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Fanshawe (tr.), Horace, Ode 2.3

リチャード・ファンショー (訳)
ホラティウス、オード2巻3番

いつも同じ心の状態でいましょう。不運の
嵐に沈んだり、甘い
成功に酔わないようにしましょう。
だって、デリウスさん、あなたもいずれ死ぬのですから。
落ちこんでいても、
どこかの谷でのんびり寝転んでいても、結局、同じことです。
いつも楽しく生きましょう、
いちばんいいシェリー酒を飲みながら。
白いポプラと背の高い松が
いっしょに木陰をつくってくれるところ、
静かな小川がさらさら
曲がって流れるところで。
ワインと香水をもってこさせましょう。
あっという間に散っていく春の花をとってこさせましょう。
お金と若さがあって、そして〈運命〉の女神三姉妹が
まだ命の糸を切らないでいてくれるのですから。
買った家はいずれ手放さなくてはなりません。
金色のテヴェレ川の近くのお屋敷をです。
しかたありません。あなたが大事にしてきたものは、
みんなあなたの跡継ぎのものになります。
あなたがいにしえのイナコス王の子孫で
お金持ちでも、あるいは道端で
寝るような身分でも、結局同じことです。
〈死〉は誰にもえこひいきをしません。
みんな行き先は同じです。壺からくじを
最初に引いても最後に引いても
もらえるのは同じ切符です。それをもって
みんなこの世から永久に追放されるのです。

* * *
Richard Fanshawe (tr.)
Horace, Ode 2.3

Keep still an equal Minde, not sunk
With storms of adverse chance, not drunk
With sweet Prosperitie,
O Dellius that must die,
Whether thou live still Melancholy,
Or stretcht in a retired Valley;
Make all thy howers merry
With Bowls of choicest Sherry.
Where the white Poplar and tall Pine,
Their hospitable shadow joyne,
And a soft purling Brook,
With wrigling stream doth crook;
Bid hither Wines and Oyntments bring,
And the too short Sweets of the Spring,
Whilst Wealth and Youth combine,
And the Fates give thee Line.
Thou must forgoe thy purchas'd Seats,
Ev'n that which Golden Tiber wets,
Thou must; and a glad Heyre
Shall revel with thy Care.
If thou be Rich, born of the Race
Of Antient Inachus, or Base
Liest in the street; all's one;
Impartial Death spares none.
All go one way: shak'd is the Pot,
And first or last comes forth thy Lot,
The Pass, by which thou'rt sent
T'Eternall Banishment.

* * *
キーワード:
中庸 the golden mean
心の安らぎ ataraxia
カルペ・ディエム carpe diem
この世に対する侮蔑 contemptus mundi

* * *
英語テクストは Selected parts of Horace,
Prince of Lyricks (1652) から。

* * *
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Spenser, Amoretti 58 ("Weake is th' assurance. . . ")

エドマンド・スペンサー
『アモレッティ』 58番
(「肉体なんて弱いものですから」)

肉体なんて弱いものですから、人の自信なんてあてになりません。
自分の力を信じ、他人の助けなんていらないと言ってても、
みんないつの間にか倒れて死んでいきます。いちばん自信が
あるときに、何も恐れてないときにです。
肉体をもつ人間はみなもろく、その力も、
風に吹かれてはじけて消える泡のようなものです。
時にむさぼり食われ、気ままな偶然の犠牲になり、
美しさも幸せも、あとかたもなく失われていきます。
豊かな者も、かしこい者も、強い者も、美しい者も、
自分は大丈夫、と思っているときに死んでいくのです。
いちばん高い地位にいても、いちばん下まで
落ちていきます。この世に永続するものなどないのですから。
だから、美しいのに冷たいあなた、勘違いしすぎじゃないですか?
どうしてそんなに自分に自信をもてるんですか?

* * *
Edmund Spenser
Amoretti, Sonnet 58
("Weake is th' assurance that weake flesh reposeth")

Weake is th' assurance that weake flesh reposeth,
In her owne powre and scorneth others ayde:
that soonest fals when as she most supposeth,
her selfe assurd, and is of nought affrayd.
All flesh is frayle, and all her strength vnstayd
like a vaine bubble blowen vp with ayre:
deuouring tyme & changeful chance haue prayd,
her glories pride that none may it repayre.
Ne none so rich or wise, so strong or fayre,
but fayleth trusting on his owne assurance:
and he that standeth on the hyghest stayre
fals lowest: for on earth nought hath enduraunce.
Why then doe ye proud fayre, misdeeme so farre,
that to your selfe ye most assured arre.

* * *
キーワード:
メメント・モリ memento mori
この世に対する侮蔑 contemptus mundi
時 time
運 fortune
無常 non semper
宮廷風恋愛 courtly love

* * *
英語テクストは次のページより。
http://pages.uoregon.edu/rbear/amoretti.html

* * *
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Ronsard, ("Marie, vous avés la joue aussi vermeille")

ピエール・ド・ロンサール (1524-85)
(「マリー、あなたの赤い頬は」)

マリー、あなたの赤い頬は、まるで
五月の薔薇のようです。髪は
栗色で、からみあうようにカールしていて、
耳のまわりでかわいく、くりくりしています。

あなたのくちびるには蜜があふれています。あなたがまだ
小さかったとき、かわいい蜂が蜂蜜をつくっておいていったのです。
あなたの目からは〈愛〉の神の矢が飛んできて、逆らうことができません。
〈説得〉の女神がくれたあなたの声には誰もかないません。

あなたの胸は、ふたつの山、
白いクリームの山のようです。花のネックレスがあなたの首を
飾っています。小さな女の子が七月につくってくれたばかりなのです。

あなたの腕はユーノーのようです。胸は〈美〉の女神三姉妹のようで、
顔と手は〈夜明け〉の女神のようです。
でも、あなたの心には、誇り高き雌ライオンがいるのです。

* * *
Pierre de Ronsard
("Marie, vous avés la joue aussi vermeille")

Marie, vous avés la joue aussi vermeille
Qu'une rose de Mai, vous avés les cheveus
De couleur de chastaigne, entrefrisés de neus,
Gentement tortillés tout-au-tour de l'oreille.

Quand vous estiés petite, une mignarde abeille
Dans vos levres forma son dous miel savoureus,
Amour laissa ses traits dans vos yeus rigoreus,
Pithon vous feit la vois à nulle autre pareille.

Vous avés les tetins comme deus mons de lait,
Caillé bien blanchement sus du jonc nouvelet
Qu'une jeune pucelle au mois de Juin façonne:

De Junon sont vos bras, des Graces vostre sein,
Vous avés de l'Aurore et le front, et la main,
Mais vous avés le coeur d'une fiere lionne.

* * *
ブラゾン詩。このようなものがイギリスに入ってきた。

* * *
フランス語テクストは次のページより。
http://fr.wikisource.org/wiki/Continuation_
des_Amours_%281555%29

Continuation de Amours (1555), Sonnet 10
以降の版ではいろいろ改変されている。

* * *
手持ちの仏英辞典、ウェブ上の仏英・英仏辞典、
Ronsard, Selected Poems (Penguin), Les Amours
(Garnier) を使用。

ウェブ上の辞典は次のもの。
(ルネサンス期のつづりでもヒットしてくれて便利。)
http://dictionary.reverso.net/french-english/

* * *
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Milton, ("Lawrence of vertuous Father vertuous Son")

ジョン・ミルトン
(「お父さんに似てまじめな君、ローレンス君」)

お父さんに似てまじめな君、ローレンス君、
野原はぬれ、道もぬかるんでるけど、
どこかで会えないかな? 空が不機嫌な日は
火のそばですごしたいね。冷たい季節だけど、

少しでも楽しめればと思うんだ。そのほうが時間も
早く過ぎて、気がつけば、また春の西風が凍った大地に
命を吹きこんでたりする。百合や薔薇も
きれいな色の服をもらっててね。

食事は何がいい? 軽めで、でもよりすぐりで、
さりげなく品がいい感じ、とか? ワインも用意しないと。そのあと、
リュートや歌を聴こう。すてきな声の女の人に

名曲、トスカナ風の歌とか歌ってもらおう。
こういうことのよさを知る、時おり楽しみを
はさみながら生きる--これは愚かなことではないからね。

* * *
John Milton
("Lawrence of vertuous Father vertuous Son")

Lawrence of vertuous Father vertuous Son,
Now that the Fields are dank, and ways are mire,
Where shall we sometimes meet, and by the fire
Help wast a sullen day; what may be won

From the hard Season gaining: time will run [ 5 ]
On smoother, till Favonius re-inspire
The frozen earth; and cloth in fresh attire
The Lillie and Rose, that neither sow'd nor spun.

