英語の詩を日本語で
English Poetry in Japanese
Richarson, Clarissa Harlowe
サミュエル・リチャードソン
『クラリッサ・ハーロウ』 より
書簡44
ラヴレイス氏からジョン・ベルフォード氏へ
6月2日(金)
「いつものことですが、ラヴレイスさん」、彼女は言った、「あなたは間違ってます。もちろん、ご自分ではわからないと思いますが。いいですか、私の考えでは、結婚というのは清らかなものです。いやらしいことをしていいとか、そういう関係ではないのです」とか、なんとかかんとか……たぶん、こんな感じ。
結婚が清らか、とか、なあ、ジャック、笑っちゃうよな! かわいい子たち、女の子のうちの半分くらいはさ、だいたいみんな悪い男についていくってもんなのにな。悪いから、だから好き、ってさ。そいつらを選ぶ理由なんか他にはありゃしない。とにかく悪いから好きになるんだ。
な、ベルフォード、よくある話さ。まじめなふりをしてる若奥さま、結婚前はびっくりするくらいおとなしかった、って人がいるよな。で、そんな奥さまをさ、旦那がたいして愛しくれなくなった頃に、ちょっと外にひとりで出してみろよ。慎みやら思慮やら、どこにおいてきちゃったの? って感じになるもんな。まさにご乱心って感じでさ、まわりのほうが恥ずかしくって顔が赤くなってるのに、自分たちは全然平気なんだよな。
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
書簡50
ラヴレイス氏からジョン・ベルフォード氏へ
6月8日(木) 朝5時
「ひどい! 最低! なにすんの! このクズ!」--そう、「クズ」ってさ。身動きとれないのに気が強いよな。なんでそこまで言われなきゃいかんのかな、キスしたくらいで。確かに、ちょっと激しかったかもしれないけどさ……。いや、もう最高だぜ。首とか、くちびるとか、ほっぺとか、おでことか、泣いてる目のところとか、みんなメチャメチャかわいいからさ、見てるだけで理性なんてどっか吹っ飛んじまってさ。ま、とにかく、そんな感じで俺はすわってて、あの子はひざまずいてた。
. . . . . . . . .
「わざとじゃないんです。本当です。」
「嘘! ラヴレイスさん!」
「本当です。お嬢さん。本当に火事だったんです。」--これは本当なんだ、ジャック--「この家が全焼してたかもしれないんです。朝、明るくなったときに見てみてくださいよ。」
「嘘よ! ラヴレイスさん!」
「おさえきれないくらいあなたのことが好きだったから、それから、思いがけずお部屋のドアのところでお目にかかったから、しかもこんな、なんて言うか、とても魅惑的なお姿で……」
「離して! 手を離して! 今すぐよ! お願い! 手を離して! 」--とり乱して、なにがなんだかわからない、って感じで、あの子はキョロキョロしたり、自分を見たりしてた。
「許してください。好きすぎて、少し勝手がすぎてしまいました。下心があったわけじゃないんです。あなたがまじめだからそう思ってしまう、ってだけなんです。」
「もういい! 聞きたくない! 手を離して! お願いよ!」--また自分を見たり、キョロキョロしたり……混乱してる感じがかわいいんだよな。--「もう行って! 出てって!」 --泣きながら暴れて手をふりほどこうとしてさ、俺がずっと握ってたから。あの子、それはもう一生懸命でさ、今でも思い出すんだけど、もうかわいいのなんのって、顔も、しぐさも、みんな、さ。ただでさえかわいくって上品できれいなのにさ、それが倍増してるわけ。
「ダメです! あなたが許してくれないかぎりはね! 許してくれればいいんです! 許すと言ってくださいよ!」
「もうお願い、帰って! ひとりになりたいの! どうすればいいか、どうすべきか、考えたいの!」
「それだけでは帰れません。許すと言ってください。明日も会ってくれると言ってください。なにもなかったかのように。」
でさ、またあの子をぎゅっと抱きしめた。許されたくなかったし、な。
「わかったわ、許してあげる。あなた、最低だけど!」
「いやいやいや、クラリッサさん、そんな嫌々の許しの言葉でぼくを追い払えると思ってるんですか? ぼくを責めてていいんですか? ほら、お嬢さんは今、ぼくに逆らえないんですよ?」--こう言ってまたぎゅっと抱きしめたりしてね。
「わかったわ、許します!」
「本当に?」
「そうよ、本当よ!」
「心から?」
「そう、心から!」
「明日も会ってくれますか? なにもなかったかのように?」
「いいわよ! わかったわよ!」
「そんな意地悪な感じで言われたら、いや、って言ってるのと同じじゃないですか。もっと、誓う感じで言ってくださいよ。」
「わかった、誓うわ! だから、もう、どこか行って! 消えてちょうだい! そしてもう……」
「もう……なんですか? ぼくの天使さん? それって、許すってのとは違いません?」
「もう、今日のことは全部忘れて!」
許しの証として俺はもう一回だけ無理やりキスして、で、すごすごと帰ってきちまった。馬鹿だよな。女の言うことを聞いちゃってさ、ほんと馬鹿だよな。俺としたことが、信じられるかい?
でさ、部屋に戻っていろいろ考えたんだ。なんていいチャンスを逃しちまったんだ、とかさ……。
* * *
Samuel Richarson
From Clarissa Harlowe
Letter 44
Mr. LOVELACE, To JOHN BELFORD, Esq
Friday, June 2
This is not the first time, Mr. Lovelace, said she, that I have had cause to be displeased with you, when you, perhaps, have not thought yourself exceptionable.―But, Sir, let me tell you, that the married state, in my eye, is a state of purity, and (I think she told me) not of licentiousness; so at least, I understood her.
Marriage-purity, Jack!―Very comical, 'faith―Yet, sweet dears, half the female world ready to run away with a rake, because he is a rake; and for no other reason; nay, every other reason against their choice.
But have not you and I, Belford, seen young wives, who would be thought modest; and when maids, were fantastically shy; permit freedoms in public from their lambent husbands, which have shewn, that they have forgot what belongs either to prudence or decency? While every modest eye has sunk under the shameless effrontery, and every modest face been covered with blushes for those who could not blush.
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
Letter 50
MR. LOVELACE, TO JOHN BELFORD, ESQ.
Thursday morning, Five o'clock (June 8.)
Wicked wretch!―Insolent villain!―[Yes, she called me insolent villain, altho' so much in my power! And for what?―only for kissing (with passion indeed) her inimitable neck, her lips, her cheeks, her forehead, and her streaming eyes, as this assemblage of beauties offered itself at once to my ravished sight; she continuing kneeling at my feet, as I sat].
. . . . . . . . .
Impute not every thing, my best Beloved, to design; for design it was not―
O Mr. Lovelace!―
Upon my soul, Madam, the fire was real―(And so it was, Jack!)―The house might have been consumed by it, as you will be convinced in the morning by ocular demonstration.
O Mr. Lovelace!―
Let my passion for you, Madam, and the unexpected meeting of you at your chamber-door, in an attitude so charming―
Leave me, leave me, this moment!―I beseech you, leave me; looking wildly, and in confusion, now about her, and now upon herself.
Excuse me, dearest creature, for those liberties, which, innocent as they were, your too great delicacy may make you take amiss.
No more! No more!―Leave me, I beseech you! Again looking upon herself, and around her, in a sweet confusion.―Begone! Begone!―Then weeping, she struggled vehemently to withdraw her hands, which all the while I held between mine.―Her struggles! O what additional charms, as I now reflect, did her struggles give to every feature, every limb, of a person so sweetly elegant and lovely!
Impossible! my dearest life, till you pronounce my pardon!―Say but you forgive me!―Say you do!
I beseech you, begone! Leave me to myself, that I may think what I can do, and what I ought to do.
That, my dearest creature, is not enough. You must tell me, that I am forgiven; that you will see me to-morrow, as if nothing had happened.
And then, clasping her again in my arms, hoping she would not forgive me―
I will―I do forgive you―Wretch that you are!
Nay, my Clarissa! And is it such a reluctant pardon, mingled with a word so upbraiding, that I am to be put off with, when you are thus (clasping her close to me) in my power?
I do, I do forgive you!
Heartily?
Yes, heartily!
And freely?
Freely!
And will you look upon me to-morrow, as if nothing had passed?
Yes, yes!
I cannot take these peevish affirmatives, so much like intentional negatives!―Say you will, upon your honour!
Upon my honour, then―O now, begone! begone! and never―
What, never, my angel!―Is this forgiveness?
Never, said she, let what has passed be remembered more!
I insisted upon one kiss to seal my pardon―And retired like a fool, a woman's fool, as I was!―I sneakingly retired!―Couldst thou have believed it?
But I had no sooner enter'd my own apartment, than, reflecting upon the opportunity I had lost. . . .
* * *
(あらすじ)
Samuel Richardon, Clarissa Harlowe
1.
LovelaceがClarissaの姉に求婚。
2.
LovelaceがClarissaに関心を移す。
3.
Clarissaの兄がLovelaceと決闘、ケガをする。
4.
