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Herbert, ("My God, where is that ancient heat towards thee")

ジョージ・ハーバート
(「神よ、かつてあなたに捧げられていた熱い想いは」)

神よ、かつてあなたに捧げられていた熱い想いは
どこへ行ったのでしょう?
殉教者たちの心で燃えていた炎は
どこに消えたのでしょう?
彼らのからだを焼いた炎とは別の、
あの炎は今どこにあるのでしょう? 詩は
ウェヌスの召使いになったのでしょうか?
彼女にだけ仕えているのでしょうか?
どうしてあなたについてのソネットが
書かれないのでしょうか? どうして
あなたの祭壇に歌が捧げられないのでしょうか?
あなたへの愛によって
心沸きたち、賛美を語らずにいられない、
ということはもはやないのでしょうか?
どこかの女性への愛以外に、です。
あなたの鳩は
クピドなどかんたんに追い抜ける
はずではないでしょうか?
あなたの道は深く、
永遠に変わらないのですから、
あなたを歌えば、静かで清らかで美しい詩が
できるはずではないでしょうか?
人の心に火をつけるのが、
いつか滅びてみみずですら
食べるのを拒むかもしれないような
肉体のみ、というのはおかしくないでしょうか?
そもそも人の心が熱く燃えるのは、
あなたがそのようにつくったからにほかならないのですから。

主よ、あなたを詩に描くには
海ほどのインクがあっても足りません。雨が洪水となって
大地をおおうように、あなたは栄光におおわれていますから。
雨は雲があなたを称える言葉です。それを、あなたを
称えること以外に用いてはいけないのです。
美しい薔薇と百合があらわしているのもあなたです。美しい女性を
そんな花にたとえるなんて、あなたに対する冒涜です。
女性の瞳は本当に水晶のようなのでしょうか?
これらの発想や表現は、卑しく燃える心に生まれるものです。
そこで燃えさかる炎は天に昇りません。
あなたを称えて歌ったりしないのです。
からだを開けば、そこにあるのは骨です。いちばん美しい女性の顔でも、
その下には醜く恐ろしいものがあります。本当に美しいものはあなただけ、
主よ、お姿をあらわしたときのあなただけなのです。

* * *
George Herbert
("My God, where is that ancient heat towards thee")

My God, where is that ancient heat towards thee,
Wherewith whole shoals of Martyrs once did burn,
Besides their other flames? Doth Poetry
Wear Venus' livery? only serve her turn?
Why are not Sonnets made of thee? and lays
Upon thine altar burnt? Cannot thy love
Heighten a spirit to sound out thy praise
As well as any she? Cannot thy Dove
Outstrip their Cupid easily in flight?
Or, since thy ways are deep, and still the same,
Will not a verse run smooth that bears thy name?
Why doth that fire, which by thy power and might
Each breast does feel, no braver fuel choose
Than that, which one day, worms may chance refuse?

Sure, Lord, there is enough in thee to dry
Oceans of ink; for as the Deluge did
Cover the Earth, so doth thy Majesty;
Each cloud distils thy praise, and doth forbid
Poets to turn it to another use.
Roses and lilies speak Thee; and to make
A pair of cheeks of them, is thy abuse.
Why should I women's eyes for crystal take?
Such poor invention burns in their low mind
Whose fire is wild, and doth not upward go
To praise, and on thee, Lord, some ink bestow.
Open the bones, and you shall nothing find
In the best face but filth; when, Lord, in Thee
The beauty lies in the discovery.

* * *
神に捧げるソネット二つ。女性への愛ではなく、
神への愛を詩に歌うべき、という内容。

* * *
前半の日本語訳では、各行が二行。

* * *
英語テクストは次のページより。
http://www.gutenberg.org/ebooks/13139
(二つのソネットのあいだに一行挿入。)

* * *
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Herbert, "Easter-Wings" (1)

ジョージ・ハーバート (1593-1633)
「復活の翼」(1)

主よ、あなたは、豊かに栄え、幸せなものとして人をつくりました。
が、愚かにも彼は与えられたものを失い、
どんどん貧しくなり、
とうとう
極貧に。

あなたとともに、
わたしをのぼらせてください。
ひばりのように、歌を歌いながら、
そして今日あなたの勝利を歌わせてください。
落ちたことにより、わたしがさらに飛ぶことができるように。

* * *

George Herbert
"Easter-Wings" (1)



Lord, who createdst man in wealth and store,
Though foolishly he lost the same,
Decaying more and more,
Till he became
Most poore:

With thee
O let me rise
As larks, harmoniously,
And sing this day thy victories:
Then shall the fall further the flight in me.