What neat repast shall feast us, light and choice,
Of Attick tast, with Wine, whence we may rise [ 10 ]
To hear the Lute well toucht, or artfull voice

Warble immortal Notes and Tuskan Ayre?
He who of those delights can judge, And spare
To interpose them oft, is not unwise.

* * *
1620年代から英語で広まってきていた(ラテン語では
それ以前から読めた)ホラティウス的なカルペ・ディエム
(今を楽しもう)の主題をミルトン流にアレンジしたソネット。
1650年代の作品。

カルペ・ディエムといっても、フレンチ・ソネット風の
なまめかしいものや、カトゥルス、オウィディウス的な
悪い誘惑の詩にならないのがホラティウスの作品。
より知的で哲学的。(エポード8番、12番のように
とんでもない作品もあるが。)

Cf.
Daniel, ("Looke Delia how wee steeme . . . ")
Jonson, "To Celia" (1)
Jonson, "To Celia" (2)

1650年代にはもうソネットという詩形はほぼ廃れていた、
またそもそもホラティウス的な内容をソネットで扱うことは
まずなかった、などという点で実は斬新な作品。
いつだってミルトンは、おとなしく慣例にしたがったりしない。

ホラティウスの翻訳・翻案や、それに類する内容をあつかう
ときの定番はカプレット(二行ずつ脚韻を踏む)。
Jonson (tr.), Horace, Ode 4.1
Herrick (tr.), Horace, Ode 3.9
Marvell, "An Horation Ode"
Fanshawe (tr.), Horace, Ode 1.9

* * *
17世紀のはじめからなかばにかけてホラティウスを
翻訳・翻案していたのは、いわゆる「王党派」的な
立場の詩人たち、つまり、宗教や日々のくらしに
おいて何かと厳格ないわゆる「ピューリタン」とは
対立する立場の人たち。

ギリシャ・ローマ古典を愛する貴族的・享楽的・知的な人々
(+ 劇場や季節のお祭りなど、ふつうの娯楽を愛する人々)
vs
超まじめで攻撃的なクリスチャン
(劇場は不道徳だからつぶせ、祭りは禁止、クリスマスも禁止、
教会のパイプオルガンは壊せ、ステンドグラスも割ってしまえ、
などと宗教思想的に考える人々 + ただ暴れたい人々)

このような対立図式のなかで、少なくとも政治的には後者の
「ピューリタン」側についていたと言えるミルトンが、前者、
王党派側の視点に立ったこのソネットを書いている、
というところが重要。音楽が好きで自分もオルガンを弾くなど、
ミルトンはガチガチの「ピューリタン」ではなかった。

「チャールズ1世は死刑で当然」など、政治論文ではいろいろ
過激なことを言う傾向があるが、(また、ふだんの会話では
皮肉がきつかった、などという記録もあるが、) ミルトンは
わりと穏健で中道的な人だったのでは。(だから王政復古後、
処刑されなかった。いやがらせ的に逮捕されたりはしたが。)

逆に見れば、楽しもう、という詩のなかで、
料理は軽めに、楽しみはひかえめに、と言うところに
ミルトン独特のまじめさがうかがわれる、とも。

Cf.
Herrick, “On Himself” (Hesperides 170)
Cowley, "The Epicure"

* * *
「ローレンス君」はエドワード・ローレンス(Edward Lawrence,
1633-57)。「お父さん」はヘンリー・ローレンス(1600-64)。
二人とも政治家。

特にヘンリーは共和国期にクロムウェルに重用された人物。
1650年代初期に独立派・反律法主義の取り締まりを訴えるなど、
ミルトンとは対立する立場にあった。

反律法主義:イエスが人間の罪をみな贖ってくれたから、
もう何をやっても罪ではない、という考えかた。
人間ひとりひとりがイエスだ、神だ、などと言って
非常識・反社会的なことをするフーリガン的な人々がいた。

そんなヘンリーと親交があり、この詩のみならず政治論文の
なかでも名前をあげて彼を称えている、などというところに
人間関係の機微が見える。友人 = 考えかたが同じ人、ではない。
(少なくとも、ミルトンはそういうタイプではなかった。)

* * *
英語テクストは次のページから。
http://www.dartmouth.edu/~milton/reading_room/
sonnets/sonnet_20/text.shtml

* * *
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Herrick, “On Himself” (Hesperides 170)

ロバート・へリック
「自分について」

お偉いさんなんてこわくない。
ほしいのは花冠だけ。
ひげをワインと香水に
べっとり浸していたいだけ。
今日、悲しみなんてワインのなかで窒息死。
明日も生きてるとはかぎらないから。

* * *
Robert Herrick
“On Himself” (Hesperides 170)

I fear no earthly powers,
But care for crowns of flowers;
And love to have my beard
With wine and oil besmear'd.
This day I'll drown all sorrow:
Who knows to live to-morrow?

* * *
Anacreontea 15/8より。(Estienne/Modern)
Cowley, "The Epicure" と同じもの。

イギリスで最初にアナクレオン風の詩(古代ギリシャの詩人
アナクレオンの作品だと19世紀頃までみなされていた
60篇ほどの詩)を大きくとりあげたのは、このヘリック。
(内容的にはカウリーのほうが圧倒的に上。)

以下など参照:
Stuart Gillespie, "The Anacreontea in English:
A Checklist of Translations to 1900 with a Bibliography of
Secondary Sources and Some Previously Unpublished
Translations", Translation and Literature 11 (2002).

Tom Mason, "Abraham Cowley and the Wisdom
of Anacreon", Cambridge Quarterly 19 (1990).
(引証がない、論証ではなく推測的な指摘が多い、
などいわゆる論文としてはどうかと思う点もあるが、
きわめて博識で刺激的。おすすめ。)

Gordon Braden, The Classics and English Renaissance
Poetry (Yale UP, 1978), ch. 3.
(ヘリックとアナクレオン風の詩について。ルネサンス期に
アナクレオン風の各詩につけられていた番号は、現代の番号と
異なっていていろいろややこしいが、これらを照合した
一覧表を載せてくれている。)

* * *
英語テクストは次のページより。
http://www.gutenberg.org/files/22421/22421-h/i.html

* * *
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Milton, Paradise Lost (8: 521-59, Beauty is Power)

ジョン・ミルトン
『楽園は失われた』 (8: 521-60)
(アダム 「かわいいは正義」)

こんな感じでぼくは生きてます。
この地上でくらしてて、とても
幸せです。すべてが
楽しくて、うれしいです。でも、もう慣れたというか
なんというか、ふだんはそこまで心が動かないんです。
ほしくてほしくてしかたない、とか思わないんです、
おいしい果物とか、きれいでいいにおいのする草とか花とか、
そんな散歩道とか、鳥たちの歌とかは。イヴだけが
特別なんです。見つめるだけで、
手でふれるだけで、もう最高、まるで天国です。自分でもどうしようない、
なんともいえない気持ちになるんです。ふつうに楽しいときは自分を
コントロールできるんですけど、イヴだけはダメなんです。
あんなかわいい子がじっと見つめてくるなんて、もう最強です。
もともとぼくのどこかに弱点があって、
かわいい子の攻撃には負けるようになってるのかな、
あばらをとられすぎちゃったのかな、
なんて思います。とにかく、イヴは
かわいすぎるんです。外見的には、
もう完璧です。でも、中身はそうじゃないかもしれないんですよね。
一応わかってますから、人という存在として
みれば、女であるあの子は、ぼくと比べて劣ってる、んでしたよね。
知性とか、そういう見えないところのほうが大事、とか聞いてますし。
それに見かけの点でも、ぼくたち二人をつくってくれた
神さまには、実はぼくのほうが似てるんでしたっけ。
支配者の威厳みたいなものは、イヴにはあまり
ないですもんね。ですけど、それでもやっぱり
あの子は完璧なんです。とにかくかわいくて、
非の打ちどころがないんです。自信にもあふれてて、あの子の
話やすることはなんでもそれがいちばんりっぱで、いちばん正しくて、
いちばん理にかなってて、とにかくいちばんいい、って思っちゃうんです。
難しい、レベルの高い話なんて、イヴと話してると
どうでもよくなります。正しいかどうかとか、そんなこと
どうでもいいんです。そんなこと言ってるほうがバカみたいなんです。
何を言ってても、いつもイヴは偉くって、いつも正しいんです。
まるで、あの子のほうがぼくより先につくられたとか、そんな感じです。
たまたま後からつくられたんじゃなくって。つまりです、
イブには偉大な精神、気高い心があるんです。だって、
いちばんかわいいんですから。あの子はぼくにとって神です。
天使にかこまれてるみたいな、手の届かない存在なんです。