Clarissaの家族は彼女をSolmesと結婚させようとする。
5.
Clarissaはこれに抵抗。(あんな頭が悪い、しかもぶさいくな
男なんて絶対いや!)
6.
Clarissaは部屋に閉じこめられる。
7.
Lovelaceが彼女に脱出の手助けを申し出る。
8.
ClarissaはLovelaceと逃げるつもりはなかったが、
彼の策略でロンドンの娼婦(Mrs. Sinclair)のところに
閉じ込められることになる。
9.
LovelaceはしつこくClarissaを誘惑するが、彼女は拒む。
10.
ClarissaはなんとかMrs. Sinclairのところから
逃げ出すが、Lovelaceに雇われたふたりの娼婦の
策略でまた逆戻り。
11.
LovelaceがClarissaを犯す。
12.
LovelaceはClarissaに求婚するが、彼女はこれを
受けいれない。
13.
Clarissaはなんとか逃げ出すが、Mrs. Sinclairの
策略で彼女は借金のために逮捕される。
14.
もともとLovelaceの友人だったBelfordがClarissaの
借金を払い、Clarissaは釈放される。
15.
入念な準備の後、聖人としてClarissaは死ぬ。
(RicharsonはこれをClarissaの勝利として意図している。)
16.
大陸に行ったLovelaceはClarissaのいとこと決闘し、死ぬ。
* * *
http://quod.lib.umich.edu/cgi/t/text/text-idx?c=ecco;idno=004835420.0001.004
(散文。版によって書簡番号が違う。)
* * *
学生の方など、自分の研究/発表のために上記を
参照する際には、このサイトの作者、タイトル、URL,
閲覧日など必要な事項を必ず記し、剽窃行為のないように
してください。
ウェブ上での引用などでしたら、リンクなどのみで
かまいません。
商用、盗用、悪用などはないようお願いします。
『クラリッサ・ハーロウ』 より
書簡44
ラヴレイス氏からジョン・ベルフォード氏へ
6月2日(金)
「いつものことですが、ラヴレイスさん」、彼女は言った、「あなたは間違ってます。もちろん、ご自分ではわからないと思いますが。いいですか、私の考えでは、結婚というのは清らかなものです。いやらしいことをしていいとか、そういう関係ではないのです」とか、なんとかかんとか……たぶん、こんな感じ。
結婚が清らか、とか、なあ、ジャック、笑っちゃうよな! かわいい子たち、女の子のうちの半分くらいはさ、だいたいみんな悪い男についていくってもんなのにな。悪いから、だから好き、ってさ。そいつらを選ぶ理由なんか他にはありゃしない。とにかく悪いから好きになるんだ。
な、ベルフォード、よくある話さ。まじめなふりをしてる若奥さま、結婚前はびっくりするくらいおとなしかった、って人がいるよな。で、そんな奥さまをさ、旦那がたいして愛しくれなくなった頃に、ちょっと外にひとりで出してみろよ。慎みやら思慮やら、どこにおいてきちゃったの? って感じになるもんな。まさにご乱心って感じでさ、まわりのほうが恥ずかしくって顔が赤くなってるのに、自分たちは全然平気なんだよな。
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書簡50
ラヴレイス氏からジョン・ベルフォード氏へ
6月8日(木) 朝5時
「ひどい! 最低! なにすんの! このクズ!」--そう、「クズ」ってさ。身動きとれないのに気が強いよな。なんでそこまで言われなきゃいかんのかな、キスしたくらいで。確かに、ちょっと激しかったかもしれないけどさ……。いや、もう最高だぜ。首とか、くちびるとか、ほっぺとか、おでことか、泣いてる目のところとか、みんなメチャメチャかわいいからさ、見てるだけで理性なんてどっか吹っ飛んじまってさ。ま、とにかく、そんな感じで俺はすわってて、あの子はひざまずいてた。
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「わざとじゃないんです。本当です。」
「嘘! ラヴレイスさん!」
「本当です。お嬢さん。本当に火事だったんです。」--これは本当なんだ、ジャック--「この家が全焼してたかもしれないんです。朝、明るくなったときに見てみてくださいよ。」
「嘘よ! ラヴレイスさん!」
「おさえきれないくらいあなたのことが好きだったから、それから、思いがけずお部屋のドアのところでお目にかかったから、しかもこんな、なんて言うか、とても魅惑的なお姿で……」
「離して! 手を離して! 今すぐよ! お願い! 手を離して! 」--とり乱して、なにがなんだかわからない、って感じで、あの子はキョロキョロしたり、自分を見たりしてた。
「許してください。好きすぎて、少し勝手がすぎてしまいました。下心があったわけじゃないんです。あなたがまじめだからそう思ってしまう、ってだけなんです。」
「もういい! 聞きたくない! 手を離して! お願いよ!」--また自分を見たり、キョロキョロしたり……混乱してる感じがかわいいんだよな。--「もう行って! 出てって!」 --泣きながら暴れて手をふりほどこうとしてさ、俺がずっと握ってたから。あの子、それはもう一生懸命でさ、今でも思い出すんだけど、もうかわいいのなんのって、顔も、しぐさも、みんな、さ。ただでさえかわいくって上品できれいなのにさ、それが倍増してるわけ。
「ダメです! あなたが許してくれないかぎりはね! 許してくれればいいんです! 許すと言ってくださいよ!」
「もうお願い、帰って! ひとりになりたいの! どうすればいいか、どうすべきか、考えたいの!」
「それだけでは帰れません。許すと言ってください。明日も会ってくれると言ってください。なにもなかったかのように。」
でさ、またあの子をぎゅっと抱きしめた。許されたくなかったし、な。
「わかったわ、許してあげる。あなた、最低だけど!」
「いやいやいや、クラリッサさん、そんな嫌々の許しの言葉でぼくを追い払えると思ってるんですか? ぼくを責めてていいんですか? ほら、お嬢さんは今、ぼくに逆らえないんですよ?」--こう言ってまたぎゅっと抱きしめたりしてね。
「わかったわ、許します!」
「本当に?」
「そうよ、本当よ!」
「心から?」
「そう、心から!」
「明日も会ってくれますか? なにもなかったかのように?」
「いいわよ! わかったわよ!」
「そんな意地悪な感じで言われたら、いや、って言ってるのと同じじゃないですか。もっと、誓う感じで言ってくださいよ。」
「わかった、誓うわ! だから、もう、どこか行って! 消えてちょうだい! そしてもう……」
「もう……なんですか? ぼくの天使さん? それって、許すってのとは違いません?」
「もう、今日のことは全部忘れて!」
許しの証として俺はもう一回だけ無理やりキスして、で、すごすごと帰ってきちまった。馬鹿だよな。女の言うことを聞いちゃってさ、ほんと馬鹿だよな。俺としたことが、信じられるかい?
でさ、部屋に戻っていろいろ考えたんだ。なんていいチャンスを逃しちまったんだ、とかさ……。
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Samuel Richarson
From Clarissa Harlowe
Letter 44
Mr. LOVELACE, To JOHN BELFORD, Esq
Friday, June 2
This is not the first time, Mr. Lovelace, said she, that I have had cause to be displeased with you, when you, perhaps, have not thought yourself exceptionable.―But, Sir, let me tell you, that the married state, in my eye, is a state of purity, and (I think she told me) not of licentiousness; so at least, I understood her.
Marriage-purity, Jack!―Very comical, 'faith―Yet, sweet dears, half the female world ready to run away with a rake, because he is a rake; and for no other reason; nay, every other reason against their choice.
But have not you and I, Belford, seen young wives, who would be thought modest; and when maids, were fantastically shy; permit freedoms in public from their lambent husbands, which have shewn, that they have forgot what belongs either to prudence or decency? While every modest eye has sunk under the shameless effrontery, and every modest face been covered with blushes for those who could not blush.
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Letter 50
MR. LOVELACE, TO JOHN BELFORD, ESQ.
Thursday morning, Five o'clock (June 8.)
Wicked wretch!―Insolent villain!―[Yes, she called me insolent villain, altho' so much in my power! And for what?―only for kissing (with passion indeed) her inimitable neck, her lips, her cheeks, her forehead, and her streaming eyes, as this assemblage of beauties offered itself at once to my ravished sight; she continuing kneeling at my feet, as I sat].
. . . . . . . . .
Impute not every thing, my best Beloved, to design; for design it was not―
O Mr. Lovelace!―
Upon my soul, Madam, the fire was real―(And so it was, Jack!)―The house might have been consumed by it, as you will be convinced in the morning by ocular demonstration.
O Mr. Lovelace!―
Let my passion for you, Madam, and the unexpected meeting of you at your chamber-door, in an attitude so charming―
Leave me, leave me, this moment!―I beseech you, leave me; looking wildly, and in confusion, now about her, and now upon herself.
Excuse me, dearest creature, for those liberties, which, innocent as they were, your too great delicacy may make you take amiss.
No more! No more!―Leave me, I beseech you! Again looking upon herself, and around her, in a sweet confusion.―Begone! Begone!―Then weeping, she struggled vehemently to withdraw her hands, which all the while I held between mine.―Her struggles! O what additional charms, as I now reflect, did her struggles give to every feature, every limb, of a person so sweetly elegant and lovely!
