goo

Collins, "Ode to Fear"

ウィリアム・コリンズ
「オード--〈恐怖〉に--」

〈恐怖〉--見知らぬ世界を見て、
実体のない影を見て、
存在しないはずのものを見て、そして青ざめる。
空想が、目の前のヴェールをあげてしまう。

ああ、〈恐怖〉! 狂いそうなほどの〈恐怖〉!
ああ、君が来てしまった!

君は突然やってくる、血走った目でやってくる。
君のようにぼくも飛びあがり、無我夢中で逃げ出す。
ほら、君の後ろには、とんでもない怪物たちがついてきている!
まず〈危険〉だ。巨人のようなその腕、
平常心で見つめられる人なんていないに決まってる!
〈危険〉は、恐ろしい姿で歩きまわる、
真夜中の嵐のなか、うなり声をあげながら。
あるいは、岩山の急な斜面で寝ている、
今にも落ちそうな岩にもたれて。
そのまわりでは亡霊たちがうようよしていて、
人の心を惑わし、呪われた行為へと誘っている。
あそこにいるのは悪霊たち、
裏で自然災害や事故の糸を引いている。
〈報復〉は、闇のなか赤く燃える空を舞い、
むき出しの赤い腕をふりあげる。
血に飢えた〈運命〉の一族はその手下で、
そばでごほうびの〈悲しみ〉の血をなめている。
こんなおぞましい者たちを見たら、狂乱せずには
いられない! ああ、〈恐怖〉! 君みたいに!

(エポード--止まって歌う)
いにしえのギリシャでのこと、まだこどもであった
悲劇の詩神は、〈恐怖〉、君だけに歌いかけた。
未婚・既婚の女たちは、その恐ろしい話を聞いて
言葉を失いつつ、色を失いつつ、呆然と見守るのみだった。

が、〈恐怖〉を歌った最初の詩人アイスキュロスは、
マラトンで戦ったとき、君の力をものともしなかった。
彼の胸に燃えるは詩人の炎、
美徳の手には愛国の武器。

後に詩人の花冠を戴いたソポクレスは、
蜂蜜の都シチリアはヒュブラをしばし離れ、
震える目で、〈恐怖〉、君についていった。
君と〈復讐〉の女神たちが住む悲しみの森まで。

〈恐怖〉、君のうす暗いヴェールにつつまれて、あの女王は、オイディプスに
悲しく、ため息まじりに呼びかけた。わたしの夫、いえ、わたしの子・・・・・・。
沈黙を破るこの言葉を聞き、
テーベでいちばんあわれな男は姿を消した。

ああ、〈恐怖〉、君が来るとぼくの胸は激しく脈打つ。
すべてを枯らす君によって、悲しみの詩しか出てこない。
やさしい〈哀れみ〉も、入れてほしい、とやってくる。でも
君がいると、雷鳴のとどろく恐ろしい場面しか書けやしない!

(アンティストロペ--右にまわりながら歌う)
長い年月の旅を経て、
〈恐怖〉の狂ったニンフ、君はどこをめざしている?
教えて、君は、暗い〈強姦〉と〈殺戮〉の
住むあの洞窟に行くのか?
それとも、海辺のほら穴で、
大波の打ちつける音とともに、
嵐のなか溺れる船乗りの悲鳴を聞くのか!
闇の神の君、〈恐怖〉、震えながら、跪きながら、うちひしがれながら、
お願いだ、ぼくのところに来てほしい。いにしえの幻を見たい、
君の詩人たちが歌い、人々を飛びあがらせた幻が見たいんだ。
がっかりした顔を見せたくないから、
どんな不思議なことでも、みな本当の話だと誓ってほしい。
君に圧倒されたりはしない、
あのハロウィーンの夕暮れに、
田舎の女の子が信じているように、亡霊たちが、
小石の敷きつめられた墓のベッドから解き放たれて出てきても。
奇妙な悪霊たちが、炎や沼から、
地下の世界や川のなかから、ぼくたち人間の世界に出てきても!

ああ、〈恐怖〉、神聖なるシェイクスピアの
胸に宿っていたのは、まさに君!
とぎれとぎれの言葉で、まさに聖なるさまざまな恐れを抱いて、
君を伝えてきたあのシェイクスピアの名において、
お願いだ、君の狂気をぼくに貸してほしい。
もう一度だけ、あの預言者、シェイクスピアのように感じたいんだ。
ぼくも彼の糸杉の冠がほしい。
そして、ああ、〈恐怖〉、ぼくは君といっしょにくらすんだ!

* * *
William Collins
"Ode to Fear"

Thou, to whom the World unknown
With all its shadowy Shapes is shown;
Who see'st appall'd th'unreal Scene,
While Fancy lifts the Veil between:

Ah Fear! Ah frantic Fear!
I see, I see Thee near.

I know thy hurried Step, thy haggard Eye!
Like Thee I start, like Thee disorder'd fly,
For lo what Monsters in thy Train appear!
Danger, whose Limbs of Giant Mold 10
What mortal Eye can fix'd behold?
Who stalks his Round, an hideous Form,
Howling amidst the Midnight Storm,
Or throws him on the ridgy Steep
Of some loose hanging Rock to sleep:
And with him thousand Phantoms join'd,
Who prompt to Deeds accurs'd the Mind:
And those, the Fiends, who near allied,
O'er Nature's Wounds, and Wrecks preside;
Whilst Vengeance, in the lurid Air, 20
Lifts her red Arm, expos'd and bare:
On whom that rav'ning Brood of Fate,
Who lap the Blood of Sorrow, wait;
Who, Fear, this ghastly Train can see,
And look not madly wild, like Thee? 25

EPODE.
In earliest Grece to Thee with partial Choice,
The Grief-full Muse addrest her infant Tongue;
The Maids and Matrons, on her awful Voice,
Silent and pale in wild Amazement hung.

Yet he the Bard who first invok'd thy Name,
Disdain'd in Marathon its Pow'r to feel:
For not alone he nurs'd the Poet's flame,
But reach'd from Virtue's Hand the Patriot's Steel.

But who is He whom later Garlands grace,
Who left a-while o'er Hybla's Dews to rove,
With trembling Eyes thy dreary Steps to trace,
Where Thou and Furies shar'd the baleful Grove?

Wrapt in thy cloudy Veil th' Incestuous Queen
Sigh'd the sad Call her Son and Husband hear'd,
When once alone it broke the silent Scene,
And He the Wretch of Thebes no more appear'd.

O Fear, I know Thee by my throbbing Heart,
Thy with'ring Pow'r inspir'd each mournful Line,
Tho' gentle Pity claim her mingled Part,
Yet all the Thunders of the Scene are thine! 45

ANTISTROPHE.
Thou who such weary Length hast past,
Where wilt thou rest, mad Nymph, at last?
Say, wilt thou shroud in haunted Cell,
Where gloomy Rape and Murder dwell?
Or in some hollow'd Seat, 50
'Gainst which the big Waves beat,
Hear drowning Sea-men's Cries in Tempests brought!
Dark Pow'r, with shudd'ring meek submitted Thought
Be mine, to read the Visions old,
Which thy awak'ning Bards have told:
And lest thou meet my blasted View,
Hold each strange Tale devoutly true;
Ne'er be I found, by Thee o'eraw'd,
In that thrice-hallow'd Eve abroad,
When Ghosts, as Cottage-Maids believe, 60
Their pebbled Beds permitted leave,
And Gobblins haunt from Fire, or Fen,
Or Mine, or Flood, the Walks of Men!