* * *
John Milton
Paradise Lost (8: 521-59)
(Adam, "Beauty is Power")

Thus I have told thee all my State, and brought
My Storie to the sum of earthly bliss
Which I enjoy, and must confess to find
In all things else delight indeed, but such
As us'd or not, works in the mind no change, [ 525 ]
Nor vehement desire, these delicacies
I mean of Taste, Sight, Smell, Herbs, Fruits and Flours,
Walks, and the melodie of Birds; but here
Farr otherwise, transported I behold,
Transported touch; here passion first I felt, [ 530 ]
Commotion strange, in all enjoyments else
Superiour and unmov'd, here onely weake
Against the charm of Beauties powerful glance.
Or Nature faild in mee, and left some part
Not proof enough such Object to sustain, [ 535 ]
Or from my side subducting, took perhaps
More then enough; at least on her bestow'd
Too much of Ornament, in outward shew
Elaborate, of inward less exact.
For well I understand in the prime end [ 540 ]
Of Nature her th' inferiour, in the mind
And inward Faculties, which most excell,
In outward also her resembling less
His Image who made both, and less expressing
The character of that Dominion giv'n [ 545 ]
O're other Creatures; yet when I approach
Her loveliness, so absolute she seems
And in her self compleat, so well to know
Her own, that what she wills to do or say,
Seems wisest, vertuousest, discreetest, best; [ 550 ]
All higher knowledge in her presence falls
Degraded, Wisdom in discourse with her
Looses discount'nanc't, and like folly shewes;
Authority and Reason on her waite,
As one intended first, not after made [ 555 ]
Occasionally; and to consummate all,
Greatness of mind and nobleness thir seat
Build in her loveliest, and create an awe
About her, as a guard Angelic plac't.

* * *
16世紀のソネットなどの、ペトラルカ的、宮廷風恋愛的な
女性の称えかた、もちあげかたと比較してみる。
理想的な(?)女性の描きかたという点で、ミルトンは
何をしたかったのか。

男と女、どっちが上で……などという、ありがちな
図式だけではまったく説明できない複雑な描写・表現を
めざしているように見える。

* * *
英語テクストは次のページより。
http://www.dartmouth.edu/~milton/
reading_room/pl/book_8/text.shtml

* * *
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Milton, Paradise Lost (6: 109-188, Abdiel vs Satan)

ジョン・ミルトン
『楽園は失われた』 (6: 109-188)
(アブディエル vs サタン)

サタンは、一歩一歩、偉そうに大地を踏みしめながらやってきた。
塔のように大きく、かたいダイヤモンドと金で武装して輝いていた。
これを見て、アブディエルの腹は煮えくり返る。
そして、戦いに勇む最強の天使たちのなか、
彼は心にこう語る。

「おお、神よ……こいつの姿が最高の地位にあった頃から
変わってないのはどういうことか? もう忠誠を
なくしてるってのに? ……でも、美徳をなくしたら
戦いで勝てるわけない。偉そうにしてたって、
悪い奴は弱いんだ。いくら無敵に見えてもな。
……全能の神のご加護があるはずだから、俺が
こいつをやっつけてやる。……こいつの言うことは
おかしい。まちがってる。どっちが正しいか、
って話で俺が勝ったんだから、戦いでも
俺が勝つに決まってる。正しいほうが負けるなんて
ありえない。……正義がただの武力と武力で
争うなんて野蛮できれいな話じゃないが、
正義は勝つ、ってのが正義なはずだ」。

こう胸に思いながら、アブディエルは武器をもつ仲間たちより
さらに前に歩み出て、自軍と敵軍のちょうどまんなかで
サタンと対峙した。そして、立ち止まらさせられたことに
さらに腹を立てたかのように、次のように彼を挑発した。
「おう悪い、通せんぼしちまったな。このクソ傲慢野郎が!
おまえ、誰にも邪魔されずに舞いあがっていって、
神の王座を奇襲して奪おう、って思ってんだろ? おまえの
力、っていうかでかい口にみんなびびって、みんな神を
見棄てるとかって思ってんだろ? バッカじゃね? 全能の神に
反逆して戦っても無意味だってわからんか?
見ろ、あのお方は小さきものから
こんな無数の軍をつくり出した。バカなおまえを
ぶっつぶすためにな。っていうか、そもそもおひとりでだって
無限のパワーの一撃で
おまえにとどめをさせるんだ。おまえの軍だって、
あっという間に闇の世界にポイだ。まあ、でも、見ろよ、
みんながみんなおまえの味方じゃないんだぜ。神への
忠誠とか信心が大事、って天使もいっぱいいるんだ。おまえ、
わかってなかったよな。あん時は頭の悪い
おまえの軍のなかで俺だけが反対してるように
見えただろ。な、俺の仲間たちを見てくれよ。もう手遅れだけど
思い知るんだな、何万という連中がまちがってるときでも
正しい少数派がいる、ってな」。

偉大なる敵サタンは、そんなアブディエルを横目であざけるように見て
答えた。「ついてないな、おまえ。一回逃げたのに、ちょうどやっつけてやろうと
思ってたときにのこのこ出てきちゃってよ。まずはおまえに復讐だ。
逃げやがったからな。この裏切り者が。
俺を怒らせた罰として
この右腕の最初の一発をお見舞いしてやる。
ひとりだけケチつけやがったよな、おまえ、
あんとき、俺たちの集会でよ。天の三分の一くらいは
一致団結してたってのによ。俺たちこそ神だ!
俺たちは神の力を秘めている!
全能なんて奴がいるとか、俺たちは認めない! ってな。それにしても、おまえ、
よくぬけぬけと来れたよな。俺をやっつけたらちょっと
かっこいいかも、とか思ったか? ほかの連中も
びびるかも、ってか? おまえをぶっとばす前に教えてやるよ、
あとで変なこと言われても困るしな。
最初はよ、天国ってのは自由なとこだと思ってた。
天使は誰でも自由だ、ってな。でもよ、
よく見りゃ、みんな怠けて金魚のクソになってるだけじゃねえか。へこへこしてよ、
ただのお茶くみか、歌って踊るパーティーの女の子みたいじゃねえか。
おまえの後ろの連中なんて、武器もってようが結局みんなそうなんだよ。
おまえらみたいな奴隷と自由な俺ら、戦ったらどうなるか教えてやるよ。
ふだんやってること見りゃ結果なんて明らかだよな」。

対してアブディエルもけわしい表情で手短に答える。
「神を捨てたバカタレが。おまえはいつもバカだ。ほんと、バカは
死ななきゃ治らんな。真理の道からそれすぎだ。
おかしいだろ? 神が定めたあの方にお仕えすることを
金魚の糞とか奴隷とか言うなんてな。
っていうか、あたりまえだろ?
支配者がりっぱで、支配される者より
優れていたら、従うのが当然だろ。奴隷ってのは
バカな支配者に従う奴、自分よりりっぱな支配者に盾つくバカに
従ってる奴のことだ。おまえんとこの下っ端みたいにな。
それからな、おまえは自由じゃない。おまえはおまえ自身の奴隷だ。
なのに俺たちの仕事をバカにしやがって。
おまえは地獄で王さまになってりゃいい。俺は幸せな
天国で神に仕えるんだ。神の命令に
従って生きるんだ。神に従わなかったら誰に従うんだ?
でもよ、地獄に行っても鎖でつながれるだけだから覚悟しとけよ。とにかくな、
さっきおまえが言ってたみたいに、俺は一回逃げたけど戻ってきてやったぜ。
そんな俺からのごあいさつ……そのばちあたりな頭にくらいやがれ!」

* * *
John Milton
Paradise Lost (6: 109-188)
(Abdiel vs Satan)

Satan with vast and haughtie strides advanc't,
Came towring, armd in Adamant and Gold; [ 110 ]
Abdiel that sight endur'd not, where he stood
Among the mightiest, bent on highest deeds,
And thus his own undaunted heart explores.