Impossible! my dearest life, till you pronounce my pardon!―Say but you forgive me!―Say you do!
I beseech you, begone! Leave me to myself, that I may think what I can do, and what I ought to do.
That, my dearest creature, is not enough. You must tell me, that I am forgiven; that you will see me to-morrow, as if nothing had happened.
And then, clasping her again in my arms, hoping she would not forgive me―
I will―I do forgive you―Wretch that you are!
Nay, my Clarissa! And is it such a reluctant pardon, mingled with a word so upbraiding, that I am to be put off with, when you are thus (clasping her close to me) in my power?
I do, I do forgive you!
Heartily?
Yes, heartily!
And freely?
Freely!
And will you look upon me to-morrow, as if nothing had passed?
Yes, yes!
I cannot take these peevish affirmatives, so much like intentional negatives!―Say you will, upon your honour!
Upon my honour, then―O now, begone! begone! and never―
What, never, my angel!―Is this forgiveness?
Never, said she, let what has passed be remembered more!
I insisted upon one kiss to seal my pardon―And retired like a fool, a woman's fool, as I was!―I sneakingly retired!―Couldst thou have believed it?
But I had no sooner enter'd my own apartment, than, reflecting upon the opportunity I had lost. . . .
* * *
(あらすじ)
Samuel Richardon, Clarissa Harlowe
1.
LovelaceがClarissaの姉に求婚。
2.
LovelaceがClarissaに関心を移す。
3.
Clarissaの兄がLovelaceと決闘、ケガをする。
4.
Clarissaの家族は彼女をSolmesと結婚させようとする。
5.
Clarissaはこれに抵抗。(あんな頭が悪い、しかもぶさいくな
男なんて絶対いや!)
6.
Clarissaは部屋に閉じこめられる。
7.
Lovelaceが彼女に脱出の手助けを申し出る。
8.
ClarissaはLovelaceと逃げるつもりはなかったが、
彼の策略でロンドンの娼婦(Mrs. Sinclair)のところに
閉じ込められることになる。
9.
LovelaceはしつこくClarissaを誘惑するが、彼女は拒む。
10.
ClarissaはなんとかMrs. Sinclairのところから
逃げ出すが、Lovelaceに雇われたふたりの娼婦の
策略でまた逆戻り。
11.
LovelaceがClarissaを犯す。
12.
LovelaceはClarissaに求婚するが、彼女はこれを
受けいれない。
13.
Clarissaはなんとか逃げ出すが、Mrs. Sinclairの
策略で彼女は借金のために逮捕される。
14.
もともとLovelaceの友人だったBelfordがClarissaの
借金を払い、Clarissaは釈放される。
15.
入念な準備の後、聖人としてClarissaは死ぬ。
(RicharsonはこれをClarissaの勝利として意図している。)
16.
大陸に行ったLovelaceはClarissaのいとこと決闘し、死ぬ。
* * *
http://quod.lib.umich.edu/cgi/t/text/text-idx?c=ecco;idno=004835420.0001.004
(散文。版によって書簡番号が違う。)
* * *
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From Everyman
『人間』
(〈死〉がやってくる)
〈死〉
わたしは〈死〉だ。こわがらなくてもいい。
すべての人間に休息を与え、誰ひとり見逃がさないのだから。
神が命じている、
みな私に従うように、とな。
〈人間〉
〈死〉だって? まったく予想外のときに来るんだな。
でも、ぼくを助けることもできますよね?
それに、やさしくしてくれるならお礼をします。
そうですね、1000ポンドさしあげましょう。
もし、この件を明日までのばしていただけましたら。
* * *
(〈友情〉が裏切る)
〈友情〉
ねえ、〈人間〉さん……
君はどうしてそんなに悲しそうにしてるの?
何か困ったことがあるなら、ね、言ってみてください。
助けてあげたいんです。
. . . . . . . . . . . . . . . . .
君が悲しんでいるとつらいんです。
もし誰かひどいことをする人がいるなら、わたしが復讐してあげます。
君のためなら、わたしは死んだっていいんです。
. . . . . . . . . . . . . . . . .
本当です。君といっしょに地獄に落ちるとしても、
わたしはあなたを途中で見捨てたりしません!
〈人間〉
では、悩みを話します。
旅に出なくてはならないんです。
長くて大変な、危険な旅です。
すぐにきっちり人生の清算をしなくてはならないんです。
神さまの審判を受けるんです。
だから、お願いです。いっしょに来てください。
わたしを見捨てない、って約束してくれましたよね。
〈友情〉
それはひどい話ですね! 約束を守るのは、確かに大事なことです。
でも、もしそんな旅に出たら、
もちろん、わたしも死ぬことになってしまいますよね……
〈人間〉
ねえ、さっき言ってたじゃないですか。わたしが困ってるなら、
死んでも絶対に見捨てない、
地獄にまでついて来てくれる、って。
〈友情〉
確かに言いました。
でも、そんなおいしい話、忘れてもらっていいですか?
* * *
(ほかの友人たちも去る)
〈知識〉
〈人間〉さん、ぼくがいっしょにいきます。導いてあげます。
いちばん困ったときでもそばにいます。
〈強さ〉
俺は〈強さ〉だ。困ったときには俺が味方だからな。
戦いに巻きこまれたときとか、な
〈五感〉
世界中のどこへだって
ぼくはついて行くよ。楽しいときも、つらいときも、ね。
〈美しさ〉
あたしだって死ぬまでついて行くわ。
何があってもこわくないわ。
〈人間〉
じゃあ、行こう、みんな。ぐずぐずしてないで出発だ。
〈思慮〉
ぼくは〈思慮〉です。ぼくもおそばにいます。
〈知識〉
どんなに大変な旅でも、
ぼくは君から離れません。
〈人間〉
ああ、ふらふらして、もう立っていられないよ。
足に力が入らない。
みんな、もうこの国をふり返るのはやめよう。
世界中の金なんて、もういらないや。
この穴に入っていかなきゃ。
土にかえって眠るんだ。
〈美しさ〉
え? このお墓に? 嘘でしょ!
〈人間〉
嘘じゃないよ。ここで少しずつ朽ちはてていくんだ。
〈美しさ〉
本当に? ここであたしも死ぬの?
〈人間〉
そうだよ。二度と出てこれないんだ。
もうこの世に生きて帰ったりせずに、
すべてを支配する天の神さまのところに行くんだよ。
〈美しさ〉
やっぱり、あたし、キャンセルするわ。じゃあね。
〈強さ〉
なあ、〈人間〉、俺も、もうついて行けないや。
こんな遊び、おもしろくないし。
〈人間〉
え? みんなぼくを見捨てるの?
ねえ、〈強さ〉さん、ちょっと待ってよ。
〈強さ〉
ゴメンよ。もう無理だ。
俺はとっとと帰るぜ。
泣いても無駄だからな。
〈人間〉
ずっとそばにいてくれる、って言ったじゃないか。
〈強さ〉
もう、来るんじゃなかったぜ……
ぐだぐだ言って馬鹿じゃねえの?
さっさとそこの墓に入っちまいな。
〈思慮〉
〈人間〉さん、ぼくも〈強さ〉さんについて行きます。
ひとりで行ってください。
〈人間〉
え? 〈思慮〉さん、ぼくを見捨ててしまうの?
〈思慮〉
そうです。ここでさよならです。
〈強さ〉が去ったら、
ぼくもついていかなくてはならないのです。
〈五感〉
〈人間〉さん、ぼくたちもここで失礼します。
ぼくもみんなについて行きます。さようなら。
* * *
(〈善行〉だけが残る)
〈人間〉
神さま以外、何もあてにならないんだな。
〈美しさ〉も、〈強さ〉も、〈思慮〉も、みんなダメだ。
〈死〉が合図のラッパを吹いたら、
みんないちもくさんにぼくから逃げていった。
〈善行〉
いいえ、〈人間〉さん、わたしがそばにいます。
わたしは絶対にあなたを見捨てません。
困ったときには、わたしのことを友だちだと思ってください。
〈人間〉
ありがとう、〈善行〉さん。あなたが本当の友だち、
みんなが見捨てたぼくの最後の友だちだったのですね。
あなたよりも他のみんなを愛していた、そんなぼくの……。
〈知識〉さん、あなたもぼくを見捨てるのですか?
〈知識〉
そうです、〈人間〉さん、あなたが死んでいくときに。
でも、まだ行きません。どんな危険も平気です。
〈人間〉
ありがとう、〈知識〉さん。心からありがとう……
ああ、そろそろ行かなくては、
人生の清算をして、借りたものを返さなくては。
この世でのぼくの時間はもう終わりそうです。
この話を見ている人、聞いている人は、ぼくの例から学んでください。
ぼくが愛してきたものすべてがぼくを見捨てました。
本当にそばにいてくれるのは、〈善行〉だけなのです。
〈善行〉
この世のものに本当の価値はありません。
〈美しさ〉も〈力〉も〈思慮〉も、みな人を見捨てます。
きれいな嘘を言う愚かな友人や家族や親類も、
みんな去っていきます。わたし、〈善行〉だけが頼りなのです。
〈人間〉
偉大なる神さま、ご慈悲をお願いします。
おそばにいてください。それから母なる、聖なるマリアさまも。
* * *
From Everyman
(Deathがやってくる)
Death:
I am Death, that no man dreadeth.
