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渡辺信二 「花の精」ほか

渡辺信二
「花の精」ほか

2018年2月9日、フェリスにおける渡辺信二さんの最終講義にて、
信二さんの詩5篇に曲をつけて朗読するというパフォーマンスをした。
詩を選び、読んだのは学生たちで、曲と演奏は私と音楽学部の
川本聡胤さんが担当した。演奏には文学部事務の都倉麻乃さん
(フェリス音楽学部卒)にも一部参加していただいた。
https://tinyurl.com/yce76qgz

後日、川本さんからの提案で、同じ5篇の朗読・演奏を
スタジオであらためて録音した。朗読は、上の最終講義全体の
企画者であった文学部の由井哲哉さん(専門はイギリス演劇)
と都倉さんが担当。 中年・老年男性の詩を由井さんが、
女性的・中性的な詩を都倉さんが読んだ。ギター2本は
一発録りで、その上に朗読とピアノを重ねた。

以下、信二さんご許可の下、これらの詩と曲をご紹介。

曲つきの詩の朗読、歪んだエレキ・ギターとクラシック・
ギターのスタジオ・ライヴ、などというあまり例のない形式
について、また時系列的・物語的に偶然--本当に偶然--
まとまった内容について、曲・演奏担当一同、とても
誇らしく思っている。

また、上記最終講義当日のパフォーマンスのために、
作品によって数日から10日程度の時間で朗読を
完璧に仕上げてくれた信二さんのゼミの学生たちに
心からの感謝を捧げたい。みなとても頼もしく、
教員として幸せに感じたひと時であった。

*****
1. 家出未遂

小学校3年生のとき 家出した
母の叱り方が理不尽だったから
明日から学校に行かなくても平気
3か月くらい本を読まなくても平気
3年くらい人と話さなくても平気
暗くなっても平気だった
何でも平気だった
ラーメン屋の屋台の匂いだって
平気だったけど
歩き疲れるとお菓子屋の裸電球がゆらゆら揺れて
商品棚のアンパンが美味そうに見える
遠くから味噌汁が匂ってくると
知らない家でも上がり込みたいと思う
由美ちゃんちの玄関で
かがんでカギ穴を覗くと
ちょうどあの階段で 由美ちゃんが
お休みなさいと言っていた
暗い神社の境内 手水で喉を潤す
ここではよく 隠れん坊をした
いっそずうっと隠れて姿を現さなきゃよかった
だから おれが帰ったんじゃない
空腹がおれを連れ帰ったんだ
うちの晩ご飯が済んだかどうか
知りたかっただけだ
うちは 平屋建ての市場につながる
狭い6畳の部屋 家族5人の家だった
家? 確かに 家だったのか?
背伸びして窓から中を覗くと
父が遅い晩飯だった
母が正座して お櫃から茶碗に
ご飯をついでいた
膝の上には縫い物が見えた
弟たちは 既に蒲団で寝ている
自然な家族の夜の姿
おれがいなくても 自然なのだ
けっきょく おれは
窓ガラスをこつこつと叩いた
父を迎えに 遠くの駅まで歩いて行ったので
こんなに遅くなったのだと嘘をついた
それから がむしゃらに空腹を満たす
味など分からなかった昭和33年の夏だった