O Heav'n! that such resemblance of the Highest
Should yet remain, where faith and realtie [ 115 ]
Remain not; wherefore should not strength and might
There fail where Vertue fails, or weakest prove
Where boldest; though to sight unconquerable?
His puissance, trusting in th' Almightie's aide,
I mean to try, whose Reason I have tri'd [ 120 ]
Unsound and false; nor is it aught but just,
That he who in debate of Truth hath won,
Should win in Arms, in both disputes alike
Victor; though brutish that contest and foule,
When Reason hath to deal with force, yet so [ 125 ]
Most reason is that Reason overcome.
So pondering, and from his armed Peers
Forth stepping opposite, half way he met
His daring foe, at this prevention more
Incens't, and thus securely him defi'd. [ 130 ]

Proud, art thou met? thy hope was to have reacht
The highth of thy aspiring unoppos'd,
The Throne of God unguarded, and his side
Abandond at the terror of thy Power
Or potent tongue; fool, not to think how vain [ 135 ]
Against th' Omnipotent to rise in Arms;
Who out of smallest things could without end
Have rais'd incessant Armies to defeat
Thy folly; or with solitarie hand
Reaching beyond all limit at one blow [ 140 ]
Unaided could have finisht thee, and whelmd
Thy Legions under darkness; but thou seest
All are not of thy Train; there be who Faith
Prefer, and Pietie to God, though then
To thee not visible, when I alone [ 145 ]
Seemd in thy World erroneous to dissent
From all: my Sect thou seest, now learn too late
How few somtimes may know, when thousands err.

Whom the grand foe with scornful eye askance
Thus answerd. Ill for thee, but in wisht houre [ 150 ]
Of my revenge, first sought for thou returnst
From flight, seditious Angel, to receave
Thy merited reward, the first assay
Of this right hand provok't, since first that tongue
Inspir'd with contradiction durst oppose [ 155 ]
A third part of the Gods, in Synod met
Thir Deities to assert, who while they feel
Vigour Divine within them, can allow
Omnipotence to none. But well thou comst
Before thy fellows, ambitious to win [ 160 ]
From me som Plume, that thy success may show
Destruction to the rest: this pause between
(Unanswerd least thou boast) to let thee know;
At first I thought that Libertie and Heav'n
To heav'nly Soules had bin all one; but now [ 165 ]
I see that most through sloth had rather serve,
Ministring Spirits, traind up in Feast and Song;
Such hast thou arm'd, the Minstrelsie of Heav'n,
Servilitie with freedom to contend,
As both thir deeds compar'd this day shall prove. [ 170 ]

To whom in brief thus Abdiel stern repli'd.
Apostat, still thou errst, nor end wilt find
Of erring, from the path of truth remote:
Unjustly thou deprav'st it with the name
Of Servitude to serve whom God ordains, [ 175 ]
Or Nature; God and Nature bid the same,
When he who rules is worthiest, and excells
Them whom he governs. This is servitude,
To serve th' unwise, or him who hath rebelld
Against his worthier, as thine now serve thee, [ 180 ]
Thy self not free, but to thy self enthrall'd;
Yet leudly dar'st our ministring upbraid.
Reign thou in Hell thy Kingdom, let mee serve
In Heav'n God ever blest, and his Divine
Behests obey, worthiest to be obey'd, [ 185 ]
Yet Chains in Hell, not Realms expect: mean while
From mee returnd, as erst thou saidst, from flight,
This greeting on thy impious Crest receive.

* * *
英語テクストは次のページより。
http://www.dartmouth.edu/~milton/
reading_room/pl/book_6/text.shtml

最後の行だけ日本語訳では二行。

* * *
学生の方など、自分の研究/発表のために上記を
参照する際には、このサイトの作者、タイトル、URL,
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Milton, Paradise Lost (5: 28-93, Eve's bad dream)

ジョン・ミルトン
『楽園は失われた』 (5: 28-93)
(イヴの悪夢)

ああ、あなただけよ、あなただけといるときだけほっとする。
アダム、わたしの自慢のひと。完璧なひと。あなたの顔を見れば
安心なの。朝が来てよかった。昨日の夜は
ひどかった。あんなひどいの、はじめてよ。夢を見たの。
というか、あれ、夢だったのかしら? あなたとか、
前の日のこととか、次の日のこととか、そんな夢じゃなくって、
いけないこと、悪いことの夢だった。まったく
考えたこともないような、そんな嫌な夢よ。耳もとで
やさしく誰かに呼ばれて、出ておいで、って
言われたから、わたし、あなたかなー? って思ってた。でも
それから、こんなこと言われたの。「眠ってるの? 外は気持ちいいよ。
涼しくて、静かで、
夜の鳥だけが歌ってる。夜も眠れないくらい
つらい片思いの歌を、やさしい声で歌ってる。空は
満月だよ。すべてのものが
昼間よりきれいに輝いてる。かわいそうだよ、
見てあげなくちゃ。それから、星たちの目もぱっちり開いてる。
君を見るためにね。この世のものすべてが君に恋してる。
君のそばにいるだけで最高に幸せで、
かわいい君からもう目を離せないんだ」。
こんなふうにあなたが呼ぶから、わたし、起きたんだけど、あなたはいなかった。
だから探しに行ったの。
で、よくわからないんだけど、しばらくひとりで歩いていったら、
あの木のところにいたの。
あの、禁じられた知恵の木のところよ。きれいだった。
昼間よりももっときれいに見えた。
うわー、って思いながら見てたら、羽のある、
いつも天国から来てる天使のひとたち
みたいなひとが、そばにいたの。髪の毛が夜の露に湿っていて、
とってもいいにおいがした。そしてね、その木をじーっと見て、
こんなこと言ってたの。「きれいな木だ。実もいっぱいなって。
誰もこの重荷をおろしてやらないなんて。おいしいのに、
神さまも人間もこの実を食べない。知恵って、いらないものなの?
それか、ただ意地悪してるだけ? それか自制してるとか。
ま、いいや、食べちゃお。
わたしを食べて、って言ってるみたいだし」。
こんなふうに言って、そのひとはためらわずに
実をとって食べたの。わたし、ぞっとして、こわくて、もう動けなくって、
だってあんなこと言って、いけないこと平気でやって、
でもそのひと、楽しそうにまたしゃべり出したの。「おおお! こ、これは
まさに神! ふつうにおいしいし、禁じられてるから
もっとおいしい。まさに神の
くだものだ。でもさ、これ食べたら、人も神になれるんだよね。
うん、いいことなのにな。幸せが
広まればその分幸せな人が増えるし、
そんな幸せをもたらす神さまの評判もあがるしね。
ねえ、イヴ、君、ほんとかわいいね。天使かな、って思った。
ね、君も食べてごらん。今でも幸せだけど、
もっともっと幸せになれるから。
ね、食べて。そして神さまみたいになって。
そう、君は女神さま。今みたいに地上にいるだけじゃなくって、
ぼくたちみたいに空を飛んだり、天国に
行けるようになるんだよ。天国も君のものなんだ。神さまたちの
こと、見に行こうよ。で、そこでいっしょにくらそうよ」。
こんなこと言いながら、そのひと近づいてきてね、わたしに、
わたしの口のとこに、自分でとった実のひとつを
さし出してきたの。いいにおいがして、わたし
食べたくなっちゃった。そして、たぶんね、わたし
食べちゃった。そしたらすぐ、
そのひとといっしょに雲の上まで飛んでいったの。下に
大きな地球が見えた。広くって、
いろんなものが見えた。もう、びっくりよ! 飛んで、あんなに
高くのぼれるなんて。気がついたら
あのひとはいなくなってて、わたし、落ちていって、
そして眠っちゃったの。ああ、でも、ほんとよかった、
みんな夢で……」。

* * *
John Milton
Paradise Lost (5: 28-93)
(Eve's bad dream)

