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Arnold, "A Question"

マシュー・アーノルド (1822-1888)
「疑問」

フォースタに。

よろこびは来ては去る。希望は引き、また満ちる、
波のように。
変化が人々の心の落ちつきや強さをほどいて壊す。
愛は生に貸し与える、魅力を少し、
悲しいほほえみも少し。が、その後
愛も生も冷たいところで眠る。
墓のなかで。

夢は夜明けのように輝き、そして逃げる。友はほほえみ、死ぬ、
春の花々のように。
もてはやされる生も、実は長くつづく葬儀のようなもの。
人々は苦い涙を流しながら墓を掘る、
届かなかった希望のための墓を。そしてみな、
疑念に惑い、恐れに病みつつ、
残された時間を数えている。

そう、残された時間を数えている。わたしたちの夢、
嘘で、空っぽだった夢、
わたしたちが去った後も、それは生きつづけるのか?
かすかに感じるよろこび、
ほほえみ、消えていった顔、
潰えるべくこの世に生まれた希望を、
追いかけようか?

* * *

Matthew Arnold
"A Question"

To Fausta

Joy comes and goes, hope ebbs and flows
Like the wave;
Change doth unknit the tranquil strength of men.
Love lends life a little grace,
A few sad smiles; and then,
Both are laid in one cold place,
In the grave.

Dreams dawn and fly, friends smile and die
Like spring flowers;
Our vaunted life is one long funeral.
Men dig graves with bitter tears
For their dead hopes; and all,
Mazed with doubts and sick with fears,
Count the hours.

We count the hours! These dreams of ours,
False and hollow,
Do we go hence and find they are not dead?
Joys we dimly apprehend,
Faces that smiled and fled,
Hopes born here, and born to end,
Shall we follow?

* * *

Fausta
アーノルドの姉のジェインのこと。

4 grace
いい印象を与えるもの、魅力(OED 1)。

18 apprehend
・・・・・の存在を感じる、認識する、見る(OED 8)。

15-21
(おそらく、いってはいけない、マネをしてもいけない内容。)

* * *

同時代の詩人スウィンバーンがこの詩について曰く、
「シェリーの声のこだまがかすかに・・・・・・」。

この手のナルシスト的な物思いのようなものは
シェリーから、ということ(?)

* * *

英語テクストは、Poetical Works of Matthew Arnold
(1891) より。
http://www.gutenberg.org/ebooks/27739

* * *

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Pound, "Nils Lykke"

エズラ・パウンド (1885-1972)
「ニルス・リュケ」

美しく、無限の記憶に、
ぼくの心は強く引かれる。
どうして君は、いつもぼくを呼んで、呼んで、呼ぶの?
どうして、そこの暗闇で小声でつぶやくの?
どうして、長い手をのばして、
ぼくと恋人の間に入ろうとするの?

どうして君は、いつも投げかけるの?
君の美の黒い影を、
ぼくの恋人の白い顔の上に。
どうして、彼女の水たまりのような両目をのぞきこむの?

* * *

Ezra Pound
Nils Lykke

Beautiful, infinite memories
That are a-plucking at my heart,
Why will you be ever calling and a-calling,
And a-murmuring in the dark there?
And a-reaching out your long hands
Between me and my beloved?

And why will you be ever a-casting
The black shadow of your beauty
On the white face of my beloved
And a-glinting in the pools of her eyes?

* * *

ニルス・リュケは16世紀の実在の人物。妻の死後、
その妹(か姉)と恋におちるが、当時の法では
これは近親相姦とされていたので、投獄され、処刑された。
このようなエピソードを題材に、イプセンはLady Inger of
Ostratという劇を書いた・・・・・・とのことらしい。
http://archive.org/details/collectedworksen01ibseuoft

この詩では、おそらく「君」が死んだ妻で、
「恋人」がその妹(か姉)。

(いつかこの劇を読んで確認します。いつか。)

* * *

お昼のドラマ的な題材と、それを超えて想像を
かきたてる言葉の混在。

Beautiful, infinite memories
The black shadow of your beauty
the pools of her eyes

* * *

英語テクストはExultations (1909)より。
http://www.gutenberg.org/ebooks/40200

* * *

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Pound, ("Love thou thy dream")

エズラ・パウンド (1885-1972)
「自分の夢を愛して」

自分の夢を愛して。
卑しい愛などあざけって。
風を愛して。
そして考えをあらためて。
真に存在するのは夢だけ。
なぜなら、夢のなかでぼくは君のところに行くから。

* * *

Ezra Pound
"Song" ("Love thou thy dream")

Love thou thy dream
All base love scorning,
Love thou the wind
And here take warning
That dreams alone can truly be,
For 'tis in dream I come to thee.