だが今考えるなら
あれは 未遂ではなかった
あの時から 誰を 何を
迎えに行くのか 知り始めたのだから

- 詩誌『立彩』10号

https://tinyurl.com/ycuplct2

曲:川本聡胤
朗読:由井哲哉
ギター:川本聡胤、冨樫剛

*****
2. シャボン玉から 

わたしは シャボン玉
悲しみが ゆっくり膨らむように
だいじに空に浮かびましょう
表面張力と風の微妙なバランス
たゆたう5秒間

そして 弾ける

でも 弾けるのは わたしではない
青い空 白い雲 あなたがたの夢
もしも弾けるのが 
あなたがたの胸の中なら
そこに穴を開けましょう

だけど わたしは シャボン玉
わたしが弾ける時は 何もない空の下
探しても探しても 誰の胸も見つかりません

- 詩誌『立彩』11号

https://tinyurl.com/y8rsp9zg

曲:冨樫剛
朗読:由井哲哉
ギター:川本聡胤、冨樫剛

*****
3. 今日この頃は  

今日この頃は やけに霧が多い
通勤の朝 歩道を歩いていても
目的を見失って彷徨っているようで
どの樹も孤独 どの家も寂しい
不意に 歩行者とぶつかりそうになる

去年までは すれ違うたびに
「おはよう」と明るかったのに
今はみな 不思議な笑いようをして
姿を消してゆく 言葉も消えてゆく

先の見えない不安 
先の読めない不安
それでも 先人の歩みを知る限り
覚悟はできる と呟く

- 詩誌『立彩』12号

https://tinyurl.com/y7hy7qbu

曲:冨樫剛
朗読:由井哲哉
歌:都倉麻乃
ギター:冨樫剛

*****
4. わがひとに与える挽歌

もしもおれたち 余命2年と言われたなら
18階建てマンション最上階の
南東角部屋に引越して
朝日を毎日 2人で迎えよう

見張らせば 遠くに 
凹凸の地平線が広がり
親と暮らした年月よりも
おれたち 一緒に暮らした年月が
すでに もう 17年も長いから

部屋の壁には おまえとおれの写真を
たくさん鋲で飾ろう
楽しいだけじゃない
辛くて苦しい思い出がずうっと多いが

それも おれたちの生きてきた
懐かしい大事な1コマひとコマだから
陽光をリビングいっぱいに広げ
ひがな1日 写真を眺めていよう

そして 定めの時が来れば
2人 手を繋ぎ このヴェランダから
番いの小鳥のように
潔く 晴れた空へと飛び立とう

悔いはない と言えば 嘘だ
来世で会おう も 実現できるかどうか
今はただ 手を繋ぐ この世のかたさをよすがに
晴れた空 遍く太陽に 魂を委ねる

- 詩誌『立彩』11号

https://tinyurl.com/ybgu6p92

曲:川本聡胤
朗読:由井哲哉
ギター:川本聡胤、冨樫剛

*****
5. 花の精

おれは二度 
花の精を見た  
「あと6ヶ月」と診断された病院からの帰り道
おまえを正視できずに 
メトロの窓ガラスに映る姿を盗み見た

そのとき おまえは ほの暗いガラスを背景にして 
まるで 古代ローマ女性のテュニカ姿で 
ぼんやり白く青く ふわりと浮かぶ妖精だった  
首元がぽつんと赤かった

二度目は 花に埋まった死化粧のおまえに
白くて青い姿が 重なるように
ふわりと浮かんでいた
赤い口紅を差した唇は 今にも花開きそうだった

おれは もう一度 
あのメトロに乗って時間をさかのぼりたい
あれは花の精を乗せたまま
今でもごうごうと 暗闇を突き進んでいるのだろうか

- 渡辺信二『アシャーの湖』(松柏社、2015)
http://www.shohakusha.com/detail.php?id=a9784775402276

https://tinyurl.com/yaw5e7fg

曲:冨樫剛
朗読:由井哲哉
ピアノ:都倉麻乃
ギター:川本聡胤、冨樫剛

*****
録音協力:ミュージックスクール M-Bank
エンジニア:寺内克久

上の音は冨樫編集版。一部未完成。
後日、川本さん編集による完成版を公開予定。

*****
このような機会を与えてくれた信二さんと
信二さんの作品にあらためて心からの感謝を。

いろいろなめぐりあわせに驚きと感謝を。

*****
著作権はそれぞれ作者・出版社が保持。


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BGM

BGM


小さめの音で--

Augusta
https://tinyurl.com/y974ndcv
(冨樫)

Jane, gtr
https://tinyurl.com/ybm8bena
(冨樫)

Claribel
https://tinyurl.com/yasgyety
(冨樫)

Faustus (1000 ships)
https://tinyurl.com/ya62c7a4
https://tinyurl.com/y8kkx3ez w/voice
(冨樫)

RJ (Sonnet)
https://tinyurl.com/ybp9uf9x
(冨樫)