O Sole in whom my thoughts find all repose,
My Glorie, my Perfection, glad I see
Thy face, and Morn return'd, for I this Night, [ 30 ]
Such night till this I never pass'd, have dream'd,
If dream'd, not as I oft am wont, of thee,
Works of day pass't, or morrows next designe,
But of offense and trouble, which my mind
Knew never till this irksom night; methought [ 35 ]
Close at mine ear one call'd me forth to walk
With gentle voice, I thought it thine; it said,
Why sleepst thou Eve? now is the pleasant time,
The cool, the silent, save where silence yields
To the night-warbling Bird, that now awake [ 40 ]
Tunes sweetest his love-labor'd song; now reignes
Full Orb'd the Moon, and with more pleasing light
Shadowie sets off the face of things; in vain,
If none regard; Heav'n wakes with all his eyes,
Whom to behold but thee, Natures desire, [ 45 ]
In whose sight all things joy, with ravishment
Attracted by thy beauty still to gaze.
I rose as at thy call, but found thee not;
To find thee I directed then my walk;
And on, methought, alone I pass'd through ways [ 50 ]
That brought me on a sudden to the Tree
Of interdicted Knowledge: fair it seem'd,
Much fairer to my Fancie then by day:
And as I wondring lookt, beside it stood
One shap'd and wing'd like one of those from Heav'n [ 55 ]
By us oft seen; his dewie locks distill'd
Ambrosia; on that Tree he also gaz'd;
And O fair Plant, said he, with fruit surcharg'd,
Deigns none to ease thy load and taste thy sweet,
Nor God, nor Man; is Knowledge so despis'd? [ 60 ]
Or envie, or what reserve forbids to taste?
Forbid who will, none shall from me withhold
Longer thy offerd good, why else set here?
This said he paus'd not, but with ventrous Arme
He pluckt, he tasted; mee damp horror chil'd [ 65 ]
At such bold words voucht with a deed so bold:
But he thus overjoy'd, O Fruit Divine,
Sweet of thy self, but much more sweet thus cropt,
Forbidd'n here, it seems, as onely fit
For God's, yet able to make Gods of Men: [ 70 ]
And why not Gods of Men, since good, the more
Communicated, more abundant growes,
The Author not impair'd, but honourd more?
Here, happie Creature, fair Angelic Eve,
Partake thou also; happie though thou art, [ 75 ]
Happier thou mayst be, worthier canst not be:
Taste this, and be henceforth among the Gods
Thy self a Goddess, not to Earth confind,
But somtimes in the Air, as wee, somtimes
Ascend to Heav'n, by merit thine, and see [ 80 ]
What life the Gods live there, and such live thou.
So saying, he drew nigh, and to me held,
Even to my mouth of that same fruit held part
Which he had pluckt; the pleasant savourie smell
So quick'nd appetite, that I, methought, [ 85 ]
Could not but taste. Forthwith up to the Clouds
With him I flew, and underneath beheld
The Earth outstretcht immense, a prospect wide
And various: wondring at my flight and change
To this high exaltation; suddenly [ 90 ]
My Guide was gon, and I, me thought, sunk down,
And fell asleep; but O how glad I wak'd
To find this but a dream! . . .

* * *
英語テクストは次のページより。
http://www.dartmouth.edu/~milton/
reading_room/pl/book_5/text.shtml

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真夜中に(19)

真夜中に(19)

1
冬の街
人の波
壁の間の
道を行く

くり返す日々の意味は何?
何をすべきで何ができて何したい?

とりあえず空を見あげる、真夜中に
口笛吹いてもの思う、真夜中に

2
青い闇
少し風
月の影
光る雲

どこまで欲は許される?
何を払えば幸せは買える?

とりあえず外に出てみる、真夜中に
ステップ踏んで星を見る、真夜中に

3
どこに向かって歩いてる?
いつどこで誰と出会う? すれちがう?

とりあえず目を閉じてみる、真夜中に
世界も自分も取り消す、真夜中に

とりあえず眠りに落ちる、真夜中に
愛される夢を見る、真夜中に

* * *
1990
201501-03
20160804
20190421-24

* * *
盗用・商用・悪用禁止。


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Waits, "Innocent When You Dream"

トム・ウェイツ
「夢を見るのは罪じゃない」

1
鐘の塔にはこうもり
荒地は露に濡れてる
俺を抱きあげて、そして
おふくろに愛を誓った奴はどこに行った?
おふくろに愛を誓った奴はどこに行った?

いつもの悲しい気分
野原は緑でやわらか
思い出を少し盗み出す
でも夢を見るのは罪じゃない
夢を見るのは
夢を見るのは罪じゃない

2
墓場を駆けまわり
笑ってた、俺と連れの奴ら
俺たちは誓いあった
死ぬまでいっしょだと
死ぬまでいっしょだと

いつもの悲しい気分
野原は緑でやわらか
思い出を少し盗み出す
でも夢を見るのは罪じゃない
夢を見るのは
夢を見るのは罪じゃない

3
俺は金色の約束をした
俺たちは絶対に別れない、と
写真入りのペンダントを贈った、そして
あの子を捨てた
あの子を捨てた

いつもの悲しい気分
野原は緑でやわらか
思い出を少し盗み出す
でも夢を見るのは罪じゃない
夢を見るのは
夢を見るのは罪じゃない

* * *
Tom Waits, "Innocent When You Dream"

英語テクストは次のページに。
http://www.tomwaits.com/songs/#/songs/song/
188/Innocent_When_You_Dream_Barroom/

* * *
1
「鐘の塔(=頭)のなかにこうもり」
have bats in the belfry
= 頭おかしい、混乱してる
OED, "bat" n1, 1b; 次のページなども
http://dictionary.cambridge.org/dictionary/british/
have-bats-in-the-belfry

「荒地に露」
(比喩的に読む)-->
荒地(のような頬)に露(のような涙)

2
「墓場を駆けまわって笑う」
「死ぬまでいっしょだと誓う」
(文脈から深読み)-->
「連れの奴ら」はもう死んだ
(だから「いつもの悲しい気分」)

3
「金色」は比喩
文字どおり金色だったのはペンダント

「夢を見ているときは無罪」
--> 実生活では有罪
(1-2では自分は悪くないはずだが感覚的に)

* * *
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Milton, Paradise Lost (2: 229-83, Mammon)

ジョン・ミルトン
『楽園は失われた』 (2: 229-83)
(マモン 「地獄に国をつくろう」)

天の王から王位を奪う、我々がなくした権利をとり戻す、
そんな目的をはたすのに戦争が最良の方法なら
戦えばいいでしょう。天の王から王位を奪う……かんたんそうに言いますが、
そんな唯一のチャンスは、永遠の〈運命〉があてにならない〈偶然〉に負けるとき、
その対決を〈渾沌〉が裁くとき、くらいのものでしょうね。
つまり、実際あの王を負かそうったって無理ですから、当然我々の復権も
難しいわけです。もう天国になんて戻れっこありません。
最高の地位にあるあの主(ぬし)を
負かさないかぎりはね。あるいは、たとえばの話ですが、彼が
我々すべてを赦してくれたとします。そして我々はあらためて
服従を誓うんです。でも、そうなった場合、どの面下げて
あの敵の前に出ればいいんでしょうね。おとなしく
彼の掟に従えますか? 彼の王座を
声高々に歌って称えるなんてできますか? 「神を称えよ!
ハーレルヤ!」とかね。それを彼は偉そうに聴くんです。
憎たらしいけど我々の主君としてね。祭壇には
いい香りの天の花々が飾ってあったりして、これも
奴隷たる我々の捧げものです。要するに、天に戻ってもそんな仕事が
待ってるだけで、しかもそれを喜ばなくてはならないんです。くだらないと
思いません? そうやって彼を称えて永遠の時間を過ごすんですよ。
あの憎たらしい敵をね。だから、もう無理なことを
考えるのはやめましょう。与えられて
うれしくないこともです。光り輝く天国にいたって、
奴隷のように生きるのはまっぴらです。むしろ、
我々だけでできることを考えましょう。自分たちの力で、
自分たちのために生きていきましょう。今、こうしてこの世のはずれに
いるわけですが、我々は自由なんです。誰かに従う必要などないんです。
努力を要するが自由な生きかたのほうが、楽でぜいたくな
奴隷生活よりずっといいじゃないですか。我々のすばらしいところを
思い知らせることができるでしょう。小さなものから大きなものを、
有害なものから有益なものを、逆境から繁栄を、
生み出すことができれば。どんなところでも、
たとえ抑圧のもとでも、我々は幸福になれるのです。つらいときでも
勤労と忍耐によって心安らかに生きられるのです。この闇の世界も
恐れることはありません。だって、すべてを支配する
あの天の父だって、黒く分厚い雲によく隠れていた
じゃないですか。それでも彼の輝きは翳ることなく、
むしろあたりの闇ゆえに王座が荘厳に
見えたじゃないですか。そこから雷が大きく、まるで怒り狂ってる
みたいに鳴ったりして、今思えば、あれは地獄のようでしたよね。
彼が我々の闇の世界をまねるわけですから、我々だって
天の光の世界をまねてみませんか? この焼け野原にだって
宝石や金が隠されています。
我々の手腕で、ここに壮麗絢爛たる国でも建てれば
いいのです。天国に負けないようなね。
今の拷問だって、そのうち我々の
からだの一部みたいになるでしょう。この炎だって、今はからだに
突き刺さってきてますが、そのうち平気になりますよ。我々が
変化してそういうからだになるんです。痛みを
感じないからだにね。こう考えるなら、
戦争という選択肢は消えるでしょう。むしろ、りっぱな国を
つくろうじゃありませんか。誰にも邪魔されず、この
不幸をのりこえればいいんです。過去は過去、
現状は受けいれなければなりません。戦争なんて
考えは捨てましょう。わたしが言いたいのはそういうことです。

