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Pound (tr.), Li Po, "The River-Merchant’s Wife"

エズラ・パウンド (訳)
李白、「行商人の妻の手紙」 (「長干行」)

まだおかっぱ頭だった頃、
わたしは家の門の前で遊んでいました、花を摘んだりして。
あなたは竹馬にまたがってやってきました。
わたしのまわりを歩きながら、青い梅の実で遊んでいました。
長干(ちょうかん)の村でくらしていましたよね。
ふたりともこどもで、嫌ったり、疑ったりすることなんてありませんでした。

十四歳のときにあなたと結婚しました。
はずかしかったので、わたしはずっとむっとしていました、
うつむいたり、壁のほうばかりを見たり。
名前を千回呼ばれても、ふり返りませんでした。

十五歳のとき、そういうことをやめました。
生きていても、死んでも、わたしはあなたといっしょになっていたいと思いました、
ずっと、ずっと、ずーっと、です。
なぜでしょう、わたし、今、高台にのぼっています。

十六歳のとき、あなたは仕事で出かけていきました。
遠くの瞿塘峡(くとうきょう)まで、舟で渦巻く川を通って。
もう五か月たちました。
木の上で猿たちが悲しげに鳴いています。

出かけていくとき、あなたの足も重たげでした。
門のところには苔が生えてきました。新しい苔が、です。
もう根深く生えてしまっていて、刈ることができないほどです。
この秋、もう葉っぱが散ってしまいました、風のなか。
八月になり、蝶々の夫婦ももう黄色く染まって、
西の庭の草の上を飛んでいます。
ちょっと嫌になります、なぜか、年をとった気がして。
もし、長江のせまいところを通って帰ってきているのでしたら、
早めにお手紙をください。
会いに行きますから、
なんでしたら、長風沙(ちょうふうさ)のところまでも。

* * *
Ezra Pound (tr.)
Li Po, "The River-Merchant’s Wife: A Letter"

While my hair was still cut straight across my forehead
I played about the front gate, pulling flowers.
You came by on bamboo stilts, playing horse,
You walked about my seat, playing with blue plums.
And we went on living in the village of Chokan:
Two small people, without dislike or suspicion.

At fourteen I married My Lord you.
I never laughed, being bashful.
Lowering my head, I looked at the wall.
Called to, a thousand times, I never looked back.

At fifteen I stopped scowling,
I desired my dust to be mingled with yours
Forever and forever and forever.
Why should I climb the look out?

At sixteen you departed,
You went into far Ku-to-yen, by the river of swirling eddies,
And you have been gone five months.
The monkeys make sorrowful noise overhead.

You dragged your feet when you went out.
By the gate now, the moss is grown, the different mosses,
Too deep to clear them away!
The leaves fall early this autumn, in wind.
The paired butterflies are already yellow with August
Over the grass in the West garden;
They hurt me. I grow older.
If you are coming down through the narrows of the river Kiang,
Please let me know beforehand,
And I will come out to meet you
As far as Cho-fu-Sa.

* * *
李白についての本を見ると、いろいろパウンドの側に
誤解もあるよう。

* * *
英語テクストは次のページのもの。
http://www.poets.org/poetsorg/poem/
river-merchants-wife-letter

* * *
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参照する際には、このサイトの作者、タイトル、URL,
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Pound (tr.), "Fan-Piece for Her Imperial Lord"

エズラ・パウンド (翻案)
「恋人の皇帝にささげる扇の歌」

ああ、白い絹の扇、
とがった草の葉に降りた霜のように透き通ってる。
おまえも捨てられたのね。

* * *
Ezra Pound (tr.)
Ban Jieyu, "Song of Regret"
("Fan-Piece for Her Imperial Lord")

O fan of white silk,
clear as frost on the grass-blade,
You also are laid aside.

* * *
英語テクストは次のURLのもの。
http://en.wikisource.org/wiki/Fan-Piece_for_Her_Imperial_Lord

* * *
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Pound, "Homage to Sextus Propertius" VII

エズラ・パウンド (訳)
「セクストゥス・プロペルティウスを称えて」 (VII)
(プロペルティウス 2.15より)

幸せなぼく、幸せな夜、輝きに満ちた夜、
ほら、長いお楽しみのせいでベッドそのものもうれしそう。
ろうそくをたくさん費やし、どれほど語りあったことか。
明かりが消えたときにはもみくちゃになって。
今、この子は胸を出したままぼくを押さえつけてきた。
時間差でチュニックを広げて胸を隠して。
この子は眠りに落ちたぼくのまぶたを開く、
唇で。そしていった--「なに怠けてるの?」