For every man I rest and no man spareth;
For it is God’s commandment
That all to me should be obedient.
Everyman:
O Death, thou comest when I had thee least in mind;
In thy power it lieth me to save,
Yet of my good will I give thee, if ye will be kind,
Yea, a thousand pound shalt thou have,
And defer this matter till another day.
* * *
(Fellowshipが裏切る)
Fellowship:
Everyman, . . .
Sir, why lookest thou so piteously?
If anything be amiss, I pray thee, me say,
That I may help to remedy.
. . . . . . . . . .
I have pity to see you in any distress;
If any have you wronged ye shall revenged be,
Though I on the ground be slain for thee. . . .
. . . . . . . . . .
For, in faith, and thou go to Hell
I will not forsake thee by the way!
Everyman:
I shall show you how it is;
Commanded I am to go on a journey,
A long way, hard and dangerous,
And give a strait count without delay
Before the high judge Adonai*. *God
Wherefore I pray you bear me company,
As ye have promised, in this journey.
Fellowship:
That is a matter indeed! Promise is duty,
But, and I should take such a voyage on me,
I know it well, it should be to my pain:
Everyman
Why, ye said, If I had need,
Ye would me never forsake, quick nor dead,
Though it were to hell truly.
Fellowship:
So I said, certainly,
But such pleasures be set aside, thee sooth to say. . . .
* * *
(ほかの友人たちも去る)
Knowledge:
Everyman, I will go with thee, and be thy guide,
In thy most need to go by thy side.
Strength:
. . . I, Strength, will by you stand in distress,
Though thou would in battle fight on the ground.
Five-wits:
And though it were through the world round,
We will not depart for sweet nor sour.
Beauty:
No more will I unto death’s hour,
Whatsoever thereof befall.
Everyman:
And now, friends, let us go without longer respite.
Discretion:
I, Discretion, will bide by you also.
Knowledge:
And though this pilgrimage be never so strong,
I will never part you fro:
Everyman:
Alas, I am so faint I may not stand,
My limbs under me do fold;
Friends, let us not turn again to this land,
Not for all the world’s gold,
For into this cave must I creep
And turn to the earth and there to sleep.
Beauty:
What into this grave? Alas!
Everyman:
Yea, there shall you consume more and less.
Beauty:
And what, should I smother here?
Everyman:
Yea, by my faith, and never more appear.
In this world live no more we shall,
But in heaven before the highest Lord of all.
Beauty:
I cross out all this; adieu. . . .
Strength:
Everyman, I will thee also forsake and deny;
Thy game liketh me not at all.
Everyman:
Why, then ye will forsake me all.
Sweet Strength, tarry a little space.
Strength:
Nay, sir, by thy rood of grace
I will hie me from thee fast,
Though thou weep till thy heart brast.
Everyman:
Ye would ever bide by me, ye said.
Strength:
I repent me that I hither came. . . .
Thou art but a fool to complain, . . .
Go thrust thee into the ground.
Discretion:
Everyman, I will after Strength be gone,
As for me I will leave you alone.
Everyman:
Why, Discretion, will ye forsake me?
Discretion:
Yea, in faith, I will go from thee,
For when Strength goeth before
I follow after evermore.
Five-wits:
Everyman, my leave now of thee I take;
I will follow the other, for here I thee forsake.
* * *
(Good-Deedsだけが残る)
Everyman:
O all thing faileth, save God alone;
Beauty, Strength, and Discretion;
For when Death bloweth his blast,
They all run from me full fast.
Good-Deeds:
Nay, Everyman, I will bide with thee,
I will not forsake thee indeed;
Thou shalt find me a good friend at need.
Everyman:
Gramercy, Good-Deeds; now may I true friends see;
They have forsaken me every one;
I loved them better than my Good-Deeds alone.
Knowledge, will ye forsake me also?
Knowledge:
Yea, Everyman, when ye to death do go;
But not yet for no manner of danger.
Everyman:
Gramercy, Knowledge, with all me heart. . . .
Methinketh, alas, that I must be gone,
To make my reckoning and my debts pay,
For I see my time is nigh spent away.
Take example, all ye that do hear or see,
How they that I loved best do forsake me,
Except my Good-Deeds that bideth truly.
Good-Deeds:
All earthly things is but vanity:
Beauty, Strength, and Discretion, do man forsake,
Foolish friends and kinsmen, that fair spake,
All fleeth save Good-Deeds, and that am I.
Everyman:
Have mercy on me, God, most mighty;
And stand by me, thou Mother and Maid, holy Mary.
(http://www.gutenberg.org/ebooks/19481)
* * *
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参照する際には、このサイトの作者、タイトル、URL,
閲覧日など必要な事項を必ず記し、剽窃行為のないように
してください。
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かまいません。
商用、盗用、悪用などはないようお願いします。
(〈死〉がやってくる)
〈死〉
わたしは〈死〉だ。こわがらなくてもいい。
すべての人間に休息を与え、誰ひとり見逃がさないのだから。
神が命じている、
みな私に従うように、とな。
〈人間〉
〈死〉だって? まったく予想外のときに来るんだな。
でも、ぼくを助けることもできますよね?
それに、やさしくしてくれるならお礼をします。
そうですね、1000ポンドさしあげましょう。
もし、この件を明日までのばしていただけましたら。
* * *
(〈友情〉が裏切る)
〈友情〉
ねえ、〈人間〉さん……
君はどうしてそんなに悲しそうにしてるの?
何か困ったことがあるなら、ね、言ってみてください。
助けてあげたいんです。
. . . . . . . . . . . . . . . . .
君が悲しんでいるとつらいんです。
もし誰かひどいことをする人がいるなら、わたしが復讐してあげます。
君のためなら、わたしは死んだっていいんです。
. . . . . . . . . . . . . . . . .
本当です。君といっしょに地獄に落ちるとしても、
わたしはあなたを途中で見捨てたりしません!
〈人間〉
では、悩みを話します。
旅に出なくてはならないんです。
長くて大変な、危険な旅です。
すぐにきっちり人生の清算をしなくてはならないんです。
神さまの審判を受けるんです。
だから、お願いです。いっしょに来てください。
わたしを見捨てない、って約束してくれましたよね。
〈友情〉
それはひどい話ですね! 約束を守るのは、確かに大事なことです。
でも、もしそんな旅に出たら、
もちろん、わたしも死ぬことになってしまいますよね……
〈人間〉
ねえ、さっき言ってたじゃないですか。わたしが困ってるなら、
死んでも絶対に見捨てない、
地獄にまでついて来てくれる、って。
〈友情〉
確かに言いました。
でも、そんなおいしい話、忘れてもらっていいですか?
* * *
(ほかの友人たちも去る)
〈知識〉
〈人間〉さん、ぼくがいっしょにいきます。導いてあげます。
いちばん困ったときでもそばにいます。
〈強さ〉
俺は〈強さ〉だ。困ったときには俺が味方だからな。
戦いに巻きこまれたときとか、な
〈五感〉
世界中のどこへだって
ぼくはついて行くよ。楽しいときも、つらいときも、ね。
〈美しさ〉
あたしだって死ぬまでついて行くわ。
何があってもこわくないわ。
〈人間〉
じゃあ、行こう、みんな。ぐずぐずしてないで出発だ。
〈思慮〉
ぼくは〈思慮〉です。ぼくもおそばにいます。
〈知識〉
どんなに大変な旅でも、
ぼくは君から離れません。
〈人間〉
ああ、ふらふらして、もう立っていられないよ。
足に力が入らない。
みんな、もうこの国をふり返るのはやめよう。
世界中の金なんて、もういらないや。
この穴に入っていかなきゃ。
土にかえって眠るんだ。
〈美しさ〉
え? このお墓に? 嘘でしょ!
〈人間〉
嘘じゃないよ。ここで少しずつ朽ちはてていくんだ。
〈美しさ〉
本当に? ここであたしも死ぬの?
〈人間〉
そうだよ。二度と出てこれないんだ。
もうこの世に生きて帰ったりせずに、
すべてを支配する天の神さまのところに行くんだよ。
〈美しさ〉
やっぱり、あたし、キャンセルするわ。じゃあね。
〈強さ〉
なあ、〈人間〉、俺も、もうついて行けないや。
こんな遊び、おもしろくないし。
〈人間〉
え? みんなぼくを見捨てるの?
ねえ、〈強さ〉さん、ちょっと待ってよ。
〈強さ〉
ゴメンよ。もう無理だ。
俺はとっとと帰るぜ。
泣いても無駄だからな。
〈人間〉
ずっとそばにいてくれる、って言ったじゃないか。
〈強さ〉
もう、来るんじゃなかったぜ……
ぐだぐだ言って馬鹿じゃねえの?