* * *
John Milton
Paradise Lost (2: 229-83)
(Mammon: Let us build a state in hell)

Either to disinthrone the King of Heav'n
We warr, if Warr be best, or to regain [ 230 ]
Our own right lost: him to unthrone we then
May hope when everlasting Fate shall yeild
To fickle Chance, and Chaos judge the strife:
The former vain to hope argues as vain
The latter: for what place can be for us [ 235 ]
Within Heav'ns bound, unless Heav'ns Lord supream
We overpower? Suppose he should relent
And publish Grace to all, on promise made
Of new Subjection; with what eyes could we
Stand in his presence humble, and receive [ 240 ]
Strict Laws impos'd, to celebrate his Throne
With warbl'd Hymns, and to his Godhead sing
Forc't Halleluiah's; while he Lordly sits
Our envied Sovran, and his Altar breathes
Ambrosial Odours and Ambrosial Flowers, [ 245 ]
Our servile offerings. This must be our task
In Heav'n, this our delight; how wearisom
Eternity so spent in worship paid
To whom we hate. Let us not then pursue
By force impossible, by leave obtain'd [ 250 ]
Unacceptable, though in Heav'n, our state
Of splendid vassalage, but rather seek
Our own good from our selves, and from our own
Live to our selves, though in this vast recess,
Free, and to none accountable, preferring [ 255 ]
Hard liberty before the easie yoke
Of servile Pomp. Our greatness will appeer
Then most conspicuous, when great things of small,
Useful of hurtful, prosperous of adverse
We can create, and in what place so e're [ 260 ]
Thrive under evil, and work ease out of pain
Through labour and indurance. This deep world
Of darkness do we dread? How oft amidst
Thick clouds and dark doth Heav'ns all-ruling Sire
Choose to reside, his Glory unobscur'd, [ 265 ]
And with the Majesty of darkness round
Covers his Throne; from whence deep thunders roar
Must'ring thir rage, and Heav'n resembles Hell?
As he our darkness, cannot we his Light
Imitate when we please? This Desart soile [ 270 ]
Wants not her hidden lustre, Gemms and Gold;
Nor want we skill or Art, from whence to raise
Magnificence; and what can Heav'n shew more?
Our torments also may in length of time
Become our Elements, these piercing Fires [ 275 ]
As soft as now severe, our temper chang'd
Into their temper; which must needs remove
The sensible of pain. All things invite
To peaceful Counsels, and the settl'd State
Of order, how in safety best we may [ 280 ]
Compose our present evils, with regard
Of what we are and were, dismissing quite
All thoughts of warr: ye have what I advise.

* * *
英語テクストは次のページより。
https://www.dartmouth.edu/~milton/reading_room/pl/
book_2/text.shtml

* * *
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Milton, Paradise Lost (2: 119-225, Berial)

ジョン・ミルトン
『楽園は失われた』 (2: 51-105)
(べリアル 「戦争反対……」)

わたしも直接対決に賛成と言いたいところです、みなさん。
敵を憎む気持ちは同じですから。でも、
すぐに戦闘を、という彼の議論のいちばんの根拠が
いちばん説得力に欠いておりましたので、はたして我々が
勝利できるのか、とても不安になりました。
もっとも戦闘にすぐれている彼が
自分の戦闘力に自信がないようすで、
やけくそで戦う、
死ぬために戦う、
それがせめてもの復讐だ、なんて言っているのですから。
まずです、そもそもどんな復讐が可能でしょうか。天の塔は
武装され、常に見張られています。そこに近づくなんて
ありえません。しかもまわりの深淵には
数えきれないほどの兵が陣営を張っています。そして
暗がりのなか、夜の領域を広く、くまなく偵察しています。
だから奇襲なんてまず無理です。もし我々が強引に
攻め入って、さらに地獄の者たち全員がつづいたとしても、
澄みきった天の光を真っ黒な悪意で踏みにじってやろうと
我々が最大限がんばったとしても、あの最強の敵にとっては
痛くもかゆくもないでしょう。彼の王座だって
もちろん無傷でしょう。汚れを知らぬ
天そのものが、我々邪魔者を
すぐに排除するわけですから。卑しい地獄の炎なんて
ちょちょいのちょい、ってなもんです。こうして退けられたら、我々にはもう
絶望の道しかありません。全能なるあの敵を
もっともっと、極限まで、怒らせるんです。
そして我々は殺される、まさにこれこそ救済です、
死ぬ、ということが……。涙が出そうです。
どれだけつらくたって、死んでうれしい、なんて者はいやしません。
いろいろ感じ、考えながら、永遠に生きていたいはずです。
なのに、死んで、ものがつくられる前のぐちゃぐちゃの夜の子宮に
もう一度のみこまれて消えてしまうなんて。
もう何も感じない、動けない、だなんて……。でも、待ってください、
ひとつ確認しておかなくてはなりません。腹を立てているあの敵が、
我々を死なせてくれるのでしょうか? そんなこと、どうして
期待できるのでしょう? むしろ、絶対にありえませんよね。
あのように賢い彼ですから、馬鹿や間抜けみたいに
一気に怒りを解き放って
敵の望みをかなえてやる、望みどおり
消してやる、なんてへまは絶対にやらかしません。そもそも最初から
永遠に罰するために生かしていたわけですから。我々は死ねないんです。
戦争を望む者たちは言うでしょう、このままでは
我々は永劫の苦しみに身を焼くのみ、
今以上の、今以上にひどい苦しみなど
ありえない、今の状態が最悪だ、こうしてすわって
話しあって、武装してぐだぐだしてるだけの今が、などとです。
でも、雷でやっつけられて追いかけられて、死にもの狂いで
逃げてきたときのこと、覚えてますか? 地獄の淵に
隠れたい、って思ってたじゃないですか。そうです、
ここは敵の攻撃からの逃げ場だったんです。それから、炎の湖に
鎖でつながれて焼かれたこともありましたよね。まさに最悪でした。
敵をまた怒らせて、今度はあの凶暴な炎を
七倍に燃えあがらせて、またそこに突き落とされるなんて
嫌でしょう? 天で彼が定期的に
熱い右手をふりあげて、我々が
その怒りと復讐の標的になるなんて嫌でしょう?
地獄の炎すべてが
空から一気に滝のように降ってきたらどうします?
想像するだけでぞっとしますが、いつそうなるかわかりません。
この頭の上に炎の滝が、です。たぶん、輝かしき勝利を
妄想して目をきらきらさせているようなときに、
我々は炎の嵐に襲われるんです。みなからだを炎の雨の矢に貫かれ、
岩にはりつけにされ、そのまま竜巻に巻きあげられて
あちこちふっと飛ばされるんです。あるいは沸騰する海の
底で鎖でがんじがらめにされるのです。
そうなったら、もう言葉なんか出ません。永遠にうめき声でおしゃべりするんです。
もう安らぎなんてないでしょうね。誰にも憐れまれず、許してもらえず、
まさに絶望的な結末を迎え、それが永遠につづくのです。
わかりますよね、今のほうがましでしょう?
ですから、正面切っての戦いであれ闇討ちのようなものであれ、
私は戦争には反対です。力も策もあの敵の前では
無力です。彼を、彼の目を、あざむくなんて無理です。
あれは一目ですべてが見える方ですから。今でも、天の高いところから
我々の無駄な議論を見てあざ笑っていることでしょう。
全能ですから我々の抵抗なんて難なくひねりつぶしてしまうでしょうし、
全知ですから策略も通用しません。
こう言う者もいるでしょう--このように地獄でみじめにくらせ、というのか?
天国に生まれたのに、踏みつけにされて、追放されて、
鎖でつながれて拷問にかけられて、そのまま生きていくのか? 私に
言わせれば、まだましなんじゃないですか? 敗れたのは運命です。
どうしようもありません。勝った者の言いなりに
なるしかないんです。戦う力と同様、我々には
耐える力もあります。神の掟が間違っているとは
言えません。我々にもう少し知恵があったなら、
こうなることははじめからわかっていたはずです。あんな強い者を
敵にまわしたわけですから。勝てるかどうか、正直かなり怪しかったわけですし。
笑っちゃいますよ。武器を手にいちばん戦いに
勇んでいた者にかぎって、負けたときいちばん震えあがるんです。
自分のしたことの結果を受けいれられなくってね。
追放であれ、恥であれ、隷属であれ、拷問であれ、
負ければ勝った者の言いなりになるしかないのに。今の
我々もそうなんです。もしこれに我々が耐えることができたら、
敵の怒りもいつか
鎮まるかもしれません。これだけ離れてるわけだから、
もう危険じゃないと思ってくれるかもしれないし、もう
罰は十分と考えてくれるかもしれない。そしたら、荒れ狂う
地獄の炎だって弱まるでしょう。彼が焚きつけるのをやめてくれるでしょうから。
それから、もともと清らかな我々のからだだって、
地獄の有害な靄(もや)に慣れて、もう平気になるかもしれない。
いずれ体質的・本質的に
この場所にあうようになって、燃える炎に焼かれても
熱や痛みを全然感じなくなるかもしれない。
この地獄の恐怖が気持ちよくなって、闇も明るく見えるようになるかもしれない。
そして、もしかしたらですよ、飛ぶように過ぎていく
永遠の日々が、今後何らかの希望やチャンス、いい方向への
変化をもたらしてくれるかもしれない。我々の今の境遇は、
確かにひどいが最悪ではないのですから。
あえてもっと不幸を招く必要なんてないのです。