* * *

2
分詞構文で、scorning All base love.

* * *

とりあえず "Love thou the wind" に反応してしまう。

* * *

英語テクストはExultations (1909)より。
http://www.gutenberg.org/ebooks/40200

* * *

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Yeats, "The Witch"

ウィリアム・バトラー・イェイツ (1865-1939)
「魔女」

汗水たらして働いて金持ちになる、
それは、まさに寝ることのよう。
醜い魔女と。
そして、すべて吸いとられて干からびた後に、
連れていかれることのよう。
寝室に。そこでは、
ずっと好きだった人が横になっている。
絶望のなかで。

* * *

William Butler Yeats
"The Witch"

Toil and grow rich,
What's that but to lie
With a foul witch
And after, drained dry,
To be brought
To the chamber where
Lies one long sought
With despair?

* * *

ベン・ジョンソンのエピグラムの現代版、というような
雰囲気。短くて、教訓的で、ひねりがきいていて。

* * *

リズムについて。



ストレス・ミーター(四拍子)にのせようと思えば
のるのかもしれないが、この詩のいちばんのポイントは、
強音節しかない7行目。

* * *

英語テクストはYeats, Collected Poems (1956) より。
http://www.ota.ox.ac.uk/text/3019.html

* * *

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de la Mare, "The Buckle"

ウォルター・デ・ラ・メア (1873-1956)
「バックル」

銀のバックルがあって、
それを靴に縫ってつけた。
そしてヤドリギの枝の下で
夕暮れ時にずっと踊った。

クリンザクラの束があって、
それをほら穴に隠した。
妖精たちが夜にやってきて、
わたしのことを思い出してくれるように。

黄色のリボンがあって、
それを髪に結んだ。
庭を歩いてるときに、
鳥たちに見えるように。

秘密の笑い方があって、
壁のそばでそんなふうに笑った。
ツタと風だけが、
それを知っている。

* * *

Walter de la Mare
"The Buckle"

I had a silver buckle,
I sewed it on my shoe,
And 'neath a sprig of mistletoe
I danced the evening through!

I had a bunch of cowslips,
I hid 'em in a grot,
In case the elves should come by night
And me remember not.

I had a yellow riband,
I tied it in my hair,
That, walking in the garden,
The birds might see it there.

I had a secret laughter,
I laughed it near the wall:
Only the ivy and the wind
May tell of it at all.

* * *

3 mistletoe
ヤドリギ。


By David Monniaux
http://commons.wikimedia.org/wiki/
File:Mistletoe_P1210829.jpg

クリスマスの日にこの木の下に立っている女の子には
キスしていいという風習がある。ということもあって、
クリスマスの装飾に使われる。
https://www.google.co.jp/search?um=1&
tbm=isch&q=%22sprig+of+mistleto%22&gs_l=
img.3...18663.20231.0.20305.2.2.0.0.0.0.234.
234.2-1.1.0...0.0...1c.1.6pKOLs-IfCc&biw=
835&bih=426&sei=UtdUUJTMA-WfiAeGvYHIBw

5 cowslip
クリンザクラ。


By Bob Danylec
http://commons.wikimedia.org/wiki/
File:Cowslips._-_geograph.org.uk_-_162051.jpg

* * *

英文テクストはSongs of Childhood (1902) より。
http://www.gutenberg.org/ebooks/23545

* * *

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Denham, from "Cooper's Hill"

ジョン・デナム (1615-1669)
「クーパーの丘」より

ああ、わたしもおまえ[テムズ川]のように流れていきたい。雄大な流れを
わたしの模範としたい。詩の主題とするのみならず!
おまえは深く、しかし澄みわたる。ゆるやかで、しかし鈍くのろいわけではない。
力強いが荒れ狂うことなく、あふれ出すことなく満ち満ちている。