なんていろんなかたちで抱きあったことか、腕をいろいろさしかえて、
キスも、たくさんたくさん、唇に感触が残るくらいに。
「ウェヌスに目隠ししちゃダメ。
目が愛を導くんだから。
パリスは、裸のヘレネがメネラオスのベッドから出てきたとこをつかまえたし、
裸のエンディミオンのからだも光ってて、それでディアナを惹きつけたのよ。」
--そう、確かにそんな話だった。

ぼくたちの運命がからみあっているあいだは、心ゆくまで見つめあおう。
長い夜が君にもやってくるから、
太陽が戻ってこない日がやってくるから。
神々がぼくたちを鎖でしばってくれますように。
いつまでもその鎖がほどけませんように。

愛の狂気を閉じこめるなんて、バカのすること。
太陽が黒い馬に乗って飛ぶようになったら、
大麦の種から小麦が育つようになったら、
川が上流に向かって流れるようになったら、
そしたら、愛も慎みを学ぶかも、
それか、魚が水のない川で泳ぐようになったら。
そう、ダメダメ、生きてていちばんいいことができるあいだは、
それをやめちゃいけない。

枯れた花冠から花びらが落ちる。
乾いた茎は編まれてバスケットになる。
今日、ぼくたちは、恋人同士、のんびりゆっくり安らいで、
でも明日になったら、運命がぼくたちをどこかに閉じこめてしまう。
君はぼくだけにキスしてくれるけど、
もっともっともっとして。

ぼくの切ない気持ちはこの子だけのもの。
ぼくはこの子のもののまま死にたい。
もしこの子がこんな夜を過ごさせてくれるなら、
ぼくの日々は長くなる、まるで何年もののように。
もしこんな夜がたくさんたくさんあったら、
ぼくは永遠に生きる神、そのときだけは。

* * *
Ezra Pound (tr.)
"Homage to Sextus Propertius" VII
(From Propertius 2.15)

Me happy, night, night full of brightness;
Oh couch made happy by my long delectations;
How many words talked out with abundant candles;
Struggles when the lights were taken away;
Now with bared breasts she wrestled against me,
Tunic spread in delay;
And she then opening my eyelids fallen in sleep,
Her lips upon them; and it was her mouth saying: Sluggard!

In how many varied embraces, our changing arms,
Her kisses, how many, lingering on my lips.
"Turn not Venus into a blinded motion,
Eyes are the guides of love,
Paris took Helen naked coming from the bed of Menelaus,
Endymion's naked body, bright bait for Diana,"
---such at least is the story.

While our fates twine together, sate we our eyes with love;
For long night comes upon you
and a day when no day returns.
Let the gods lay chains upon us
so that no day shall unbind them.

Fool who would set a term to love's madness,
For the sun shall drive with black horses,
earth shall bring wheat from barley,
The flood shall move toward the fountain
Ere love know moderations,
The fish shall swim in dry streams.
No, now while it may be, let not the fruit of life cease.

Dry wreaths drop their petals,
their stalks are woven in baskets,
To-day we take the great breath of lovers,
to-morrow fate shuts us in.
Though you give all your kisses
you give but a few.

Nor can I shift my pains to other
Hers will I be dead,
If she confers such nights upon me,
long is my life, long in years,
If she give me many,
God am I for the time.

* * *
これも「カルペ・ディエム」のテーマの一変奏。

パウンドはプロペルティウスのオリジナルに
だいぶ手を加えている。スタンザの順番を変えたり、
スタンザをほぼ丸ごと省いたり。

* * *
英語テクストは、Poems 1918-21 (c.1921) より。
https://archive.org/details/poemsbyezra00pounrich

* * *
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Pound (tr.), Li Po, "The Jewel Stairs' Grievance"

エズラ・パウンド (訳)
李白、「玉階怨」
(「宝石で飾られた階段の嘆き」)

宝石で飾られた階段が、もう夜露で真っ白。
すっとここにいたから、絹の靴下はもうびしょ濡れ。
わたしは、ひとり、水晶のように透きとおった帳(とばり)をおろして、
澄みわたる秋の夜空の月を見る。

註:
宝石で飾られた階段、つまり、これは宮殿。
嘆き、つまり、何か満たされないことがある、ということ。
絹の靴下、つまり、高貴な女性(召使いではない)が不満をいっている。
澄みわたる秋の空、つまり、彼女の恋人が来ないのは天気のせいではない。
また、彼女のほうは早くから来て待っている。だから階段だけでなく、
靴下までが夜露で濡れている。
この詩が特に優れているのは、彼女が直接恋人を責めていないこと。

* * *
Ezra Pound (tr.)
Li Po (Rihaku), "The Jewel Stairs' Grievance"

The jewelled steps are already quite white with dew,
It is so late that the dew soaks my gauze stockings,
And I let down the crystal curtain
And watch the moon through the clear autumn.