* * *
John Milton
Paradise Lost (2: 119-225)
(Berial against war)

I should be much for open Warr, O Peers,
As not behind in hate; if what was urg'd [ 120 ]
Main reason to persuade immediate Warr,
Did not disswade me most, and seem to cast
Ominous conjecture on the whole success:
When he who most excels in fact of Arms,
In what he counsels and in what excels [ 125 ]
Mistrustful, grounds his courage on despair
And utter dissolution, as the scope
Of all his aim, after some dire revenge.
First, what Revenge? the Towrs of Heav'n are fill'd
With Armed watch, that render all access [ 130 ]
Impregnable; oft on the bordering Deep
Encamp thir Legions, or with obscure wing
Scout farr and wide into the Realm of night,
Scorning surprize. Or could we break our way
By force, and at our heels all Hell should rise [ 135 ]
With blackest Insurrection, to confound
Heav'ns purest Light, yet our great Enemy
All incorruptible would on his Throne
Sit unpolluted, and th' Ethereal mould
Incapable of stain would soon expel [ 140 ]
Her mischief, and purge off the baser fire
Victorious. Thus repuls'd, our final hope
Is flat despair; we must exasperate
Th' Almighty Victor to spend all his rage,
And that must end us, that must be our cure, [ 145 ]
To be no more; sad cure; for who would loose,
Though full of pain, this intellectual being,
Those thoughts that wander through Eternity,
To perish rather, swallowd up and lost
In the wide womb of uncreated night, [ 150 ]
Devoid of sense and motion? and who knows,
Let this be good, whether our angry Foe
Can give it, or will ever? how he can
Is doubtful; that he never will is sure.
Will he, so wise, let loose at once his ire, [ 155 ]
Belike through impotence, or unaware,
To give his Enemies thir wish, and end
Them in his anger, whom his anger saves
To punish endless? wherefore cease we then?
Say they who counsel Warr, we are decreed, [ 160 ]
Reserv'd and destin'd to Eternal woe;
Whatever doing, what can we suffer more,
What can we suffer worse? is this then worst,
Thus sitting, thus consulting, thus in Arms?
What when we fled amain, pursu'd and strook [ 165 ]
With Heav'ns afflicting Thunder, and besought
The Deep to shelter us? this Hell then seem'd
A refuge from those wounds: or when we lay
Chain'd on the burning Lake? that sure was worse.
What if the breath that kindl'd those grim fires [ 170 ]
Awak'd should blow them into sevenfold rage
And plunge us in the flames? or from above
Should intermitted vengeance arm again
His red right hand to plague us? what if all
Her stores were open'd, and this Firmament [ 175 ]
Of Hell should spout her Cataracts of Fire,
Impendent horrors, threatning hideous fall
One day upon our heads; while we perhaps
Designing or exhorting glorious warr,
Caught in a fierie Tempest shall be hurl'd [ 180 ]
Each on his rock transfixt, the sport and prey
Of racking whirlwinds, or for ever sunk
Under yon boyling Ocean, wrapt in Chains;
There to converse with everlasting groans,
Unrespited, unpitied, unrepreevd, [ 185 ]
Ages of hopeless end; this would be worse.
Warr therefore, open or conceal'd, alike
My voice disswades; for what can force or guile
With him, or who deceive his mind, whose eye
Views all things at one view? he from heav'ns highth [ 190 ]
All these our motions vain, sees and derides;
Not more Almighty to resist our might
Then wise to frustrate all our plots and wiles.
Shall we then live thus vile, the race of Heav'n
Thus trampl'd, thus expell'd to suffer here [ 195 ]
Chains and these Torments? better these then worse
By my advice; since fate inevitable
Subdues us, and Omnipotent Decree
The Victors will. To suffer, as to doe,
Our strength is equal, nor the Law unjust [ 200 ]
That so ordains: this was at first resolv'd,
If we were wise, against so great a foe
Contending, and so doubtful what might fall.
I laugh, when those who at the Spear are bold
And vent'rous, if that fail them, shrink and fear [ 205 ]
What yet they know must follow, to endure
Exile, or ignominy, or bonds, or pain,
The sentence of thir Conquerour: This is now
Our doom; which if we can sustain and bear,
Our Supream Foe in time may much remit [ 210 ]
His anger, and perhaps thus farr remov'd
Not mind us not offending, satisfi'd
With what is punish't; whence these raging fires
Will slack'n, if his breath stir not thir flames.
Our purer essence then will overcome [ 215 ]
Thir noxious vapour, or enur'd not feel,
Or chang'd at length, and to the place conformd
In temper and in nature, will receive
Familiar the fierce heat, and void of pain;
This horror will grow milde, this darkness light, [ 220 ]
Besides what hope the never-ending flight
Of future dayes may bring, what chance, what change
Worth waiting, since our present lot appeers
For happy though but ill, for ill not worst,
If we procure not to our selves more woe. [ 225 ]

* * *
反逆の天使たちのなかでいちばんの腰抜け、という設定。

* * *
英語テクストは次のページより。
https://www.dartmouth.edu/~milton/reading_room/pl/
book_2/text.shtml

* * *
学生の方など、自分の研究/発表のために上記を
参照する際には、このサイトの作者、タイトル、URL,
閲覧日など必要な事項を必ず記し、剽窃行為のないように
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Milton, Paradise Lost (2: 51-105, Moloch)

ジョン・ミルトン
『楽園は失われた』 (2: 51-105)
(モロク 「戦争だ!」)