* * *

John Denham
From "Cooper's Hill"

Oh, could I flow like thee, and make thy stream
My great example, as it is my theme!
Though deep, yet clear; though gentle, yet not dull;
Strong without rage, without o'erflowing full.
(189-93)

* * *

「クーパーの丘」は、デナムが住んでいたサリー、エガム(Egham)の
近くの丘。これは、そこから見た風景に政治的思索を重ねた作品。

ドライデンは、この詩を「まさによい文体の規範」として高く評価。
(Rival Ladiesの献呈文にて。)

また、192-93行目をとりあげて曰く、「この二行の美しさに注目した
詩人はほとんどいないし、その美しさがどこから来るのかを説明できる
人はもっと少ない」。(『アエネイス』英語訳の献呈文にて。)

* * *

英語テクストは、Poetical Works of Edmund Waller
and Sir John Denham by Denham and Waller (1857) より
http://www.gutenberg.org/cache/epub/12322/pg12322.html

* * *

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Lovelace, "The Vintage to the Dungeon"

リチャード・ラヴレイス (1618-1657)
「牢獄に乾杯」

I.
閉じこめられた者たちよ、楽しく歌え!
自由の身でも、心配があれば、手かせ足かせがあるのと変わらない。
とらえられていても、楽しければ、自由の身と変わらない。
鎖を二重にしたいか?
でなきゃ、なぜそう悲しむ?

(みんなでいっしょに)
腕の翼がもがれているとき、
悲しみは、さらに心に手錠をかける。

II.
だから、囚人たちよ、懲りてはダメだ。
強くて、深くて、古いワインを飲め。
頭をワインの牢屋に入れてしまえ。
浮かれた気分と、
のどが自由なら--

(みんなでいっしょに)
手かせ足かせ、痛みのなかで、勝ち誇れ、
そして鎖の音楽にあわせて踊れ。

* * *

Richard Lovelace
"The Vintage to the Dungeon: A Song"

I.
SING out pent Soules, sing cheerefully!
Care Shackles you in Liberty,
Mirth frees you in Captivity:
Would you double fetters adde?
Else why so sadde?

(Chorus)
Besides your pinion'd armes you'l finde
Griefe too can manakell the minde.

II.
Live then Pris'ners uncontrol'd;
Drink oth' strong, the Rich, the Old,
Till Wine too hath your Wits in hold;
Then if still your Jollitie,
And Throats are free;

(Chorus)
Tryumph in your Bonds and Paines,
And daunce to th' Musick of your Chaines.

* * *

英語テクストは、The Poems of Richard Lovelace (1904)より。
http://www.luminarium.org/sevenlit/lovelace/vintage.htm

* * *

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詩人のことば(8)--Martial 12.47--

詩人のことば(8)
マルティアリス (c.43-c.103)
エピグラム 12.47 (46?)

気むずかしいのにつきあいやすい。楽しく、同時に荒っぽい。
君とは生きられないし、君なしでも無理。

* * *

Martial
Epigram 12.47 (46?)

DIFFICULT and easy-going, pleasant and churlish,
you are at the same time: I can neither live
with you nor without you.

* * *

DIFFICILIS facilis, iucundus acerbus es idem:
nee tecum possum vivere nee sine te.

* * *

英語、ラテン語テクストは、Martial: Epigrams, trans.
W. C. A. Ker (1920), vol. 2 より。
(Loeb Classical Libraryシリーズ。)
http://archive.org/details/martialepigrams02martiala

* * *

ラテン語から直訳。
上のKerの英語訳も、ラテン語からの直訳に近い。
(1973年のペンギン版では、まったくニュアンスが違う。)

いろいろな英語訳があるが、ラテン語から訳すと、
「紫陽庵 casina d'ortensia」の方の
日本語訳に近づいていく。
http://hydrangeaceae.jugem.jp/?day=20080218

* * *

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Crabbe, The Village, Bk. 1

ジョージ・クラッブ (1754-1832)
『村』 第一巻

(要旨)
主題の提示--牧歌に関するコメント--海岸近くの地域の描写--貧しい街--密輸業者とそれを手伝う者たち--粗野な住人--高波による被害--田舎のくらし一般について考える、特にその悪い面について--若い労働者--老人の独白--教区の貧民のための家とそこの住人たち--貧しい病人と薬屋--死にゆく貧民--田舎の司祭

