながらこう言う食いしん坊の愛と同じ--
「これ大好き、もっと食べたい」。
*****
John Donne
"To Mr T. W."
Pregnant again with th' old twins, Hope and Fear,
Oft have I asked for thee, both how and where
Thou wert; and what my hopes of letters were;
As in our streets sly beggars narrowly
Watch motions of the giver's hand or eye,
And evermore conceive some hope thereby.
And now thy alms is given, thy letter's read,
The body risen again, the which was dead,
And thy poor starveling bountifully fed.
After this banquet my soul doth say grace,
And praise thee for 't, and zealously embrace
Thy love, though I think thy love in this case
To be as gluttons, which say 'midst their meat,
They love that best of which they most do eat.
http://www.luminarium.org/sevenlit/donne/tomrtw.htm
*****
書簡詩・変則ソネット
aaa bbb ccc dddee
9+5
*****
セネカ Seneca
希望・恐れ hope / fear
ソネット sonnet
*****
学生の方など、自分の研究/発表のために上記を
参照する際には、このサイトの作者、タイトル、URL,
閲覧日など必要な事項を必ず記し、剽窃行為のないように
してください。
ウェブ上での引用などでしたら、リンクなどのみで
かまいません。
商用、盗用、悪用などはないようお願いします。
「T・W君に」
いつもの双子、〈希望〉と〈恐れ〉を妊娠して、
君にたびたび手紙を書いて訊く。どこにいますか?
お元気ですか? お手紙いただけません?
まるで、抜け目ない乞食が通りでじーっと
お恵みをくれそうな人の手や目の動きを観察して、
それで少し希望が頭に宿る時のよう。
それで今、君から施しをもらって、君の手紙を読んで、
死んだ体が生き返る。
みじめに飢えていたけど、たくさん食べさせてもらえた。
このごちそうの後、ぼくの魂はお礼のお祈りをして、
そして君を称える。そして熱く抱きしめる、
君への愛を。でもそれは、
食べながらこう言う食いしん坊の愛と同じ--
「これ大好き、もっと食べたい」。
*****
John Donne
"To Mr T. W."
Pregnant again with th' old twins, Hope and Fear,
Oft have I asked for thee, both how and where
Thou wert; and what my hopes of letters were;
As in our streets sly beggars narrowly
Watch motions of the giver's hand or eye,
And evermore conceive some hope thereby.
And now thy alms is given, thy letter's read,
The body risen again, the which was dead,
And thy poor starveling bountifully fed.
After this banquet my soul doth say grace,
And praise thee for 't, and zealously embrace
Thy love, though I think thy love in this case
To be as gluttons, which say 'midst their meat,
They love that best of which they most do eat.
http://www.luminarium.org/sevenlit/donne/tomrtw.htm
*****
書簡詩・変則ソネット
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希望・恐れ hope / fear
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