O Thou whose Spirit most possest
The sacred Seat of Shakespear's Breast!
By all that from thy Prophet broke,
In thy Divine Emotions spoke:
Hither again thy Fury deal,
Teach me but once like Him to feel:
His Cypress Wreath my Meed decree, 70
And I, O Fear, will dwell with Thee!

* * *
古代ギリシャ悲劇のなかの歌のかたちによるオード。

ストロペ + アンティストロペ + エポード、という
ピンダロスのオードとは若干異なり、
ストロペ + メソード + アンティストロペ、という形式。

ピンダロスのオードについては、Jonson, "To Sir Cary and Sir Morison"を参照。

何かの間違いか何かで、この詩でコリンズは、
メソードをエポードと呼んでいる。
最初の部分をストロペと表記もしていない。
同じであるべきストロペとアンティストロペの形式も
若干異なっている。ストロペ25行、アンティストロペ26行。

(つまり、形式の細部は特に問題ではない、ということだろう。)

* * *
仰々しいアレゴリーで、17世紀のオードとも、19世紀以降の
詩とも明らかに質感・雰囲気が異なるが、たとえば、
キーツの「メランコリー」などは、この路線で書かれたものと
思われる。

また、この詩の場合、ふつうの意味でよくも美しくも
正しくもないものを美化して描いているところが、
特徴的な点、イギリスの詩の歴史のなかで新しかった
点なのでは? (これがロマン派からデカダンまで、
19世紀の詩につながっていったのでは?)

その他いろいろ、要確認。「ふつうの意味でよくも美しくも
正しくもないものを美化して描く」ということは、たとえば
演劇では16世紀末から17世紀初め、セネカ風の悲劇が
はやり、またシェイクスピアの悲劇が書かれた頃から
あったこと。

詩においては、ミルトンの『楽園は失われた』(『失楽園』)の
サタン以降? (シェイクスピアのソネット?)

* * *
英語テクストは次のページより。
http://pages.uoregon.edu/rbear/collins/collins1.html

* * *
学生の方など、自分の研究/発表のために上記を
参照する際には、このサイトの作者、タイトル、URL,
閲覧日など必要な事項を必ず記し、剽窃行為のないように
してください。

ウェブ上での引用などでしたら、リンクなどのみで
かまいません。

商用、盗用、悪用などはないようお願いします。


コメント ( 0 ) | Trackback (  )

Gray, "Ode on a Distant Prospect of Eton College"

トマス・グレイ
「オード--遠くからイートン・カレッジをながめて--」

先のとがった、いにしえの塔の数々が
森にかこまれた、濡れた草地のなか、冠のように立っている。
ここで学生は学ぶ、
創立者ヘンリー六世の聖霊を称えながら。
ウィンザーの厳かな高台に立つ
これらの建物は、下に広がる
林や草地、牧場を見渡す。
芝草や木陰、花々のなか、
白髪のテムズ川が、
銀色に光りつつ、曲線を描いて流れていくところを。
(1-10)

ああ、ため息が出そうだ・・・・・・幸せな丘の数々、気持ちいい木陰、
広がる野原・・・・・・ぼくはこれらをみな愛している。たとえ愛されていなくても。
何の不安もなかったこどもの頃、ぼくはここを駆けまわっていた。
まだ、痛みなんてまったく知らなかった!
強い風がぼくにあたる。目の前の景色から吹いてくる。
一瞬だけ、天国にいるような気分だ。
楽しげな翼にのって、気持ちのいい風の波が
ぼくの疲れた魂を癒してくれる。
昔の、若い頃の楽しさをぼくに吹きこんで思い出させてくれる。
まるで二度目の春がきたかのように。
(11-20)

教えてほしい、父のようなテムズ、あなたは見ているはずだから。
多くの元気な者たちが
あなたの緑の岸で楽しく遊び、
よろこびの道の数々をたどるのを。
今、真っ先に、楽しげに、しなやかな腕で、ガラスのような
あなたの波を切って泳いでいるのは誰?
ヒワをつかまえたりしているのは誰?
どんなぼくの後輩たちが、勉強もせず、
勢いよく転がる輪を追いかけたり、
ボールを打って飛ばしたりしている?
(21-30)

まじめな者たちは、
不満をもらしつつも学業に励む。
学校での試練に備えて。自由を犠牲にすれば、
あとでより甘い自由を楽しむことができる。
無鉄砲な者たちは、
自分の自由の範囲をこえて、
未知の世界に飛びこんでいく。
突っ走りながらも絶えずふり返り、
風のなか、聞こえないはずの声を聞く。
こわがりつつ、楽しみをかすめとる。
(31-40)

学生たちは抱く、明るい希望、あるいはむしろ妄想を。
実現したときよりも、実現するまでのほうが楽しい、という。
涙は流れ、そしてすぐに忘れられる。
心は今日も晴天なり。
健康なからだ、薔薇色の頬、
自由な機知、常に湧き出る新しい発想、
強いからだから生まれる陽気な元気、
昼間は何も考えず、夜にも何も考えず、
心は澄み、眠りの足どりも軽やかで、
迫る朝からするりと逃げる。
(41-50)

ああ、迫りくる重い運命のことなど気にもせず、
若きいけにえたちの楽しそうなこと!
いずれどんな苦難がやってくるか、彼らにはまるでわかっていない。
明日から先のことなど、まるで頭にないのだから。
でも、彼らをぐるっととりかこんでいるのが見えるだろう、
〈運命〉の手下たち、
黒い〈不幸〉の召使いたちが!
ああ、見せてあげたい、これらがどこで待ち伏せしてるかを。
人を握りつぶすこの一団は、常に獲物を狙っている!
ああ、教えてあげたい! 君たちも人間なんだよ!
(51-60)

悪霊のような激情の数々が、この学生たちを引き裂いてしまうだろう。
禿鷹のように心をむしばむことだろう、
人をあざける〈怒り〉、青白い〈恐怖〉、
そして、忍び足でついてくる〈恥〉の念が。
報われない〈恋〉が彼らから若さを奪い、
〈嫉妬〉がぼろぼろの歯で
彼らの心を噛みちぎるだろう。
顔色の悪い〈妬み〉と老けた〈不安〉、
険しい顔をした〈絶望〉が安らぎを奪い、
〈悲しみ〉の矢が彼らを貫くだろう。
(61-70)

〈野心〉にそそのかされて上をめざす者もいるだろう。
そして、高いところから突き落とされることになる。かわいそうに。
〈あざけり〉と〈汚名〉の犠牲となって、
苦しみに歯ぎしりするしかないだろう。
〈裏切り〉の針、
やさしい目をした〈冷たさ〉の嘘に苦しむ者もいるだろう、
偽りの涙にだまされてたりして。
そして人の血を流してしまい、刺すような〈後悔〉に襲われ、
〈狂気〉にとらわれ、ふさぎこんだり、気が違ったかのように大笑いする。
これこそ、まさに苦悩の極致。
(71-80)

ほら、見てごらん、年月の谷の下、
陰鬱な者たちがうごめいている。
人を痛めつける〈死〉の女王の一族だ。
しかも、その誰もが、この女王以上におぞましい。
ここでは人の関節を破壊し、そこでは血管に炎をそそいでいる。
あそこでは、からだを動かす筋を片っ端からねじって絞めつけている。
さらにそこにいるのは、大事な内臓のなかで暴れ狂う者たちだ。
ほら、見てごらん、〈貧困〉までいる。
その氷の手は魂を麻痺させてしまう。
ほら、そこにいる〈老齢〉は、ゆっくり人から力を奪っていく。
(81-90)