Note.--Jewel stairs, therefore a palace. Grievance,
therefore there is something to complain of.
Gauze stockings, therefore a court lady, not a
servant who complains. Clear autumn, therefore
he has no excuse on account of weather.
Also, she has come early, for the dew has not
merely whitened the stairs, but has soaked
her stockings. The poem is especially prized
because she utters no direct reproach.

* * *
英語テクストはCathay (1915) より。
https://archive.org/details/cathayezrapound00pounrich

* * *
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Pound, "Nils Lykke"

エズラ・パウンド (1885-1972)
「ニルス・リュケ」

美しく、無限の記憶に、
ぼくの心は強く引かれる。
どうして君は、いつもぼくを呼んで、呼んで、呼ぶの?
どうして、そこの暗闇で小声でつぶやくの?
どうして、長い手をのばして、
ぼくと恋人の間に入ろうとするの?

どうして君は、いつも投げかけるの?
君の美の黒い影を、
ぼくの恋人の白い顔の上に。
どうして、彼女の水たまりのような両目をのぞきこむの?

* * *

Ezra Pound
Nils Lykke

Beautiful, infinite memories
That are a-plucking at my heart,
Why will you be ever calling and a-calling,
And a-murmuring in the dark there?
And a-reaching out your long hands
Between me and my beloved?

And why will you be ever a-casting
The black shadow of your beauty
On the white face of my beloved
And a-glinting in the pools of her eyes?

* * *

ニルス・リュケは16世紀の実在の人物。妻の死後、
その妹(か姉)と恋におちるが、当時の法では
これは近親相姦とされていたので、投獄され、処刑された。
このようなエピソードを題材に、イプセンはLady Inger of
Ostratという劇を書いた・・・・・・とのことらしい。
http://archive.org/details/collectedworksen01ibseuoft

この詩では、おそらく「君」が死んだ妻で、
「恋人」がその妹(か姉)。

(いつかこの劇を読んで確認します。いつか。)

* * *

お昼のドラマ的な題材と、それを超えて想像を
かきたてる言葉の混在。

Beautiful, infinite memories
The black shadow of your beauty
the pools of her eyes

* * *

英語テクストはExultations (1909)より。
http://www.gutenberg.org/ebooks/40200

* * *

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Pound, ("Love thou thy dream")

エズラ・パウンド (1885-1972)
「自分の夢を愛して」

自分の夢を愛して。
卑しい愛などあざけって。
風を愛して。
そして考えをあらためて。
真に存在するのは夢だけ。
なぜなら、夢のなかでぼくは君のところに行くから。

* * *

Ezra Pound
"Song" ("Love thou thy dream")

Love thou thy dream
All base love scorning,
Love thou the wind
And here take warning
That dreams alone can truly be,
For 'tis in dream I come to thee.

* * *

2
分詞構文で、scorning All base love.

* * *

とりあえず "Love thou the wind" に反応してしまう。

* * *

英語テクストはExultations (1909)より。
http://www.gutenberg.org/ebooks/40200

* * *

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Pound, "An Immorality"

エズラ・パウンド (1885-1972)
「不道徳な話」

愛と怠惰なくらしをたたえて歌おう。
他に価値あるものなどない。

多くの国を見てきたが、
愛と怠惰なくらしが生のすべてだ。

バラの花びらたちが悲しみで死ぬことがあっても、
わたしはよろこびと快楽を味わっていたい。

ハンガリーで、人の想像を絶するような
気高いことをするよりも。

* * *

Ezra Pound
"An Immorality"

Sing we for love and idleness,
Naught else is worth the having.

Though I have been in many a land,
There is naught else in living.

And I would rather have my sweet,
Though rose-leaves die of grieving,

Than do high deeds in Hungary
To pass all men's believing.