村のくらしと、そこで若い農民や老いていく羊飼いたちを
支配するすべての心配ごと、
労働がもたらすものや、労働ができなくなった
老人が、動かないからだで思い知ること、
真の貧しい人々の絵に描かれるべきもの、
これらを歌わなくては。詩神はもう歌ってくれないから。
1-6

もう過ぎ去った、きれいなメロディの歌で、
田舎の詩人が故郷の野原を称えたような時代は。
羊飼いたちは、もうたがいに歌いあったりしない、
田舎の美しさや、彼らの恋人たちについて。
だが、わたしたち詩人は、いまだにそんな軟弱な歌をつくる。
いまだにわたしたちの歌では、恋するコリュドーンが報われない恋を嘆き、
羊飼いの少年たちも恋の痛みを語る。
つまり、ああ、彼らが本当に感じているものとは違う痛みについて。
7-14

(つづく)

* * *

George Crabbe
The Village, Book 1

(Argument)
The Subject proposed - Remarks upon Pastoral Poetry -
A Tract of Country near the Coast described -
An Impoverished Borough - Smugglers and their Assistants -
Rude Manners of the Inhabitants - Ruinous Effects of
the High Tide - The Village Life more generally
considered: Evils of it - The Youthful Labourer -
The Old Man: his Soliloquy - The Parish Workhouse:
its Inhabitants - The sick Poor: their Apothecary -
The dying Pauper - The Village Priest.

The village life, and every care that reigns
O'er youthful peasants and declining swains;
What labour yields, and what, that labour past,
Age, in its hour of languor, finds at last;
What form the real picture of the poor,
Demand a song ― The Muse can give no more.
1-6

Fled are those times, if e'er such times were seen,
When rustic poets praised their native green:
No shepherds now in smooth alternate verse,
Their country's beauty or their nymphs' rehearse;
Yet still for these we frame the tender strain,
Still in our lays fond Corydons complain,
And shepherds' boys their amorous pains reveal,
The only pains, alas! they never feel.
7-14

* * *

1-6
構文は、
主部:
1 The Village Life
2 every care . . .
3 What labour yields
4 what Age finds at last
5 What form the real Picture of the Poor

述部:
Demand a song.

3-4
構文は、what Age finds at last in its hour
of languor (that labour [being] past =
when that labour is past).

12 Corydon
古代の詩人テオクリトスやウェルギリウスらの作品に
出てくる田舎の少年の名前。

* * *

この「村」という作品は、本当の田舎の暮らしを知らない都市や
宮廷の詩人が田舎の暮らしを称える、という伝統的な牧歌の
ジャンルの嘘を暴く。つまり、田舎の貧しい人々の厳しい生活を
これでもか、というくらいに赤裸々に描く。(同情的に、というわけでもなく。)

* * *

英語テクストは、David Hill Radcliffe, ed.,
Spenser and the Tradition: English Poetry, 1579-1830より。
http://spenserians.cath.vt.edu/TextRecord.php?
action=GET&textsid=37882

要旨argumentのみ、George Crabbe, The Village and the
Newspaperより。
http://www.gutenberg.org/ebooks/5203

* * *

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詩人のことば(7)--Martial 9.81--

詩人のことば(7)
マルティアリス (c.43-c.103)
エピグラム 9.81

アウルス、読者や聴衆はわたしの作品を気に入ってくれるが、
ある詩人がいうには、わたしの詩は雑らしい。別にいい。
なぜなら、わたしが料理人なら、料理で客を喜ばせなくては
ならないから。仲間の料理人ではなく。

* * *

Martial
Epigram 9.81

Reader and hearer approve of my works, Aulus,
but a certain poet says they are not polished. I
don't care much, for I should prefer the courses of
my dinner to please guests rather than cooks.

* * *

Lector et auditor nostros probat, Aule, libellos,
sed quidam exactos esse poeta negat.
non nimium euro : nam cenae fercula nostrae
malim convivis quam placuisse cocis.