さっさとそこの墓に入っちまいな。
〈思慮〉
〈人間〉さん、ぼくも〈強さ〉さんについて行きます。
ひとりで行ってください。
〈人間〉
え? 〈思慮〉さん、ぼくを見捨ててしまうの?
〈思慮〉
そうです。ここでさよならです。
〈強さ〉が去ったら、
ぼくもついていかなくてはならないのです。
〈五感〉
〈人間〉さん、ぼくたちもここで失礼します。
ぼくもみんなについて行きます。さようなら。
* * *
(〈善行〉だけが残る)
〈人間〉
神さま以外、何もあてにならないんだな。
〈美しさ〉も、〈強さ〉も、〈思慮〉も、みんなダメだ。
〈死〉が合図のラッパを吹いたら、
みんないちもくさんにぼくから逃げていった。
〈善行〉
いいえ、〈人間〉さん、わたしがそばにいます。
わたしは絶対にあなたを見捨てません。
困ったときには、わたしのことを友だちだと思ってください。
〈人間〉
ありがとう、〈善行〉さん。あなたが本当の友だち、
みんなが見捨てたぼくの最後の友だちだったのですね。
あなたよりも他のみんなを愛していた、そんなぼくの……。
〈知識〉さん、あなたもぼくを見捨てるのですか?
〈知識〉
そうです、〈人間〉さん、あなたが死んでいくときに。
でも、まだ行きません。どんな危険も平気です。
〈人間〉
ありがとう、〈知識〉さん。心からありがとう……
ああ、そろそろ行かなくては、
人生の清算をして、借りたものを返さなくては。
この世でのぼくの時間はもう終わりそうです。
この話を見ている人、聞いている人は、ぼくの例から学んでください。
ぼくが愛してきたものすべてがぼくを見捨てました。
本当にそばにいてくれるのは、〈善行〉だけなのです。
〈善行〉
この世のものに本当の価値はありません。
〈美しさ〉も〈力〉も〈思慮〉も、みな人を見捨てます。
きれいな嘘を言う愚かな友人や家族や親類も、
みんな去っていきます。わたし、〈善行〉だけが頼りなのです。
〈人間〉
偉大なる神さま、ご慈悲をお願いします。
おそばにいてください。それから母なる、聖なるマリアさまも。
* * *
From Everyman
(Deathがやってくる)
Death:
I am Death, that no man dreadeth.
For every man I rest and no man spareth;
For it is God’s commandment
That all to me should be obedient.
Everyman:
O Death, thou comest when I had thee least in mind;
In thy power it lieth me to save,
Yet of my good will I give thee, if ye will be kind,
Yea, a thousand pound shalt thou have,
And defer this matter till another day.
* * *
(Fellowshipが裏切る)
Fellowship:
Everyman, . . .
Sir, why lookest thou so piteously?
If anything be amiss, I pray thee, me say,
That I may help to remedy.
. . . . . . . . . .
I have pity to see you in any distress;
If any have you wronged ye shall revenged be,
Though I on the ground be slain for thee. . . .
. . . . . . . . . .
For, in faith, and thou go to Hell
I will not forsake thee by the way!
Everyman:
I shall show you how it is;
Commanded I am to go on a journey,
A long way, hard and dangerous,
And give a strait count without delay
Before the high judge Adonai*. *God
Wherefore I pray you bear me company,
As ye have promised, in this journey.
Fellowship:
That is a matter indeed! Promise is duty,
But, and I should take such a voyage on me,
I know it well, it should be to my pain:
Everyman
Why, ye said, If I had need,
Ye would me never forsake, quick nor dead,
Though it were to hell truly.
Fellowship:
So I said, certainly,
But such pleasures be set aside, thee sooth to say. . . .
* * *
(ほかの友人たちも去る)
Knowledge:
Everyman, I will go with thee, and be thy guide,
In thy most need to go by thy side.
Strength:
. . . I, Strength, will by you stand in distress,
Though thou would in battle fight on the ground.
Five-wits:
And though it were through the world round,
We will not depart for sweet nor sour.
Beauty:
No more will I unto death’s hour,
Whatsoever thereof befall.
Everyman:
And now, friends, let us go without longer respite.
Discretion:
I, Discretion, will bide by you also.
Knowledge:
And though this pilgrimage be never so strong,
I will never part you fro:
Everyman:
Alas, I am so faint I may not stand,
My limbs under me do fold;
Friends, let us not turn again to this land,
Not for all the world’s gold,
For into this cave must I creep
And turn to the earth and there to sleep.
Beauty:
What into this grave? Alas!
Everyman:
Yea, there shall you consume more and less.
Beauty:
And what, should I smother here?
Everyman:
Yea, by my faith, and never more appear.
In this world live no more we shall,
But in heaven before the highest Lord of all.
Beauty:
I cross out all this; adieu. . . .
Strength:
Everyman, I will thee also forsake and deny;
Thy game liketh me not at all.
Everyman:
Why, then ye will forsake me all.
Sweet Strength, tarry a little space.
Strength:
Nay, sir, by thy rood of grace
I will hie me from thee fast,
Though thou weep till thy heart brast.
Everyman:
Ye would ever bide by me, ye said.
Strength:
I repent me that I hither came. . . .
Thou art but a fool to complain, . . .
Go thrust thee into the ground.
Discretion:
Everyman, I will after Strength be gone,
As for me I will leave you alone.
Everyman:
Why, Discretion, will ye forsake me?
Discretion:
Yea, in faith, I will go from thee,
For when Strength goeth before
I follow after evermore.
Five-wits:
Everyman, my leave now of thee I take;
I will follow the other, for here I thee forsake.
* * *
(Good-Deedsだけが残る)
Everyman:
O all thing faileth, save God alone;
Beauty, Strength, and Discretion;
For when Death bloweth his blast,
They all run from me full fast.
Good-Deeds:
Nay, Everyman, I will bide with thee,
I will not forsake thee indeed;
Thou shalt find me a good friend at need.
Everyman:
Gramercy, Good-Deeds; now may I true friends see;
They have forsaken me every one;
I loved them better than my Good-Deeds alone.
Knowledge, will ye forsake me also?
Knowledge:
Yea, Everyman, when ye to death do go;
But not yet for no manner of danger.
Everyman:
Gramercy, Knowledge, with all me heart. . . .
Methinketh, alas, that I must be gone,
To make my reckoning and my debts pay,
For I see my time is nigh spent away.
Take example, all ye that do hear or see,
How they that I loved best do forsake me,
Except my Good-Deeds that bideth truly.
Good-Deeds:
All earthly things is but vanity:
Beauty, Strength, and Discretion, do man forsake,
Foolish friends and kinsmen, that fair spake,
All fleeth save Good-Deeds, and that am I.
Everyman:
Have mercy on me, God, most mighty;
And stand by me, thou Mother and Maid, holy Mary.
(http://www.gutenberg.org/ebooks/19481)
* * *
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Daniel, "Pastoral"
サミュエル・ダニエル
「羊飼いの歌」
あの黄金の時代は楽しかったなあ!
別に、乳の川が
流れてたから、木から蜂蜜があふれてきてたから、じゃない。
なんにもしなくても大地が
農民に
実りをただでくれてたから、でもない。
冷たく凍えることがなかったから、
雲が出て
花咲く春がダメになったりしなかったから、でもない。
すべてのものがいきいきしていて、
いつも空がにこにこしてたから、でもない。
船が出ていって
よその国と戦争したり、略奪したりしなかったから、でもない。
そうじゃなく、あの言葉、
あのくだらない、馬鹿な言葉、
意味のないインチキなあの偶像、
あの〈純潔〉っていう
暴君が、まだ心を支配してなかったから、
なんの権利もないのにぼくらに拷問をかけたり
してなかったから、よかったんだ。
あいつがまだ悲しませたりしてなかったからよかったんだ。
陽気な恋人たちが
甘い時間を過ごしてるときに。
生まれながらにして自由な心は、あいつの掟なんて知らなかった。
あの頃には、人の本質にあった黄金の掟しかなかった。
たとえば、「楽しいことはみな合法」とか。
花と泉にかこまれて
楽しく遊び、
恋人たちはけんかなんかしなかった。心が炎に焼かれたりしなかった。
妖精の女の子たちも、羊飼いの男の子たちも歌ってた。
ちょっとエッチに楽しくみんな混ざりあって、
歌でささやいて、ささやきながらキスして、
みんながみんなを好きだった。
はじめての女の子も裸になって、
咲きはじめたバラのようにきれいなからだを見せてくれてた。
今ではヴェールで隠してしまうけど。
ふくらみかけた胸は若いリンゴのようだった。
透明な川のなか、
よく恋人たちはいっしょに遊んでた。
〈純潔〉ってやつが、そんな
楽しみの泉をふさぎやがった。
あいつのせいで、恋の渇きが水で癒されなくなった。
あいつのせいで、きれいな瞳から
光りと輝きが奪われてしまった。
男の子たちではなく自分を見るようになってしまった。
あいつが最初に女の子たちの
金色の髪を布に閉じこめてしまった。
それまでは風になびいて広がってたのに。
あいつのせいで、おおらかだったかわいい子が冷たくなった。
言葉をつつしむようになったり、歩きかたを気にするようになった。
なんてこった! 〈純潔〉の野郎! おまえのせいで
泥棒扱いされるようになったんだ。恋がただでくれてたものをもらうだけで!