* * *

注など。

1 wealth
栄えていて幸せなこと(OED 1)。

1 store
食べものや必需品が豊富にあること(OED 4b)。

2 the same
= wealth and store.
先に話しに出てきたのと「同じ」もの、人(など)、ということ。

3 decay
栄え、幸せな状態から下り坂になっていく(OED 1b)。

5 poore
= poor. 所有物がないこと(OED 1a)。

7-9
ひばりは、地上からまっすぐ空に向かってのぼる(らしい)。
これを、「わたし」(の祈り)が天にのぼることの比喩として。

またシェリーの「ひばり」にもあるように、ひばりは大きな声で
(ほとんど熱狂的に)鳴く。これを「わたし」が神を称える歌の
比喩として。

ひばりの声(RSPBサイト内のページ)
http://www.rspb.org.uk/wildlife/
birdguide/name/s/skylark/index.aspx

9
「今日」というのは、タイトルにあるイースター、復活祭の日。
また、1-6行目にあるように、すべてを失った人(わたし)が、
神に出会って魂のレベルで生き返った日。

「勝利」というのは、イースターがあらわす、死に対する
イエスの勝利。また悪、堕落、不信心など(魂が死んだ状態)
に対する「わたし」の勝利。もちろん、「わたし」に勝たせて
くれたのはキリストなので、これも「あなたの勝利」。

10
いわゆる「幸福な堕落」(felix culpa = the fortunate fall)
という考え方。アダムとイヴが堕落したからこそ
イエスによる救済が与えられた、というプラス思考。

* * *

パターン・ポエム(pattern poem)。紙面に印字した際の
かたちにも意味をもたせている。

舞いあがる鳥(ひばり)の翼のかたちで、
天にのぼる神への祈りや賛美を。

横に飛ぶ鳥として(ふつうに英語が読めるように)印字すべき、
という見解が近年多いようだが、やはりこれは天に向かって
飛ばすべき。

また、次のような内容に、各行の語と音節の増減が対応。
(物質的に)豊かで幸せ
-->すべて失う
-->(救われて精神的に)豊かで幸せ。

さらに、すべてを失った極貧の状態のところで神に出会う、
というところも重要。

あわせて、神に向かう前に一行空いているところも。
すべてを失い--(無言のうちにいろいろ思いをめぐらして)--信仰へ。

* * *

リズムについて、など。

最初と最後の行が弱強五歩格。あとはストレス・ミーター(四拍子)。



前半は、現世的な富とともにことばが減り、思考
(ことばののっていない拍子)が増えていく。

後半は、思考(ことばののっていない拍子)が減っていき、
神をたたえる言葉が増えていく。

脚韻も効果的。(やや不完全ながら。)

store-poore
rise-victories
thee-harmoniously-me

* * *

英文テクストは、The Temple (1633) より。

* * *

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Herbert, "Altar"

ジョージ・ハーバート (1593-1633)
「祭壇」

砕かれたものから、主よ、祭壇をあなたのしもべがつくります。
材料は心で、セメントのかわりに涙で固めます。
その部品は、あなたがつくったままのもので、
工具でふれられてはいません。
心だけです、
そのような石は。
それを砕くことができるのは、
あなたの力だけ。
だからひとつひとつの
わたしの心のかけらたちが、
この祭壇に集まり、
そしてあなたを称えます。
わたしが口を閉じることがあったとしても、
この祭壇の石たち、わたしの心のかけらたちが黙ることはありません。
あなたの自己犠牲の恩恵にわたしも与らせてください。
そしてこの祭壇をあなたのもの、聖なるものとお認めください。

* * *

George Herbert
"The Altar"



* * *

パターン・ポエム。祭壇についての詩を祭壇のかたちで。

* * *

訳注と解釈例。

1
[B]rokenは、構文上はALTARにかかっているが、
内容的には次の行のheart(祭壇の材料としての心)
を説明。砕かれた心、ということ。

心が砕かれる、というのは、日常的なことばでは、
悲しみで心やぶれる、というような意味だが
(heart-breakとか、その系統)、キリスト教的には、
石のようにかたくな心が砕かれて神やイエスを
受けいれられるようになる、悔いあらためて
(改悛して)精神的、宗教的に新しい人になる、
ということ。