Verona
https://tinyurl.com/ybp6coot
(冨樫/川本)

PL9
https://tinyurl.com/y99q7f6r
https://tinyurl.com/ybr4mc52 (ver. 2)
(冨樫)

*****
ギター、声:冨樫

*****
盗用・商用・悪用以外でしたら好きにしてください。


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涙の理由は片思い

涙の理由(わけ)は片思い

1
あふれる悲しみ
あふれる悔しさ
ものにも人にも世界にも
あふれる思い届かない

痺れる色と絵
痺れる音と歌
返事はない
痺れる思い届かない

思わず涙が出るのは
気持ちが伝わらない時
無力を思い知る時
それはつまり片思い

思わず涙が出るのは
思いが伝わらない時
ひとりを思い知る時
それはつまり片思い

2
はじける喜び
はじける嬉しさ
ものにも人にも世界にも
はじける思い届かない

大好きな人
大好きな人たち
去っていく
大好きな思い届かない

思わず涙が出るのは
気持ちが伝わらない時
無力を思い知る時
それはつまり片思い

思わず涙が出るのは
思いが伝わらない時
ひとりを思い知る時
それはつまり片思い

*****
20180331
20180407

*****
盗用・商用・悪用以外でしたら、好きにしてください。


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霜の降りた朝に

霜の降りた朝に


灰色の風--夢--
虹色の町--幻--

灰色の花--夢--
虹色の鳥--幻--

霜の降りた朝に
君を誘い出す
灰色、虹色の
道へ

ほら
二人の声
空に踊る

踊る
木の葉のささやき
鈴の歌

歌おう
掻き消そう、昨日
悲しかったこと

言葉のない歌
空踊る
消える

君の歌--夢--
君の歌--幻--

*****
1991?
2005?
20120113
20180219-302
20180721

*****
盗用・商用・悪用以外でしたら、好きにしてください。


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君の翼

君の翼

君の翼
どんな色
どんなかたち

空高く飛びたい
虹の色
かたちは夢

君の翼
花の色
かたちは歌

空遠く舞いたい
愛の色
かたちは朝

1.
向かい風、雨の壁、すれちがいと裏切り
上を向け、声を出せ、歩き出せ、その次に

羽ばたけ
嵐つきぬけて

羽ばたけ
涙つきぬけて

2.
闇の誘い、凍る道、嘘と妬みと絶望
前を向け、立ちあがれ、背伸びしろ、その次に

羽ばたけ
地獄つきぬけて

羽ばたけ
痛みつきぬけて

羽ばたけ
嵐つきぬけて

羽ばたけ
涙つきぬけて

*****
1990
20180204-12

*****
盗用・商用・悪用以外でしたら、好きにしてください。


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1
菫(すみれ)淡く
百合清く
薔薇眩(まばゆ)く
向日葵(ひまわり)強く
笑い歌い舞い、背伸びする