おまえのせいでぼくらは
悲しみ、拷問にあえがなくちゃならなくなった。
人の本質や恋まで抑えつけるおまえなんて、
王の資質まで決めつけるおまえなんて、
ぼくらには関係ないだろ?
上の世界と縁がないぼくらなんて相手にする価値ないだろ?
だから行けよ、ぼくらの前から消えてくれよ。
偉い人たちを悩ませて、眠れなくしてればいいだろ。
卑しく、社会の隅でひっそり生きてるぼくらには、
おまえのお恵みなんていらないんだ。
昔みたいに楽しく幸せに生きていたいんだ。
さあ、恋をしよう。ぼくらのこの命は、
すべてを食い散らかす〈時間〉にいつも狙われてるんだから。
恋をしよう。太陽は沈んでもまた昇る。
でも、ぼくらの短い命の明かりが
一度沈んだら、あとは永遠の夜だから。
* * *
Samuel Daniel
"A Pastoral"
O happy, golden age!
Not for that rivers ran
With streams of milk, and honey dropped from trees;
Not that the earth did gage
Unto the husbandman
Her voluntary fruits, free without fees;
Not for no cold did freeze,
Nor any cloud beguile
Th'eternal flowering spring,
Wherein lived every thing,
And whereon th'heavens perpetually did smile;
Not for no ship had brought
From foreign shores or wars or wares ill sought.
But only for that name,
That idle name of wind,
That idol of deceit, that empty sound,
Called Honour, which became
The tyrant of the mind,
And so torments our nature without ground,
Was not yet vainly found;
Nor yet sad griefs imparts
Amidst the sweet delights
Of joyful, amorous wights;
Nor were his hard laws known to free-born hearts;
But golden laws like these
Which Nature wrote: "That's lawful, which doth please.'
Then amongst flowers and springs,
Making delightful sport,
Sat lovers without conflict, without flame;
And nymphs and shepherds sings,
Mixing in wanton sort
Whisperings with songs, then kisses with the same,
Which from affection came.
The naked virgin then
Her roses fresh reveals,
Which now her veil conceals,
The tender apples in her bosom seen;
And oft in rivers clear
The lovers with their loves consorting were.
Honour, thou first didst close
The spring of all delight,
Denying water to the amorous thirst;
Thou taught'st fair eyes to lose
The glory of their light,
Restrained from men, and on themselves reversed.
Thou in a lawn didst first
Those golden hairs incase,
Late spread unto the wind;
Thou madest loose grace unkind;
Gavest bridle to their words, art to their pace.
O Honour, it is thou
That makest that stealth, which Love doth free allow.
It is thy work that brings
Our griefs and torments thus.
But thou, fierce lord of Nature and of Love,
The qualifier of kings;
What dost thou here with us,
That are below thy power, shut from above?
Go, and from us remove;
Trouble the mighty's sleep;
Let us neglected, base,
Live still without thy grace,
And th'use of th'ancient happy ages keep.
Let's love; this life of ours
Can make no truce with Time that all devours.
Let's love; the sun doth set, and rise again;
But when as our short light
Comes once to set, it makes eternal night.
http://www.poetrynook.com/poem/pastoral-24
* * *
以下、ちょっとエッチでおもしろいからこの詩を訳したわけじゃない、
という自己弁護。(実際、ドキドキするほどエッチでもないし、
そういう意味でおもしろいわけでもない。)
むしろ、これがある意味でおもしろいのは、文学史的に
いろいろな要素の混交が見られるから。また、社会に対する
ある種のスタンスが見られるから。
この詩を構成しているもの(の例):
1
イチャイチャ的な(いけない)恋のお遊びを楽しげに描く
オウィディウスのエレジー集『恋の歌』(Amores)からの影響。
マーロウによるその英訳、ダンによるその翻案以来の流れ。
キーワードは "sport".
Jonson, ("Come, my Celia, let us prove") 参照。
エレジー:
「死を悲しむ詩」ではなく「エレゲイアという詩形で書かれた詩」
2
〈純潔〉(Honour)を暴君として描くシドニーの『アストロフィル』の
歌8の影響。
3
カトゥルス以来の「太陽は沈んでも昇る、でも……」のパターン。
カルペ・ディエムの定番フレーズ。
Jonson, ("Come, my Celia, let us prove") 参照。
4
ヘシオドス的な黄金時代賛美。
Cooke (tr.), Hesiod, Work and Days (1: 226-59)
Vaughan (tr.), Boethius, Consolation of Philosophy 2.5
など参照。
これらの思考の対立項は、この世の楽しみ・よろこび・幸せを
軽視・蔑視し、来世における幸せを重要視するキリスト教道徳。
性的にもこれはもちろん禁欲的。
カトリック:
理想は神と信者の結婚。人間同士の結婚は必要悪的な位置づけ。
「欲望に燃えるくらいなら結婚したほうがまし」 Better marry than burn.
(コリント人一、7:9)
プロテスタント:
人と人との結婚およびそこにおける性行為はすばらしいこと
--「生めよ、ふえよ、地に満ちよ」(創世記1:28)
結婚の外における恋愛等は禁止
--「姦淫するなかれ」(出エジプト記20:14)
これらのような聖典にもとづき、16世紀から17世紀前半にかけて
イギリスの聖職者たちは、姦淫・不倫を批判する説教をおこない、
また出版していた。
(その最たるものはエリザベス女王が刊行した公式説教集
Elizabethan Homiliesのなかの「姦淫禁止の説教」。)
つまり、古典を盾に恋の自由を歌う・謳うということは、
キリスト教的な、公式発表(建前)的な、「まじめ」な人たちの
価値観に対する、いわば「ノー」という回答だった、ということ。
このような意味で、文学史とは、そのまま社会史だったりする。
(そもそも文学以外の娯楽的活動が、かつてどれほどあったのか。)
* * *
この詩は、Delia初版(1592, STC 6243.2)に
所収されつつ(要確認)、第2版以降ではカット
されている(1592, 6243.3; 1594, 6243.4;
1595, 6243.5, 1598, 6243.6)。
内容的になにか支障があったということか。
上記マーロウ訳のオウィディウスも焼かれた(1599)。
* * *
学生の方など、自分の研究/発表のために上記を
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してください。
ウェブ上での引用などでしたら、リンクなどのみで
かまいません。
商用、盗用、悪用などはないようお願いします。
「羊飼いの歌」
あの黄金の時代は楽しかったなあ!
別に、乳の川が
流れてたから、木から蜂蜜があふれてきてたから、じゃない。
なんにもしなくても大地が
農民に
実りをただでくれてたから、でもない。
冷たく凍えることがなかったから、
雲が出て
花咲く春がダメになったりしなかったから、でもない。
すべてのものがいきいきしていて、
いつも空がにこにこしてたから、でもない。
船が出ていって
よその国と戦争したり、略奪したりしなかったから、でもない。
そうじゃなく、あの言葉、
あのくだらない、馬鹿な言葉、
意味のないインチキなあの偶像、
あの〈純潔〉っていう
暴君が、まだ心を支配してなかったから、
なんの権利もないのにぼくらに拷問をかけたり
してなかったから、よかったんだ。
あいつがまだ悲しませたりしてなかったからよかったんだ。
陽気な恋人たちが
甘い時間を過ごしてるときに。
生まれながらにして自由な心は、あいつの掟なんて知らなかった。
あの頃には、人の本質にあった黄金の掟しかなかった。
たとえば、「楽しいことはみな合法」とか。
花と泉にかこまれて
楽しく遊び、
恋人たちはけんかなんかしなかった。心が炎に焼かれたりしなかった。
妖精の女の子たちも、羊飼いの男の子たちも歌ってた。
ちょっとエッチに楽しくみんな混ざりあって、
歌でささやいて、ささやきながらキスして、
みんながみんなを好きだった。
はじめての女の子も裸になって、
咲きはじめたバラのようにきれいなからだを見せてくれてた。
今ではヴェールで隠してしまうけど。
ふくらみかけた胸は若いリンゴのようだった。
透明な川のなか、
よく恋人たちはいっしょに遊んでた。
〈純潔〉ってやつが、そんな
楽しみの泉をふさぎやがった。
あいつのせいで、恋の渇きが水で癒されなくなった。
あいつのせいで、きれいな瞳から
光りと輝きが奪われてしまった。
男の子たちではなく自分を見るようになってしまった。
あいつが最初に女の子たちの
金色の髪を布に閉じこめてしまった。
それまでは風になびいて広がってたのに。
あいつのせいで、おおらかだったかわいい子が冷たくなった。
言葉をつつしむようになったり、歩きかたを気にするようになった。
なんてこった! 〈純潔〉の野郎! おまえのせいで
泥棒扱いされるようになったんだ。恋がただでくれてたものをもらうだけで!