* * *

マルティアリスは古代ローマの諷刺詩人。

* * *

英語およびラテン語テクストは、Martial, Epigrams:
With an English Translation (1920) より。
http://archive.org/details/epigramswithengl02martuoft

英語からの訳。ペンギン版の英訳Martial, Epigrams (1973)
も参照しながら。

* * *

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de la Mare, "Reverie"

ウォルター・デ・ラ・メア (1873-1956)
「夢想」

ほっそりしたソフィアが馬に乗り、
木々で縁どられた道を行くとき、
心のなかのメロディに、
彼女は、あわせているかのよう。

一歩一歩、蹄を高く上げて歩く、
暗く房をなす松の下。
銀の光線が、馬のハミと
くつわのなかに光る。

馬の目のなか、炎が燃える。彼の尾は弧を描き、
木陰の空気のなかを流れる。
日差しが、彼の漆黒の胴をやさしくなでる。
彼に乗る彼女の髪も。

彼女の服は、影をつくって下に流れる。
あぶみには静かに彼女の足が。
彼女は上を向く。まるで大地のことなど
気にしていないかのように。

道に音はなく、
憂鬱な松の木々も歌わない。
青は暗く、そよ風も流れていない、
枝のあいだを。

ほっそりしたソフィアが馬に乗り、
木々で縁どられた道を行くとき、
心のなかのメロディに、
彼女は、あわせているかのよう。

* * *

Walter de la Mare
"Reverie"

When slim Sophia mounts her horse
And paces down the avenue,
It seems an inward melody
She paces to.

Each narrow hoof is lifted high
Beneath the dark enclust'ring pines,
A silver ray within his bit
And bridle shines.

His eye burns deep, his tail is arched,
And streams upon the shadowy air,
The daylight sleeks his jetty flanks,
His mistress' hair.

Her habit flows in darkness down,
Upon the stirrup rests her foot,
Her brow is lifted, as if earth
She heeded not.

'Tis silent in the avenue,
The sombre pines are mute of song,
The blue is dark, there moves no breeze
The boughs among.

When slim Sophia mounts her horse
And paces down the avenue,
It seems an inward melody
She paces to.

* * *

(メモ)

ソフィアって誰? おとぎ話に出てくる誰か?
デ・ラ・メアの母のこと?(母の名はソフィア。)
(この詩が収められているのは『子どものころの歌』
という詩集。)

道の(松の)描写が暗いのは、なぜ。

* * *

英文テクストはSongs of Childhood (1902) より。
http://www.gutenberg.org/ebooks/23545

* * *

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de la Mare, "Faint Music"

ウォルター・デ・ラ・メア (1873-1956)
「かすかな音楽」

弧を描く静かな彗星。音のない雨。
霧が、黙ったまま、動かない堀の水と親しく話している。
放っておかれた花のためいき。
あのベルの聞こえない音色。

内に隠れた自分が騒ぎ出す。その眠りは破られて。
愛の秘密が、水晶のように、子宮のなかに生まれる。
心臓は裏切ることなく脈打つ、口に出して誓わなくても。
すべての音は、静寂に向かう。

* * *

Walter De la Mare
"Faint Music"

The meteor's arc of quiet; a voiceless rain;
The mist's mute communing with a stagnant moat;
The sigh of a flower that has neglected lain;
That bell's unuttered note;

A hidden self rebels, its slumber broken;
Love secret as crystal forms within the womb;
The heart may as faithfully beat, the vow unspoken;
All sounds to silence come.

* * *

声や音を発することがなくても、表に見えなくても、
何かが起こっている、ということをいろいろなかたちで
表現した作品。

思うに、ワーズワース、シェリーら、ロマン派以降の
イギリス詩の直系、という雰囲気。

(テニソン、ロセッティなど、ヴィクトリア朝詩人の
センチメンタルな雰囲気も加わっていて。)

* * *

5
構文は、A hidden self rebels, its slumber [being] broken.

6
構文は、主部: Love secret/述部: forms (自動詞)

7
構文は、The heart may as faithfully beat,
the vow [being] unspoken, [as when it is spoken].