人生いろいろ、苦しみもいろいろ--ぼくたちはみな人間、
うめき悲しむ運命にある、
やさしい者は他人の痛みのために、
鈍い者は自分の痛みのために。
でも、そうだ! こんな運命なんか、もう知らなくていい、
悲しみはあっという間にやってきて、
幸せはあっという間に飛んでいってしまうのだから。
いろいろ考えているなら、楽園にいても台無しだ。
そう、もうやめよう。いちばんの幸せは何も知らないこと。
賢くなるなんて馬鹿なこと。
(91-100)

* * *
Thomas Gray
"Ode on a Distant Prospect of Eton College"

Ye distant spires, ye antique towers,
That crown the watery glade,
Where grateful Science still adores
Her Henry's holy Shade;
And ye, that from the stately brow
Of Windsor's heights the expanse below
Of grove, of lawn, of mead survey,
Whose turf, whose shade, whose flowers among
Wanders the hoary Thames along
His silver-winding way.
(1-10)

Ah happy hills, ah pleasing shade,
Ah fields beloved in vain,
Where once my careless childhood strayed,
A stranger yet to pain!
I feel the gales, that from ye blow,
A momentary bliss bestow,
As waving fresh their gladsome wing,
My weary soul they seem to soothe,
And, redolent of joy and youth,
To breathe a second spring.
(11-20)

Say, Father Thames, for thou hast seen
Full many a sprightly race
Disporting on thy margent green
The paths of pleasure trace,
Who foremost now delight to cleave
With pliant arm thy glassy wave?
The captive linnet which enthrall?
What idle progeny succeed
To chase the rolling circle's speed,
Or urge the flying ball?
(21-30)

While some on earnest business bent
Their murmuring labours ply
'Gainst graver hours, that bring constraint
To sweeten liberty:
Some bold adventurers disdain
The limits of their little reign,
And unknown regions dare descry:
Still as they run they look behind,
They hear a voice in every wind,
And snatch a fearful joy.
(31-40)

Gay hope is theirs by fancy fed,
Less pleasing when possessed;
The tear forgot as soon as shed,
The sunshine of the breast:
Theirs buxom health of rosy hue,
Wild wit, invention ever-new,
And lively cheer of vigour born;
The thoughtless day, the easy night,
The spirits pure, the slumbers light,
That fly the approach of morn.
(41-50)

Alas, regardless of their doom,
The little victims play!
No sense have they of ills to come,
Nor care beyond today:
Yet see how all around 'em wait
The ministers of human fate,
And black Misfortune's baleful train!
Ah, show them where in ambush stand
To seize their prey the murtherous band!
Ah, tell them, they are men!
(51-60)

These shall the fury Passions tear,
The vultures of the mind,
Disdainful Anger, pallid Fear,
And Shame that skulks behind;
Or pining Love shall waste their youth,
Or Jealousy with rankling tooth,
That inly gnaws the secret heart,
And Envy wan, and faded Care,
Grim-visaged comfortless Despair,
And Sorrow's piercing dart.
(61-70)

Ambition this shall tempt to rise,
Then whirl the wretch from high,
To bitter Scorn a sacrifice,
And grinning Infamy.
The stings of Falsehood those shall try,
And hard Unkindness' altered eye,
That mocks the tear it forced to flow;
And keen Remorse with blood defiled,
And moody Madness laughing wild
Amid severest woe.
(71-80)

Lo, in the vale of years beneath
A grisly troop are seen,
The painful family of Death,
More hideous than their Queen:
This racks the joints, this fires the veins,
That every labouring sinew strains,
Those in the deeper vitals rage:
Lo, Poverty, to fill the band,
That numbs the soul with icy hand,
And slow-consuming Age.
(81-90)

To each his sufferings: all are men,
Condemned alike to groan;
The tender for another's pain,
The unfeeling for his own.
Yet ah! why should they know their fate?
Since sorrow never comes too late,
And happiness too swiftly flies.
Thought would destroy their paradise.
No more; where ignorance is bliss,
'Tis folly to be wise.
(91-100)

* * *
内容としては、ひねくれていないバイロン、といったところ。

(逆にいえば、バイロンのポーズのルーツは、キリスト教的にも
古代ギリシャ・ローマ的にも伝統的な「この世ははかない」という主題、
ということ。)

スタンザ3の問いかけの連続は、キーツの「ギリシャの壺」に
つながっているはず。

* * *
ホラティウスの作品(の英語訳)の流れを汲む、
形式的に整ったタイプのオード。脚韻パターンは
ababccdeed.

ストレス・ミーター(四拍子)で、基本は一行8音節、
各スタンザの行2, 4, 10が6音節。

音節が9または7の行でも、短縮して8, 6で読める
ようになっている。

Their murmuring labours ply
--> Their murm'ring labours ply

* * *
英語テクストは次のページより。
http://www.thomasgray.org/cgi-bin/display.cgi?text=odec

* * *
学生の方など、自分の研究/発表のために上記を
参照する際には、このサイトの作者、タイトル、URL,
閲覧日など必要な事項を必ず記し、剽窃行為のないように
してください。

ウェブ上での引用などでしたら、リンクなどのみで
かまいません。

商用、盗用、悪用などはないようお願いします。


コメント ( 0 ) | Trackback (  )

John Keats, ("When I have fears that I may cease to be")

ジョン・キーツ
(「……もう死ぬんじゃないか、ってこわくなるんだ」)

……もう死ぬんじゃないか、ってこわくなるんだ、
頭のなかをペンで落穂拾いする前に、
まるで穀物でいっぱいの納屋みたいに
山積みの本がぼくの書いた字でいっぱいになる前に、ね。
……見えるんだ、星でいっぱいの夜空の顔に、
すばらしい騎士物語が、雲のようにぼやけた字で大きく書かれてるのが。
そして偶然なにかの魔法で、生きてるうちにそれを
なぞって書き写す、なんてことはもうできないのかな、とか思うんだ。
……それから、ね、思い知らされるんだ、一時間だけの恋人の
君のかわいい顔を見つめることももうできなくなる、
何も考えないでただ愛しあう、なんておとぎ話に浸ることも
もうできなくなる、なんて、ね。--そんなとき、頭のなかで、この広い世界の
いちばん端にひとりで立ちつくすんだ。そうすると、いろいろ考えてるうちに、
愛も名声も、みんな無の闇に沈んでいくんだ。

* * *
John Keats
("When I have fears that I may cease to be")

When I have fears that I may cease to be
Before my pen has glean’d my teeming brain,
Before high piled Books in charactery,
Hold like rich garners the full ripen’d grain―
When I behold, upon the night’s starr’d face,
Huge cloudy symbols of a high romance,
And think that I may never live to trace
Their shadows, with the magic hand of chance;
And when I feel, fair creature of an hour,
That I shall never look upon thee more,
Never have relish in the faery power
Of unreflecting Love;―then on the shore
Of the wide world I stand alone, and think
Till Love and Fame to nothingness do sink.