おまえのせいでぼくらは
悲しみ、拷問にあえがなくちゃならなくなった。
人の本質や恋まで抑えつけるおまえなんて、
王の資質まで決めつけるおまえなんて、
ぼくらには関係ないだろ?
上の世界と縁がないぼくらなんて相手にする価値ないだろ?
だから行けよ、ぼくらの前から消えてくれよ。
偉い人たちを悩ませて、眠れなくしてればいいだろ。
卑しく、社会の隅でひっそり生きてるぼくらには、
おまえのお恵みなんていらないんだ。
昔みたいに楽しく幸せに生きていたいんだ。
さあ、恋をしよう。ぼくらのこの命は、
すべてを食い散らかす〈時間〉にいつも狙われてるんだから。
恋をしよう。太陽は沈んでもまた昇る。
でも、ぼくらの短い命の明かりが
一度沈んだら、あとは永遠の夜だから。
* * *
Samuel Daniel
"A Pastoral"
O happy, golden age!
Not for that rivers ran
With streams of milk, and honey dropped from trees;
Not that the earth did gage
Unto the husbandman
Her voluntary fruits, free without fees;
Not for no cold did freeze,
Nor any cloud beguile
Th'eternal flowering spring,
Wherein lived every thing,
And whereon th'heavens perpetually did smile;
Not for no ship had brought
From foreign shores or wars or wares ill sought.
But only for that name,
That idle name of wind,
That idol of deceit, that empty sound,
Called Honour, which became
The tyrant of the mind,
And so torments our nature without ground,
Was not yet vainly found;
Nor yet sad griefs imparts
Amidst the sweet delights
Of joyful, amorous wights;
Nor were his hard laws known to free-born hearts;
But golden laws like these
Which Nature wrote: "That's lawful, which doth please.'
Then amongst flowers and springs,
Making delightful sport,
Sat lovers without conflict, without flame;
And nymphs and shepherds sings,
Mixing in wanton sort
Whisperings with songs, then kisses with the same,
Which from affection came.
The naked virgin then
Her roses fresh reveals,
Which now her veil conceals,
The tender apples in her bosom seen;
And oft in rivers clear
The lovers with their loves consorting were.
Honour, thou first didst close
The spring of all delight,
Denying water to the amorous thirst;
Thou taught'st fair eyes to lose
The glory of their light,
Restrained from men, and on themselves reversed.
Thou in a lawn didst first
Those golden hairs incase,
Late spread unto the wind;
Thou madest loose grace unkind;
Gavest bridle to their words, art to their pace.
O Honour, it is thou
That makest that stealth, which Love doth free allow.
It is thy work that brings
Our griefs and torments thus.
But thou, fierce lord of Nature and of Love,
The qualifier of kings;
What dost thou here with us,
That are below thy power, shut from above?
Go, and from us remove;
Trouble the mighty's sleep;
Let us neglected, base,
Live still without thy grace,
And th'use of th'ancient happy ages keep.
Let's love; this life of ours
Can make no truce with Time that all devours.
Let's love; the sun doth set, and rise again;
But when as our short light
Comes once to set, it makes eternal night.
http://www.poetrynook.com/poem/pastoral-24
* * *
以下、ちょっとエッチでおもしろいからこの詩を訳したわけじゃない、
という自己弁護。(実際、ドキドキするほどエッチでもないし、
そういう意味でおもしろいわけでもない。)
むしろ、これがある意味でおもしろいのは、文学史的に
いろいろな要素の混交が見られるから。また、社会に対する
ある種のスタンスが見られるから。
この詩を構成しているもの(の例):
1
イチャイチャ的な(いけない)恋のお遊びを楽しげに描く
オウィディウスのエレジー集『恋の歌』(Amores)からの影響。
マーロウによるその英訳、ダンによるその翻案以来の流れ。
キーワードは "sport".
Jonson, ("Come, my Celia, let us prove") 参照。
エレジー:
「死を悲しむ詩」ではなく「エレゲイアという詩形で書かれた詩」
2
〈純潔〉(Honour)を暴君として描くシドニーの『アストロフィル』の
歌8の影響。
3
カトゥルス以来の「太陽は沈んでも昇る、でも……」のパターン。
カルペ・ディエムの定番フレーズ。
Jonson, ("Come, my Celia, let us prove") 参照。
4
ヘシオドス的な黄金時代賛美。
Cooke (tr.), Hesiod, Work and Days (1: 226-59)
Vaughan (tr.), Boethius, Consolation of Philosophy 2.5
など参照。
これらの思考の対立項は、この世の楽しみ・よろこび・幸せを
軽視・蔑視し、来世における幸せを重要視するキリスト教道徳。
性的にもこれはもちろん禁欲的。
カトリック:
理想は神と信者の結婚。人間同士の結婚は必要悪的な位置づけ。
「欲望に燃えるくらいなら結婚したほうがまし」 Better marry than burn.
(コリント人一、7:9)
プロテスタント:
人と人との結婚およびそこにおける性行為はすばらしいこと
--「生めよ、ふえよ、地に満ちよ」(創世記1:28)
結婚の外における恋愛等は禁止
--「姦淫するなかれ」(出エジプト記20:14)
これらのような聖典にもとづき、16世紀から17世紀前半にかけて
イギリスの聖職者たちは、姦淫・不倫を批判する説教をおこない、
また出版していた。
(その最たるものはエリザベス女王が刊行した公式説教集
Elizabethan Homiliesのなかの「姦淫禁止の説教」。)
つまり、古典を盾に恋の自由を歌う・謳うということは、
キリスト教的な、公式発表(建前)的な、「まじめ」な人たちの
価値観に対する、いわば「ノー」という回答だった、ということ。
このような意味で、文学史とは、そのまま社会史だったりする。
(そもそも文学以外の娯楽的活動が、かつてどれほどあったのか。)
* * *
この詩は、Delia初版(1592, STC 6243.2)に
所収されつつ(要確認)、第2版以降ではカット
されている(1592, 6243.3; 1594, 6243.4;
1595, 6243.5, 1598, 6243.6)。
内容的になにか支障があったということか。
上記マーロウ訳のオウィディウスも焼かれた(1599)。
* * *
学生の方など、自分の研究/発表のために上記を
参照する際には、このサイトの作者、タイトル、URL,
閲覧日など必要な事項を必ず記し、剽窃行為のないように
してください。
ウェブ上での引用などでしたら、リンクなどのみで
かまいません。
商用、盗用、悪用などはないようお願いします。
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From Lord Byron, Manfred
バイロン卿ジョージ・ゴードン
『マンフレッド』より
油、足すか……ランプなんて
見つめてたらまた消えちまうけどな。
うとうとするけど眠れない。
終わらない、苦しい思いが夢でもつづきやがる。
もう逃げられない……。
心はいつも徹夜……目を閉じても、
心が目覚めてる。こんな状態でもまだ生きてるなんてな、
ふつうの人みたいな顔してさ。
賢い奴はつらいときに学ぶ。
知恵ってのは悲しみのこと、知れば知るほど
悲しいんだ。真理までわかっちまうからな、
知恵の木は命の木じゃない、とかさ。
哲学と科学--はかり知れぬことの泉、
この世の叡智--いまやみんな俺のものだ。
今、俺の頭脳がこいつらすべてを支配してる。
でも、それで何かいいことあるか? ないな。
俺は人のためにいいことをしてきた。
俺にいいことをしてくれる人もいた。
でも、それで何か変わったか? 変わらなかったよな。
敵もいたな。
眼中になかったし、みんな倒してやった。
それで何か変わったか? 全然だよな。
善と悪、命、力や権力、どうしようもなく強い思い……
こんなものなんてさ、俺にとっちゃ
砂にしみこんで消える雨と同じだよな。
言葉にならない、あのことがあってから……
もう怖いものなんてない……
呪い、ってやつだ。恐れも、
胸が高鳴ることも、希望も願いも、
待ち伏せされたみたいに、この世のものに
ふと愛を感じることも、もうなくなっちまった……
まあいいや、仕事、仕事……
(1.1.1-28)
……眠ってるときの俺を見てくれ。
いやむしろ、眠れない夜の俺を、だな。
隣に来てすわっててくれよ。
俺はひとりでいてもひとりじゃない。
復讐の女神たちに囲まれてんだ。闇のなか、
歯ぎしりしながら朝を待つだけなんだ。
で、朝が来たら来たで、日が沈むまで自分を恨む、ってな。
いっそ狂っちまったらしあわせなんだろうが、
そうはうまくはいかないんだな。死のうかとも思ったが、
水が俺から逃げてくんだ。ふつうの奴なら死ぬような
ことをしても、俺には効かないんだ。
たぶんな、慈悲のない悪霊か何かがいて、
俺を死なせないようにしてやがる。髪の毛一本で
俺をこの世に引きずり戻すんだ。そんな毛なんて、
ふつうだったら、プチってすぐに切れちまうはずなんだけどな。
想像・妄想、あふれるような意識の流れ--
それで俺はリディアのクロイソス王の財宝なみに
いろいろたくさん書いてきたわけだけどさ--そんなかに
飛びこんで、深くもぐって、溺れちまいたいぜ。
でもさ、引き潮で岸につき返されるみたいな感じでさ、
いつもそのまま、逆にさ、底なしの淵みたいな
物思いに突き落とされるんだ。
人の波に飛びこんだりもしたな。過去を忘れるために
あらゆるところに首をつっこんだ。でもダメだった。
で、わかったんだ。俺の知恵とかさ、
俺が極めてきた魔術でもさ、できないことがある、
限界がある、ってな。永遠なのは俺の絶望のほうだ。
俺は絶望のなか、永遠に生きなきゃならないんだ。
(2.2.128-150)
* * *
George Gordon, Lord Byron
From Manfred
The lamp must be replenished, but even then
It will not burn so long as I must watch:
My slumbers---if I slumber---are not sleep,
But a continuance, of enduring thought,
Which then I can resist not: in my heart
There is a vigil, and these eyes but close
To look within; and yet I live, and bear
The aspect and the form of breathing men.