つまり、通常、石や木で祭壇をつくって教会におくが、
ここでは、悔いあらためた心のなかに、悔いあらためた
心のかけらで、祭壇をつくる、といっている。

同様に、ここの涙は、改悛や悔恨の涙。

3-4
祭壇の材料が、神がつくったままのもので、
工具でふれられてはいない、というのは、
出エジプト記、20章25節における神の命令通り
--「もしわたしのために石の祭壇をつくりたいなら、
切り出してきた石でつくってはならない。
道具でそれにふれると、石が汚れてしまうから」。

5-8
上記のような流れで、かたくなな心を砕くことが
できるのは、ばちあたりな人間を信仰に導くことが
できるのは、神だけ、ということ。

9-14
ルカ書19章28-40節が元ネタ。

(1)
群衆がイエスを称える。

(2)
ファリサイ派(ユダヤ教の主流派、正統派)の人が
イエスに、「あなたの弟子がうるさい、だまらせて」という。

(3)
イエスが答える、「この人たちが黙っても、すぐに石が叫びだす
[わたしを称えるために]」。

「祭壇」では、このエピソードにおけるイエスの支持者が
「わたし」の口に対応。また道端の石が祭壇の材料としての
砕かれた心のかけらに対応。つまり、口で神を賛美していない
時間があったとしても(たとえば食べているときとか)、
心のなかの祭壇で自分は神を称えつづける、ということ。

14
詩篇 51編16-17節などが元ネタ。

あなたはいけにえを望まない。・・・・・・
焼かれた捧げものではよろこんでもらえない。
捧げられるべきものは砕かれた心。
砕かれ、悔いあらためた心を、神よ、あなたは
受けいれてくださる。

(日本聖書協会のサイトのテクストでは18-19節?)

* * *

リズムの解釈例。





1
音節10で、弱強五歩格よりのストレス・ミーター。
呼びかけ "Lord" がなければ完全な四拍子。

2
音節10だが完全な四拍子。

3-14
ストレス・ミーター(四拍子)。行の長さが半分になる
5-12行目では、5-8がx/x/と整っているのに対し、
9-12ではストレス(とビート)を散らして変化をつけている。

(このような変化を求めるのは、17世紀前半までの発想。
ウォーラー、ドライデンなど17世紀半ば以降、
18世紀半ばまでは、このような変化が嫌われる。)

13-14
この二行だけ脚韻が不完全(peace/cease)。
パターン・ポエムというかたちなど、詩の形式、
技巧的な側面にこだわるハーバートのような詩人の場合、
ミスや手抜き、とみなす前に理由を考えてみる。

13 That if I chance to hold my peace,
(もし口を閉じても)

14 These stones to praise thee may not cease.
(石が神を称えつづける。)

13行目の、/s/音(chance, peace)と、14行目の/z/音
(stones, praise,cease)が対応。

/s/はことばで神を称えるのをやめたときの「シーン・・・・・・」
という静寂、沈黙を暗示。

/z/は・・・・・・石が神を称えるときに発する音を暗示。
石はことばを話せないので、かわりに「ズズズ・・・・・・」と
振動して音を出して神を称える。

このような沈黙と(心のなかの)石の振動音の対立を強調する
ために(また、このようなある種のちゃめっ気のようなものに
目を引くために)、わざわざ脚韻を不完全にしているものと思われる。

15-16
音節10、弱強五歩格。締めくくりの祈りということで散文的。
しかも、小さな声で祈る雰囲気にすべく、強音節を最小限にして
リズムを不明確に、また静かに。

* * *

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詩人のことば(2)--ハーバート、『異国のことわざ集』より--

詩人のことば(2)
ハーバート、『異国のことわざ集』より

49
愛と咳は隠すことができない。
Love, and a Cough cannot be hid.

53
口よりも足が軽やかなほうがいい。
Better the feet flip then the tongue.

88
お腹いっぱいでは戦えないし、逃げられない。
A full belly neither fights nor flies well.

89
真理を語ればいいというものではない。
All truths are not to be told.

96
悲しみよ、君はどこに行く? いつものところに。
Whether goest griefe? where I am wont.

97
夜に昼を称えよう。そして死ぬときに生を称えよう。
Praise day at night, and life at the end.

* * *
53
then = than

96
whether = whither
goest: go の二人称単数現在形
"Where do you go, Grief?"

97
"and [praise] life at the end"

* * *
George Herbert, Outlandish Proverbs (1640) より。

* * *
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