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Hardy, "She, to Him (IV)"

トマス・ハーディ
「女から男に(IV)」

あなたが好きすぎて、今のわたし、悪魔みたい。
あの子なんて呪ってやる。死んでしまえ。
あなたを愛し、愛されてるなんて許せない。
わたしの生きる糧だったあなたの心を味わってるなんて許せない。

愛ってなに? わからない。でも命が
愛の単位よね? 一生で好きになるのはひとりよね?
まちがいないわ、あなたはわたしそのもの。
離れていても、熱い想いでわたしはとけてあなたとひとつになってる。

だからわたし、あなたのすべてがわかる。あの子には
わからない、会っていても見えない、あなたのすべてが。
わたしのこと、嫌い?
大好きなあなたのこと、いつもこっそり見てるから。
もうさよならなのに、愛ってすてき。
特に、悲しすぎて自分に都合いいことを考えてるとき。

*****
Thomas Hardy
"She, to Him (IV)"

This love puts all humanity from me;
I can but maledict her, pray her dead,
For giving love and getting love of thee―
Feeding a heart that else mine own had fed!

How much I love I know not, life not known,
Save as some unit I would add love by;
But this I know, my being is but thine own―
Fused from its separateness by ecstasy.

And thus I grasp thy amplitudes, of her
Ungrasped, though helped by nigh-regarding eyes;
Canst thou then hate me as an envier
Who see unrecked what I so dearly prize?
Believe me, Lost One, Love is lovelier
The more it shapes its moan in selfish-wise.

https://www.gutenberg.org/ebooks/3167

*****
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Hardy, "She, to Him (III)"

トマス・ハーディ
「女から男に(III)」

わたしはずっと好き、ほんとよ。
〈死神〉がわたしを選んで殺すとき、こう思うんじゃないかしら。
あれ? もっと早く連れてけばよかった、
あの最後のさよならの日からこいつは死んでた、って。

もうどうでもいい、友だちとか、家族とか、若い盛りで
やさしくしてくれる人たちとか。
今の楽しげな人たちは、
恋をしたい、ってがんばってるけど、それに比べたら

わたしなんて風見鶏みたい。矢の先はもうさびてる。
で、さびる前にキスしてくれた人のほうをずっと向いたままなの。
今を生きてる人たちにはバカにされてる。過去の
ことなんて考えず、みんな今だけが大事って思ってるから。
昔はわたしの顔もいきいきしてたはずなんだけど、もうダメね。
見つめていたい、なんて誰も思ってくれなくなっちゃった。

*****
Thomas Hardy
"She, to Him (III)"

I will be faithful to thee; aye, I will!
And Death shall choose me with a wondering eye
That he did not discern and domicile
One his by right ever since that last Good-bye!

I have no care for friends, or kin, or prime
Of manhood who deal gently with me here;
Amid the happy people of my time
Who work their love’s fulfilment, I appear

Numb as a vane that cankers on its point,
True to the wind that kissed ere canker came;
Despised by souls of Now, who would disjoint
The mind from memory, and make Life all aim,
My old dexterities of hue quite gone,
And nothing left for Love to look upon.

https://www.gutenberg.org/ebooks/3167

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Hardy, "She, to Him (II)"

トマス・ハーディ
「女から男に(II)」

たぶん、これからずっと先、わたしが死んだあとでも、
誰かの顔や声や話すことがわたしに似てたりしたら、
わたしのこととか、
昔好きだったな、とか、思い出してくれるかしら。

そんなとき、ちょっと立ち止まって、「かわいそうな奴」とか思って、
ため息ひとつでもついてくれるかしら。それだけでとてもうれしい。
返してない借金のほんの一部とか、そんな感じじゃないの。
わたし、あなたがいれば他になにもいらなかったくらいだから。

あなたにはわからないわよね。
「かわいそうな奴」とか、あなたの頭に浮かんでは消える、わずかな、
一瞬の幽霊のような思いが、わたしの
命そのものだったの。そのなかに私は生きていたの。
そうして儚(はかな)く生きながら、あなたのことだけを
考えていたの。わたしはあなたの考えのほんの一部だったと思うけど。

*****
Thomas Hardy
"She, to Him (II)"

Perhaps, long hence, when I have passed away,
Some other’s feature, accent, thought like mine,
Will carry you back to what I used to say,
And bring some memory of your love’s decline.

Then you may pause awhile and think, “Poor jade!”
And yield a sigh to me---as ample due,
Not as the tittle of a debt unpaid
To one who could resign her all to you---

And thus reflecting, you will never see
That your thin thought, in two small words conveyed,
Was no such fleeting phantom-thought to me,
But the Whole Life wherein my part was played;
And you amid its fitful masquerade
A Thought---as I in yours but seem to be.

https://www.gutenberg.org/ebooks/3167

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Hardy, "She, to Him (I)"

トマス・ハーディ
「女から男に(I)」

わたしが〈時〉の罠にかかってしまって、
きれいじゃなくなって、ちやほやされなくなって、
前みたいに目が星のように輝かなくなって、
かわいくて気ままな女の子じゃなくなって、

あなたも感情より思考で動くようになって、
よく考えたときになぜか
昔のわたしのなかにあった特別なものについて思い出して、
そしてそれが枯れてしまってるからわたしを嫌いになって、

でも、そんなとき、わたしが悪いわけじゃない、
〈時〉が子孫をつくっては狩って殺してるだけ、って思いなおして、
わたしの心は前とまったく同じで、あなたが不幸に
なるくらいならかわりに死んでもいいって思ってる、って思い出して、
そして、昔の愛の名残りとして、友情の手だけでも
差しのべてくれないかしら? 日のあたらない人生の丘の下り道で。