[口に出して誓ったときと同じくらいに]、心臓は裏切ることなく脈打つ、
誓いを口に出さなくても。

誓いを口に出しても出さなくても、それを守る意志は同じ、ということ。

* * *

個人的にデ・ラ・メアの詩には、シドニー、シェリー、
イェイツなどに通じるような、さりげなくきれいに言葉を
並べるセンスのようなものを感じる。

子ども向けの物語や、幻想的、怪奇的な小説なども
書いており、大詩人という雰囲気ではないが、
彼の詩は、イェイツ、パウンド、オーデンら、
いわゆる大詩人たちによって高く評価されていた。

* * *

英文テクストは、Walter De la Mare, Collected Poems
(1941) より。

* * *

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de la Mare, "When the Rose is Faded"

ウォルター・デ・ラ・メア (1873-1956)
「バラが枯れても」

バラが枯れても、
思い出は、まだそばにいる。
かげってしまった美しさの、
消えてしまった香りの、そばに。

そんな消えゆく美しさ、
重くなる香りは、
もう生にしばられず、
死を悲しむこともない。

永遠に消えない想い、
その強い気持ちがいつも、
移りゆくものの
変化を止める。

そのように、君の美しさは、
わたしにとって、この世でいちばんのきれいな君は、
悲しみに暗くなることなく、輝き、
燃える、君とともに。

* * *

Walter de la Mare
"When the Rose is Faded"

When the rose is faded,
Memory may still dwell on
Her beauty shadowed,
And the sweet smell gone.

That vanishing loveliness,
That burdening breath,
No bond of life hath then,
Nor grief of death.

'Tis the immortal thought
Whose passion still
Makes the changing
The unchangeable.

Oh, thus thy beauty,
Loveliest on earth to me,
Dark with no sorrow, shines
And burns, with thee.

* * *

バラネタ、時間ネタ、の20世紀版。

* * *

6 breath
4行目のthe sweet smellのこと。
8行目のdeathと韻を踏むためにこの語に。

10, 12
各スタンザの2行目と4行目で脚韻を踏んでいるが、
ここだけ不完全。

[S]till(「いつも、常に」という古い意味)と
unchangeable(変化しえない)のあいだの明確な
意味のつながりを、ここでは音より優先している。

* * *

英文テクストは、ウェブサイトPoets' Cornerより。
http://theotherpages/poems/

* * *

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道端アート/素人アート (8) + 自然

道端アート/素人アート (8) + 自然



身内のアーティストS



富士山(ルドンのキュクロープス風?)
http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Redon.cyclops.jpg
http://www.kmm.nl/object/KM%20103.098



線香花火(どこかで見たような構図?)



イワシたち

* * *

画像は私が撮影したもの。

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Crashaw, "On Our Crucified Lord"

リチャード・クラショー (1613-1649)
「裸で十字架にかけられて血を流す我らが主について」

彼らはあなたを裸にした、主よ。むしろ裸にしただけならよかった!
このような服など、あなたに与えなければよかったのだ。
あなたを、あなた自身で、彼らは豊かに装った、
あなたの脇腹という真紅のたんすを開いて。
これほどあなたに似合う服はどこにもないだろう、
あなた自身の血という服ほどには――。

* * *

Richard Crashaw
"On Our Crucified Lord Naked and Bloody"

They've left Thee naked, Lord; oh that they had!
This garment, too, I would they had denied.
Thee with thyself they have too richly clad,
Op'ning the purple wardrobe of thy side.
Never could be found garments too good
For Thee to wear, but these of Thine own blood.

* * *



この詩のポイントは、子音の/d/音や/ð/をきわめて
多用することにより、イエスを殴り、引きずるようすを
連想させているところ。

/w/音や/ou/音は、イエスのうめき声。
(/ou/ の /o/ は、schwa[eを上下ひっくり返した記号]に
したいが、出てこないようなので /o/ で代用。)

* * *

画像は自粛するが、ルーベンスの「キリスト降架」など、
キリスト処刑の場面を描く宗教画に対応する詩。

http://commons.wikimedia.org/wiki/
File:Descent_From_The_Cross.jpg

(この絵はまだきれいなほう。クラショーのほうが、
見方にもよるが、リアリズム的、あるいは悪趣味。
痛々しいのでおすすめはしないが、社会問題にも
なった映画『パッション』など、参考になる。)

* * *

英文テクストは、The Poetical Works of Richard Crashaw
and Quarles' Emblems (1857) より。
http://archive.org/details/poeticalworksofr00crasuoft

* * *

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