* * *
結核発症のだいぶ前、1818年1月の作品。

「一時間だけ・・・・・・」、というのは、
そのあいだだけお金で買ってて、ということ。
その女性に対して死を恐れる気持ちを語っている、
という設定。

* * *
英語テクストはLetters of John Keats to His Family
and Friends by John Keatsより。

http://www.gutenberg.org/files/35698/35698-h/35698-h.htm

* * *
学生の方など、自分の研究/発表のために上記を
参照する際には、このサイトの作者、タイトル、URL,
閲覧日など必要な事項を必ず記し、剽窃行為のないように
してください。

ウェブ上での引用などでしたら、リンクなどのみで
かまいません。

商用、盗用、悪用などはないようお願いします。


コメント ( 0 ) | Trackback (  )

Donne, ("Batter my heart, three-person'd God")

ジョン・ダン
(三位一体の神さま、こなごなになるまで)

三位一体の神さま、こなごなになるまで
わたしの心を打ち砕いてください。来てドアを
たたいてくださるくらいではたりません。息を吹き入れ、輝き、
そしてわたしを罪から解放してください。
わたしが立ちあがれるように、まっすぐ立っていられるように、
わたしをひっくり返してください。わたしを攻撃
してください。壊して、爆破して、焼き尽くしてください。
そして新しい人間にしてください。
わたしは、まるで占領された町です。
あなた以外のものになってしまっています。
あなたにおいでいただきたいのですが、でも、
ああ、それができないのです。
あなたの代理である理性が
わたしを守ってくれることになっているのですが、
その理性も捕虜になってしまっています。
弱くて、そして、いつ裏切るかわかりません。
神さま、わたしは心からあなたを愛しています。
あなたに愛されたいと思っています。
でも、あなたの敵と結婚してしまっているのです。
離婚させてください。こんな結婚、こんな結び目を
もう一度ほどいてください。壊してください。
誘拐してください。監禁してください。だってわたしは、
あなたの奴隷にならないかぎり自由になれないのです。
あなたに汚されないかぎり、きれいなからだでいられないのです。

* * *
John Donne
("Batter my heart, three-person'd God")

Batter my heart, three-person'd God ; for you
As yet but knock; breathe, shine, and seek to mend;
That I may rise, and stand, o'erthrow me, and bend
Your force, to break, blow, burn, and make me new.
I, like an usurp'd town, to another due,
Labour to admit you, but O, to no end.
Reason, your viceroy in me, me should defend,
But is captived, and proves weak or untrue.
Yet dearly I love you, and would be loved fain,
But am betroth'd unto your enemy;
Divorce me, untie, or break that knot again,
Take me to you, imprison me, for I,
Except you enthrall me, never shall be free,
Nor ever chaste, except you ravish me.

* * *
行1-9, 11はそれぞれ日本語では二行。

* * *
英語テクストは次のページから。
http://www.luminarium.org/sevenlit/donne/sonnet14.php

* * *
学生の方など、自分の研究/発表のために上記を
参照する際には、このサイトの作者、タイトル、URL,
閲覧日など必要な事項を必ず記し、剽窃行為のないように
してください。

ウェブ上での引用などでしたら、リンクなどのみで
かまいません。

商用、盗用、悪用などはないようお願いします。


コメント ( 0 ) | Trackback (  )

Shelley, "Ozymandias"

パーシー・ビッシュ・シェリー
「ラムセス二世」

いにしえの国を旅してきた人に会った。
彼は言った--「大きな足だけの石像が
砂漠に立ってて、その近くに
壊れかけた顔の部分が半分埋もれてた。しかめっ面を
してて、くちびるはしわしわで、冷たく、偉そうににやりとしてて・・・・・・
これをつくった人はそのモデルの性格をよく知ってたんだ、
命をもたない石のかたまりからそれが伝わるんだから。
これをつくった人や、そんな心の持ち主が死んだはるか後でも、ね。
石像の台のところにはこう書いてあった--
吾が名はラムセス二世、王の王なり。
強大なる者、吾なしとげたるもの見よ、して絶望すべし!--
ほかには何もなかった。この崩れた
巨大な像のまわりには、はてしなく、何もない
砂漠が寂しく広がってた。ずーっと、はるかかなたまで。」

* * *
Percy Bysshe Shelley (1792-1822)
"Ozymandias"

I met a Traveler from an antique land,
Who said, "Two vast and trunkless legs of stone
Stand in the desart. Near them, on the sand,
Half sunk, a shattered visage lies, whose frown,
And wrinkled lip, and sneer of cold command,
Tell that its sculptor well those passions read,
Which yet survive, stamped on these lifeless things,
The hand that mocked them and the heart that fed:
And on the pedestal these words appear:
'My name is OZYMANDIAS, King of Kings.
Look on my works ye Mighty, and despair!'
No thing beside remains. Round the decay
Of that Colossal Wreck, boundless and bare,
The lone and level sands stretch far away."

* * *
英語テクストは次のページから。
http://www.potw.org/archive/potw46.html

* * *
学生の方など、自分の研究/発表のために上記を
参照する際には、このサイトの作者、タイトル、URL,
閲覧日など必要な事項を必ず記し、剽窃行為のないように
してください。

ウェブ上での引用などでしたら、リンクなどのみで
かまいません。

商用、盗用、悪用などはないようお願いします。


コメント ( 0 ) | Trackback (  )

Shakespeare, Sonnet 18

ウィリアム・シェイクスピア
ソネット18

君を夏の日ざしにくらべようか?
でも、君のほうがきれいで、もっとやさしい。
強い風が吹けば、五月に出たばかりの若い芽は吹き飛んでしまうし、
夏のあたたかい日々もあっという間に終わってしまう。
ときどき太陽は熱く輝きすぎるし、
逆に翳(かげ)って輝かない日もよくある。
美しいものも、いつも美しいとはかぎらない。美しさは、
その時その時によって、また自然の変化のなかで、失われるものだから。
でも、君は永遠の夏、色あせることがない。
君の美しさはなくなったりしない。
傲慢な〈死〉も、彼の国で君を見ることはない。
永遠に生きる詩のなかで、君は、時がつづくかぎり生きつづける。
人々が息をし、ものを見ることができるかぎり、
この詩は生きつづけ、そして君に命を与えつづける。

* * *
William Shakespeare
Sonnet 18

Shall I compare thee to a summer's day?
Thou art more lovely and more temperate:
Rough winds do shake the darling buds of May,
And summer's lease hath all too short a date:
Sometime too hot the eye of heaven shines,
And often is his gold complexion dimmed,
And every fair from fair sometime declines,
By chance, or nature's changing course untrimmed:
But thy eternal summer shall not fade,
Nor lose possession of that fair thou ow'st,
Nor shall death brag thou wander'st in his shade,
When in eternal lines to time thou grow'st,
So long as men can breathe, or eyes can see,
So long lives this, and this gives life to thee.