夢生まれ
夢走り
夢追われ
夢迷う
夢の日々、日々という夢

花褪(あ)せる、花は散る
夢褪せる、夢は散る

2
闇の夢
夢の海
川の夢
夢の道
夢から覚めた夢から覚められない

猫無邪気に
鹿軽く
獅子威張り
馬静かに
遊び逃げ戦い、旅をする

花は散る、花染める、雨の道
夢は散る、夢染める、朝の道

夢褪せる、夢は散る、夢染める

*****
1990?
20180114-21
20180221
20180713

*****
盗用・商用・悪用以外でしたら、好きにしてください。


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道徳恐怖政治

道徳恐怖政治

1
道徳恐怖政治
狂乱正義乱舞
倫理暴走教義
叫喚清廉私刑

真善美愛可消
幸安楽喜可滅
優慰恵慈可葬

吾律故吾有哉
吾禁故吾有哉
吾罰故吾有哉

2
道徳恐怖政治
狂乱正義乱舞
倫理暴走教義
叫喚清廉私刑

緑遊揺草可踏
虹夢歌空可汚
恋艶悦花可枯

吾責故吾有哉
吾罵故吾有哉
吾潰故吾有哉
吾馘故吾有哉

*****
(別篇)

1
道徳恐怖政治
狂乱正義乱舞
倫理暴走教義
叫喚清廉私刑

真善美可消失
幸安楽可死滅
愛慰優可亡葬

吾律故吾有哉
吾禁故吾有哉
吾罰故吾有哉

2
道徳恐怖政治
狂乱正義乱舞
倫理暴走教義
叫喚清廉私刑

緑遊草可踏倒
虹夢空可汚濁
恋艶花可枯散

吾責故吾有哉
吾罵故吾有哉
吾潰故吾有哉
吾馘故吾有哉

*****
似非漢文犯区
穴開家

*****
20170804-13

*****
盗用・商用・悪用以外でしたら、好きにしてください。


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まちがいさがし

まちがいさがし


違いは どこに いくつ ある?
どこに いくつ ある?
いくつ ある?
ある?


1
罪と違反
罪と逸脱
罪と過失
罪と悪癖
罪と悪戯

2
正義と道理
正義と批判
正義と攻撃
正義と傲慢

3
正義と義務
正義と仕事
正義と遊戯

4
正義と報復
正義と抑圧
正義と苛め
正義と破壊

5
正義と真理
正義と美
正義と自然
正義と知恵
正義と利害

6
「かわいい」と「好き」
「好き」と恋
恋と「あれ」
「あれ」と結婚
結婚と愛
愛と幸せ

7
能力と運
能力と結果
能力と評価
能力と地位
能力と富
能力と人格
能力と幸せ

8
人生と夢

9
夢と幸せ
理想と幸せ
希望と幸せ
目標と幸せ
現実と幸せ


こたえは あなたの こころの どこかに
あなたの こころの どこかに
こころの どこかに
どこかに


*****
20170225

*****
盗用・商用・悪用以外でしたら、好きにしてください。

(もちろん、ふつうの言葉そのものは
わたしのものではありません。)


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二十歳のソネット(フェリス、2016)

二十歳のソネット(フェリス、2016)

以下、30分でソネットをつくる、という
演習の学生作品より。若干加筆修正有。

ルールは次のとおり:
- 14行
- 8+6, 12+2 などの形式遵守・無視は自由
- 脚韻等不要
- 内容自由

*****
1.(いつも水槽で浮かんでいるだけのあなたは)

いつも水槽で浮かんでいるだけのあなたは
退屈ではないのだろうか
苦しくないのだろうか
ふわふわ流れに身を任せているだけで

目もよく見えず、耳なんてあるのかもわからない
だからこそあなたはとても敏感
少し触れただけですぐに相手を傷つける
まるで触るなと言っているかのように

時々そんなあなたがとても羨ましくなる
何も考えず、ふわふわ漂っているだけで
素敵な名前がつけられるのだから

いつか見たあなたの姿は
まさにその名前にぴったりだった
海に浮かぶ月なんて

Y. K.

*****
2.(なぜあなたの目に多くのもののが映るのだろう)

なぜあなたの目に多くのもののが映るのだろう
美しいもの汚いもの、すべてなくなればいい
わたしだけを除いて
わたしだっていろんなものを見て目移りする
世界には誘惑がたくさんあるから
でもわたしにはあなただけ、だから変えてしまおう
わたしの目に映る男は草になってしまえ
あなたの目に映る女は花になってしまえ

ほらね、素敵でしょう
草原にいるあなたと
お花畑にいるわたし
こうすればきっと本当の意味であなただけ
こうすればきっとあなたはわたしだけを見る
素敵でしょう

A. T.

*****
3.(そこにあるのは紅一色)

そこにあるのは紅一色
海の青と草原の緑を背に
君は輝いている
君を手に入れるために
矢を使えば傷つけてしまう
君を手に入れるために
木を揺さぶれば熟す前に落ちてしまう
ぼくには君とつながる手段がない

ぼくと君がいっしょになれる世界は
いったいどこにあるのだろう
思うにそれは存在しない
思うにそれは「死」だ
ぼくが君を手に入れられるのは
君が熟して地に落ちてきたときだけだ