*****
Thomas Hardy
"She, to Him (I)"

When you shall see me in the toils of Time,
My lauded beauties carried off from me,
My eyes no longer stars as in their prime,
My name forgot of Maiden Fair and Free;

When in your being heart concedes to mind,
And judgment, though you scarce its process know,
Recalls the excellencies I once enshrined,
And you are irked that they have withered so:

Remembering that with me lies not the blame,
That Sportsman Time but rears his brood to kill,
Knowing me in my soul the very same---
One who would die to spare you touch of ill!---
Will you not grant to old affection’s claim
The hand of friendship down Life’s sunless hill?

https://www.gutenberg.org/ebooks/3167

*****
カルペ・ディエムの主題のヴィクトリア朝的一変奏。
新しいのは以下の点。小説の発展および感情表現の
自由化という18世紀以来の流れのなかで。

1.
薔薇などとはたとえられない年齢となった女性視点から語る。

2.
日常的な恋愛の物語の一部に組みこまれている。
("She, to Him" はIVまでつづく。)

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Hardy, "Amabel"

トマス・ハーディ
「アマベル」

失われた肌色、
凝り固まった考え、
思わず訊いた、「君は本当に
アマベル?」

彼女のドレス、
かつては薔薇色、今は土色、
まるで死を知らせる鐘のよう、
アマベルの。

撥条(ぜんまい)仕掛けの足どり、
五月の若さはもうない。
笑い声も昔は可愛かった、おしゃれで
わがままだったアマベル。

わたしは思う、「わたしと同じ
熱い恋の歌を、今誰が歌う?
心をつかもうとして、
彼のアマベルの」。

〈愛〉の神がいなくなっても、
信者たちは減らない。
村で、谷で、みな見つける、
自分のアマベルを。

どこかの家の
屋根にのぼって泣きたかった。
〈時〉という恐ろしい暴君が
アマベルを支配してしまった!

ため息をつく、
ぼくたちの愛は死んでしまった。
そしてつぶやく、「もう、やさしくなんてできない、
アマベルに。

彼女はなるようになるさ。
出ていこう。
終わりのトランペットが響くときまで、さよなら!
ぼくのアマベル!」

*****
Thomas Hardy
"Amabel"

I marked her ruined hues,
Her custom-straitened views,
And asked, "Can there indwell
My Amabel?"

I looked upon her gown,
Once rose, now earthen brown;
The change was like the knell
Of Amabel.

Her step's mechanic ways
Had lost the life of May's;
Her laugh, once sweet in swell,
Spoilt Amabel.

I mused: "Who sings the strain
I sang ere warmth did wane?
Who thinks its numbers spell
His Amabel?" -

Knowing that, though Love cease,
Love's race shows undecrease;
All find in dorp or dell
An Amabel.

- I felt that I could creep
To some housetop, and weep,
That Time the tyrant fell
Ruled Amabel!

I said (the while I sighed
That love like ours had died),
"Fond things I'll no more tell
To Amabel,

"But leave her to her fate,
And fling across the gate,
'Till the Last Trump, farewell,
O Amabel!'"

https://www.gutenberg.org/ebooks/3167

*****
「カルペ・ディエム」のヴィクトリア朝的な変奏。
「今日という花」が枯れてしまったあとの歌。

若さにこだわるこのような発想の背後には、
動物的ななにかがあるのかもしれないが、
個人的に嫌い。誰のためにもならない。

*****
Amabel = amour + belle (フランス語)
日本語でいえば「愛美」。

「終わりのトランペット」はコリント人への
第一の手紙15.51より。これが鳴って死者の魂は
よみがえり、最後の審判を受ける。

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Hardy, "The Voice"

トマス・ハーディ
「声」

逝ってしまった人、おまえがわたしを呼ぶ、呼んでいる。
そして、いう--「あなたにとってすべてだった頃のわたしでは
なくなった頃のわたしじゃなくて、
最初の頃、わたしたちが楽しくくらしてた頃のわたしに戻ったの」。

まさか、ほんとにおまえの声? なら、姿を見せてくれ。
わたしが町に向かい、
おまえがそこで待っていた、あのときのようなおまえが見たい。そう、
いちばん最初のときに来ていた、空のように青いドレスを着たおまえが見たい!

それか、ただの風? 力なく、
湿った牧場のほうから、ここ、わたしのところに吹いてくる風の音?
そのなかにおまえは青白く、ぼんやりと消えていく。
おまえの声は、もう聞こえない。遠くにも近くにも・・・・・・。

こんなことを、わたしはいう、よろよろ歩きながら。
わたしのまわりに木の葉が落ちる。
イバラのあいだから、雨まじりの弱い北風が吹いて来る。
そして、彼女がわたしを呼ぶ。

* * *
Thomas Hardy
"The Voice"

Woman much missed, how you call to me, call to me,
Saying that now you are not as you were
When you had changed from the one who was all to me,
But as at first, when our day was fair.

Can it be you that I hear? Let me view you, then,
Standing as when I drew near to the town
Where you would wait for me: yes, as I knew you then,
Even to the original air-blue gown!

Or is it only the breeze, in its listlessness
Travelling across the wet mead to me here,
You being ever dissolved to wan wistlessness,
Heard no more again far or near?

Thus I; faltering forward,
Leaves around me falling,
Wind oozing thin through the thorn from norward
And the woman calling.

* * *
死んでしまった妻についての詩。

美しかった頃、仲がよかった頃の妻についての勝手な幻想、
つまり結婚生活が円満ではなかったことをあえて率直に語り、
そのうえで妻を失ったわびしさ、寂しさを描く。

風の音とはわかっていても、やはりそこに妻の声が聞こえる、という。

* * *
テクストは、Thomas Hardy Societyのサイトより。
http://www.hardysociety.org/

* * *
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