* * *
8
untrimmed By chance or nature's changing course

* * *
英語テクストは次のページから。
http://www.shakespeares-sonnets.com/sonnet/18

* * *
学生の方など、自分の研究/発表のために上記を
参照する際には、このサイトの作者、タイトル、URL,
閲覧日など必要な事項を必ず記し、剽窃行為のないように
してください。

ウェブ上での引用などでしたら、リンクなどのみで
かまいません。

商用、盗用、悪用などはないようお願いします。


コメント ( 0 ) | Trackback (  )

Sidney, Astrophil and Stella, 52

フィリップ・シドニー
『アストロフィルとステラ』
ソネット52

〈美徳〉と〈愛〉が裁判で争っている。
両者いわく、ステラは自分のもの、とのことだ。
愛は主張する--ステラの目とくちびる、いや、あらゆるパーツから明らかだけど、
あの人はぼくのものです。いたるところにぼくのマークがついていて愛しいでしょ?
他方、〈美徳〉もこう反論する--
いえ、あの人のりっぱな精神、まちがいなくいずれ天に昇るであろう
魂のほうこそ、ステラです。(ああ、なんて愛しい名前なのでしょう!)
美しいお姿には確かに惹かれますが、それ自体はステラではありません。
ですから、あの美しいからだは
〈愛〉のものであってもかまいませんが、まさにステラそのものともいうべき
魂のなかには、〈愛〉のものであるところなどいっさい存在しないのです。
・・・・・・そうか、なるほど、〈愛〉よ、こういわれちゃしかたないな。
ステラそのものである魂とやらは、もう〈美徳〉のものということでいいよな。
で、からだだけもらっておこうな。

* * *
Philip Sidney
Astrophil and Stella
Sonnet 52

A strife is growne between Vertue and Loue,
While each pretends that Stella must be his:
Her eyes, her lips, her all, saith Loue, do this,
Since they do weare his badge, most firmly proue.
But Virtue thus that title doth disproue,
That Stella (O dear name!) that Stella is
That vertuous soule, sure heire of heau'nly blisse.
Not this faire outside, which our heart doth moue.
And therefore, though her beautie and her grace
Be Loues indeed, in Stellas selfe he may
By no pretence claime any manner place.
Well, Loue, since this demurre our sute doth stay,
Let Vertue haue that Stellaes selfe, yet thus,
That Vertue but that body graunt to vs.

* * *
英語テクストは次のページより。
http://pages.uoregon.edu/rbear/stella.html

* * *
学生の方など、自分の研究/発表のために上記を
参照する際には、このサイトの作者、タイトル、URL,
閲覧日など必要な事項を必ず記し、剽窃行為のないように
してください。

ウェブ上での引用などでしたら、リンクなどのみで
かまいません。

商用、盗用、悪用などはないようお願いします。


コメント ( 0 ) | Trackback (  )

From Congreve, Homer's Hymn to Venus (Aurora)

ウィリアム・コングリーヴ
「ホメロスのウェヌス讃歌」 より
(ウェヌスがアンキセスにアウロラとティトーヌスの物語を聞かせる)

金色の冠を頭にのせた夜明けの女神アウロラが、
ティトーヌスと結婚して、バラ色のベッドに彼を迎えたときね、
(そう、彼もトロイア人で、
顔も姿も神のように美しかったわ)
アウロラはすぐユピテルにお願いしたの、
ティトーヌスに永遠の命を与えてあげてください、って。
ユピテルもこの願いを聞いてくれた。
でも、かわいそうなんだけど、あわててよく考えてなかったのよね。
アウロラはいちばん大事なお願いをいい忘れちゃったの。
気づかなかったのか、思いつかなかったのか、ね。
長い命だけじゃだめで、強さも必要なの。
永遠の命といっしょに確保しておかなきゃいけなかったよね、
絶対に年をとらない永遠の若さをね。
で、美しき女神アウロラ、
金色の冠をかぶった、いちばんかがやいてる空の子がどうなったか、っていうとね、
ティトーヌスがまだ若くてかっこいいあいだはよかったの。
アウロラも彼が大好きでいちゃいちゃしてた。
ぎゅって抱きしめて、自分の宮殿、
大地のはて、海のはての向こうにある宮殿でふたりでくらしてた。
でも、彼に灰色の毛が生えはじめて、
ひげがや頭がかっこ悪くなってきたら、
抱きあっていてもアウロラはだんだん冷たくなってきて、
そのうち抱きしめたりしなくなって、いっしょに寝たりしなくなって、
でも、まだ最初はやさしく世話してあげてたの、
天にしかないおいしい食べものやきれいな服をあげたりして。
でも、ティトーヌスが本当に年をとってよぼよぼになって、
神経がちぢこまっちゃって手足がだめになってきたら、
もう使いものにならない、って彼を部屋に閉じこめちゃったの、
若さも力もないし、話すことすらできない、ってね。
こんなふうになるんだったら、
永遠の命なんてほしがるもんじゃないよね。

* * *
William Congreve
From Homer's Hymn to Venus
(Venus Tells Anchises the Story of Aurora and Tithonus)

But when the Golden-thron'd Aurora made
Tithonus Partner of her rosy Bed,
(Tithonus too was of the Trojan Line,
Resembling Gods in Face and Form Divine)
For him she straight the Thunderer address'd,
That with perpetual Life he might be bless'd:
Jove heard her Pray'r, and granted her Request.
But ah! how rash was she, how indiscreet!
The most material Blessing to omit;
Neglecting, or not thinking to provide,
That Length of Days might be with Strength supply'd,
And to her Lover's endless Life, engage
An endless Youth, incapable of Age.
But hear what Fate befell this heav'nly Fair,
In Gold inthron'd, the brightest Child of Air.
Tithonus, while of pleasing Youth possess'd,
Is by Aurora with Delight caress'd;
Dear to her Arms, he in her Court resides,
Beyond the Verge of Earth, and Ocean's utmost Tides.
But, when he saw gray Hairs begin to spread,
Deform his Beard, and disadorn his Head,
The Goddess cold in her Embraces grew,
His Arms declin'd, and from his Bed withdrew;
Yet still a kind of nursing Care she show'd,
And Food ambrosial, and rich Cloaths bestow'd:
But when of Age he felt the sad Extreme,
And ev'ry Nerve was shrunk, and Limb was lame,
Lock'd in a Room her useless Spouse she left,
Of Youth, of Vigour, and of Voice bereft.
On Terms like these, I never can desire
Thou shouldst to Immortality aspire.

* * *
英語テクストは The Works of Mr. William Congreve
in Three Volumes (1752), vol. 3 より。

http://books.google.co.jp/books?id=ZdFeAAAAcAAJ

* * *
学生の方など、自分の研究/発表のために上記を
参照する際には、このサイトの作者、タイトル、URL,
閲覧日など必要な事項を必ず記し、剽窃行為のないように
してください。

ウェブ上での引用などでしたら、リンクなどのみで
かまいません。

商用、盗用、悪用などはないようお願いします。


コメント ( 0 ) | Trackback (  )

From Shakespeare, Twelfth Night 2.4

ウィリアム・シェイクスピア
『十二夜』 2幕4場より
(オーシーノ―公と男装したヴァイオラ、愛の男女差について)

オーシーノー公:
セザーリオ、もう一度、
わたしの心を支配しているあの冷酷な貴婦人のところに行って、
伝えてくれ。わたしの愛は他の人々の愛よりもはるかに気高いから、
彼女の広い土地、泥だらけの大地など求めたりしない、と。
そんなもの、運の女神があの人にくれてるだけ、
そしてすぐに奪ったりもする。そんなもの、わたしにとってもどうでもいい。
宝石のなかの宝石のようなあの奇跡的な美しさ、
生まれたときからあの人を飾っているあの美しさにわたしは惹かれているのだ、と。

ヴァイオラ:
でも、もしあなたさまを愛せないとおっしゃったら、どういたしましょう?

オーシーノー公:
そういう答えは受けいれられないな。

ヴァイオラ:
いえ、受けいれなくてはならないのでは。
たとえば、ありがちなことですけど、どこかの貴婦人が
オーシーノーさまを愛していたとします。オーシーノーさまがオリヴィアさまを
愛しているのと同じくらい深く。でもオーシーノーさまはその方を
愛してはいない、そんなとき、その方はあきらめるしかないですよね?