S. S.

*****
4.(平和とは何なのだろうか)

平和とは何なのだろうか。
人と仲よくすること、けんかをしないこと……
様々な考え方があるだろう。

しかし今日もどこかで争いが起きている。
平和を目指すにはどうすればよいか。
人々が仲良くできるように手助けをする。

ではどのようにして手助けをするか。
まず、自分の考えを押し通せるほどの強さを手に入れる。
その強さとはどのようにして手に入れるのか。

強さをわかりやすく示すのは争いにおける勝利だ。
そうだ。結局、争わなけれ平和は目指せない。
完全なる和睦など存在しないのだ。

平和とは何なのだろうか。
今日もどこかで争いが起こる。

T. N.

*****
5.(君はひまわりが好きかい)

君はひまわりが好きかい。
僕は、太陽の光を一身に受け、
それに向かって手をのばすひまわりが
大好きだ。

私はひまわりがきらい。
太陽からの期待に応えるように
つねに上を向いて笑ってるようで、
無理してる少女みたい。

一緒に歩いた田舎道、
ひまわりを見た君の笑顔は
つくりものじゃなかったよ。

あなたは知らない。
あのひまわりはもういない。
種を落として消えてった。

S. S.

*****
6.(あれも欲しい、これも欲しい)

あれも欲しい、これも欲しい
世の中はたくさんのものであふれている
ちょっと、そこの彼女、私を見ておくれ
私はあなたと仲良くなれる
ちょっと、そこの彼女、僕を見ておくれ
僕はあなたと一緒にいたい
たくさんのものがわたしを呼んでいる
わたしも君らと仲良くなりたいけど、ひとりしか選べない。
ふたりとも、わたしに選ばれたいなら何かアピールせよ!
私はあなたを幸せにする
僕は彼女より価値が落ちるけど
それこそが僕のアピールポイントだ!
わたしは、「僕」、君を選ぶよ!
お財布にやさしい君が好きだ。

A. K.

*****
7.(今、私は深い海の中にいる)

今、私は深い海の中にいる。
私が目指すところは地上で、地上には私の糧がある。
だけど上に泳いでも泳いでも目の前には水。
早く地上に行かないと息が切れて死んでしまう。

あなたはきっと私とは違う地上の世界で幸せに生きているのだろう。
私はあなたに会いたくて必死に泳いでいるのに、
溺れかけているのに、あなたは助けようとしてくれない。
だって海の奥深くにわたしがいることを知らないから。

海の中も美しい。だけどあなたと一緒の地上の世界はもっと幸せだろう。
他の人に釣られそうになっても私は行かない。あなただけだから。

どんな危険も乗り越え、ひたすら先が見えない真っ暗な海を泳ぐ。
早くあなたの世界の光だけでいいから見たいのに。

私はもうすぐ息絶える。ようやくわかった、私には遠すぎる存在だということが。
あなたに会えずに私はもっと海深くへと沈んでしまいます。

K. I.

*****
8.(汚れを知らない真白な雪原に大きな黒い鳥が舞い降りた)

汚れを知らない真白な雪原に大きな黒い鳥が舞い降りた
広い世界を知っている、美しい鳥
ためらいなく受け入れて、遊ばせる雪原は鳥の邪悪さを知らない
疑いもせず、ただ信じて、広い世界に憧れていた

ある日落とされた裏切りの雨
飛びたつ鳥と、動けない雪原
降りしきる雨に打たれて、楽しい思い出が洗い流されていく
冷たく、暗い、裏切りの雨

汚されて、穢されて、落とされて、
残っているのは荒れた大地
戻れない、むなしい心
とけた雪が恨みの川となって
山を下り、海へ流れ、黒い鳥を追いかける、逃がさない
真白だった雪原はもうどこにもない