But Grief should be the Instructor of the wise;
Sorrow is Knowledge: they who know the most [10]
Must mourn the deepest o'er the fatal truth,
The Tree of Knowledge is not that of Life.
Philosophy and science, and the springs
Of Wonder, and the wisdom of the World,
I have essayed, and in my mind there is
A power to make these subject to itself---
But they avail not: I have done men good,
And I have met with good even among men---
But this availed not: I have had my foes,
And none have baffled, many fallen before me--- [20]
But this availed not:---Good---or evil---life---
Powers, passions---all I see in other beings,
Have been to me as rain unto the sands,
Since that all-nameless hour. I have no dread,
And feel the curse to have no natural fear,
Nor fluttering throb, that beats with hopes or wishes,
Or lurking love of something on the earth.
Now to my task.---
(1.1.1-28)
. . . look on me in my sleep,
Or watch my watchings---Come and sit by me!
My solitude is solitude no more,[130]
But peopled with the Furies;---I have gnashed
My teeth in darkness till returning morn,
Then cursed myself till sunset;---I have prayed
For madness as a blessing---'tis denied me.
I have affronted Death---but in the war
Of elements the waters shrunk from me,
And fatal things passed harmless; the cold hand
Of an all-pitiless Demon held me back,
Back by a single hair, which would not break.
In Fantasy, Imagination, all [140]
The affluence of my soul---which one day was
A Croesus in creation---I plunged deep,
But, like an ebbing wave, it dashed me back
Into the gulf of my unfathomed thought.
I plunged amidst Mankind---Forgetfulness
I sought in all, save where 'tis to be found---
And that I have to learn---my Sciences,
My long pursued and superhuman art,
Is mortal here: I dwell in my despair---
And live---and live for ever. [150]
(2.2.128-150)
* * *
こういうことを書いていいのはバイロンだけ。
* * *
英語テクストは次のページから。
http://www.gutenberg.org/ebooks/20158
日本語訳では自由に改行し、自由にスタンザにわけている。
思うにブランク・ヴァース=弱強五歩格無韻詩とは、
自由詩以前の自由詩のひとつ。もうひとつはオード。
* * *
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閲覧日など必要な事項を必ず記し、剽窃行為のないように
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かまいません。
商用、盗用、悪用などはないようお願いします。
『マンフレッド』より
油、足すか……ランプなんて
見つめてたらまた消えちまうけどな。
うとうとするけど眠れない。
終わらない、苦しい思いが夢でもつづきやがる。
もう逃げられない……。
心はいつも徹夜……目を閉じても、
心が目覚めてる。こんな状態でもまだ生きてるなんてな、
ふつうの人みたいな顔してさ。
賢い奴はつらいときに学ぶ。
知恵ってのは悲しみのこと、知れば知るほど
悲しいんだ。真理までわかっちまうからな、
知恵の木は命の木じゃない、とかさ。
哲学と科学--はかり知れぬことの泉、
この世の叡智--いまやみんな俺のものだ。
今、俺の頭脳がこいつらすべてを支配してる。
でも、それで何かいいことあるか? ないな。
俺は人のためにいいことをしてきた。
俺にいいことをしてくれる人もいた。
でも、それで何か変わったか? 変わらなかったよな。
敵もいたな。
眼中になかったし、みんな倒してやった。
それで何か変わったか? 全然だよな。
善と悪、命、力や権力、どうしようもなく強い思い……
こんなものなんてさ、俺にとっちゃ
砂にしみこんで消える雨と同じだよな。
言葉にならない、あのことがあってから……
もう怖いものなんてない……
呪い、ってやつだ。恐れも、
胸が高鳴ることも、希望も願いも、
待ち伏せされたみたいに、この世のものに
ふと愛を感じることも、もうなくなっちまった……
まあいいや、仕事、仕事……
(1.1.1-28)
……眠ってるときの俺を見てくれ。
いやむしろ、眠れない夜の俺を、だな。
隣に来てすわっててくれよ。
俺はひとりでいてもひとりじゃない。
復讐の女神たちに囲まれてんだ。闇のなか、
歯ぎしりしながら朝を待つだけなんだ。
で、朝が来たら来たで、日が沈むまで自分を恨む、ってな。
いっそ狂っちまったらしあわせなんだろうが、
そうはうまくはいかないんだな。死のうかとも思ったが、
水が俺から逃げてくんだ。ふつうの奴なら死ぬような
ことをしても、俺には効かないんだ。
たぶんな、慈悲のない悪霊か何かがいて、
俺を死なせないようにしてやがる。髪の毛一本で
俺をこの世に引きずり戻すんだ。そんな毛なんて、
ふつうだったら、プチってすぐに切れちまうはずなんだけどな。
想像・妄想、あふれるような意識の流れ--
それで俺はリディアのクロイソス王の財宝なみに
いろいろたくさん書いてきたわけだけどさ--そんなかに
飛びこんで、深くもぐって、溺れちまいたいぜ。
でもさ、引き潮で岸につき返されるみたいな感じでさ、
いつもそのまま、逆にさ、底なしの淵みたいな
物思いに突き落とされるんだ。
人の波に飛びこんだりもしたな。過去を忘れるために
あらゆるところに首をつっこんだ。でもダメだった。
で、わかったんだ。俺の知恵とかさ、
俺が極めてきた魔術でもさ、できないことがある、
限界がある、ってな。永遠なのは俺の絶望のほうだ。
俺は絶望のなか、永遠に生きなきゃならないんだ。
(2.2.128-150)
* * *
George Gordon, Lord Byron
From Manfred
The lamp must be replenished, but even then
It will not burn so long as I must watch:
My slumbers---if I slumber---are not sleep,
But a continuance, of enduring thought,
Which then I can resist not: in my heart
There is a vigil, and these eyes but close
To look within; and yet I live, and bear
The aspect and the form of breathing men.
But Grief should be the Instructor of the wise;
Sorrow is Knowledge: they who know the most [10]
Must mourn the deepest o'er the fatal truth,
The Tree of Knowledge is not that of Life.
Philosophy and science, and the springs
Of Wonder, and the wisdom of the World,
I have essayed, and in my mind there is
A power to make these subject to itself---
But they avail not: I have done men good,
And I have met with good even among men---
But this availed not: I have had my foes,
And none have baffled, many fallen before me--- [20]
But this availed not:---Good---or evil---life---
Powers, passions---all I see in other beings,
Have been to me as rain unto the sands,
Since that all-nameless hour. I have no dread,
And feel the curse to have no natural fear,
Nor fluttering throb, that beats with hopes or wishes,
Or lurking love of something on the earth.
Now to my task.---
(1.1.1-28)
. . . look on me in my sleep,
Or watch my watchings---Come and sit by me!
My solitude is solitude no more,[130]
But peopled with the Furies;---I have gnashed
My teeth in darkness till returning morn,
Then cursed myself till sunset;---I have prayed
For madness as a blessing---'tis denied me.
I have affronted Death---but in the war
Of elements the waters shrunk from me,
And fatal things passed harmless; the cold hand
Of an all-pitiless Demon held me back,
Back by a single hair, which would not break.
In Fantasy, Imagination, all [140]
The affluence of my soul---which one day was
A Croesus in creation---I plunged deep,
But, like an ebbing wave, it dashed me back
Into the gulf of my unfathomed thought.
I plunged amidst Mankind---Forgetfulness
I sought in all, save where 'tis to be found---
And that I have to learn---my Sciences,
My long pursued and superhuman art,
Is mortal here: I dwell in my despair---
And live---and live for ever. [150]
(2.2.128-150)
* * *
こういうことを書いていいのはバイロンだけ。
* * *
英語テクストは次のページから。
http://www.gutenberg.org/ebooks/20158
日本語訳では自由に改行し、自由にスタンザにわけている。
思うにブランク・ヴァース=弱強五歩格無韻詩とは、
自由詩以前の自由詩のひとつ。もうひとつはオード。
* * *
学生の方など、自分の研究/発表のために上記を
参照する際には、このサイトの作者、タイトル、URL,
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