オーシーノー公:
女の胸では
耐えられないはずだ。わたしのように苦しい愛でどうしようも
なくなっている、そんな心臓の強い動悸にはな。女の心は
小さいから、大きな愛を抱くことがない。しかも愛を長く保つことができない。
悲しいことだが、女たちの愛は食欲のようなもの、
強い愛の宿る肝臓からくる感情ではなく、口が求めるものなんだ。
だから満腹になったり、飽き飽きしたり、オエーッ、って吐き戻したりする。
わたしの愛はちがうぞ。海のように大きく、常に飢えている。
海のように、なんでも、いくらでものみこむ。だから比べたりしないでくれ、
女がわたしに対して抱く愛と、
わたしがオリヴィアに抱いている愛をな。

ヴァイオラ:
承知いたしました。ですが、知っているんです・・・・・・

オーシーノー公:
なにをだ?

ヴァイオラ:
女性が男性に抱く愛を、です。よく知っています。
本当なんです。女性たちだって、わたしたち男と同様、本当に人を愛するのです。
わたしの父には娘がいて、その子はある男性を愛していました。
たぶん、もしわたしが女性だったら
オーシーノーさまを愛していたであろう、っていうくらいに深く、です。

オーシーノー公:
で、その子はどうなったんだ?

ヴァイオラ:
どうにもなりませんでした。彼女は愛を告げることもなく
隠しつづけ、そしてその思いは、つぼみのなかのイモムシのように
彼女のバラ色の頬を蝕んでいきました。彼女は悲しみにやつれていき、
思い煩うなか青白くなっていき、
まるで〈忍耐〉の像のようにたたずむのみでした。
苦しみのなか、悲しい笑みを浮かべて。これはまさに愛ではありませんか?
わたしたち男は多くを語り、たくさん誓います。でも、往々にして
それは見かけにすぎません。いつもわたしたちは
誓いの言葉のなかで愛を証明するだけなんです。行動ではなく。

オーシーノー公:
で、おまえの妹は恋わずらいで死んだのか? なあ?

ヴァイオラ:
わたしの父の家の娘はわたししかおらず、
わたしの兄弟もわたしだけです。あれ、なんのことでしたっけ。
オーシーノーさま、あの方のところに行ってきます。

オーシーノー公:
そうだった、それを頼みたかったんだ。
急いでくれ。この宝石も渡してくれ。そして伝えてくれ、
わたしの愛は道を譲らない、拒絶など受けいれない、とな。

* * *
William Shakespeare
From Twelfth Night 2.4

DUKE ORSINO
Once more, Cesario,
Get thee to yond same sovereign cruelty:
Tell her, my love, more noble than the world,
Prizes not quantity of dirty lands;
The parts that fortune hath bestow'd upon her,
Tell her, I hold as giddily as fortune;
But 'tis that miracle and queen of gems
That nature pranks her in attracts my soul.

VIOLA
But if she cannot love you, sir?

DUKE ORSINO
I cannot be so answer'd.

VIOLA
Sooth, but you must.
Say that some lady, as perhaps there is,
Hath for your love a great a pang of heart
As you have for Olivia: you cannot love her;
You tell her so; must she not then be answer'd?

DUKE ORSINO
There is no woman's sides
Can bide the beating of so strong a passion
As love doth give my heart; no woman's heart
So big, to hold so much; they lack retention
Alas, their love may be call'd appetite,
No motion of the liver, but the palate,
That suffer surfeit, cloyment and revolt;
But mine is all as hungry as the sea,
And can digest as much: make no compare
Between that love a woman can bear me
And that I owe Olivia.

VIOLA
Ay, but I know--

DUKE ORSINO
What dost thou know?

VIOLA
Too well what love women to men may owe:
In faith, they are as true of heart as we.
My father had a daughter loved a man,
As it might be, perhaps, were I a woman,
I should your lordship.

DUKE ORSINO
And what's her history?

VIOLA
A blank, my lord. She never told her love,
But let concealment, like a worm i' the bud,
Feed on her damask cheek: she pined in thought,
And with a green and yellow melancholy
She sat like patience on a monument,
Smiling at grief. Was not this love indeed?
We men may say more, swear more: but indeed
Our shows are more than will; for still we prove
Much in our vows, but little in our love.

DUKE ORSINO
But died thy sister of her love, my boy?

VIOLA
I am all the daughters of my father's house,
And all the brothers too: and yet I know not.
Sir, shall I to this lady?

DUKE ORSINO
Ay, that's the theme.
To her in haste; give her this jewel; say,
My love can give no place, bide no denay.

* * *
ヴァイオラはオーシーノー公が好き、という。

* * *
英語テクストは次のページより。

http://shakespeare.mit.edu/twelfth_night/full.html

* * *
学生の方など、自分の研究/発表のために上記を
参照する際には、このサイトの作者、タイトル、URL,
閲覧日など必要な事項を必ず記し、剽窃行為のないように
してください。

ウェブ上での引用などでしたら、リンクなどのみで
かまいません。

商用、盗用、悪用などはないようお願いします。


コメント ( 0 ) | Trackback (  )

Milton, Paradise Lost (4: 289-340)

ジョン・ミルトン
『楽園は失われた』 (4:289-340)

より高貴で背の高いふたりがまっすぐ、
神のような姿で立っていた。生来の輝きにつつまれ、
裸でありつつ威厳あるそのさまは、まさに万物の支配者のよう、
すぐれた者のようであった。その神々しく輝く顔からは、
ふたりをつくった神の姿がうかがわれた。
そこには、誠実さと知恵、一点のしみもない清らかさ、神の子にふさわしい
真の自由のなかにある厳しさがあった。
人間の権威の源とは、まさにこのようなものなのである。ふたりは
等しくはなかった。明らかに性も異っていた。
彼、アダムは深く考え、勇敢に戦うべくつくられていた。
やさしさと心を惹く美しさが、イヴには与えられていた。
彼は神のみに従い、彼女はアダムのうちの神に従わねばならなかった。
彼のきれいな額と誇り高き目は
絶対的な支配者であることをあらわしていた。ヒアシンスのような巻き髪が、
顔の前でわけられていて、そこからぶどうの房のように、いい感じで
流れていた。その長さは、彼の広い肩の少し上くらいまでであった。
イヴの髪は金色で、その細い腰のところまで、まるで飾り気のない
ヴェールのように彼女をつつんでいた。
しばられたりせずに、髪は好き好きに小さな輪をつくりつつ波うっていた。
まるで、ぶどうのつたの丸まった先のような、そんなようすである。これが
示すのは従属、やさしく支配して、ということであった。
彼女はみずからをさし出し、それを受けいれる彼はうれしくてたまらない。
はにかみがちに、控えめながらも自己を主張し、
かわいらしく嫌がって、好きといいながらじらす、
そんなイヴのようすがたまらないのである。
あの不思議なからだの部分も、この頃はまだ隠されてはいなかった。
まだ罪の意識とか、恥とか、醜いとか、みだらとか、
自然がつくり与えたものについて、そんな考えかたはなかった。むしろ、
それは罪から生まれた美しくない偽の道徳にすぎない。そんなものがどれだけ
人々を苦しめてきたことか、ただの見せかけ、汚れのないふりを強いることによって!
いかに人々のくらしからいちばんの幸せ、
偽りのない、一点のしみもない、そんな無垢なよろこびを奪ってきたことか!
こうして、ふたりは裸で歩いていった。神や天使たちに見られても
特に気にすることなく。ふたりにやましいことなど、何もなかった。
こうして、ふたりは手をとりあって歩いていった。これまで
愛しあい、抱きしめあってきたカップルのなかでも、もっとも美しいふたりであった。
アダムは、彼の子孫の男たちのなかでいちばん美しかったし、
イヴも、彼女の娘たちのなかでいちばんきれいだった。
重なりあって陰をつくる木の葉たちが、緑の野原の上、
ささやきあっているところ、澄んだ泉のそばに
ふたりはすわった。楽しい庭の仕事を
少し、その後の涼しい西風が気持ちよく
感じられるくらい、安らぎがより安らかに
感じられるくらい、心地よい飢えと渇きを
感じるくらいの仕事をした後だったので、ふたりは夕食の果実を食べた。
桃の木は、みずから枝をさし出して、よろこんでその実を
彼らに与えた。羽毛のようにやわらかい草の生えた水際、
色とりどりの花々のあいだにすわるふたりに。
おいしい実にかぶりつき、またのどが渇けば
その皮を器にしてあふれる泉の水を飲んだ。
もちろん、楽しく会話しながら、愛おしげにほほえみあい
ながらである。若い恋人たちだから、当然いちゃついたり
もした。結婚のきずなで結ばれていたのだし、
またそばに誰もいなかったのだから。