N. Y.

*****
9.(温かく冷たい笑顔でほほえみ、従う。)

温かく冷たい笑顔でほほえみ、従う。
王さまが満足する。ほうびを与える。
頭が暗く寒々しく喜んでいる。
心臓のことなどおかまいなしに。

心臓は傷つき血が流れている。
怒りに震えて、恐怖に震えて。
赤く、青く、墓場まで血を運んでいく。
心が泣いている。

顔の表面にいるあなたは誰?
私はあなたが恐ろしい。
冷たい目をした、感じの良い狡猾なあなたが。
王様から見て一番良い人、私から見て罪人のあなた。

このまま墓場に連れて行かれるつもりはない。
震えている心臓よ、剣を持て。

K. N.

*****
10.(あなたはいつも隣にいるのに)

あなたはいつも隣にいるのに
あなたはいつも話してくれるのに
あなたはいつも優しくしてくれるのに
どうしてわたしを選んでくれないの

私のほうがあなたと仲良くしてるのに
私のほうがあなたのことをよく知っているのに
私のほうがあなたのことを好きなのに
どうして私の隣にいる子を選んでしまうの

私は応援もできない
私はふたりを見ることもできない
私はその現実を受けいれられない

私があなたを想っている間ずっと
あなたが選ぶ人はいつも決まって
私の一番近くにいる人だった

N. S.

*****
11.(私は私が嫌いだ)



N. N.

*****
12.(真っ白なキャンバスに己の姿を描く)

真っ白なキャンバスに己の姿を描く
あの時はよかった
あの時は悪かった
これからはこうしたい

この手で色を足していく
描いて描いて描き続けていたら、ふと気づいた
色が混ざってくすんでいる

違う、望んで汚れてきた訳じゃない
願うはずなどない

でも赤、青、緑が混ざれば黒になる

過去は燃やして捨てよう
目の前に広がるのは白の世界
もう一度、手には三本の筆
そしてまた堕ちていく、灰の中へ

K. T.

*****
13.(わたし、あなたのお人形)

わたし、あなたのお人形
はじめて会ったとき、やさしい笑顔で声をかけてくれたね
日に日にあなたがわたしの頭の中いっぱいになったの
あなたとわたしの気持ちが同じになったとき
わたしってなんて幸せなんだろうって思った
毎日がぴんく色で世界が変わった気分!
わたし、あなたの言うことならなんでもきいてる
男の子の友だちはもうひとりもいない
女の子の友だちとも遊びに行かない
あなたの好きな髪色にして
あなたの好きな服を着る
まるでお人形みたいに

でもね、知ってるの
あなたがわたしみたいなお人形をたくさん持ってること

Y. S.

*****
14.(あなたは白い霧のなかにいる)

あなたは白い霧の中にいる
どれだけ手を伸ばしても
どんなに大声で名前を呼んでも
あなたを捕まえられない

想いは通じあっているはずなのに
いつになったらこの霧は消え去り
青空があらわれるのだろう
私にはわからない

私はこの霧の中ひとりで泣く
あなたに会えないとわかっていても
あなたへ伸ばした私の手、私の声を感じて

あなたが戻ってくることを想像する
いつか霧が晴れわたる青空に変わり
爽やかな風があなたを連れてくることを願って

K. S.

*****
15.(あと一歩、その一歩が踏み出せない)

あと一歩、その一歩が踏み出せない
夢はどんどん膨らんで私の胸を高鳴らせる
素敵な服を着て心は自由に踊る
何にも縛られず真っ直ぐ走り抜ける
ほら聴いて、周りの小鳥も歌ってる
太陽だって私を照らしてる
波の音も汽車の音も全部私のもの
私と一緒に躍ってる

朝になると真っ白なキャンバスに戻る
昨日描いた夢も現実に邪魔される
どうか神様、私に贈りものをください
高価なものはいりません
たった一つでいいのです
ほんの少しの勇気を私が持てたなら

M. A.

*****
盗用・商用・悪用禁止。著作権はそれぞれ作者に。


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色のない森
何時(いつ)のことか
知らない国で

君とぼく?
何処(どこ)にいて
何処から来て
何処に行く
何もまるで
判(わか)らぬまま

笑い
歌い
踊り
跳ね
泣き
頼り

歩きはじめた
心重く軽く
迷いつつ
一歩
一歩

躓(つまず)き
揺らぎ
前を向き
肩を寄せ

手をとりあった?
見つめあった?