* * *

たわいもない作品のようなので、訳注などは後回し。

* * *

「不道徳な話」というタイトルがついているので、
パウンドも、人にすすめられる内容ではない、
という意識で書いているのだろう。しかし同時に、
口には出さないし出せないが、誰でもふと
思ったりするような内容として。

しかし、個人的に思うのだが、「恋愛こそすべて」的な
思考がかなり(あるいは、ある程度、くらい?)支配的な
現代の社会や文化のなか、実のところ「恋愛こそすべて」
と感じたり、考えたり、行動したりすることができない人も
少なくないのではないか。

つまり、道徳という基準抜きでもこの詩の内容に
共感できない、たとえ道徳的に許されても、
わざわざ愛と怠惰なくらしにおぼれたいとは思わない、
というような人が。

(極端な例をあげると上の話のニュアンスが変わって
しまうが、考えてみればバイロニック・ヒーローも、
愛と怠惰なくらしにおぼれ、そしてそれに飽き飽きして
しまった人だったりする。)

* * *

英文テクストは、Ezra Pound, Ripostes (1912) より。
http://archive.org/details/ripostesofezrapo00pounrich

* * *

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Pound, "A Girl"

エズラ・パウンド (1885-1972)
「少女」

木がわたしの手のなかに入り、
樹液がわたしの腕をのぼる。
木がわたしの胸のなかに育っている。
下向きに、
その枝がわたしから伸びる、腕のようなかたちで。

君は木、
君は苔、
君は風吹く空の下に咲くすみれたち。
なのに、とても高いところにいて、わたしには手がとどかない。
--なんて、ただの愚かな話。

* * *

Ezra Pound
"A Girl"

The tree has entered my hands,
The sap has ascended my arms,
The tree has grown in my breast---
Downward,
The branches grow out of me, like arms.

Tree you are,
Moss you are,
You are violets with wind above them.
A child---so high---you are,
And all this is folly to the world.

* * *

解釈例と訳注。この詩のポイントは二つ。

1. 1-6行が提示するこの詩のシナリオ。

「君は木で、手からわたしのなかに入り、腕をのぼり、
胸のなかで大きくなっているかのよう。」

恋愛関係の話でよくあるような、好きな人に
心を奪われて・・・・・・という状態や、
好きな人に手でふれたときの感覚が手から
頭や胸に伝わることを、このような比喩で。

少しシュールであると同時に、生命力のようなものや
不思議な一体感も感じられる表現。

---
2. 9行目の "so high".

「わたし」の好きな子(a child)がso highとはどういうこと?

So:
「そのように」。どのようにかといえば、前数行にある
木、苔、そしてすみれたちのように。この比喩が大切だから、
オリジナルではイタリック体で強調されている。

High:
高いところにある(OED 3)。
身分、気位などが高い、威厳がある(OED 5a)。
質的に高い、すぐれている(OED 6a)。
深遠で理解が困難(OED 6c)。
(植物などが)進化している(OED 6d)。
高価である(OED 10e)。

(1)
まずふつうに考える。木、苔、すみれは、通常の意味では
highではない。ふつうに野に(地面に)生えていて、
特に上品に気どっているわけではない。特に複雑な
ものでもないし、高価なものでもない。

(2)
しかしそれでも、木、苔、すみれは、なぜかhighであるように、
すなわち、身分と気位が高く、威厳があり、質的にすぐれていて、
深遠で理解を超えていて、複雑に進化していて、高い価値が
あるように思われる。(一言でいえば、たとえば、きれいだから。)


(私が撮影したもの。)


By Manfred Morgner
http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Moos_5769.jpg


By Jerzy Opioła
http://commons.wikimedia.org/wiki/
File:Viola_alpina_a2.jpg

(3)
まさにそのような低くて高い木、苔、すみれたちのように、
「わたし」の好きな子も、ふつうの子であると同時に、なぜか
身分と気位が高く、威厳があり、質的にすぐれていて、
深遠で理解を超えていて、複雑に進化していて、高い価値が
あるように思われる。

---
以上から、この詩を要約:

「わたし」の好きな子は、ありふれたふつうの少女のはずなのに、
なぜか手が届かない気高い存在のように思われる。
そんな彼女は、もはや「わたし」のからだの一部のよう。

* * *

人間と通じあうべきもの、一体化すべきもの、という
ワーズワース風の自然観の一変奏のように思われる。

* * *

英文テクストは、Ezra Pound, Ripostes (1912) より。
http://archive.org/details/ripostesofezrapo00pounrich

* * *

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Pound, "Regina Avrillouse"

エズラ・パウンド (1885-1972)
「四月の女王」

魅惑あふれる貴婦人、
春に抱きしめてくれる女王、
あなたの腕は長く、トネリコの枝のよう、
笑い、はじける川のなか、気まぐれな雨の精、
ケシの花の息、
森のすべてが君の部屋、
丘が君の家。

これは、もう夢ではない。
あたたかく魅了する君の腕、
あたたかく強い息が、
君の唇がぼくの唇にふれる前に、
ぼくの頬にふれて、いう、
「これが大地のよろこび、
これが歓楽のワイン、
グラス一杯飲み干して、ね、