* * *
John Milton
Paradise Lost, 4: 289-340

Two of far nobler shape erect and tall,
Godlike erect, with native Honour clad
In naked Majestie seemd Lords of all, [290]
And worthie seemd, for in thir looks Divine
The image of thir glorious Maker shon,
Truth, wisdome, Sanctitude severe and pure,
Severe but in true filial freedom plac't;
Whence true autority in men; though both [295]
Not equal, as thir sex not equal seemd;
For contemplation hee and valour formd,
For softness shee and sweet attractive Grace,
Hee for God only, shee for God in him:
His fair large Front and Eye sublime declar'd [300]
Absolute rule; and Hyacinthin Locks
Round from his parted forelock manly hung
Clustring, but not beneath his shoulders broad:
Shee as a vail down to the slender waste
Her unadorned golden tresses wore [ 305 ]
Disheveld, but in wanton ringlets wav'd
As the Vine curles her tendrils, which impli'd
Subjection, but requir'd with gentle sway,
And by her yielded, by him best receivd,
Yielded with coy submission, modest pride, [ 310 ]
And sweet reluctant amorous delay.
Nor those mysterious parts were then conceald,
Then was not guiltie shame, dishonest shame
Of natures works, honor dishonorable,
Sin-bred, how have ye troubl'd all mankind [ 315 ]
With shews instead, meer shews of seeming pure,
And banisht from mans life his happiest life,
Simplicitie and spotless innocence.
So passd they naked on, nor shund the sight
Of God or Angel, for they thought no ill: [ 320 ]
So hand in hand they passd, the lovliest pair
That ever since in loves imbraces met,
Adam the goodliest man of men since borne
His Sons, the fairest of her Daughters Eve.
Under a tuft of shade that on a green [ 325 ]
Stood whispering soft, by a fresh Fountain side
They sat them down, and after no more toil
Of thir sweet Gardning labour then suffic'd
To recommend coole Zephyr, and made ease
More easie, wholsom thirst and appetite [ 330 ]
More grateful, to thir Supper Fruits they fell,
Nectarine Fruits which the compliant boughes
Yielded them, side-long as they sat recline
On the soft downie Bank damaskt with flours:
The savourie pulp they chew, and in the rinde [ 335 ]
Still as they thirsted scoop the brimming stream;
Nor gentle purpose, nor endearing smiles
Wanted, nor youthful dalliance as beseems
Fair couple, linkt in happie nuptial League,
Alone as they. . . .

* * *
堕落前のアダムとイヴ。

17世紀の(やや特異な)男性が描く、
理想的な男性と女性のありかた、
理想的な男女関係・夫婦関係。

* * *
311行目の訳は2行に。

* * *
英語テクストは次のページより。
https://www.dartmouth.edu/~milton/reading_room/
pl/book_4/text.shtml

* * *
学生の方など、自分の研究/発表のために上記を
参照する際には、このサイトの作者、タイトル、URL,
閲覧日など必要な事項を必ず記し、剽窃行為のないように
してください。

ウェブ上での引用などでしたら、リンクなどのみで
かまいません。

商用、盗用、悪用などはないようお願いします。


コメント ( 0 ) | Trackback (  )

Milton, Paradise Lost (8: 500-520)

ジョン・ミルトン
『楽園は失われた』 (8:500-520)
(アダムとイヴ、初めての夜)

ぼくがこう言うのを聞いたイヴは、せっかく神さまが連れて来てくれてたんですが、
うぶだったからか、初めてで恥ずかしかったからか、
しっかりした子で、軽く見られたくなかったからか、
求められて嫌な気はしないけど、ただでは落ちない、っていうことなのか、
押しに弱いとか、むしろノリノリとか、そういうのじゃ全然なく、むしろ控えめな感じで、
だから余計にかわいいんですが、一言でいえば、
そういう性格だったんだと思います、汚れたことを恐れたり、ということではないのですが、
ぼくを見ると逃げ出してしまったんです。
ぼくは追いかけました。彼女も神聖なあのことについてはわかっていて、
だから、いいなりになるわけではなく、
でも、ぼくのいうことを受けいれてくれました。夫婦の部屋に
ぼくはイヴを連れて行きました。彼女は朝日のように顔を赤らめていました。空じゅうの
星たちが、いちばんの幸せへと
ぼくたちを導いてくれていました。大地も
よろこんでくれていました。丘のひとつひとつが、です。
鳥たちも楽しげに歌っていました。気持ちいい、やさしい風が
ぼくたちのことを森にささやいて告げ、その羽から
薔薇や、木々のいい香りを投げかけていました。
楽しげに、です。やがて恋する夜の鳥が
結婚の歌を歌い、そして宵の星に指示してくれたのでした、
丘の上に急いでいって、初夜の明かりを灯すように、と。

* * *
John Milton
Paradise Lost, 8: 500-520

She heard me thus, and though divinely brought, [500]
Yet Innocence and Virgin Modestie,
Her vertue and the conscience of her worth,
That would be woo'd, and not unsought be won,
Not obvious, not obtrusive, but retir'd,
The more desirable, or to say all, [505]
Nature her self, though pure of sinful thought,
Wrought in her so, that seeing me, she turn'd;
I follow'd her, she what was Honour knew,
And with obsequious Majestie approv'd
My pleaded reason. To the Nuptial Bowre [510]
I led her blushing like the Morn: all Heav'n,
And happie Constellations on that houre
Shed thir selectest influence; the Earth
Gave sign of gratulation, and each Hill;
Joyous the Birds; fresh Gales and gentle Aires [515]
Whisper'd it to the Woods, and from thir wings
Flung Rose, flung Odours from the spicie Shrub,
Disporting, till the amorous Bird of Night
Sung Spousal, and bid haste the Eevning Starr
On his Hill top, to light the bridal Lamp. [520]

* * *
アダムとイヴの出会い。

堕落前の理想的な結婚初夜のようすを、
17世紀の(やや特異な)男性が、フィクションとして
男性の視点から描く。

* * *
英語テクストは次のページより。
https://www.dartmouth.edu/~milton/reading_room/
pl/book_8/text.shtml

* * *
学生の方など、自分の研究/発表のために上記を
参照する際には、このサイトの作者、タイトル、URL,
閲覧日など必要な事項を必ず記し、剽窃行為のないように
してください。

ウェブ上での引用などでしたら、リンクなどのみで
かまいません。

商用、盗用、悪用などはないようお願いします。


コメント ( 0 ) | Trackback (  )