口づけし
体を重ね
心を決めた
……気がした

飛ぶように
転がるように
舞うように
落ちるように
沈むように
遊ぶように
争うように
燥(はしゃ)ぐように
眠るように
凍るように
時は過ぎ

生きる夢を生きるなか
忘れた歌が聞こえる

新しく
懐かしい声
誰?
霧のなかの
君?

(20160116)

*****
盗用・商用・悪用以外でしたら、好きにしてください。


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真夜中に (19)

真夜中に (19)

1
冬の街
人の波
壁の間の
道を行く

くり返す日々の意味はどこにある?
何をすべきで何ができて何したい?

とりあえず空を見あげる、真夜中に
口笛吹いてもの思う、真夜中に

2
青い闇
少し風
月の影
光る雲

どこまで欲は許される?
いくら払えば幸せは買える?

とりあえず外に出てみる、真夜中に
ステップ踏んで星を見る、真夜中に

3
どこに向かってる? 何がほしい?
いつどこで誰と出会う? すれちがう?

とりあえず目を閉じてみる、真夜中に
まわりの世界が消えてく、真夜中に

とりあえず眠りに溶ける、真夜中に
愛される夢を見る、真夜中に

* * *
1989
201501-03
20160804

* * *
盗用・商用・悪用以外でしたら、好きにしてください。


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子守り歌

子守り歌

I.
子守り歌
ささやいて
星の歌
聴かせて

人はやさしいはず
世界はあたたかいはず
瞳は美しいから
嘘をついていても

わたしの夢
あなたに

II.
子守り歌
ささやいて
風の歌
聴かせて

明日は晴れるはず
幸せはやってくるはず
命は美しいから
今は痛いけど

わたしの夢
あなたに

* * *
20140120
20140121
20160118
20160804

* * *
盗用・商用・悪用以外でしたら、好きにしてください。


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愛しあう

愛しあう

---
無意識のなかに、否定や疑念や不確かさは
いっさい存在しない。(ジークムント・フロイト)
---

1.
心が飢えてるから、でなく
体が求めるから、でなく
温もり感じたいから、でなく
安らぎほしいから、でもなく

しなやかに
のびやかに
愛しあう

2.
酒に酔うこともなく
勢いに流れることもなく
魔法にかかることもなく
理性を失うこともなく

目をあけて
考えて
愛しあう

3.
怒りを静めるため、でなく
痛みを忘れるため、でなく
疲れを癒すため、でなく
憂いを晴らすため、でもなく

胸と胸
口と口
指と指
愛しあう

* * *
1990?
20130204-5
20130224
20130228
20130420
20160804

* * *
盗用・商用・悪用以外でしたら、好きにしてください。


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かざりもの

かざりもの

1.
朝--こだまする足音
飛び交う鳥と子どもたち
流れる風、雲、人の波
動いてないのは君の時計だけ

鏡の前の
ビー玉の目
何が見える?
どうしたい?

「そうね、キラキラのドレスとか脱いで、
ね、キラキラのメイクも落として、
なんにもいらないから、
別の子になりたい
・・・・・・嘘」

2.
夜--こだまする足音
飛び交う闇の生きもの
流れる香り、光、声の波
動いてないのは君の時計だけ

鏡の前の
ビー玉の目
何が見える?
どうしたい?

「そうね、キラキラのドレスとか脱いで、
ね、キラキラのメイクも落として、
なんにもいらないから、
わたしにもどりたい
・・・・・・嘘」

* * *
1991?
20130225-0301
20130304
20130309
20130331
20160625
20160804

* * *
「白い部屋」「白い部屋(2)」と同じ曲に
つけるために書いた歌詞。こちらがもとの
アイディアで、それを発展させたもの。

* * *
盗用・商用・悪用以外でしたら、好きにしてください。


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白い部屋 (2)

白い部屋 (2)

記憶の痛みの記憶--

白い部屋
格子窓
罪の道
時の歌--

怒りの怒り
棘の棘
氷の矢

痛みの涙の痛み
血の流れ

命の命
海の海
波と渦

なぐさめのなぐさめ
君の影--

(冨樫 剛)

* * *
1991?
20130118-23
20130130

* * *
盗用・商用・悪用以外でしたら、好きにしてください。


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