花の蜜のグラスを手にとって、
蜜のように甘い歌を歌って、
魅惑の春を飲みこんで、
四月と、草露と、雨を。
茶色の大地のことを歌って、ね、
頬と唇と髪のことを、
それから、あなたがまだ飲みに来ていないところに
口づけする静かな息のことを」。

コケとやわらかい土、
そのベッドで君の楽しみをくり広げて。
君の陰ある枝は、長い腕のよう。
四月の魅惑--草の細い葉は、
露をつかみ、冠のように頭にのせ、そこに太陽を閉じこめる。
旗のように
高くなびいて、
森中に光と美しさを見せてあげて、
魅惑の四月、輝かしく、大胆に。

* * *

Ezra Pound
"La Regina Avrillouse"

Lady of rich allure,
Queen of the spring's embrace,
Your arms are long like boughs of ash,
Mid laugh-broken streams, spirit of rain unsure,
Breath of the poppy flower,
All the wood thy bower
And the hills thy dwelling-place.

This will I no more dream;
Warm is thy arm's allure,
Warm is the gust of breath
That ere thy lips meet mine
Kisseth my cheek and saith:
"This is the joy of earth,
Here is the wine of mirth
Drain ye one goblet sure,

Take ye the honey cup
The honied song raise up,
Drink of the spring's allure,
April and dew and rain;
Brown of the earth sing sure,
Cheeks and lips and hair
And soft breath that kisseth where
Thy lips have come not yet to drink."

Moss and the mold of earth,
These be thy couch of mirth,
Long arms thy boughs of shade
April-alluring, as the blade
Of grass doth catch the dew
And make it crown to hold the sun.
Banner be you
Above my head,
Glory to all wold display'd,
April-alluring, glory-bold.

* * *

以下、訳注。

3 ash
トネリコ

By Jean-Pol GRANDMONT
http://commons.wikimedia.org/wiki/
File:Fraxinus_ornus_JPG1b.jpg

4 unsure
(形容詞)あてにならない(OED 3)、確かさや自信を欠いている(OED 5)。
(天気雨とか、そういうイメージ?)

ウェブ上にとてもきれいな画像があるが、"All rights reserved" と
いうことなので、URLのみを。
http://www.flickr.com/photos/tarmo888/4886948631/

5 poppy
ケシ(英語の詩に頻出する花のひとつ。)

By John Beniston
http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Poppy2004.JPG

10 gust
突然の強い風(OED n1)、(おいしい)味、経験(OED n2, 6a-b, 7)

10-12
行ごとに訳している。日本語らしくいえば次のように:
「君の唇がぼくの唇にふれる前に、あたたかく強い息が
ぼくの頬にふれて、いう」。

15 goblet
金属/ガラスでつくられた、ワインなどのためのグラス、コップ。

By Trish Mayo
http://commons.wikimedia.org/wiki/
File:WLA_brooklynmuseum_Wine_Goblet_
mid_19th_century_Blue_glass.jpg
http://www.flickr.com/photos/obsessivephotography/
3314672069/in/pool-892086@N25/

15 sure
副詞。絶対に、必ず、確かに(OED adv. 2-3a)。
「絶対よ」という感じ。

17 raise up
歌う(OED v1, 13c)。

18 drink of
・・・を/から飲む。Ofの前置詞句で液体の名、
またはその源が示される(OED 10c)。

24 moss

By Manfred Morgner
http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Moos_5769.jpg

24 mold
イギリスではmould. 地表のやわらかい土(OED "mould" n1)。

29 hold
なかに閉じこめる(OED 5a)。

32 wold
森、丘(古語、OED 1, 2)。

32
省略されている語を補い、散文的に並べ直すと、たとえば:
[your] Glory [being] display'd to all wold,
[May your] Glory [be] display'd to all wold,
など。

32 Glory
光り輝く美しさ(OED 6)。

* * *

(リズムについてなど、後日に少し追記します。)

* * *

英文テクストはウェブサイトPoets' Cornerより。
http://www.theotherpages.org/poems/pound01.html#2

Collected Early Poems of Ezra Pound (1982) に
収められたテクストとは若干異なるところがあるので、
後日、パウンドの最初の詩集A Lume Spento (1908) で
確認したい。

が、自費出版されたこの詩集は150部ほどしか刷られなかったので、
日本ではどこに行けば見られるのかわからない。
(Webcatでもヒットしない。)

イギリスの古書店による次のブログサイトのページによれば、
$45000-$90000/£24000-£48000で取引されているらしい。
(1ドル=80円として、360-720万円!!!)
http://www.bookride.com/2007/04/ezra-pounds-
rarest-lume-spento-1908.html

* * *

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