From Shakespeare, Two Gentlemen of Verona, 3.1

ウィリアム・シェイクスピア
『ヴェローナの二人の貴族』 3幕1場より

光、ではない、シルヴィアを照らさない光なんて。
よろこび、ではない、シルヴィアがそばにいないときのよろこびなんて。
そばにいてくれる、と想像して、
一点のしみもなく美しいあの人の幻を見つめる、そんなときを除けば。
夜、シルヴィアがそばにいてくれるのでなければ、
ナイティンゲールが鳴いても、ぼくにその歌は聞こえない。
昼、シルヴィアを見つめていないときの
ぼくに、日のあかりはないのと同じ。
あの人こそぼくそのもの。ぼくは消える、
星のように美しいあの人の光のなか
抱かれ、照らされ、養われ、命を与えられないなら。

* * *
William Shakespeare
From Two Gentlemen of Verona, 3.1

What light is light, if Silvia be not seen?
What joy is joy, if Silvia be not by?
Unless it be to think that she is by
And feed upon the shadow of perfection
Except I be by Silvia in the night,
There is no music in the nightingale;
Unless I look on Silvia in the day,
There is no day for me to look upon;
She is my essence, and I leave to be,
If I be not by her fair influence
Foster'd, illumined, cherish'd, kept alive.

* * *
映画Shakespeare in Love (邦題 『恋におちたシェイクスピア』 )
のオーディションの場面でヒロインが使ったセリフ。

他の人たちはみなマーロウ 『フォースタス博士』 中の
「千の船を浮かべた顔」 の一節を使っていて。

* * *
英語テクストは次のページより。
http://shakespeare.mit.edu/two_gentlemen/
two_gentlemen.3.1.html

* * *
学生の方など、自分の研究/発表のために上記を
参照する際には、このサイトの作者、タイトル、URL,
閲覧日など必要な事項を必ず記し、剽窃行為のないように
してください。

ウェブ上での引用などでしたら、リンクなどのみで
かまいません。

商用、盗用、悪用などはないようお願いします。


コメント ( 0 ) | Trackback (  )

Donne, ("Go and catch a falling star")

ジョン・ダン
「歌」
(「流れ星をつかまえに行こう」)

流れ星をつかまえに行こう。
マンドレイクの根を妊娠させよう。
過ぎた年月はどこに行く?
悪魔の足を二股にしたのは誰?
どうしたら人魚の歌が聞こえる?
どうしたらチクチク嫉妬を感じないですむ?
どんな
風が吹いたら
女の子は浮気しなくなる?

もし君が旅行好きなら、
ありえないものを探して、
毎日毎晩、三十年間旅してみて、
年をとって雪のように髪が白くなるくらいまで。
そして帰ってきたら聞かせて、
君が見たふしぎなできごとを全部。
たぶん、こういうから、
どこにもいなかった、って、
かわいいのに浮気しない女の子なんて。

もしそんな子がいたら教えて。
そんな子がいるなら旅する甲斐もあるし。
でも、やっぱりいいや。ぼくは行かないから。
そんな子がすぐ隣の家にいたとして、
君があったときにその子が浮気をしてなかったとして、
君が手紙を書いているあいだはまだそうだったとしても、
でも、
そんな子も、
ぼくが着く頃には絶対浮気してるはず。二人か三人と。

* * *
John Donne
"Song"
("Go and catch a falling star")

Go and catch a falling star,
Get with child a mandrake root,
Tell me where all past years are,
Or who cleft the devil's foot,
Teach me to hear mermaids singing,
Or to keep off envy's stinging,
And find
What wind
Serves to advance an honest mind.

If thou be'st born to strange sights,
Things invisible to see,
Ride ten thousand days and nights,
Till age snow white hairs on thee,
Thou, when thou return'st, wilt tell me,
All strange wonders that befell thee,
And swear,
No where
Lives a woman true and fair.

If thou find'st one, let me know,
Such a pilgrimage were sweet;
Yet do not, I would not go,
Though at next door we might meet,
Though she were true, when you met her,
And last, till you write your letter,
Yet she
Will be
False, ere I come, to two, or three.

* * *
ある意味、みんな浮気な女の子が好き、という。

* * *
英語テクストは次のページより。
http://www.luminarium.org/sevenlit/donne/song.php

* * *
学生の方など、自分の研究/発表のために上記を
参照する際には、このサイトの作者、タイトル、URL,
閲覧日など必要な事項を必ず記し、剽窃行為のないように
してください。

ウェブ上での引用などでしたら、リンクなどのみで
かまいません。

商用、盗用、悪用などはないようお願いします。


コメント ( 0 ) | Trackback (  )

Jonson, "Women Are But Men's Shadows"

ベン・ジョンソン
「女は男の影」

影は、追うと逃げていく。
でも逃げるふりして、追いかけてくる。
女も同じ、求めると拒まれる。
放っておくと、求めてくる。
だから女とは、
ぼくたち男のまさに影とはいえないか?

朝夕に影はいちばん長い。
真昼に影は短い、または、ない。
同じように、男が弱いとき、女は強い。
もし男が完璧だったら、女はいないかも。
だから女とは、
ぼくたち男のまさに影とはいえないか?

* * *
Ben Jonson
"Song: That Women Are But Men's Shadows"

Follow a shadow, it still flies you,
Seem to fly it, it will pursue:
So court a mistress, she denies you;
Let her alone, she will court you.
Say are not women truly, then,
Styl'd but the shadows of us men?

At morn and even shades are longest;
At noon they are or short, or none:
So men at weakest, they are strongest,
But grant us perfect, they're not known.
Say, are not women truly, then,
Styl'd but the shadows of us men?

* * *
この詩にあるような、男はこう、女はこう、
という一般論は不毛。よく知らない相手同士が
誤解したり、ケンカしたりする原因になるだけ。

最終的に、この人はこう、ということがわかって
はじめて(多かれ少なかれ)楽しい関係が築けるのでは。
あるいは逆に、楽しい関係になれば、ステレオタイプを
超えた相手の個性がわかってくるのでは。

* * *
英語テクストは次のページより。
http://www.luminarium.org/sevenlit/jonson/shadows.htm

* * *
学生の方など、自分の研究/発表のために上記を
参照する際には、このサイトの作者、タイトル、URL,
閲覧日など必要な事項を必ず記し、剽窃行為のないように
してください。

ウェブ上での引用などでしたら、リンクなどのみで
かまいません。

商用、盗用、悪用などはないようお願いします。

* * *
このブログを完全にコピーしたウェブサイトがあるようです。
(gooを使用している他の方々にも同じことがおこって
いるようです。すべての方ではないかもしれませんが。)

何が目的か、あるいは何の手違いか、など私にはまったく
わからないのですが、http://blog.goo.ne.jp/gtgsh で
はじまるページ以外、いっさい私は関知していませんので、
ご注意いただけますよう、よろしくお願いいたします。


コメント ( 0 ) | Trackback (  )

『名誉革命とイギリス文学』

『名誉革命とイギリス文学
--新しい言説空間の誕生--』

この夏、春風社より出版しました。
http://shumpu.com/archives/7913

執筆者の皆さま、春風社の皆さま、
ほかにもお世話をいただきました皆さま、
どうもありがとうございました。

* * *
(以下、お蔵入りした表紙案)


案 1


案 2

文字: 身内のアーティストS
写真、レイアウトなど: 私

画像編集とレイアウトには、MS Word と
PhotoScape(フリーソフト)を使用。
横線は17世紀の書物の何かから。


コメント ( 0 ) | Trackback (  )
« 前ページ