真っ向から戦いましょう! 策をめぐらすなんて、
わたしにはちょっと自信がない。そんなこと、必要なときに
したい者がすればいいんです。今はそんなことしてる場合じゃない。
誰かが策を練っているあいだ、あとの者はどうするんです?
何百万もの連中が武器をもって、戦闘態勢に入ってる。
そんなときに、作戦が立つまで休め、なんて無理じゃないですか。
そうやってちんたらしながらこの暗い洞穴でずっと
くらすつもりですか? 天国から追い出されたうえに、ですよ? なっさけない!
ここは牢獄ですよ! 我々が何もしないかぎり
あの暴君野郎の天下なんです! だから……聞け! いいか!
地獄の炎と怒りを武器に総攻撃をしかけるほかに、もう道なんて残ってない!
天の高い塔などみんなぶち壊して突き進む!
我々を痛めつけてる拷問道具など、みんなこっちの武器にしてしまえ!
そして逆に奴を痛めつけてやれ! 奴の
無敵の兵器なんて目じゃないくらいに、地獄の雷を
鳴らせ! 奴が稲妻を使ってきたら、
燃える闇の弾丸をぶっぱなして天使どもを
蹴散らせ! 奴の王座なんか、地獄の硫黄と
得体のしれない炎でぐちゃぐちゃに燃やしてしまえ!
ははっ! 自業自得ってもんだ! ざまあみろ! ……おっと、いや、しかし、
そうかんたんには……っていわれるかもしれません。地獄から
敵のところまで真上にのぼって行かなくてはなりませんからね。
ですが、思い出してみてください。この忘却の湖に
溺れて眠ってるあいだに記憶が飛んだ、なんてことはないでしょうね。
我々はもともと上をめざす存在だったはずです。
しかも、今回は生まれ故郷に帰るだけなんです。落ちるなんてことが、
そもそもおかしかった。違いますか?
あのうるさい敵の奴が我々の軍をしつこく追いかけて
攻めてきたときだって、大変だった。渾沌の海のなか、
いわば一生懸命苦労して、こんな下の下、底の底まで
落ちてきた。 そう、上に向かうほうがかんたんなはずです。
うまくいくか……って? 確かに、またあの格上の敵を
怒らせたら、もっとひどいかたちで
壊滅させられるかもしれない……。しかし、そもそも地獄にいるのに
さらなる不幸なんてありえない! ここが
まさにどん底です! 天国から追い出され、この忌まわしい
世界の底の底で苦しみ、今の我々には悲しむことしかできない。
永遠に消えない炎に焼かれ、
死によって苦しみが終わることもない。
怒り狂うあの敵の奴隷として容赦のない
罰と拷問にさらされて、いい加減悔いあらためようか、
なんて思ったりもする。これ以上の不幸があるとしたら、
それは完全なる死、完全に消されることだけでしょう?
だから、恐れることなどない! これでもか、ってくらいに
奴を怒らせればいい! 極限まで怒り狂ってくれれば、
我々を焼き尽くしてこのからだを
消してくれる……かもしれない。永遠にみじめに
生きるより、そのほうがはるかにましだ!
……あるいは、もしわたしたちが本当に神で
死なない存在であるなら、今が最悪、
今以上の苦しみはありえません。そして、
まだ天にちょっかいを出す力が残ってる。
奴の支配をくつがえすことはできないにしろ、
何度でも侵入してびびらせるくらいのことはできるはずです。
そう、勝利はならずとも、せめて復讐しなくてはならないのです!

* * *
John Milton
Paradise Lost (2: 51-105)

My sentence is for open Warr: Of Wiles,
More unexpert, I boast not: them let those
Contrive who need, or when they need, not now.
For while they sit contriving, shall the rest,
Millions that stand in Arms, and longing wait [ 55 ]
The Signal to ascend, sit lingring here
Heav'ns fugitives, and for thir dwelling place
Accept this dark opprobrious Den of shame,
The Prison of his Tyranny who Reigns
By our delay? no, let us rather choose [ 60 ]
Arm'd with Hell flames and fury all at once
O're Heav'ns high Towrs to force resistless way,
Turning our Tortures into horrid Arms
Against the Torturer; when to meet the noise
Of his Almighty Engin he shall hear [ 65 ]
Infernal Thunder, and for Lightning see
Black fire and horror shot with equal rage
Among his Angels; and his Throne it self
Mixt with Tartarean Sulphur, and strange fire,
His own invented Torments. But perhaps [ 70 ]
The way seems difficult and steep to scale
With upright wing against a higher foe.
Let such bethink them, if the sleepy drench
Of that forgetful Lake benumm not still,
That in our proper motion we ascend [ 75 ]
Up to our native seat: descent and fall
To us is adverse. Who but felt of late
When the fierce Foe hung on our brok'n Rear
Insulting, and pursu'd us through the Deep,
With what compulsion and laborious flight [ 80 ]
We sunk thus low? Th' ascent is easie then;
Th' event is fear'd; should we again provoke
Our stronger, some worse way his wrath may find
To our destruction: if there be in Hell
Fear to be worse destroy'd: what can be worse [ 85 ]
Then to dwell here, driv'n out from bliss, condemn'd
In this abhorred deep to utter woe;
Where pain of unextinguishable fire
Must exercise us without hope of end
The Vassals of his anger, when the Scourge [ 90 ]
Inexorably, and the torturing hour
Calls us to Penance? More destroy'd then thus
We should be quite abolisht and expire.
What fear we then? what doubt we to incense
His utmost ire? which to the highth enrag'd, [ 95 ]
Will either quite consume us, and reduce
To nothing this essential, happier farr
Then miserable to have eternal being:
Or if our substance be indeed Divine,
And cannot cease to be, we are at worst [ 100 ]
On this side nothing; and by proof we feel
Our power sufficient to disturb his Heav'n,
And with perpetual inrodes to Allarme,
Though inaccessible, his fatal Throne:
Which if not Victory is yet Revenge. [ 105 ]

* * *
反逆の天使のなかでいちばんヤバい奴、という設定。

* * *
英語テクストは次のページより。
https://www.dartmouth.edu/~milton/reading_room/pl/
book_2/text.shtml

* * *
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Constable, ("My Ladies presence makes the Roses red")

ヘンリー・コンスタブル
『ディアナ』 9
(愛しいあのひとがそばにいると薔薇は赤くなる)

愛しいあのひとがそばにいると薔薇は赤くなる。
あのひとのくちびるを見て恥ずかしくなるから。
百合の花は嫉妬で白くなる。
彼女の手が白いから。
マリーゴールドは花を大きく広げる。
あのひとには太陽と同じ力があるから。
すみれが青紫色になったのは、
あのひとが流したぼくの心の血に染まったから。
つまり、花の魅力の源はすべてあのひと。
あのひとの甘い息が、花にすてきな香りを与え、
あのひとの目の光に命をもらって、
大地はあたたかくなって、種も芽を出す。
あのひとが花たちにあげる雨の水は
ぼくの涙。あのひとがぼくをさんざん泣かすから。

* * *
Henry Constable
Diana 9
("My Ladies presence makes the Roses red")

My Ladies presence makes the Roses red,
because to see her lips, they blush for shame:
the Lyllies leaues (for enuie) pale became,
and her white hands in them this enuie bred.
The Marigold the leaues abroad doth spred,
because the sunnes, and her power is the same:
the Violet of purple cullour came,
did in the blood shee made my hart to shed.
In briefe, all flowers from her their vertue take;
fro[m] her sweet breath, their sweet smels do proceede;
the liuing heate which her eye beames doth make,
warmeth the ground, and quickeneth the seede:
The raine wherewith shee watereth the flowers,
Falls from mine eyes, which she dissolues in showers.

* * *
ブラゾン詩。比喩の羅列。

* * *
英語テクストは次のページより。
http://www.luminarium.org/renascence-editions/diana.html

STC 5637 (1592) では16番。

* * *
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Drayton, Idea 6

マイケル・ドレイトン
『イデア』 6

つまらない、化粧の濃い、頭の悪い子たちが
今、あちこちの通りを行ったりきたりしていますが、
詩に歌ってもらえないそういう子たちはすぐに忘れられてしまえばいいんです。
死んですぐ、そう、死に装束につつんでもらう前にでも!
でも、ぼくは君には永遠の命を与えたいと思っています。
君以外の人やものごとなど、すべて忘れ去られてもいいんです。
女王たちに捧げられるほめ言葉の何千倍もの
称賛を君に捧げたいのです。
若い者も老いた者も、後の女性たちはこのぼくの詩を読んで、
ぼくの描く君を見て、幸せに思うでしょう。
そして、悲しむでしょう。ぼくや君の時代に生きて、
女性の鑑である君を見ることができなかったことを。
それくらい、ぼくは君をふつうの女性たちよりはるか高く舞いあがらせたいのです。
永遠に残るぼくの詩のなか、君に生きつづけてほしいのです。

* * *
Michael Drayton
Idea 6

How many paltry, foolish, painted things,
That now in coaches trouble every street,
Shall be forgotten, whom no Poet sings,
Ere they be well wrapt in their winding-sheet!
Where I to thee eternity shall give,
When nothing else remaineth of these days,
And Queens hereafter shall be glad to live
Upon the alms of thy superfluous praise.
Virgins and matrons, reading these my rhymes,
Shall be so much delighted with thy story
That they shall grieve they lived not in these times,
To have seen thee, their sex's only glory.
So shalt thou fly above the vulgar throng,
Still to survive in my immortal song.

* * *
Spenser, Amoretti 75 や Shalespeare, Sonnet 18 と同じ、
詩によって愛しい人に永遠の命を与える、という内容。
(これもロンサールらプレイヤード派の著作に顕著。)

いろいろな意味で、carpe diem の正反対。

Cowley, "Life and Fame" はこのような発想を
露骨に批判・嘲笑している。

* * *
英語テクストは次のページより。
http://www.luminarium.org/editions/idea.htm

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